超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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夢の中の子供たち

ギョウカイ墓場へと飛び込んで戦いが起こっている中心部までネプテューヌ達は急いでいた。

そのネプテューヌの耳に通信音が聞こえた。

 

《ネプテューヌさん!?ネプテューヌさんですね!?》

「いーすん?どうかした?」

《どうかしたじゃないですよっ!様子を見に来たらいなくなってるし……!今どこにいますか!?まさか……!》

「そのまさかね。みんなも一緒よ」

 

ネプテューヌの後ろには女神が勢揃いしていた。そしてイストワールの大きな溜息が聞こえる。

 

《あのですね!シェアが戻ってきたとはいえ、まだ万全じゃ……!》

「それは私達もわかってるわ。でも、行かない訳にはいかないの」

《ですけど!》

「大丈夫よ、いーすん。すぐ帰るから」

《ん、んん……!もうっ!》

 

イストワールが地団駄を踏む姿が頭に浮かぶようだ。

だがいまさら止まれない。ミズキが待っているというのなら尚更だ。

 

すると中心部の方から巨大な光がカッと輝くのが見えた。

そしてそのしばらく後に白い何かがその空間を飲み込むかのように広がっていくのが見えた。

 

「なに、あれ……」

「お姉ちゃん、多分アレはミズキさんが使ってた……!」

「次元ゲート……!?でも、アレじゃまるで……!」

 

その光は止まることなくネプテューヌたちの眼前に迫る。

 

「爆弾よ……!」

 

ゴゥンという音と共にネプテューヌたちもその次元ゲートに飲み込まれた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ん……ここは……」

 

目を開けるとそこは宇宙のような世界。体を縛る重力は感じず、上下もわからない。

 

「……また、アイツが何かやったみてぇだな」

「ここ、何処なの……?」

「そもそもゲイムギョウ界なの?」

 

それすらもわからない。

ネプテューヌの耳にもホワイトノイズしか聞こえない。通信も途絶されたようだ。

 

「でも、確実にあの次元ゲートは中心部から広がっていました。ということは、ミズキ様もビフロンスも転移している可能性が高いですわ」

「そうね。何処かで戦闘の光や、音がするはずよ」

 

確実にあの2人の戦いは激戦になっているはずだ。そうであればあるほど見つけやすい。

そう考えた途端にユニが遠くでチカチカと輝く光を見つけた。目を細めてスナイパーの視力でそれを観察する。

 

「あっち、かな……。普通、あれだけの光がチカチカするのは有り得ないし……」

「大きな……なんだろう、あれ。残骸もあるし……2人の戦いの痕跡かも」

 

その方向にあるコロニーの廃墟もネプギアが見つけ出す。もっとも、コロニーの廃墟は誰にでも確認できるほど巨大なのだが。

 

「なら急ぎましょう。早くミズキをーーー」

 

 

「待てよ」

 

 

後ろから響いた声に全員が飛び退きながら振り返る。

その声に含まれた怒気、並大抵のものでは無い。だが女神たちの背中に氷柱を入れられたような冷えが走ったのはそのせいではない。

これだけの怒気が篭った声を発したのが聞き覚えのある声だったからだ。

 

「待てよ、お前ら……」

「なん、で……」

 

振り返った先にいたのは4人の男女。

そのうちの1人は……遠くで戦っているはずの、ミズキだった。

 

「逃げんなよォォーーーーッ!」

 

「っ」

 

ミズキの叫びがネプテューヌたちの鼓膜を揺らす。

その時、感受性の高い者達は気付いた。その声の中には怒りだけでなく、悲しみがある。

 

(どういうこと!?執事さんはあっちにいるんじゃないの!?)

(……違うよ、ラムちゃん。アレは、執事さんじゃない……!)

