超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

197 / 212
最終章〜新たな答え、これからの世界へ。きっと、平和は〜
最終決戦


「私を殺しなさい……ミズキ」

「……!」

「ゲハバーン……アナタに、託した、その、剣が……」

「できないっ!」

 

ミズキがすぐにノワールの提案を蹴った。

 

「そんなこと、できるわけがない!」

「いいから、聞きなさい……まだ、話は……」

「もう聞きたくない!その提案は、最低だ!」

「いいから……!これが、遺言になるかもしれないのよ……!?」

「遺言、なんて……!縁起でもないこと!」

「……この際、ハッキリ言っておくけど……多分、もう私……長くないわ」

「っ、もうやめてってば!どうしたんだよ、ノワール!そんな弱気になって!」

「アンタ達も……わかるでしょ……?残された時間が少ないってこと……」

 

ミズキがネプテューヌを見た。ネプテューヌは目を伏せる。

ネプギアを見た。もはやミズキの目も見れないほど衰弱している。

ユニは荒かった呼吸が弱くなってきている。

ブランは目に力がまるでない。

ロムはいつの間にか気絶していて、ラムも目を覚ます気配はない。

ベールも目が閉じようとしていた。

 

「やめて、よ……!そんな、そんな!元気出してよ!ねえ!ねえったら!」

 

ミズキがネプテューヌに駆け寄って肩を揺らした。

 

「ネプテューヌ!笑ってよ……!いつもの元気がないよ!」

「たは……ごめん、さすがの私も……今回は、ヤバい、かな……」

「………!」

「ミズキが帰ってくる頃には……多分、みんな……」

「言わないで!言わなくていい……!もういい、時間が惜しい!すぐ行ってくる!」

「……お願い……待って、ミズキ……」

「う、うぅっ……!」

 

ノワールの声が蚊の鳴くような声になってしまっていた。

ミズキはその声を振り切ることができない。ノワールに駆け寄ったミズキはその声に耳を傾ける。

 

「このまま……何もしないで死ぬよりも……アナタの助けになりたいの……迷惑しか、かけてなくて……足でまといばっかりで……今も……」

「違う!僕はノワールを足でまといだなんて、1度も!」

 

ミズキの目から涙が流れ始めた。

 

「なんで、泣くのよ……辛いのは、私、なのに……」

「ノワールが、辛いからだっ!」

「ねえ……私、最期ぐらいアナタの助けになりたい……はあっ、はあっ……私、言ったわよね……?」

 

ノワールが最後の力を振り絞ってミズキを見上げる。

ミズキはノワールに楽をさせるために顔を下にしてノワールの顔をのぞき込む。

 

「殺されるなら……アナタがいい……アナタの力になれるなら、私は……」

「ノワール……!」

「お願い……抱きしめて、そのまま……殺して……」

 

ノワールがそう言って目を閉じた。

もう気絶してしまったのか、目を閉じる力もなくなったのかわからない。

だがミズキはノワールを抱きしめて次元からゲハバーンを抜いた。

 

誰も声を出せない。

そしてその結末に手を加えることすらできない。決めるのはミズキであり、女神達だった。

 

抱きしめたノワールの唇が少しだけ動いた。その息は声にはならず、そして唇の動きは誰にも見えていなかったが、それでもノワールは最期に言いたいことがあった。

 

「好き……だっ、た……」

 

1番、この言葉を伝えたかった。1番最初に、対策なんかより先に。

どうやら遅すぎたみたいだが、言えただけ自分にしては上出来だ。

愛した人の腕の中で逝ける。だからだろうか、ノワールの心は不思議なまでに安らいでいて幸福だった。

 

ミズキはゲハバーンを右手で握りしめる。

もう音も何も聞こえない。この決意が告げる結末に誰も雑音は加えられない。

ミズキが右手を上げた。

その感触を頬で感じながらノワールは気を失った。最後までミズキの体温を感じたまま、ノワールは意識を手放したのだ。

ミズキが腕を振り下ろすまでの時間を永遠に感じる。

ジャックが、イストワールが、そして女神の中で唯一目を開いていたネプテューヌがその時間を感じていた。

 

ネプテューヌも不思議なほど冷静に自分の死を客観的に見ていた。多分、この後私もミズキに殺される。

だが、まあ、それもいいかな、なんて思っている。

ミズキの力になれる、世界も救える、嬉しいことの方が多い。きっと、みんなも同じ。

 

ーーーーああ、もうちょっとカッコいい別れ方が良かったな。言いたいこと言って、やりたいことやって……それから……。

……でも、ノワール……幸せそう……。

 

 

ミズキが右手を振り下げた。

 

 

ネプテューヌはそれに別に驚きはしなかった。当然であるかのように、それがさも望んでいたことを与えるかのようだったからだ。

だから、だろうか。ネプテューヌが驚いたのはミズキが手を振り下ろした時ではなかった。ネプテューヌが本当に意外だったのは、ノワールの命を奪おうとしていたゲハバーンが地面にぶつけられたことだった。

 

「………え…………?」

 

 

パキィィィ………ィィ………ンッ………。

 

 

