『クスノキ』は元々の『クスキ』に1文字足しただけ。『スミキ』は『ミズキ』を入れ替えて濁点を取っただけ。由来ってほどでもないですねこれ。
僕はその夢を見れるだろうか。
夢を見ることには何もいらない。
僕はその夢を叶えられるだろうか。
夢を叶えるには力がいる。
僕はその夢を叶えられた。
夢を断ち切るには何が必要?
ーーーーーーーー
舞台は変わってラステイション。
時間も遡ってミズキがみんなを助けた翌日のこと。
「あぁぅ〜……まだちょっとピリピリしてるよ〜……」
「私も〜……」
ネプテューヌとネプギア、コンパとアイエフは痺れる体を引きずってノワールとユニが待つ部屋へと向かっていた。
「大丈夫ですか?」
「だいじょばない〜……」
「私も、まだ痺れてるわね……」
「嫌な感じです〜……」
コンパだけは通常運転だ。
至近距離で大量の粉を吸ってしまったネプテューヌ達よりも症状は軽いらしい。
それもそうだ、吸ってしまったものの粉は風ですぐに飛んで行ってしまったし分散していたから吸った量も少ない。
粉を吸ってしまった国民もすぐに痺れは治って帰って行った。
「入るよ〜……」
「どうぞ」
あの後は大変だった。
目を覚ましたもののまだ上手く体が動かないみんなをノワールが励まして何とか教会まで送り届けたのだ。
しかもいつの間にか倒されてたキノコについては、
『明日説明するから。私にも考える時間が必要なの』
とはぐらかされる始末。結局キノコを倒したのはネプテューヌ達のお陰ということになっていたがなんだか納得いかない。
ドアを開いて中に入る。
そこにはパソコンの前に座るノワールとその側に立つユニがいた。
「ユニちゃん、大丈夫?まだ痺れてる?」
「うん、少し。でもすぐに治ると思う」
心配するネプギアにユニは笑顔で答える。
「それでノワール!どういうことなのさ!あのキノコはいつの間にかいなくなってるしノワールは怪我してるし!ちゃんと説明してよね!」
「それは、ちゃんと説明するわ。そうね、ユニが説明した方がキノコの話はわかりやすいわね」
「確か、ねぷねぷ達はキノコさんにやられちゃったんですよね?」
「情けないことにね。それで粉を吸って幻覚を見てたのよ」
ノワールを除いた全員はあの幻覚を思い出して顔を青くする。本当に幻で良かったという悪夢ばかりだった。
「でも、ユニちゃんは吸ってなかったよね?」
「私もあの後すぐに粉を吸っちゃったの。その時、粉の中に立つ人がいて……」
「わかった!その人が助けてくれたんだね!その人誰⁉︎」
「………ミズキさん、です」
『…………っ⁉︎』
ネプテューヌ達は一斉に息を飲む。まさか、そんなことがあるわけがない。
「目覚めた時にキノコはいなくってミズキさんは変身を解いていました。それで、洞窟のお姉ちゃんを助けてって言ったらすぐに……」
「ミズキが、私達を………?」
「あの時、私達のすぐ側に……」
「ミズキはいたっていうの……⁉︎」
ネプテューヌとネプギアとアイエフは驚愕の事実に言葉が出ない。
確かに、あの強力なEXモンスターを倒せるのは女神以外ならミズキくらいのものだが……。
「でも、その包帯……」
コンパがノワールの左腕に巻かれた包帯に気付く。
アイエフもそれを見て気付いた。
「コンパの結び方……ね……」
どうやら話は本当らしい。
「それで、ミズキは洞窟でEXエンシェントドラゴンに負けそうになってた私を助けてくれたの。もっとも、ソイツが暴れたせいでトゥルーネ洞窟は崩れてしまったわけだけど……」
「な、なんで引き止めなかったのさ!すぐ側にいたんでしょ⁉︎」
「お姉ちゃん……」
「やめなさい、ネプ子」
「で、でも、ミズキは……」
「それを言ったら痺れ粉にやられてた私達だってそうでしょ」
「そ、それは………」
ネプテューヌは黙り込んでしまう。
ノワールだけに非があるわけではない。全員が全員命の危機に陥り、それをミズキに助けてもらったのだ。
「………それでね、ネプテューヌ。頼みがあるの」
「へ?の、ノワールが私に頼み?」
ネプテューヌはなんだか背筋がゾクゾクするのを感じた。嫌な予感がする。ノワールが私に頼み事なんて天変地異の前触れか。今日はラステイションに槍が降るか。いや、隕石が降る。