 

「許さない……許さないぞ……!よくも、みんなを、みんなを……!」

「ミズキさん?ど、どうしたの……?」

「変っ……身……!」

「え?」

「構えなさいっ、ユニ!来るわよっ!」

 

ミズキと3人の男女が光に包まれて変身する。そしてその光の中から飛び出した1機のガンダムが状況を飲み込めていないユニに向かう。

 

「っ」

「どきなさいユニ!」

 

背中からビームサーベルを引き抜いたガンダムが向かう中、ノワールがユニを押し飛ばしてGNソードIVを引き抜く。

 

《貴様ら、灰になる覚悟はできたか?》

 

両手で超高出力ビームサーベルーータキオン・スライサ一ーーを剣道の面を打つように振りかぶる。

その瞬間、タキオン・スライサーから発生したビームサーベルの長さにノワールは目を見開いた。

 

長すぎる。

高出力を示す青い刃は何度も叩き直した西洋のロングソードのように美しく、強靭。しかしその威力はこの世のどんな物体であろうとバターでも切るかのように切断してしまうだろう。

 

《くたばれ、外道……!》

「ーーーーー」

 

音もなく、GNソードIVはいとも容易く真っ二つに切り裂かれた。そのままノワールまでもが斬撃を食らい、真下に叩き落とされる。

 

「お姉ちゃんッ!」

《爆熱機構「ゼノン」……!》

 

そして光の中から飛び出した新たなガンダム。体がミズキの怒りを表すように赤く輝き、手に持った大きなライフルから分離した4基のプロテクト・ビットがガンダムの前に移動した。

 

ユニに一瞬の判断が迫られた。即ち撃つか撃たないか。

そして映るのは叩き切られたノワール。

 

……ミズキさんが、お姉ちゃんが傷つくのを許すわけがない……!

 

「うわあああっ!」

 

少し躊躇いを残したメガビーム砲の射撃がガンダムに向かう。しかし、その射撃はビットの合間に張られたバリアによって弾かれた。

 

(そんな!)

 

《シャイニング・ブレイカァァーーーッ!》

 

咄嗟に左手のIフィールドジェネレーターの盾で防御したが、それごと握りつぶされて腕を握られる。

 

「うっ、あ!」

《消えろ……!》

 

そして大爆発を起こす。

爆炎が消えた時、ユニは腕をガンダムに握られながら力なく漂っていた。

 

「ユニちゃんっ!」

「やっぱり、違う……!執事さんじゃ、ない……!」

 

ガンダムはゴミでも捨てるようにユニを放り投げた。

 

「撃とう、ロムちゃん!」

「うん、ラムちゃん……!」

 

ロムとラムの2人が背中の砲身を展開してミズキのガンダムに向ける。

 

「私達に、力を……!」

《にゃはは、あんまり冗談言わないで欲しいにゃ》

 

その2人にまた別のガンダムが巨大な砲身を向けている。ユニのメガビーム砲に勝るとも劣らない巨大な砲身は折りたたみ式の「規格外拠点攻撃兵装カルネージ・ストライカー」。

 

《テメェらが口から出すのは命乞いの言葉だけにゃ》

「……!」

「ロムちゃんっ!」

 

ラムがロムを庇うように前に出た。しかし遅い、そんなのはなんの足しにもならないのだ。

文字通り規格外のこのビームの前では庇う庇わないなど、消滅するのがコンマ何秒遅いか否かにしかならない。

 

《もっとも、許すつもりはないけどね》

 

真っ白なビームが全てを包み込む。

真っ黒な空間を照らしながら2人がそのビームに飲み込まれた。

防御など無駄、なすがままに絶大な熱量に飲み込まれた2人は照射が終わった後にボロ雑巾のように漂っていた。

 

「ロム、ラムッ!」

《ブースト》

「テメエッ!」

《"エクリプス"》

 

咄嗟にブランがツインバスターライフルをガンダムに向けて引き金を引く。

しかしそのビームはガンダムの背中に装着されたビーム砲の射撃によって掻き消された。

 

「なっーーーー」

 

「ブランっ!」

《アンタも自分の事考えた方がいいわよ》

「このっ……!」

《アリス・ファンネル》

 

大きな赤い翼を広げたガンダムから8基のファンネルが射出された。まるでガンダムを守るように周囲にふわりと展開したファンネルは白い軌道をほんの少し残して消える。

 

