超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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鉄壁のトリック

ゲイムギョウ界の北も北、アイシクルホール。まるで冷凍庫の中のように冷えきったそこは壁も天井も中に入っている物資も完全に凍りきってしまっている。

そこにトリックがいることを知っていたブラン、ロム、ラムの3人は安易にそこへ突っ込むことはせず、アイシクルホールの上空にいた。

 

「何もあんな変態と顔を合わせることはないわ!倒せるなら、戦わずに倒すのが賢いんだからね!」

「いいのかなあ……?」

「速攻で倒せるならそれがいいに決まってる。そしたらミズキも助けに行けるんだ」

 

ブランが羽を散らしながらツインバスターライフルを構える。

ゼロシステムがデータを元に正確に照準を定めた。

 

「離れてろ。巻き添え食うぞ」

「やっちゃえお姉ちゃん!」

「頑張ってね……!」

 

ロムとラムは離れた場所からブランを応援する。

ブランは最大出力に引き上げたツインバスターライフルの引き金を引いた。

 

「消えろ……っ!」

 

ブランのツインバスターライフルがまるで稲妻のように放たれ、アイシクルホールの天井をいとも容易くブチ抜いた。

膨大な熱量は戦略兵器レベル、それほどの威力を持ってトリックに降り注いだはずだ。

 

「………終わりだな」

「やったわ!」

「………だめ!」

 

ロムがラムをドンと突き飛ばす。

するとラムがいた場所を極太のビームが掠めていった。

 

「………!」

「野郎ッ!」

 

ブランがすぐにビームの発射源を視認する。

そこにいたのは無傷のトリックだった。

 

「ア、ア、アヒヒヒヒヒヒッ!」

「な、なによ……無傷ってこと!?」

「怖い……笑い方が、ビフロンスと同じに……」

(確かにビームは命中したはずだ……何らかの手段で防いだか、あるいは……)

 

まともに受けてノーダメージなのか。その可能性だけは考えたくなかった。しかしゼロが導き出す可能性の中にはトリックが圧倒的な防御力を持っている可能性も示唆されている。

 

するとトリックがゴロンと寝転がって腹を上空のブラン達に向けた。

そして両手も太陽にかざすように上にあげる。

 

「なによ、ふざけてんの!?」

「……違う、来るよ……!」

 

背中から肩に2つの砲が担がれる。さらに両手に巨大なライフル。そして胸がパカッと開いてさらに砲口が向けられる。

 

「アレは、私達の!」

 

ツインサテライトキャノン、ツインバスターライフル、トリプルメガソニック砲。

さらにロムとラムの間を細く白いビームが通り過ぎていく。

 

「月が……力を……!?」

 

エネルギー、充填完了。

ゼロシステムが警鐘を鳴らし、ロムとラムは溢れる魔力を感じて冷や汗をかく。

 

「避けろォォォッ!」

 

ブランの声で蜘蛛の子を散らすように3人が散開する。

その瞬間、トリック版フルバーストが発射された。

 

「くううううっ!」

 

その熱が巻き起こす暴風だけで体が持っていかれそうになる。しかし、一旦その暴風に巻き込まれればビームの中に自ら突撃することになる。それだけは、できない。

 

永遠にも思われる照射が終わるとトリックの体が熱を排出して蒸気を放つ。

距離があったために無傷で済んだブラン達だが、トリックの火力に戦慄している。

 

これが空中に向けられて撃たれたもので心底良かった。もし、地上に向かって撃たれていたのなら……国を横断してしまうほどの威力だ。

 

「ゼロ……私はどうすればいい?」

 

ゼロが未来を導き出そうとする。

するとブランの耳に警告が走った。

 

 

『2射目が来るぞ』

 

 

「ーーーーー!」

 

ブランが駆けた。

 

「お姉ちゃん……!?」

 

真っ直ぐトリックに向かっていくブランの後ろから新たな魔力のビームがやってくる。アレがトリックに触れるような事があれば……!

