超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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過去の希望

 

《よくも!みんなを!》

「……っ!」

《許すもんかぁぁぁっ!》

 

Vsが連続で叩きつけてくるビームサーベルを受けながら後退する。

距離を取れば飛んでくるファンネルを避け、ビームサーベルには太刀で応戦する。

 

《なんで傷つけた!なんで!》

「んっ、く!」

 

"エクリプス"を避けて自由自在に動く太刀ーーーソードファンネルーーでVsを牽制する。

しかし堅牢な装甲に守られたVsはソードファンネルなど手で弾き飛ばし、真っ直ぐ向かってくる。

 

《どうして傷つかなきゃいけなかった!》

「あっ!」

 

Vsのタックルがネプテューヌに当たり、ネプテューヌが吹き飛ばされる。そのネプテューヌにファンネルが狙いをつけた。

 

《なんか言えよぉぉぉぉぉぉっ!》

 

連続でファンネルがネプテューヌに集中砲火を浴びせる。

しかし、着弾の煙が晴れるとそこには3本の太刀を交差させてファンネルの攻撃を全て防いだネプテューヌがいた。

 

「っ、く……!」

《なんで、なんで黙ったまんまなんだよ……!》

「…………」

《腹立つんだ、そういう態度ッ!》

 

ビームサーベルと太刀でぶつかり合う。ギャリギャリと火花を散らしながら互いに見つめ合う。

Vsが見るネプテューヌの目は退くつもりのない目をしていた。強い決意に満ちている目、決して負けるつもりはない目。そのくせして、敵意のない目……!

 

《なんで、なんでそんな目が出来るんだ!?》

「………!」

《なんなんだよ、君はァッ!》

「……私は………」

 

Vsのビームサーベルが弾かれた。

 

《………!》

「私はアナタを受け止めたい……!」

 

ネプテューヌの太刀がVsの胸に浴びせられる。

しかしVsは吹き飛んだものの、装甲は断ち切れない。

 

《ブレードビット!》

「ファンネルっ!」

 

ブレードビットとソードファンネルがぶつかり合う。

その合間を抜けてネプテューヌがVsに向かっていった。

 

「怒る理由は、わかる……!」

 

ネプテューヌの太刀とVsのビームサーベルは幾度となくぶつかり合い、その度に鍔迫り合う。

 

「でもアナタが、怒る以上に悲しんでいるから!」

《っ、わかったふうな口をきくなああああっ!》

 

Vsが強引にネプテューヌを吹き飛ばす。

 

《悲しんで何が悪い!?》

「悲しみに悲しみでぶつかったってしょうがない!だから私はアナタを受け止めたいの!」

《違う!僕は君を悲しんでなんていない!僕は君に怒ってるんだッ!燃え上がるほどにィィッ!》

 

ネプテューヌに無数のファンネルが飛んでいく。ネプテューヌは全てをかわし、再びVsに向かっていく。

 

「でも、私は!」

《何が受け止めたいだ!僕は君にそんなこと少しも望んでいないッ!》

「だって!アナタの悲しみが胸を打つの!この締め付けるような悲しみは……アナタのものでしょ!?」

《ああそうさ!けど、君は怒りも感じられるはずだッ!》

 

ネプテューヌの太刀が届く前にVsの拳が腹にめり込んだ。怯んだネプテューヌにビームサーベルが振り下ろされる。

 

「っ、く!」

 

寸前にソードファンネルが割り込み、斬撃を防ぐ。そしてネプテューヌは蹴りで間合いを取り、また近付いていく。

 

「感じる……感じるわよ、全部……!胸が痛いから……わかってる……!」

《なら!もう近付くなよォッ!》

「でも!」

 

ネプテューヌとVsがまたぶつかり合う。

今度はネプテューヌがぶつかった瞬間に反作用で間合いを取り、Vsの腕を蹴りあげる。

 

《ンッ!》

「お願いよ、ミズキ!」

 

そのままネプテューヌがVsに密着する。それはまるで抱きつくようでもあり、寄り添うようでもあった。

 

《離せぇぇっ!》

「っ、ああああっ!」

 

ネプテューヌの肩にビームサーベルが突き刺さる。しかしネプテューヌはその突き刺した手の上にそっと手のひらを重ねた。

 

「お願い、ミズキ……感じて……!」

《誰が、君の想いなんて!》

「そうやって目を閉じてちゃ……!耳を塞いでちゃ気付けないことがたくさんある……!」

《今更新しく知ることなんてないッ!君が、君達が!みんなを、傷つけた!それで十分なんだッ!》

「お願い、ミズキ……!」

《うるさいッ!》

「ああああっ!」

 

さらに深くビームサーベルがねじ込まれ、ネプテューヌの肩が焼け爛れる。

 

《僕は!君達を叩き潰さなきゃ気が済まないんだッ!》

「私は……!そんなことない……!」

 

ネプテューヌの体の節々の赤いラインが緑に輝く。それだけでなくさらに輝きを増し、緑のラインはまるで血管のように枝分かれして体中に広がる。

 

「どれだけ傷つけられたって……!」

《なんで、なんでッ!訳が分からないッ!君はさっきから、僕の質問に全然答えてくれないッ!》

「ずっと、答えてるわよ……ミズキ……」

 

ネプテューヌを中心にして緑の光が2人を包み込む。

ミズキを包む鋼鉄の装甲は消え、お互い裸で心と心をさらけ出す。ミズキが見たネプテューヌの顔には涙が浮かんでいた。

 