「多分だけど、ミズキはもう
「う、うん……。それは、わかるけど……」
「でも私はミズキの戦いを見て……悔しいけど、アンタが負けたのも納得できたわ」
2度、ミズキの戦いを見たが凄まじい戦闘力だと思う。
その戦いに『カッコいい』とかいう感想を抱くのだ。そんなの、ノワールは初めてだった。
「う、うん。それで?何が言いたいのさ!」
「……しばらく、ここに残ってくれない?」
「……え?」
ネプテューヌは言ってる意味がわからなかった。それはユニ以外のみんなも同じようだ。
「え、えと、お姉ちゃんの邪魔がしたい……とかじゃないんですよね?」
「ええ。でも、このまま追いかけて仮に私も加えて2対1で戦ってもミズキには勝てないと思うの」
「………………」
みんなは黙り込んでしまう。ノワールにそこまで言わしめるほどの力をミズキは持っている。
「あのね、私もお姉ちゃんもネプギア達に協力するつもりなの。もし良かったら連れて行って欲しい」
「え?でも……」
「私は借りは返す主義なの。それに……」
「………?」
もう1度会いたい。
理由は、昨日散々考えた。その理由は到底受け入れ難いものだったが……整理はつけた。
このまま2度と会えないなんてことはノワールにとっても嫌なことになったのだ。
「それがどうして私達がラステイションに残る理由になるのさ!一刻も早くミズキを追わなきゃいけないのに!」
「そうね。時間が経てば経つほどミズキは私達から離れていくわけだし……」
アイエフが同意する。
ノワールは立ち上がってネプテューヌに理由を告げた。
「模擬戦、するわよ。ネプテューヌ」
「ええ、今更⁉︎」
「このままじゃ私達はミズキに逆立ちしたって勝てっこないの。強くなるわよ、ネプテューヌ」
「だ、だからって……」
「ネプギア、私達も」
「ユニちゃん……」
「アイエフさんも、コンパさんも」
「…………」
「…………」
最初に決心したのは、ネプギアだった。
「……私、やるよユニちゃん」
「ネプギア………。うん!」
そして、アイエフとコンパ。
「仕方ないわね。私達も付き合いましょう」
「はいですぅ!」
そしてノワールとネプテューヌ。
「アンタはどうするの」
「たは、これだけやるって言ってたら私も断れないよ!仕方ない、相手してあげるよ、ノワール!」
「決まりね。期間は5日間のつもりよ」
そうと決まれば。
ユニとネプギアは早速外へ出る。
「行くよ、ユニちゃん!」
「負けないんだから!」
「行くわよ、コンパ」
「あ、待ってあいちゃん!」
そしてコンパとアイエフもそれを追いかける。
「アクセス」
ノワールは女神化を始めた。
変身が完了してノワールの髪が白く染まる。
「さあ、ネプテューヌ」
「うん。……変身」
ネプテューヌの体が0と1の数列の世界に包まれる。
服は弾け飛んで光に包まれ、体と髪が大きく伸びて三つ編みになる。そして、背中に蝶の羽根のようなプロセッサユニットが装着された。
「5日間もいらないわ。……すぐ追いかけるんだから」
「私も強くなる。ミズキに借りを返すの」
いつの間にか2人の間ではどっちが先に相手を倒すかという勝負になってしまったようだ。
ーーーーーーーー
そして時間は現在。
ルウィーの教会の自分の部屋のベッドの上でブランは目を覚ました。
「………………私」
また寝てしまったのか。
時計を見ると時間は7時。そろそろ夜ご飯の時間だ。
「……起きましょうか」
布団から這い出ると机の上にとある1冊の本が置いてあった。見覚えがある、私の読んでた本だ。
「………なんで……」
寝ぼけた頭で帽子を手に取り本の表紙を見る。そこには付箋でメモが付けられていた。
『気持ちよさそうに寝ていたのでベッドに運びました。勝手に部屋に入ったことをお許しください。 スミキ』
「……別に、そんな……こ……と……?」
ブランの頭の中に寝る寸前までの記憶が蘇る。
「〜〜〜〜⁉︎」
なんかとてもスミキが気になってもたれかかったらその呼吸と暖かさになんだか安心して眠くなってきちゃってそのまま寝た⁉︎
そ、そんな、そんな、恋人みたいなこと……!
