超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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襲いかかる伝説

Vsの装甲の赤い発光が落ち着いて本来の青い装甲を見せた。

リミッター解除に等しい爆熱機構「ゼノン」はいつまでも使える代物ではない。大きな負荷がかかる武装のために長く使っていては逆にパフォーマンスは悪くなる。

 

《みんな!》

《準備は出来ている》

 

ゼノンがブースターユニットを使って急速接近してきた。

そのまま回し蹴りをしてくるゼノンとネプテューヌの太刀がぶつかり合う。

 

(硬い!)

 

しかしネプテューヌの太刀と思いっきりぶつかったのにも関わらずゼノンには傷一つない。まさに体は鋼鉄、並大抵の攻撃では痛くも痒くもあるまい。

 

《ふっ……!》

 

そのまま反作用を生かしてゼノンが回転、懐から紫色のビームの鞭、レオスクロスで薙ぎ払ってくる。

それも太刀で受けるが、太刀に鞭が巻き付く。

 

「っ!」

 

太刀を持っていかれそうになったところを何とか耐える。お互いに引っ張り合うように硬直する。

 

(なんて馬鹿力……!)

 

「でも……!」

 

次の瞬間にはネプテューヌの周りにアリスファンネルが展開していた。

瞬間移動によりネプテューヌを取り囲むアリスファンネル。ゼノンがネプテューヌの動きを止めた瞬間に行われるコンビネーション。

 

「私だって1人じゃない」

「Cファンネルっ!」

 

刃をまとうCファンネルがネプテューヌの周りに現れたアリスファンネルに切りかかる。

アリスファンネルは瞬時に瞬間移動して攻撃を避けた。

 

「離し、なさいっ!」

 

2本の太刀がゼノンに向かって飛んでいく。

レオスクロスを緩めて後ろにかわしたゼノンが上に逃げるとゼノンの死角にエクリプスが隠れていた。

穴がない作戦はない。だからこそ、その穴を瞬時に埋めてしまう4人には舌を巻く。

 

《弱いヤツから順に死ぬ……って言うけどにゃ》

 

エクリプスが手に持った2丁のヴァリアブルサイコライフルを合体させた。

 

《じゃあ弱いヤツは死んでも仕方ないのかにゃ?》

 

クロスバスターモード。

貫通力と威力を高めたビームの弾丸を太刀を3本交差させて防ぎきる。

 

「うくっ……!」

 

衝撃で2本の太刀は遠くへ吹き飛んでしまう。

しかしまだ追撃は続く。上に飛んだゼノンがビームサーベルを下に向けて落下してきた。

 

「うあっ!」

 

太刀で受けたが受け止めきれずにネプテューヌが回転して吹き飛ばされる。

そのままデブリにゼノンはビームサーベルを突き刺し、粉々に砕いてしまった。

 

《ンなわけないに、決まってんでしょッ!》

 

アイオスがネプテューヌに向かっていく。

2本のビームサーベルを束ね、出力をあげた状態で切りかかっていく。

その前にネプギアが立ちはだかり、M.P.S.Lとビームサーベルがぶつかり合った。

 

「……っ!」

《だあッ!》

「ああっ!」

 

ネプギアも吹き飛ばされた。

ネプテューヌとネプギアがぶつかってしまい、2人の位置が重なった時にはエクリプスが狙いを定めている。

 

《避けきれにゃいよ》

 

空間制圧兵装エクリプスクラスターを使う。

オプションパック左側のコンテナを2発射出、そこから放たれる無数のミサイルの雨あられが2人に向かっていく。

 

「く!」

 

ネプギアがM.P.S.Lのビームを発射するが焼け石に水にもならない。

おびただしい量のミサイルの千分の一も減らせていないだろう。そしてこれだけのミサイルの空間制圧からは逃げることも間に合わない。

 

大量のミサイルを殲滅できるのは大量のミサイルのみ。

そしてそれが出来るのは……。

 

《ん》

 

横から飛んできた無数のミサイルがエクリプスクラスターのミサイルを次々と撃ち落としていく。

その爆炎の中を抜けてくるミサイルもあるが数は少ない。ネプテューヌとネプギアは難なく避けきってみせた。

 

「あの程度……軽いわよ、偽物さん」

 

ミサイルを発射した主はユニ。

口元に付いた血を腕で拭ってVsを見据えている。

 

「本物の……足下にも及ばないわね」

 

Vsがブレードビットを連結、回転させて投げつける。

ユニがすかさずメガビーム砲を命中させるが、ブレードビットは傷一つない。軌道は少し逸れたもののすぐに修正され、ユニに向かってくる。

 

そのユニの前に青白いゲートが現れた。

まず最初にソードビットが現れ、次に量子テレポートでノワールが現れる。

青白い粒子は次第に形になってノワールを形作り、GNソードⅤでソードビットを弾き飛ばす。

 

「ノワール!」

「あの程度で……っ!女神を舐めんじゃないわよ!」

 

戦闘に参加できるものの、2人のダメージはやはり大きい。満身創痍というわけではないが連戦に次ぐ連戦、癒え切らない傷も多い中、このダメージは堪える。

ユニは左腕が使えそうにない上にIフィールドジェネレーターを潰された。ノワールは右肩を押さえているし、GNソードⅣを叩き切られている。

 

Vsはブレードビットを持って両手に持ち、二刀流のように構える。

片腕しか使えないノワールとユニに向かって飛翔しようとしたVsは横から飛んでくる影に相対した。

 

《っ、君まで……!》

「アナタ達がどれだけの死線をくぐり抜けてきたか知りませんけど……!」

 

ベールだ。

槍を両手に持ち、Vsを超える突きの素早さで攻撃を叩き込む。

 

