エクシアリペアはトランザム出来たはず。………マキブとかでやれるし。
人は皆戦う。何のため?
貴方は守るためと言った。
貴方は何を守るの?
世界?
主義、理想?
家族?
友達?
結局、貴方が守りたいのは自分だけ。
ーーーーーーーー
ーーーー『Fight』
「ウソ!」
「変身した⁉︎」
私とネプギアが声を上げる。
あれって女神化⁉︎いや、あの人は男だし……神化?モンスターをストライクしそう!
「ガアッ!」
《ふっ!》
振り下ろされた爪の一撃をエクシアリペアが飛んで避ける。
そしてそのまま空中で静止した。
「飛んだ⁉︎」
「プロセッサユニットもないのに!」
エクシアリペアは右手のGNビームライフルからビームを2連射する。
両方当たったが多少怯んだだけでダメージは入っていない。
「くっ、ネプ子!私達も援護するわよ!」
「う、うん!刮目せーー」
「来るなッ!」
「!」
ジャックの叫び声に全員の足が止まる。それほどの迫力が小さい体から放たれていた。
《くっ、うっ!》
少ないスラスターでドラゴンの攻撃を紙一重でかわしていくエクシアリペア。
その一瞬の隙をついてエクシアリペアはドラゴンの足元へと接近した。
《なああああだっ!》
GNソードを展開して切りつける。
だがその刃こぼれしたボロボロの剣では『切れて』いない。肉をぐしゃぐしゃにして無理矢理引き離すような斬撃だ。
「グアアッ⁉︎」
《くっ!》
暴れたドラゴンから離れる。
足に切りつけたものの、やはり決定打にはなっていない。
《ラチがあかない!ジャック、GNビームサーベルの修復を最優先!》
「している!あと5秒!」
《トランザムの限界時間は⁉︎》
「3秒!」
《上出来!》
1度距離をとったエクシアリペアの手に小さな剣の柄が握られる。
その先からビームの刃が現れた。
《はああああっ!》
そして急接近。目指すは急所、首!
「グアアッ!」
《トランザム!》
『TRANS-AM』。
機体内に圧縮されたGN粒子を全面開放して一時的に3倍の機動力を得ることができる。
そしてその時機体は赤く輝いてーー!
《はあっ!》
キンッ……………。
「⁉︎」
一瞬だった。ネプテューヌ達には赤い軌道しか目には写らなかった。
「は、速い………!」
アイエフだけがようやくそれだけの言葉を言える。
エンシェントドラゴンの首はGNビームサーベルによって切り抜けられ、両断されていたのだ。
ドラゴンが光になって消えるのと同時にエクシアリペアの赤い光は消えた。
そしてエクシアリペアの変身は解け、ミズキの姿になる。そう、あの速さの勢いのまま、である。
「キミ⁉︎」
「ぐあっ!」
木に背中から激突してミズキは声をあげて気絶する。
「うええっ⁉︎着地失敗⁉︎0点、0点、0点!」
「お、お姉ちゃん今はふざけてる場合じゃ!」
「血もたくさん出てるですぅ!」
「とりあえず教会まで運ぶわよ!」
ーーーーーーーー
「それで、どういうことですか?」
ジャックは教会でネプテューヌ、ネプギア、アイエフ、イストワールに囲まれていた。
ミズキは教会の一室で寝ている。コンパはミズキを看病しているのでここにはいない。
「ネプテューヌさん達の話によれば、あの人は変身したとか。あなた達は何者ですか?」
「返答次第ではこのまま拘束させてもらうわ。悪いわね、今はちょっとピリピリしてるの」
厳しい目付きのイストワールとアイエフ。
女神達の式典が迫った今、テロなどに特に敏感になっている。ましてや、諜報員のアイエフなら当然だろう。無論、教祖のイストワールもだ。
「………まず、俺の名前はジャック。あいつの名前はミズキだ」
「フルネームは?」
「俺はジャック。あいつはクスキ・ミズキ」
「ミズキっていうんだ……」
ネプテューヌの頭の中にはボロボロの勇姿。少なくともネプテューヌにはミズキが悪い人には思えない。
「それと……俺達が何者だったか、か……」
顎に手を当ててジャックは考え込む。
オールバックの黒髪と尖った目。口調も相まってイケメンであることに間違いはない。体も筋肉質だし。
「そうだな……。別次元から来た、なんて言ったら信じてもらえるか?」
「別次元?」
アイエフが顔をしかめる。
「嘘をつくならもう少しマシな嘘をつきなさいよ」
「本当だ。ここの時間が俺達と同じならば、つい数時間前に時空の歪みがあるはずだ」
アイエフがイストワールに目配せをする。