「うわああっ!クソ、クソッ!何してんだアタシは!何考えてたんだぁぁ〜ッ!」
枕をバンバン!と布団に叩きつける。破れた枕が羽毛を周りに撒き散らしてからようやくブランは我に帰る。
「……忘れましょう。何もなかったのよ。いいわね?」
アッハイ。
そんな幻聴を聞いてからブランは荒れた息を整えて部屋を出る。
なんだかまだ顔が熱い気がするが気にしない。
でもお礼だけは言っておかなければ。恥ずかしいとかそういうのを込みにしても運んでくれたのは事実。それは即ち労ってくれたということだ。
(そろそろ夜ご飯の時間だし、キッチンにいるかも……)
ブランはキッチンに向かった。キッチンの開いた扉から明かりが漏れている。包丁で食材を切る音も聞こえるので恐らくそこにいるのだろう。
「入るわよ……」
「あ、おはようお姉ちゃん!」
「お姉ちゃん、おはよ……」
「ロム、ラム……」
そこにはロムとラムがいた。
そして包丁を振るっていたのはスミキだった。
「おはようございます。……よく眠れました?」
「……おかげさまで……。ありがとうね、わざわざ」
「いいんですよ」
クスクスと笑ってスミキは微塵切りにした玉ねぎをひき肉と卵が入ったボウルの中に入れた。今日はハンバーグだろうか。
「ねえねえ、執事さん!私もされたい!」
「お姉ちゃんばっかり……ズルい……」
「こらこら、料理中だから触るのはダメ。話すのはいいから」
「はぁい。でも、憧れるもん!」
「お姫様みたいだった……」
「…………?」
ブランは妹達が言っていることがよくわからなかった。一体何をされたがっているのだろう。私がされたことといえば……特に、ないはずだ。少なくとも妹達が見ていた時は。
「でも2人にもしたよ?2人がお昼寝した時には、僕も君達を運んだけど……」
「起きてる時がいいの!」
「今、して……」
「いいの?手、ベタベタだよ?ほれ〜」
「きゃ〜!来ないで〜!」
「逃げろ〜……」
スミキがベトベトになった手を見せつけるとロムとラムは笑いながら逃げてブランの陰に隠れる。
「2人はさっきから何を言ってるの……?」
「だから、お姉ちゃんみたいなことされたいの!お姉ちゃんも覚えてないの?」
「だから、何を……?」
「お姫様……抱っこ……」
「…………あ?」
今、信じられない単語が聞こえた。なんだって?ウチの姫様が1番カワイイ?ケリ姫?ピーチ姫?恋のヒメヒメぺったんこ?
「おい、ロム。もう1回今の言ってみろ」
「お姉ちゃん?目が怖いよ……?」
「いいから!」
「ふぇ?だ、だから……私達もお姫様抱っこされたいって……」
「………これはどういうことだ?スミキィ」
ブランの目は赤く光って獣のような吐息を吐いていた。
だがスミキは肉をこねていてそれに気付かない。
「ブラン様を運ぶ時にその運び方で運んだんですよ。そこをちょうど起きたロムちゃんとラムちゃんに見られて………っ⁉︎」
「お前が挽肉になる覚悟は出来たかッ⁉︎」
「うおおおっ!」
ブランの振り下ろすハンマーを両手を組んで止める。
「ぼ、僕は食べても美味しくないですよ!」
「うるせえ!だったら生ゴミとして捨ててやらあ!」
「し、執事さん……!」
「お姉ちゃん、やめて〜!何をそんなに怒ってるの〜⁉︎」
「ほ、ほら、2人もそう言ってることですし、ここは1つ……!」
「お前が潰れればそれでお終いだっ!」
「ぼ、僕はまだ潰れるわけにはいかないんですけどっ⁉︎」
「るせえっ!生意気に力入れてないでさっさと潰れちまいな!」
「お姉ちゃん、ストップだってば!これ以上は執事さんが本当に潰れちゃうよ〜!」
「だ、誰か……助けて……!」
今日もルウィーは平和です。
ノワールのフラグを立て、ブランのフラグを立てた。
ブランの変身後の一人称ってワタシですかアタシですか。それとも俺?
話の時系列は『ラステイションでみんなを救出』→1日後→『ネプテューヌ特訓開始』→1日後→『ミズキ執事化』→4日後→『ネプテューヌ特訓終了予定』です。