 

「させない!」

「私達の力、奪わせない……!」

 

ロムとラムがそのビームを受け止めた。

ロムとラムの体が魔力を吸収し、氷属性の魔法に変えていく。

しかし、これだけではツインサテライトキャノンを封じただけに過ぎない。

 

「撃たせねえ……!その武器はお前みたいなヤツが使っていいモンじゃねえ!」

 

ブランが羽をはためかせ、さらに一弾加速した。

ビーム発射までの再チャージの時間よりも早く、ブランがトリックに天賦の一撃を叩き込む。

 

「ゲッターラヴィーネェッ!」

 

ブランが持つ巨大斧がトリックのトリプルメガソニック砲にめり込む。

その衝撃はトリックを突き抜け、工場の溶けた大地にクレーターを作り出すほどの威力だ。

 

「………ぐ、く!」

「アヒ、アヒ、アヒヒヒ……!」

「テメェ……!」

「アヒヒヒヒヒヒ!素晴らしい!ああ素晴らしい!まるで天使のような羽とスレンダーな体から放たれる一撃が信じられないほどに重く感じる!その細い腕でどうやってそんな力が出ているのか疑問だ!教えてくれ!そもそもその美しさからだ!何故こんなにも美しい!ここまで人を美しいと思うことがあるのか!?女神だからか!?違う、なんだコレはコレはコレは、この認識が狂っているとしか思えないほどに魅力的に思える原因はーーーー!」

 

べロリとトリックが唇を舐めた。

 

「ーーーー愛だ!」

 

トリックのトリプルメガソニック砲が発射される。その瞬間にブランはトリックの腹から飛び退いて強力なビームを避ける。

 

「っ、ロム、ラム!」

「お姉ちゃん、そこどいて……!」

「これが本家よ!サテライトキャノン、発射!」

 

ロムとラムのアイシクルサテライトキャノンがトリプルメガソニック砲を受け止めた。

だが、押し切れない。

圧倒的な魔力を込めた2人のサテライトキャノンでも……!

 

「う、く、そんな……!」

「え、え、ええええいっ!」

 

互角。

サテライトキャノンとトリプルメガソニック砲はお互いに打ち消し合ってしまった。

だが互角なのはビームの威力だけ。

 

「はあっ、はあっ……!」

「う、そ……」

「アヒ、アヒヒヒヒ……!」

 

消耗の違いを見ればトリックの方が有利なのは一目瞭然だ。

ゲッターラヴィーネでも傷一つ付かない防御力と、膨大な火力。

コレを倒すには……!

 

「ドライツバークしかねえ……!」

「アヒヒヒ、愛だ、愛!そうだ、俺は愛しているぞオォォッ!」

 

トリックの舌が伸び、ブランめがけて襲いかかってくる。ブランはそれを斧で弾き飛ばした。

 

「……チッ!」

 

不快感に舌打ちする。

 

「何故拒む……?受け入れろよ、愛してやるからさああああっ!」

「ほざくんじゃねえっ!」

 

ブランとトリックが舌と斧で打ち合う。

 

「お姉ちゃん……!」

「行こう、ロムちゃん!」

 

ロムとラムも寝転がったままのトリックに突撃していく。

魔力を消耗した2人は背負った新武装を手に取った。

 

「こういうときこそ!」

「メッサーツバーク……」

 

単体でもバスターライフルの通常射撃と同じ威力があるメッサーツバークをトリックめがけて撃ち込む。

だがビームは確かにぶつかったはずなのに無傷だ。

 

「なんて硬い……!」

「お姉ちゃんを、サポートする……!」

 

無駄だと悟った2人はブランの元へ向かい、サポートを試みる。2人にもトリックに攻撃を与えるにはドライツバークバスターの最大出力しかないと考えていたのだ。

だがそんな2人の目の前に2枚の舌が飛んでくる。

 

「っ、え!?」

 

ブランのところに舌が行っているはずだ。だが、目の前にベトベトにうねる舌はさらに2枚。

 