軽い音を立ててゲハバーンの刀身が折れて弾け飛び、地面を滑って止まる。

もちろんノワールには傷一つ付いていないし、ゲハバーンは誰も切ってはいない。

同時に、必ずビフロンスに勝てる可能性をミズキは失ったのだ。

 

「なん……で………?」

「……これで、いいんだ。きっと、これがビフロンスの本当に最後、最後の最後の絶望の罠だった」

 

ミズキがノワールから離れて床に寝かせた。

そして手から力を抜いてゲハバーンの柄を地面に落とす。

 

「僕がここでみんなを殺して……そしてきっとビフロンスは死ぬ。けど、みんなを殺した世界で僕は……いや、誰も生きていけない。だから、緩やかに世界は絶望に包まれていくんだ」

「………」

 

ビフロンスが来た時、彼女はすぐにでも動けない女神を殺してしまうことができたはずだ。だが彼女はそうしなかった。多分、何か考えあってのこと。

 

「もう僕は間違えないよ。みんなの力が、必要なんだ」

 

ネプテューヌの視界がぼやけ始めた。もうネプテューヌも意識を保つ限界が近かったのだ。

 

「また会おう、必ず。僕がみんなを助けるよ」

「ミ……ズ………」

 

かくり、とネプテューヌの体から力が抜けた。

気絶してしまったネプテューヌの息は荒いが、多分これから段々と弱くなっていく。それまでに何か手を打たねばならない。

 

その時、開いたドアからアブネスが駆け込んできた。

 

「ミズキ、ちょっと、待ち、なさい!ふうっ……」

 

アブネスが息を整える。

 

「この状況、覆すわよ!話は聞いてたわ、もう準備は出来てる!」

「この状況を覆す、だと……?」

「ご丁寧にアイツは自分のやったことを説明したでしょ!それは多分、どうにもならないってことを理解させるためとか、そういう理由なんでしょうけど……それを逆手にとるわ!」

 

アブネスの後ろからギターを持った5pb.が飛び込んできた。

女神全員が気絶している事態に息を飲んだが、すぐにミズキに駆け寄った。

 

「ボクの力を使って。ボクも、君の助けになれるよ!」

「5pb.……」

「ボクの歌があれば、みんなの衰弱を幾らか抑えることもできる……それに、この世界のみんなに希望を思い出させるためにも!」

「ミズキ、使うわよ……あのガンダム!」

「でもアレは今の状況じゃ……」

「それを可能にするって言ってんの!いい、聞きなさい!コレがこのアブネス様が考えたプランよ!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ギョウカイ墓場でビフロンスはずっとミズキを待っていた。

完全ホーム、自分に有利な場所でしかない罠と仕掛けの張り巡らされたギョウカイ墓場でこそ、自分は最大の戦いをできるはず。

 

「………」

 

自分の後ろにいる気配にビフロンスは振り向いた。

そこには決意に満ちた目をしているミズキがいる。それを見た途端にビフロンスは表情を緩めて腕を大きく開いた。

 

「いらっしゃい、ミズキくん?私はキミを歓迎するわよ」

 

目を細めて笑う。

前に1歩ずつ進んでくるミズキにビフロンスは手を突き出してそれを止める。

 

「いい、そこより前に足を踏み入れてご覧なさい?……死ねるわよ」

 

そう言った瞬間にミズキは足を前に出した。

忠告は完全に無視、しかし罠が仕掛けられていたのは本当だった。

無数のビームがミズキめがけて全方位から飛んでくる。

 

「僕は……僕達が君に見せつける……!」

 

しかし、そのビームはミズキに触れられもせず、周辺で湾曲して遥か彼方に飛んでいく。

 

「新しい、平和の答え!変身!」

 

ミズキの体が徐々に光に包まれていく。

今までの変身とは違う、ビフロンスも未知の変身。

 

ミズキの体が透明だが光り輝くクリスタルに包まれていく。パキパキと不規則にミズキの体を覆うクリスタルはさらに手、足、頭へと伸びていく。

クリスタルが全身を覆いきった時、余分なクリスタルは贅肉を切り落とすように砕けて消えていく。

そしてクリスタルに色がついていく。その色は見る角度を変えることで虹のように変わる。

ただの光であり、紫であり、黒であり、白であり、緑でもある。

そのガンダムのフレームはすべて、シェアクリスタルで出来ていた。

 

「この輝きは……なるほど、シェアね」

 

そしてフレームの上にはルナ・チタニウム合金の装甲が重ねられる。

そのガンダムは何も持っていなかった。武器も、盾も、なにも。

だが開いた次元ゲートからガンダムはライフルを握った。アタッチメントは必要ないのだ。武器はすぐ手の届くところにあるのだから。

 

「なら私も……変身」

 

ビフロンスも変身した。

一瞬で別の物に置き換わったビフロンスのガンダムはやはり異形をしている。

灰色のVPS装甲は電気を流されることにより赤黒くなった。

 

《ガンダム……アデュルト!》

《ガンダムイブリース》

 

アデュルトがライフルを構えると同時にイブリースは腕から実体剣を伸ばす。

戦いの火蓋は切って落とされた。

 

《みんなを守る!》

《平和を掴み取る!》

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。