超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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はい、1話終わり。長すぎやしないすか?


ノワール

ふふっ、また失敗ね。

 

アナタはいっつも失敗ばかり。

 

アナタはいっつもミスばかり。

 

さあ、いつもの選択よ。

 

アナタが切り捨てるのは、ノワール?それともワタシ?

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「消えなさい!」

 

ノワールが振るう剣がモンスターを一撃で切り伏せる。

そしてノワールはすかさず後ろの敵に注意を向ける。

後ろの敵が振り下ろす剣をノワールは右手で剣を持って受け止めた。

 

(よし、怪我は大丈夫……!)

 

もう痛まない。これならもう大丈夫。

 

「はあっ!」

 

返す刀でモンスターを切る。

ノワールはこれを繰り返して洞窟を奥へ奥へと進んで行っていた。

そしてその洞窟も、もうすぐ終わりを迎えようとしていた。

 

「行き止まり?……ハズレかしら」

 

こんなことを言っては不謹慎だが……実はノワールはミズキと戦ってみたかった。

それは女神のプライドとか、単純な興味とか色々あるのだが、やはり興味が大きい。ネプテューヌに圧勝するほどの実力をノワールは確かめてみたかった。

 

「今日はこれで打ち止めね」

 

残念だが。ネプテューヌにもミズキはいなかったと伝えよう。

 

「グルルルル………」

 

「っ⁉︎まさか!」

 

帰ろうと振り返ったノワールの目の前にはボロボロのドラゴンが立っていた。

片方の羽は千切れ、片腕は失われ、片目も潰れている。そして何より体が赤黒い。

 

「アンタ、この前の!」

 

ノワールがエンシェントドラゴンを覚えていたようにエンシェントドラゴンもまた、ノワールを覚えていた。

怒りを晴らすように、エンシェントドラゴンは雄叫びをあげる。

 

「グオオオオオオオオーーーーッ!」

 

「くっ……!うるさいわね……っ!」

 

エンシェントドラゴンの雄叫びで洞窟が揺れ、パラパラと小石が落ちる。

エンシェントドラゴンは残った左腕でノワールを叩こうとするが、ノワールはすかさず後退して避ける。

 

「まだまだイキがいいじゃないの!」

 

ノワールは剣を握り直してもう1度右手の感覚を確かめる。イケる、十分!

素早くノワールはエンシェントドラゴンの右手側に回りこむ。エンシェントドラゴンの右手は切り落とされているためだ。

 

「もらったっ!」

 

横からエンシェントドラゴンに斬りつけようとするとエンシェントドラゴンの頭に小さな竜人が飛び降りた。その体、体につけている骨の兜や爪までもが赤黒い。

また、EX種⁉︎

 

「キュウッ!」

 

竜人がエンシェントドラゴンを守るようにノワールの懐に入り込む。そしてノワールのガラ空きの腹にタックルを叩き込んだ!

 

「あうっ!」

 

プロセッサユニットが消えてノワールは吹っ飛ばされる。そして洞窟の行き止まりの壁に打ち付けられた。

 

(何よ、このパワー……っ!)

 

痛みで動けない。起き上がろうとするノワールをエンシェントドラゴンの左手が押さえつけた。

 

「うあっ!あああっ!」

 

ギリギリと体が岩に押し付けられて圧迫される。力を込めて引き離そうとした矢先、ノワールを不思議な感覚を襲う。

まるで体と魂が分離するような感覚。その脈動がノワールの耳にはっきりと聞こえた。同時に、ノワールの体が光り始めた。

 

「え⁉︎ウソ、変身が……!うああっ!」

 

変身が解けて元の姿に戻ってしまうノワール。ノワールはますます強く壁に押し付けられる。女神化していない姿では、保たない!

 

「アクセス、アクセス!なんで、くううっ!」

 

そのノワールの耳に、不思議な言葉が聞こえた。まるで、頭に直接響くような声。ノワールは頭の中を虫が這いずり回るような感覚を覚えた。

 

あら。モンスターばかりだと思っていたけど……これはまた美人さんが来たものね。

 

「ああっ、何よ、この声……!くうっ!」

 

ちょうど良かった。そこの美人さん、その体をちょうだいよ。助けてあげるから。

 

「な、なに、を……!うああっ、あっ!」

 

ついにノワールの骨がミシミシと音を立て始めた。このままでは、潰される……!

 

我慢しないで。拒んじゃワタシが入れないわ。入れて、ね?助けてあげるから。

 

「黙、って……!」

 

凄く不快な声。両手が自由だったならノワールは今、すぐにでも耳を塞いでいたことだろう。

だがその言葉は甘ったるい。蛇のような甘言はノワールの心の扉を開けようと毒を流し込んでくる。

 

お願い………入れて?