「二枚舌って知ってるか?アヒヒ……俺の舌は三枚舌だ!」

 

舌がしなった。

 

「ラムちゃ……!」

 

それを見たロムが咄嗟にラムをかばって防御魔法を展開、そこに鞭のようにしなる舌がぶつかる。

 

「きゃあああっ!」

 

防御魔法ごと吹き飛ばされたロムがコンテナにぶつかって突き抜ける。

 

「ロムちゃんっ!」

 

さらに向かってくる舌をラムはロムから離れながら避ける。

ロムに追撃はさせられない、自分が気を引くためだ。

 

「腕はダメでも、舌なら!」

 

杖の先を尖らせたハンマーが舌をボロボロにしながら吹き飛ばす。すぐに再生するが、壊れないよりマシだ。一瞬でも隙ができている。

 

(そうか、体の中からなら……!)

 

あの大口を開いているトリックの体内に攻撃できれば、多少のダメージがあるはず……!

 

「なら、あっ!?」

 

口の中を攻撃しようとしたラムの背中に鈍い衝撃が伝わった。

 

「な……に……っ!?」

 

背中から巨大な爪で握られている。だが、体はトリックの方を向いているのに、何が背中を掴んだのかラムには理解できない。

その視線の端にトリックの手が見えた。

 

「手が、伸び、て……!」

 

トリックの手が伸びている。ギリギリと万力のようにラムの手を握りしめるトリックの手からラムは自力で逃げることが出来ない。

 

「アヒ、アヒヒヒッ!」

「あっ、うううっ!」

 

地面に叩きつけられ、そのまま投げ飛ばされた。ラムもコンテナを突き抜けて氷の煙の中に消えてしまう。

 

「ロムっ、ラムっ!」

 

攻撃が通じていない。やはり、ゼロシステムを発動しているのか。

ゼロと戦えるのはゼロだけ。だが、ブランとトリックではスペックが違いすぎる!

 

「チッ、クソ、があっ!」

 

3枚舌の攻撃、さらに伸びる腕2本の攻撃にブランは次第に追い詰められていく。

 

(なんとかして2人からメッサーツバークを受け取らなきゃならねえのに……!)

 

伸びてくる舌を翼で防ぐ。貫通はしなかったが羽が舞い散り、吹き飛ばされる。

 

「んがっ……!」

 

滑りながら着地し、コンテナの迷路の中に姿を消す。

ゼロが予想する行動範囲内にトリックは次々と舌と手を打ち込んでくる。

 

「逃げなくていいんだヨ!?愛っていうのは良いモノなんダァッ!」

 

コンテナの間をブランがすり抜けていくのが見える。

ゼロが予測する全ての範囲に無差別に攻撃を繰り返すトリックの攻撃に捕まってしまうのは時間の問題だった。

 

「っ、ン……!」

 

毒づく暇もない。

コンテナは次々と破壊され、穴が開く。

そしてブランがコンテナを出た瞬間と舌がそこを射抜く瞬間が遂に一致した。

 

「………!」

「そこだネェェッ!」

 

ブランの頭にモロに舌が入った。

 

その瞬間、ブランの体はまるでガラスを割ったように砕け散る。

 

「アヒ?」

 

 

「忍法……分身の術……!」

 

 

ボロボロになったロムとラムが魔法を唱えている。

そしてその前にはメッサーツバークを合体させてドライツバークにしたブランが立ちはだかっている。

 

「ど、どうよ……!私達の、頭脳プレー!」

「以心伝心……!信じる力までは、どんなシステムでもわからない……!」

 

高純度の氷の壁。

それがまるで鏡のように機能し、反対側を動くブランの動きを映し出したのだ。

 

「アヒヒヒヒヒヒ、逃げるなよぉぉっ!愛してる!愛しているから、殺してやる!優しく、綺麗に!」

「アンタの告白なんか聞く気にならないわよ!もうアンタを倒す手立てだって立ててるんだから!」

「丈夫ってことは、痛みに鈍感ってこと……!とっくに床は氷漬け!」

 