「私達はみすみす負けるつもりはありませんのっ!」

 

目にも留まらぬ突きを繰り出すベール。Vsは全て弾き切っているが、反撃を繰り出す暇などない。

すぐにエクリプスがライフルをベールに向けたが、横から迫る高エネルギー反応のために避けざるを得ない。

 

《カルネージストライカーを耐えるって……とんだバケモノだにゃ》

「はあっ、はあ、どっちが……!」

 

ブランのツインバスターライフルだ。

羽の中にツインバスターライフルを収納し、斧を持って襲いかかるブラン。

射撃進化のエクリプスの格闘武装は最小限。だからこそエクリプスを、彼女を守るためにゼノンが立ちはだかる。

 

「邪魔だ、どけぇっ!」

《カレンを倒したいのなら、俺を抜けてからだ……!》

 

ぶつかり合う斧と拳。

ダメージを負っているとはいえ、重い斧の攻撃をただの拳で難なく弾いている。

 

《フンッ!》

「がっ!」

 

ゼノンの拳がブランの鳩尾に入る。怯んだブランの腹に呼吸を整えたゼノンが百裂拳を叩き込む。

 

《はあああああああっ!》

 

腹にある人体の急所全てに何発もの拳を打ち付ける。鋼鉄の拳と鍛え上げられた肉体から繰り出される百裂拳はブランから猛烈な勢いでスタミナを奪い去る。

 

《るあああっ!》

 

アッパーで弾き飛ばしたブランに両手を向ける。

すると腕部のファイヤーバンカーが展開し、手のひらが炎をまとい始める。

 

《はッ!》

 

その火炎をブランに放射する。

しかし一瞬で体の芯まで燃やし尽くすほどの火炎はブランの前に現れた魔法陣から現れた氷塊で受け止められた。

 

「アイス……っ、コフィンっ!」

 

ブランをロムが受け止め、ラムが放ったアイスコフィンが火炎を阻みながらゼノンに飛んでいく。

 

「お姉ちゃん、今回復するね……?」

「ぐっ、ああ……助かるぜ」

 

ロムが回復魔法を使うとブランの腹に無数にあった拳のアザが消えていく。

ゼノンはアイスコフィンを拳で砕こうと身構えたが、エクリプスが前に出る。

 

《どけ、邪魔くさい》

《うるさいにゃ!ここは私の出番だにゃっ!》

 

肩部ビーム砲のブラスターカノンを2門同時に発射する。

高い貫通力を持つ青白いビームはアイスコフィンを砕き、そのままブラン達の元へ向かう。

 

「なっ、んっ!」

 

咄嗟に防御魔法で受け止めたが吹き飛ばされてしまった。

 

「ラム!」

「だ、大丈夫!」

《にゃは〜♪》

《まったく……》

 

かつてビフロンスと戦った英雄たち。敵になればここまで恐ろしいものだと思わなかった。

だが負けられない。この次元を守る者として、ここで立ち止まることは出来ない。

ミズキが何処かで待っているのだから。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「……ダメです。通信、繋がりません……」

「クソ……」

 

ジャックとイストワールはギョウカイ墓場を包み込んだ白い球体を見て唇を噛む。

次元ゲート……いや、もはやそう呼べる規模ではない。あの白い球体の内側にどんな空間が広がっているのか、想像もできない。

 

「アブネスが送ってきていた映像も途切れた、このままではシェアの供給が追いつかなくなる」

「ですが、これでは八方塞がりです……」

 

あの内側はどんなことになっているのか、観測すらできない。中を確かめるにはあの白い球体の内側に入るしかあるまい。

だからと言って中に入れば帰れる保証もなく、ビフロンスの胃袋の中に飛び込むようなものだ。

 

「……やるしか、あるまい」

「どうするつもりですか?」

「中に飛び込む。虎穴に入らずんばというヤツだ」

 

振り返って部屋を出ていこうとするジャックの肩をイストワールが掴んで引き戻した。

 

「ダメです、危険過ぎます」

「だが」

「どうしてもと言うのなら私を引きずって行ってもらいます」

「……ならば引っ張っていこう」

「え、え?」

 

ジャックがイストワールの手を掴んで引っ張っていく。

咎める顔をしていたイストワールはキョトンとした顔をした隙にあれよあれよと引っ張られてしまう。

 

「あ、あれ?あれ?そこは何とか踏みとどまるところでは……?」

「『ここを通りたかったら俺を倒してから行け』か?」

「いや戦う気は微塵も……って、あっ、もう、待ってください!」

 

ようやく調子を取り戻したイストワールがジャックの手を掴んで止める。

 

「ホントに危険です!中で何が起こっているのか、わからないんですよ!?」

「わかっている。だが……だがな……」

 

ジャックがモニターの向こうの白い球体を見る。

 

「行かなければならない気がしているのだ。みんなが行っているからとか、そういう理由じゃない。俺が行かなければならない、そんな理由があの中にある気がする」

「何を根拠に……!」

「根拠、か。それはないが……俺は直感を無駄にしないようにしている」

 

そう、直感に似たもので相互理解し合った彼ら彼女らのように。

 

「でも、ミズキさんも女神の皆さんも、アブネスさんまでいなくなって……、私1人で待つなんて」

「だから引っ張っていこうと言っている」

 

ぐいっと再びイストワールを引っ張る。

つんのめるようにして持っていかれるイストワール。座っている本が躓くように上下している。

 

「な、ちょ、ホントに連れていく気だったんですか!?」

「傷物にする気は無い」

「そういう問題じゃ……!って、その言葉のチョイスはやめてくださいっ!」

 


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