跳躍するこの願い(インフィニット・チェイス)!》

 

そしてまた少しの白い光の点滅と共にベールを囲むようにしてファンネルが現れた。

 

「くっ!」

 

ベールは急上昇して一斉射撃をかわしたがファンネルは瞬間移動を繰り返しながらベールに付きまとう。

 

「ううっ、この……!」

《ブースト"アイオス"!》

 

さらに6基の赤く輝くファンネルがベールの元へ瞬間移動で現れる。合計14基、それも瞬間移動によって予期せぬ場所へ移動してすぐに去っていくファンネルを目で追うことすらできない。

 

「避けきれ、ああっ!」

 

ついにベールがファンネルの包囲網に捕まった。集中砲火を全身に食らいながらそれでも後退しながら前を見るとライフルを構えた2機のガンダム。

 

《ディバインブラスタァァッ!》

円冠戴く希望の極光(ディバインシュート)!》

 

2機の後方に現れたファンネルが加速帯を形成、通常よりも遥かに威力の高い高出力のビームが向かっていく。

 

「っ、なっ……!」

 

防御魔法を構えたベールだったがまるで流星の如くキラキラとした光を散らしながら飛んでいく2条のビームは容易く防御魔法を砕く。

さらに8基のアリスファンネルが攻撃陣形を瞬時にガンダムの前で組み、強力な2本のビームをベールに向かって撃つ。

 

「っ」

呑まれる奔流の絆(ザ・アサルトフォーム)!》

 

ベールまでもが大した抵抗もできずに光の奔流に飲まれた。その勢いのままにデブリにベールが埋められてしまう。

 

「みん、なが……」

「一瞬、なんて……」

 

完全な連携だった。

息の合ったコンビネーションを3回連続で見せつけられ、さらにそれを一言の会話もなく難なくこなしている。

戦慄するネプテューヌとネプギアにゆっくりとガンダムが振り向いた。

 

《残りは、君たちだけだ……》

(わかってる!ミズキさんの偽物……だけど!)

(その強さは本物……。あの3人も予想が正しければ……)

 

恐らくジョー、カレン、シルヴィア……つまり、死んでしまったミズキの過去の仲間達。誰よりも何よりも固い絆で結ばれていた、世界を救った英雄たち。ガンダムを継いだ者達……!

 

《くたばれよ、お前ら……!》

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

そこから少し離れた戦場ではビームサーベルとエクスブレイドをぶつけ合うイブリースとアデュルトが戦っていた。

 

《理論上のみに存在する極限のガンダム……即ち、格闘、射撃、ファンネルに特化したガンダム。その名もエクストリーム》

《それを使って、みんなと戦わせてるって言うのか!?》

《アナタ達の姿と戦闘能力でね》

 

イブリースがアデュルトを蹴飛ばしていなす。

 

《みんなを弄んでるのか!?お前は!》

《別に、このフィールドが消えればすぐに消える命よ》

 

理論上のみに存在する極限のガンダムたち。理論上のみ、という言葉通りにそのガンダムたちは実現不可能なガンダムだ。

しかし、この夢のフィールドの中でだけはそのガンダムは完成して猛威を振るう。

そして夢のフィールドはビフロンスの脳内に存在する4人の子供たちの命さえも一時的に具現化させた。それも、あの4人はネプテューヌたちを仇だと思い込んでいる。

 

《ふっ、ざ、けるなあああっ!》

《私のこの手が真っ赤に燃える……勝利を掴めと轟き叫ぶ》

 

イブリースの右手が赤い光を帯びた。振り降ろされたエクスブレイドをその右手で掴み取る。

 

《っく!》

《ゴッドバンカー》

 

強烈なエネルギーがイブリースの右手で爆発を起こし、エクスブレイドを砕く。

爆風で吹き飛ばされたアデュルトだったが、すぐに体勢を立て直す。

 

「ど、どうなってんのよ、ここは……!電波が届かない!」

 