 

「………っ、イヤァァァァァッ!」

 

その時、エンシェントドラゴンと竜人は気付けなかった。ノワールを倒すことに夢中になっていたのか。

 

黒い影が洞窟を縫うように動いて背後まで迫っていることに、気付かなかった。

 

《ノワールを、離せ……っ!》

 

「グアアッ⁉︎」

 

背中のユニットのウイング、その内側の2連装リニアガンが同時に火を吹く。

それはエンシェントドラゴンの顔面に当たり、エンシェントドラゴンはたまらずバランスを崩して倒れた。

 

「あうっ」

 

ノワールは押し付けられていた手から解放されて膝をつく。

黒い影はノワールに向かって両手からアンカーを射出する。それは力なく膝をついたノワールの両肩にくっついて引き上げる。そして黒い影はノワールを空中で抱きかかえて着地した。

 

《ノワール、無事⁉︎》

「ミズ……キ………?」

《………!良かった、怪我はない⁉︎》

「だ、大丈夫……、だけど……力が、入らない……」

 

エンシェントドラゴンのダメージが大きすぎる。いや、それだけではない。それ以外の、何かが……?

 

「ミズキ」

《わかってる、切り捨てろって言うんだろ⁉︎》

「答えは決まっているな?」

《もちろんだ!》

 

ミズキの機体の名は(ノワール)。ストライクの強化改修型であるストライクEにノワールストライカーを装着した、ストライクノワール!

『パワーエクステンダー』という新たなバッテリーを搭載し、装甲もかける電圧によって強度が変更できる(V)ァリアブル(P)ェイズ(S)フト装甲になっている。

生まれ変わったストライクはVPS装甲を漆黒に染め上げ、今ノワールを救いに来たのだ。

 

ストライクはノワールをそっと地面に寝かせる。

 

《少しだけ、待ってて。すぐやっつける!》

「ダメ、あいつは強いわ……!アナタだけでも、逃げて……」

《そんなこと、出来ない。それに、あんな奴ら、僕の敵じゃないさ》

 

ストライクは腰のビームライフルショーティーをそれぞれ両手に持つ。ビームライフルショーティーはその名の通り、銃身を拳銃レベルまで切り詰めて連射性と取り回しを強化したものだ。

それを指に通してクルクルと回し、それを両方手の甲を上にしてエンシェントドラゴンへと向けた。

 

《そうだ、あれくらい……!》

 

 

ーーーー『戦闘部隊』

 

 

《障害、認められない………!》

 

 

【挿絵表示】

 

 

上半身、下半身ともに黒を基調とした色合い。足の白部分も微かに灰色じみている。ツノと肩の黄色が目立つ機体。

その背中は頼もしい。胸の奥から温まるような安心感。ノワールはそれを感じていた。

 

(カッコ……いい………)

 

そんな場違いな感想を抱くくらいには。

 

「キュウウッ!」

「グガアアアアッ!」

 

猛る竜人とエンシェントドラゴン。竜人は地面を飛び回って接近し、エンシェントドラゴンは爪を振り下ろそうとしている。

 

《遅い………!》

 

ストライクはビームライフルショーティーをそれぞれに向ける。そしてそれを連射し始めた。

 

「ガアアッ⁉︎」

「キュウッ!」

 

エンシェントドラゴンはその大きい図体のために連射を食らってしまう。大したダメージではないものの、牽制にはなっている。

竜人は逆に全ての弾を避け切っているものの、ストライクに近付けない。

両手に持った拳銃を別々の相手に向かって撃てるなど、そうそう出来ることではない。

人間、それぞれの手を四角と三角に動かすことすら難しいというのに。

たかが牽制でも、ノワールはミズキの戦闘能力の高さを感じていた。

 

「キュウッ!」

 

竜人は痺れを切らしてストライクに向かって接近し始める。弾幕を避け切って多少の被弾には怯まずにストライクに飛びかかった。

 

「キュウウウッ!」

「っ、ミズキ、危ない!」

 

そいつのパワーはとんでもない。小さい体でありながらそのパワーはそこらのモンスターを軽く越えるほどだ。いくら装甲が硬いと言っても衝撃までは防げない。吹き飛ばされてしまうだろう。

 

《動きが単調だよ》

 

ストライクは右手のエンシェントドラゴンを撃っていたビームライフルショーティーを捨てて背中のウイングの外側からフラガラッハ3ビームブレイドーービームエッジ内蔵型大型対艦刀ーーを引き抜く。