気がつけばトリックの背中がついている地面はカチカチに凍りついている。もともと凍ってはいたが、完全に凍りついた地面はまるでスケートリンクのようだ。

 

「テメェがなんで背中を地にして戦ってたのか……!単に大地を背にして反動を抑える為でも、上にいる私達を狙っていたからってわけでもねェッ!」

 

ブランが片手で斧を持ってトリックに向かう。飛んでくる5本の変幻自在の槍を斧で受けるとそれらは後ろへ滑り飛んでいく。

斧まで氷漬けだ。

 

「オオォォ……ラァァァァッ!」

 

ブランが横から斧で殴りつける!

するとツルツルの床はトリックの体を支えることはなく、トリックは横に回転しながら滑り飛んでしまう。

 

「今度こそ……私達の意思で!」

「力を貸して……みんな……!」

 

月からの光線が2人に降り注ぎ、ツインサテライトキャノンの発射準備が整う。

そして2人が魔法を唱えるとトリックが滑っていく先にジャンプ台のような氷の彫刻ができる。

 

「と、止まらねえええっ!?」

 

そしてそのジャンプ台に乗って遥か上空まで投げられる。

そこにブランのドライツバークバスターライフルとロムとラムのツインサテライトキャノンの照準が合う。

 

「テメェが背中を地面につけてたのは!その増えすぎたビーム砲の排熱機構を備えた背中が脆弱だからじゃねえのかッ!?」

 

ツインサテライトキャノン、トリプルメガソニック砲、ツインバスターライフル、これだけの火器を搭載して生まれる熱量は想像を絶する。だからそれだけの火力と引換に巨大な排熱機構が必要になる。

 

露わになった背中は確かに、大量の排熱機構があって脆弱だった。

 

「ツインアイシクル……!」

「サテライトキャノン!」

「ドライツバークバスターライフル……!」

 

「アヒーーー」

 

 

『発射ァッ!』

 

 

トリックが光に飲まれた。

全ての魔力が注ぎ込まれたビームはトリックを飲み込み、さらに進み、宇宙へと飛び出す。

比喩ではなく、星ですら穴を開けられるビームはトリックを絶対零度と圧倒的熱量が交差する空間へと閉じ込める。

そこで一体何が生き残れるか?何が形を成していられるのか?

天変地異に等しいビームはついに照射をやめ、後に残るのは膝をついたブランとロムとラムのみ。

 

「全部……注ぎ込んだわよ……」

「もう、立たないで……!」

 

べしゃっとボロ布のようになったトリックが落ちてくる。

 

「まだ……形があるのかよ……!」

 

そこで溶け落ちたトリックの表面の装甲の中身が見えた。銀色に光る、鉄。それがトリックの体の正体だった。

 

「ロボット……?」

「……そもそも、復活なんかしてなかったってことよ」

 

結局は、紛い物。よく似せた偽物。それに過ぎなかった。

 

「……………」

 

カリッ、という音が響いた。

その音に3人は凍りついたように固まる。

ウソであって欲しい。だが、ゼロが告げる。

 

ーーーーー来るぞ!

 

 

「ア、ヒ、アヒヒヒヒ、アヒヒヒヒヒヒヒッ!アアアアアヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」

 

 

「そ、んな……!」

「アレだけのビームをぶつけたのに……!」

「も、もう……戦うだけの力が残ってねえ……っ!」

 

バチバチと紫電を散らし、関節は歪な音を立て、ポロポロとネジが外れていく、それでもトリックは動いていた。

全砲台は壊れていた。排熱機構も機能していない。

しかし、体内に残ったビーム砲がまだ1基残っていた。

口を大きく開いたトリックの喉から涎に濡れたサテライトキャノンが顔を覗かせる。

月からの魔力供給がなくとも、トリックはサテライトキャノンを発射していた。今回も例に漏れずトリックは自力でサテライトキャノンに必要なエネルギーを供給しきってしまう。