「君……も……悲しんで……」

「やっぱり……アナタも泣いていたのね、ミズキ……」

「こんなっ……こんな、回りくどいことしなくたって!」

「私、これまでで学んだことがたくさんあるわ」

 

ネプテューヌがそっと自分の胸に手を当てる。

 

「言葉って意外と不便で……頼りないわ。アナタになにか伝えたくても……多分、時間が足りなくなっちゃう」

「でも、心で想うだけじゃ伝わらない……だから……!」

「きっと、伝わるようにしたかったのね。限りある時間の中で……人は全部伝えたかった」

 

今度はネプテューヌはミズキの胸に触れる。そして静かに目をつぶった。

 

「私の気持ち、伝わるでしょう?本当は何もかも誤解で……戦いたくなんてない」

「………」

「でもアナタの気持ちも伝わるわ。やっぱり、許せないわよね」

 

ネプテューヌが少し力を込めてミズキの胸を押すと2人の距離は段々と離れていく。

 

「僕は……僕は偽物なんかじゃない!確かにここにいて、みんなと共にいた!」

「ええ、わかるわ。だから抑えられない怒りも、悲しみも……全部私が受け止める。アナタの罪も……私が背負うわ」

 

緑色の空間が消えた頃には2人の距離は離れていた。

ネプテューヌのスーツは緑色のラインが入った部分からまるで侵食するかのように結晶のようなものがはみ出ている。そのままネプテューヌは太刀を持って微笑みながらミズキを見据える。

 

「さあ、ミズキ。気が済むまで」

《……違う……!君がしたいことはそんなことじゃないッ!》

 

Vsはビームサーベルを引き抜いてネプテューヌを睨みつけた。

 

《この先に!僕の先に、待っている僕がいるんだろ!?なら、来てよ!君は僕を何としてでも倒さなきゃいけないはずだ!》

「ミズキ……」

《自分の業は自分で背負う……!君は君の業を背負えばいいんだ!》

「……わかった」

 

ネプテューヌは太刀を構え直した。

 

《ここから先は、僕と君の感情のぶつかり合いだ!どうやっても交わることない、僕と君の……!》

「……どうしようもない、仕方ない、のね……」

《僕は死んでいったみんなのために!君はみんなを死なせないために……!》

「なら、手加減はなしよ。全力でアナタを叩きのめす!」

《望むところだっ!》

 

ネプテューヌとVsがぶつかり合う。

互いにファンネルはもう使わず、剣と剣とのぶつかり合い。しかしその勝負はVsに分があった。

 

「っ、はああああっ!」

《だああああっ!》

 

ネプテューヌは肩を傷つけられ、さらに太刀ではもろに当たってもVsの装甲を貫くことが出来ない。対してVsの斬撃は当たれば確実にネプテューヌの体力を奪う。

しかし、ネプテューヌにも意地がある。

 

「だあああっ!」

《ぐ、うあっ!》

 

さっき斬撃を食らわしたところに寸分違わずに攻撃を与え、フレームにまで太刀を届かせる。

しかしそこまで踏み込んだネプテューヌは引ききれず、ビームサーベルの斬撃を浴びる。

 

《はああああっ!》

「く、ああああっ!」

 

怪我をした方の肩を必死に動かし、腕でビームサーベルを受け止める。そしてVsの首のすぐ横に太刀を突き刺した。

 

《ぐうううっ!》

「はあっ、はあっ、負けられない……!」

 

互いに間合いを取った2人がぶつかり合い、また離れる。そのうち2人は示し合わせたように大きく距離を取った。

泣いても笑っても、このすれ違いで勝負がつく。

最後まですれ違うしかなかった2人は最後までぶつかること無くお互いに向かっていく。

 

《勝つのは、僕だァァァッ!》

「ゲイムギョウ界の……ミズキのためにッ!」

 

2人の距離は一瞬で詰まる。お互いに腹を切り抜けるつもりで……相打ちでも、仕留めるつもりで。

2人がすれ違う瞬間だった。

 

「ミズキっ!?」

《………!》

「たあああああっ!」

 

2度斬撃が加えられた傷口にまたネプテューヌの太刀がめり込み、袈裟斬りにVsが切り裂かれる。

ほんの一瞬だけ残された意識の中でミズキは静かに目をつぶって魂を手放した。

 

「っ、はっ!はっ、はあっ!くっ……!」

「どういう、ことだ……これは……」

 

Vsの視線があった場所にいたのはジャックとイストワールだった。

Vsの記憶ではジャックは死んだはず、すれ違いざまの一瞬で自分の記憶とこの世界との矛盾を知り、Vsの刃は揺らいだ。

 

「どういう事だ!?アレは、確かにミズキだ!」

「……全部、全部夢だったのよ……」

 

機体の残骸は未だに消えない。だがそこに残る魂はもうなかった。

 

「でも、夢の中の4人にも……魂は、あった……!」

 

ネプテューヌがボロボロと涙を流す。

本当なら戦いたくなかった。でも相手が戦いを望んでいて、だとするならば倒すしかなかった。

彼ら彼女らから見れば……自分は、完全に悪だった……!

 

「ネプテューヌさん……」

「……いーすん、ジャック、みんなを起こして……最低限でいい、回復させてあげて」

 

全員重症だ。

動けるのはネプテューヌだけ、しかしもう戦えるだけの力は残っていない。それでも、いく必要がある。

死んでいった彼らの魂のためにも、行かなければならない。

 

「ミズキのところへ……あのコロニーへ」


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