アブネスは必死に持ってきた機器を弄ってゲイムギョウ界へと電波を飛ばそうとするが繋がらない。

イストワールの通信が繋がらなくなったように、アブネスの通信もまた繋がらなくなってしまったのだ。

 

「これじゃ、ミズキへのシェアの供給は……!」

 

最悪の場合、途絶える。

そうでなくてもアブネスが戦いの光景を見せられない以上、シェアの供給は以前に戻り状況はますます不利になる。

夢のフィールドと直結して更なる力を得たビフロンスに勝つには今まで以上のシェアの供給が必要不可欠だというのに。

 

「……待って……?」

 

 

《夢のフィールド、直結……あの時の決着をつけましょう》

 

 

「あの時、アイツは直結……って言ったわよね」

 

それはリミッター解除という意味合いかもしれないし、無線から有線に切り替えたということかもしれない。

だが、ビフロンスと夢のフィールドとの繋がりが強くなったということは確かだ。

 

「この、広大な宇宙のどこかに……!」

 

夢のフィールドの発生装置があるかもしれない。

それを壊すことが出来れば……!

 

「よし、よし!探すわよ、お願い!」

 

アブネスをモビルスーツが引っ張って飛んでいく。

 

「怪しいのは……とりあえず、あそこね!あの廃墟!」

 

そしてアブネスはコロニーの廃墟へと向かっていった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

エクストリームガンダムは進化するガンダム。

膨大な戦闘データの中から経験を積むことで機体は進化し、強くなる。そして彼ら彼女らの積んだ戦闘データ、さらに今までのガンダムが積んできた経験は一気に機体を極限にまで進化させるに足るものだった。

 

格闘特化のゼノンフェース、搭乗者はジョー。

射撃特化のエクリプスフェース、搭乗者はカレン。

ファンネル特化のアイオスフェース、搭乗者はシルヴィア。

さらにそれぞれの特化し過ぎた部分を抑え、整理した完全な極限のガンダム、Type-レオスⅡVs(ヴァリアントサーフェイス)、搭乗者はミズキ。そのため、Type-ミズキと呼んだ方が適切かもしれない。

 

極限の名に相応しく、ほんの数秒で女神たちを叩きのめしたガンダム達が今、ネプテューヌとネプギアに向き直っている。

 

「……何が何だかわからないけど、誤解よ。私達は」

《みんなを殺しておいて、まだ言い訳をするのかッ!》

「違う……!だからっ」

 

この感じ、見覚えがある。

ギョウカイ墓場でミズキが怒り狂った時と同じだ。怒っているくせに、心では泣き喚いている。

ビフロンスに何やら誤解を植え付けられたのはわかるが……!

 

「戦うしか、ないの……!?」

「お姉ちゃんっ!」

 

ネプギアがネプテューヌの前に出てM.P.S.LでVsの斬撃を受け止める。

 

「っ……!」

 

考え事をしていた、確かにそうだ。だが、反応もできない速さでVsはネプテューヌにビームサーベルで切りかかっていたのだ。ネプギアがいなければ、今頃もうやられていたに違いない。

 

《どいてよ……っ!》

 

両肩にマウントされた2基のビットが分離し、ネプギアに矛先を向けた。

 

「まだ……!?」

 

ブレードビットはビームサーベルを展開して切りつけることの出来るビット。ネプギアのCファンネルの展開も間に合わない。

しかし、それがネプギアに突き刺さる寸前に2本の太刀がブレードビットを弾いた。

 

「戦うしか、ない……!」

《ファンネル……!?》

 

2本の太刀はネプテューヌが直接手を触れていないにも関わらず意思があるかのように動いてVsに切りつけにかかる。

Vsはネプギアから遠ざかって難なくかわしてみせた。

 

「戦うしか、ないのなら……!その罪は私が背負う」

 

ネプテューヌが太刀の柄を投げ捨てる。ネプテューヌが装備しているのはただ3本の太刀のみ。

そのうち1本を手に持ち、残り2本はネプテューヌを守るように宙を舞う。

 

「私達はこの夢から抜け出さなきゃいけない……!たとえ、アナタ達に意思があったとしても!」

 


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