「調べます。これくらいなら3日もかかりませんね」
イストワールが小さい体で受話器を取って電話をかける。そういうのを観測しているところに電話をかけているのだろう。
「そして俺達はその次元からここに来た、というわけだ。狙ってこの次元に来たわけではないし、何より俺達も次元旅行など望んではいなかったがな」
「じゃあ、なんで来てしまったんですか?」
ネプギアの素朴な疑問。
だがその質問にジャックは本当に……本当に顔をしかめた。苦渋に歪んだその顔は何かを悔やむよう。
「……俺達の次元は壊されたんだ」
「次元が、壊れる?」
「そんなことあるの?」
「ある。そのせいでみんな死んだ。みんな、だ。何もかもが消え去った」
「………………」
ジャックは依然、俯いたままだ。
「ご、ごめんなさい。私、そんなこと聞いちゃって……」
「いい。気になるのは至極当然だ」
顔を振って前を見る。その顔にはさっきの暗さはなかった。
「確認が取れました。確かに、大きな歪みが観測できたようです。今日の夜、報告する予定だったらしいです」
「………一応、筋は通ってるらしいわね」
荒唐無稽だけど、とアイエフは付け足す。
そこにコンパが戻ってきた。
「あの、私も質問していいですか?」
「構わない」
「あの傷、なんでついたんですか?切り傷、火傷、打撲、捻挫、体中ボロボロだったですぅ」
「そんな怪我してたの⁉︎」
「ああ、してただろうな」
「じゃ、じゃあなんであの時私達をーー」
ネプテューヌが食い付く。
ボロボロだったのだ。比喩でもなんでもなく。見てきたコンパはわかるが全身傷だらけで動いているのが不思議なくらいだ。傷がないところを探すのが難しいくらい。
「1つ目の質問。コンパ……とか言ったか。あの傷は戦争の傷だ」
「戦………争………」
ネプテューヌ達の頭に蘇るのは女神戦争の記憶。
「この次元に来る直前までミズキは戦っていた。ミズキの仲間もだ。そして、この次元に来てあのドラゴンの声を聞き、俺達は駆けつけた」
「駆けつけた、なんて……」
文字通り、駆けることも出来ない体だったはず。それを支えていたのは心なのか。
「2つ目。ネプテューヌと言ったな。その質問の答えはそれがミズキだからだ」
「そ、それは……」
「答えになってないじゃん!」
ネプギアが苦笑いしてネプテューヌがツッコム。
「間違っていない。自分がどれだけ傷つこうと誰かを助けるお人好し。他人が傷ついたり死ぬことを誰よりも嫌う男だ、あいつは」
「……優しいんですね」
ネプギアが少し微笑む。
ジャックも笑ったがその真逆、皮肉めいた笑みを浮かべた。
「そんなにも優しい奴がついさっきまで人の死を見てきた。そして俺達の次元の全ての死を見たんだ。………皮肉だよな」
「……………」
みんな押し黙ってしまう。
そこに控えめな優しい声が響いた。
「あの〜………」
「起きたか、ミズキ」
「えっ⁉︎」
通路の角から顔を出しているのは先程の少年、ミズキだ。
「だ、ダメですぅ!まだ寝てないと!」
「あ、看病ありがとね。君の名前は?」
「私はコンパですぅ。ってそうじゃないですぅ!」
通路からミズキが苦笑いしながら体を出す。その様に女性陣が全員顔を赤くした。
「は、裸⁉︎」
「腰巻か。俺とお揃いだな」
「やめてよ。僕はジャックと違って体が逞しくないんだから……」
掛け布団を腰に巻いた状態でその体をさらしている。だがところどころに包帯などの治療の跡が残っていて痛々しい。
「そうだ、それと………」
ミズキが体中の包帯を外していく。
その下には傷跡が一切なかった。
「え……?」
「もう治ったよ。君の看病のおかげかな」
そう言ってミズキはふふっと笑う。
「あ、ありえないですぅ!だって、あんなに傷が……」
「僕は、人間じゃないから」
「え?」
ミズキは自嘲気味に笑う。
じゃあ、お前は一体なんなのか。
それを聞く前にミズキが口を開いた。
「とりあえず、服が欲しいかな。ごめんなさい、服を貸していただけないでしょうか」
「と、とりあえず、プラネテューヌの職員の制服をお貸しします。ネプギアさん、一緒に服を買いに行ってはもらえませんか?」
「え?わ、私ですか?」
「ええ〜!ネプギアばっかりズルい!私は⁉︎」
「ネプテューヌさんは仕事です」
「そんな!モンスター退治はしたのに!」
「書類仕事が増えたんです。少しだけですから、やってください」
「ぶ〜っ、横暴だよ〜!」