そしてそれを指の間に挟んで掌からアンカーランチャーを竜人に向かって発射した。

 

「キュウッ⁉︎」

 

《飛んじゃ身動きも取れないでしょ……⁉︎》

 

アンカーで引き寄せられる竜人。それはまるで右手に持ったフラガラッハに引き寄せられるようにーーーー。

 

「ギュッ⁉︎」

 

ドスリ。

逆手に持ったフラガラッハが竜人の腹を貫く。

 

《…………………》

 

「ギュ、ギュウウ……」

 

まだ動こうとする竜人。その傷口に左手のビームライフルショーティーの銃口を押し付けた。

 

「ギュウウゥゥゥ⁉︎」

 

フラガラッハを突き刺したままビームライフルショーティーの弾が連続で打ち込まれていく。

連射を続けるうちに竜人は光になって消えた。

 

「グガアッ!」

 

エンシェントドラゴンが雄叫びをあげる。ストライクは左手のビームライフルショーティーも捨ててもう1本のフラガラッハを抜いた。

 

《君に、ノワールはやらせない……!》

 

エンシェントドラゴンが左手を振り下ろしてくる。

ストライクは掌からアンカーランチャーを天井に向かって撃ち出す。アンカーはストライクを引き寄せて空中へと浮かせ、エンシェントドラゴンの爪を避けた。

ストライクは天井に張り付いて2連装リニアガンを連続で撃ち込む。

圧倒的な速度のそれをエンシェントドラゴンは狭い洞窟では避けられない。エンシェントドラゴンの体にリニアガンの弾が当たって爆発する。

 

「グアッ⁉︎」

 

《いくよ、ラスト……!》

 

ストライクは洞窟の壁を蹴ってエンシェントドラゴンに急接近する。

そしてその勢いのまま、フラガラッハで切り抜けた。

 

「グアアッ!」

 

《まだだっ!》

 

さらに折り返してもう1度。

そしてその勢いのまま距離を取りつつ反転。まだ残っていた右目に向かってフラガラッハを投合する。

 

「グアアアアアアッ⁉︎グアッ、グアッ⁉︎」

 

命中。

さらに刺さったフラガラッハに向けてリニアガンを乱射する。それはフラガラッハに命中してフラガラッハごと爆発した。

 

「グアアア!ゴオオオオッ!」

 

(な、なんて………)

 

美しい戦いなのだろうか。美しく、華麗で、それでいて優雅。あんな戦い、ノワールにはとてもじゃないが出来ない。

ノワールは上半身だけを起こしてストライクの動きを吸い寄せられるように見ていた。

それに感想を言うならばーーーそう、カッコいい。それに尽きる。

 

ストライクはノワールの元に着地する。目の前では光を失ったEXエンシェントドラゴンが暴れまわっている。

 

「トドメは、ささないの……?」

《……放っておいても、アレはもう終わりだ》

 

それより、と振り向こうとしたストライクに天井から石ころが当たる。

その原因はエンシェントドラゴンが暴れまわってそこら中の壁に衝突しているからだ。そして、その振動はさらに大きくなっていく。

 

「痛っ……!」

 

ノワールの頭に石ころが当たる。

そして洞窟の揺れはドンドン大きくなり、やがて大きな岩盤が落ちた。

 

「きゃあっ!」

《まさか、崩れるのか……⁉︎》

 

ドラゴンは依然、暴れている。このままでは、洞窟が崩れる!いや、洞窟の崩壊はもう止められない、か……!

 

「ミズキ、逃げて!」

《だから、出来ないって言ったでしょ⁉︎》

 

ストライクは掌からアンカーを伸ばしてノワールを引き寄せて抱き抱える。そして洞窟の出口めがけ加速し始めた。

 

「私を置いて行きなさい!アナタまで巻き込まれるわよ!」

《そんなことは起こらない……!君を助けて僕も脱出する!》

 

ノワールのせいで自重が重くなり、速度が減衰する。そうなれば洞窟の脱出も出来なくなるかもしれない。

ノワールはまだミズキを納得したかったがギュッと強く抱きしめられて言葉を遮られた。

 

「………ミズキ……」

 

《見えた!出口!》

 

光が差す出口が見える。

洞窟の倒壊は寸前だ。加速をかけて飛び出そうとするがその前に巨大な岩盤が落ちてきた!

 

《邪魔ッ!》

 

すかさずリニアガンで撃ち砕く。

ストライクはノワールを庇うように瓦礫に向かって背中を向ける。

そしてーーーー!