 

「サテ、ライト……キャノン……」

 

トリックの声が掠れている。機械音声であることを隠せもしない。僅かなトリックとしての意識が残っただけの機械。

 

「アヒ……俺は……アイして……!」

 

砲口が光り、無慈悲に引き金が引かれる。3人は射程の中。誰1人逃げられない。

 

 

「ーーーーーアイ!」

 

 

エネルギーが解き放たれた。

真っ白なビームは一瞬でブランの眼前に迫る。

消えるーーーーー?

 

「お姉ちゃん!」

「お姉ちゃん……っ!」

 

3人が光の中に消えた。しかし、トリックの攻撃は終わらない。体内で熱が暴走し、弾けようともやめない。

トリックはそれが愛だと本気で信じているから。

 

トリックの装甲が弾け飛んでいく。フレームすらも弾け、ゴトリと片手が外れた。それでもエネルギーが尽きるまで撃ち続ける。ゼロが十分だと言ってもやめない。

トリックはゼロに抗っていたのだ。その歪んだ愛で。

 

「アヒィッ……アヒククヒヒヒ!」

 

魔力が尽きた。

ノイズが混ざる声で高笑いするトリック。限界まで酷使したサテライトキャノンは自らの熱で壊れてしまった。

 

「コレで……ようやく、殺してやれ……殺して……」

 

トリックが灰も残らない原子になった3人を確認して、目を開く。

 

ーーーーーー殺せて、ない?

 

「………っ、く!」

「大したこと、なかった……っ!」

 

目の前には2重の巨大な魔法陣。それがサテライトキャノンを防いだことはわかった。

だが、何故?2人は間違いなく魔力を使い切ったはず、ゼロもそう言っていた。

予想外の事態にトリックの瞳が揺れている。

 

「……結局テメェの愛は愛なんかじゃねえ……!」

 

力を使い果たして今度こそ倒れるロムとラムの後ろでブランが何かを握りしめていた。

……ミナから貰ったお守り。魔力が注ぎ込まれていると言われていたそのお守りの魔力の量、規格外だった。

あんな平然な顔で渡してくれたが、きっと倒れる寸前まで魔力を込めていたはずだ。

そうだ、それが……愛だ。

 

「そんな、独りよがりなモノが愛なわけがねえんだ!」

 

ドライツバークバスターライフルを構えた。

もうトリックの体はブラン達に撃ち込まれたビームと自らが発射したビームの反動で崩壊寸前だ。もう手も舌も機能していない。

 

「なァァンでだっ!?愛しているからこそ、殺す!俺は幼女が好きだ!だから幼女を殺す!だってそうだろ⁉︎殺したらソイツのこと、1秒たりとも忘れやしないんだから!ずぅぅぅぅっと、俺の中にいるんだからさぁぁぁっ!」

 

叫ぶトリックに構いはしない、その引き金に指をかけた。

 

「テメエはただのヘンタイだッ!手を広げてもねえ女に抱きつき!手を広げた女を殴り殺すドヘンタイだッ!少なくとも私は!手を広げてくれる男に、優しく包まれてえと思ってる!」

「俺は!愛してくれるそいつを殺したいほど愛したい!」

「その歪んだ愛を、私が拒んでやる!誰もテメエを受け入れねえ!愛しやしねえ!私は……お前を殺す!

 

引き金を引いた。

再び放たれる超弩級のビームはトリックを飲み込む。

 

「なんでェェッーーーーー!」

 

トリックは今度こそ消えてしまった。

ガクリと膝をついて倒れ込んでしまうブランの隣には気絶したロムとラム。既に変身は解けていた。

ブランも変身を保つことが出来ず、光とともに変身が解けた。

 

「ごめん、ミズキ……助けに行けそうに、ない……」

 

氷のベッドは冷たくて固くて最悪の寝心地だった。


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