 

「出たっ!」

《っ、やった………!》

 

ストライクは洞窟から脱出した。

ストライクは草原に降り立ってノワールを降ろして変身を解いた。

 

「ミズキ………」

「良かった、ノワール。無事だね?」

「う、うん……」

 

ミズキはへたり込んだノワールの頭を撫でる。頭を撫でられるなんて子供の頃以来でノワールは顔が熱くなった。

 

「そ、そうだ、ジャックは⁉︎」

「いるよ」

「ここにな」

 

ジャックは何もない虚空から現れた。ジャックはロボットのためにミズキの変身に使う倉庫次元への立ち入りが出来るのだ。

 

「だから、いきなり消えたりしてたのね……」

 

ノワールは合点がいった。

 

「ノワール、本当に怪我はない?」

「だ、大丈………」

 

そこでノワールは以前のことを思い出す。正直に言った方がいいだろう。どんな小さなことでも。ミズキは心配してくれているのだ。

 

「……少し、左腕が痛いかも」

「見せて」

 

エンシェントドラゴンに押し付けられた時の左腕が痛んでいた。

おとなしく言われた通りに左腕をミズキに見せる。その腕からは切り傷なのか、皮が破けて血が出ていた。

 

「消毒するよ。ちょっと痛いかも」

「痛っ………!」

「クスクス、我慢してね」

 

ミズキは倉庫次元から取り出した消毒液をノワールの傷口にかける。そして脱脂綿で血を拭き取った。

そしてその周りを丁寧に包帯で巻いてくれる。その動作の度にミズキの手の体温をノワールは感じて気恥ずかしくなった。

ふと、ノワールは自分の胸の奥から響く脈動を感じる。洞窟内で感じた脈動とは似ても似つかない、心地よい脈動。少し早めのそのリズムがノワールの体温を上げていった。

 

(なに、これ………?)

 

ノワールがその脈動を不思議がっているうちにミズキの治療は終わった。

 

「それじゃ、僕はもう行かなきゃ」

「え?そ、そんな……」

 

ノワールは自分の感情が信じられなかった。

ネプテューヌとかネプギアのために止めたのならわかる。だが今ノワールは自分の感情でミズキを引き止めてしまった。

 

「ここでやるべきことがあるんじゃないの……?」

「………もう、終わったよ。正確には、出来なくなったかな」

「え……?」

「どちらにせよ、もう君とも別れなきゃいけないみたいだ。ごめんね」

 

またミズキが頭を撫でてくれる。

自分の感情がコントロール出来ずにノワールは戸惑う。

頭を撫でてくれた途端にさっきまでのマイナスの感情は吹き飛んでプラスの感情が湧きだしたからだ。

 

「……ナスーネ高原にみんなが倒れてる。みんなを介抱してあげて」

「え?ちょ、それってどういう……」

「またね、ノワール。必ずまた、会いに行くよ」

「ミズキ!」

 

ミズキは走って森の奥へと消えていく。ノワールは座ったまま追いかけることができなかった。

胸の中に今まで感じたことのないほどの喪失感が生まれる。ノワールはその正体を確かめたくて、唇にそっと人差し指を当てた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

それを木の陰から見ていた者がいた。2人ともローブを被っていて顔は分からないが、1人がそのローブのフードを外した。

そこには小さな真っ黒い二足歩行のネズミがいた。

 

「まさか、崩壊してしまうとはな。おい、ネズミ。お前の図体なら入れるだろう?」

「はあ、仕方ないっチュね。報酬、弾んでもらうっチュよ」

 

ネズミの手には何かのレーダー。それはある1つの点を示していたーーー。




次回予告

「アナタが新しい執事ね」

舞台は白の国、ルウィーへ。ミズキは変装してルウィーの教会へと紛れこむ。

「私も強くなる。ミズキに借りを返すの」

ネプテューヌ達の旅はノワール達を加えてより賑やかに。そしてその一行もまた、ルウィーに向かっていた。

「よろしいですのね?この計画を公開すれば、世界に革命的な変化がもたらされますわよ?」

そしてブランとベールが企む計画とは。

ルウィーで起こる大騒動。雪の降り積もる中を、1機の翼が駆け抜ける!

「ターゲット、ロックオン。……破壊する!」

ーーーー

相変わらず寒い。
前格射撃派生。

「障害、認められない…!」はガンダム界でも屈指のカッコいいセリフだと思います。

それと、ガンダムが好きな方は気軽に話しかけてきてほしいです。感想でも、メッセージでも。僕の周りにはガンダム好きな友達がいないのでガンダムの話ができないのです。気軽に、話しかけてください。
ネプテューヌ好きな人も然りです。このクソにわかが知ってることは少ないですけど、話したいんですよね。ロムラムが好きな人いらっしゃい(変態

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