超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ELSブレイブ

 

「……ユニ、もう少しでブレイブが見えるわ」

「うん、わかってる」

「本当に?」

「……ホントだもん。ブレイブは死んだ……私が殺した。だから……偽物は許さない」

 

ノワールがユニの目を見る。

本当に振り切っているのか。今はその瞳に迷いがないように見えるが……いざと言う時は?

……その時はその時、か。

 

「わかった。信じるわ。作戦通り行くわよ!」

「うん、お姉ちゃん!」

 

1つ、大きな山を越えた。

すると巨大な遺跡があり、その1番高い塔にブレイブが立っていた。

体は赤黒く、それ以外の風貌は完全にブレイブと同じだ。

 

(それ……でもっ!)

 

もうブレイブはいない。私は託されたんだ。私に託したんだ。だから……生き返ることなんて、ないんだ!

 

「行くよ、お姉ちゃ……っ!?」

「ユニっ!」

 

ジャッジが剣を振るのが小さく見えた。

その瞬間にノワールがユニの前に出てGNソードIVを引き抜いた。

 

「っ、ん!」

 

ノワールがそれを構えるとそこに薄いビームの刃がぶつかる。火花を散らし、鍔迫り合う。

ブレイブの射程自在の黄金剣だ。

 

……油断していたわけじゃない。躊躇いは捨てたつもりだ。

だから、この一撃に反応が遅れたのは自分の問題ではない。ブレイブは確実に、以前の戦いよりも遥かに強くなっている!

 

(気を引き締めなきゃ……!)

 

ブレイブの攻撃の威力は絶大、まともに食らえば一撃で沈む。

 

「早々にケリをつける!吶喊するわ!」

 

ならば勝負の付き方はただ1つ。片方が無傷、そして片方は打ちのめされる。

無論、勝つのは……私達!

 

「Iフィールド、全ッ開!」

 

ユニが円形のシールドでIフィールドを展開、そのまま攻撃を恐れずに直進し始めた。

ブレイブは剣を一旦おさめて、背中のキャノン砲をユニに向かって放つ。

 

(遠距離攻撃……ブレイブが!?)

 

そのビームはとてつもない威力だが、Iフィールドの前では無力。見えない壁に阻まれ、散るばかりでユニには届かない。

 

(やっぱりアイツは……ブレイブじゃ、ないっ!)

 

そしてユニの後ろにノワールがつく。

ビームに対しての防御力が高いユニを先頭において攻撃を防ぎながら突進、そのまま2人同時に攻撃を叩き込む作戦。

と、2人は見せかけた。

 

「ユニ、あと3カウントで行くわ!」

 

2人のスピードは凄まじく、何にも邪魔されることのないために最短距離でブレイブに急行できる。

ビームが無駄と悟ったブレイブが剣による攻撃に出るタイミング、そしてユニがメガビーム砲の射程にブレイブを捉えるタイミング、それまでが3カウント。

3、2、1………!

 

「今よっ!」

「メガビーム砲……っく!」

 

メガビーム砲を構えるのと同時にジャッジが剣を振るのが見えた。

それに合わせてユニは片足をあげ、大型ビームサーベルでジャッジの剣を受け止めた。

 

「く……うっ!」

 

そのまま火花を散らしながらビームサーベル同士をこすらせるように前進。

メガビーム砲の照準はブレイブの頭部にロックオンされた。

 

「発射!」

 

ユニのメガビーム砲がブレイブの頭部目掛けて飛んでいく。

受け止める必要も無い、軽く首を曲げてかわそうとしているブレイブの後ろに緑の粒子が集まった。

 

「気付かなかった?ユニの陰に隠れて……私がワープしたのを見逃したようね」

 

砂時計を逆再生するように下半身からノワールの体ができていく。

フルセイバーはトランザムを使わなくとも量子化、ワープが可能でしかも遠距離の跳躍が可能だ。

ユニの影に隠れたノワールはユニがメガビーム砲を撃つと同時にワープ、前後からの挟み撃ちをかける。

これこそが、真の作戦の内容。

 

ノワールはGNソードVにソードビットを装着、攻撃力の高いバスターソードにして後ろから切りつける。

 

「はあああっ!」

(当たれ……っ!)

 

ノワールがブレイブが首を曲げる一瞬前に背中に深い切れ込みを入れ、そのために回避が遅れたブレイブの頭の半分がメガビーム砲で消し飛んだ。

硬直するブレイブは間違いなく致命傷を負った。もう戦えないはず。

 

「確かに手応えあったわ……どうやら、トランザムをする暇もなかったようね」

 

呆気なく終わったようではあるが……しかし、やはりこの勝負は無傷か死か、だ。

これくらいが当然でーーーー。

 

「……ま、そんなわけないわよね」

 

ブレイブの傷口がみるみるうちに塞がっていく。液体金属のような銀色の何かがブレイブから溶けだし、消し炭になった頭部すら新しい何かで置き換えていく。

 

「ビフロンスに何かやられたのなら、何も無いわけないんだからっ!」

 

ノワールが離脱すると同時にブレイブにビームが撃ち込まれる。ユニのメガビーム砲だ。

 

「ーーーー!」

「来るっ……!?」

 

それが当たる瞬間にブレイブが形を変えた。体の中央に大きく穴が開き、ビームはそこをすり抜けて地面に当たってしまう。

 

「えっ……!?」

 

そしてブレイブの背中から無数の小さなコーン状の物体が放たれた。いや、分離した、と言うべきか。

無限とも思えるほどの無尽蔵なコーン状の金属はまるでミサイルのようにノワールを追っていく。

 

「ミサイル……!?なんなのよこれは!」

「ーーーーー!」

「っ、く!」

 

ブレイブの声とも言えない叫び声にノワールが顔を歪めた。

そしてブレイブの足元から段々と地面が銀色の金属へと変わっていく。

 

「地面が……!?なによ、アレは!そもそも、生き物なのっ!?」

「く、うるさい……っ!撃ち落とす!」

 

ノワールがGNソードIVを持ち出し、そこに装着されているGNガンブレイドを両手で持った。

GNランチャーモード、そこから放たれるビームは普通のライフルとは比べ物にならないほど強力で、さらに連射もできる。

 

「落ちろ落ちろ落ちろ!」

 

ノワールがGNランチャーを乱射して手当りしだいに小型の金属のような何かを落としていく。

蒸発して消えてしまった金属は再生することはないが、それが焼け石に水と感じるほどには金属の数が多すぎる。

 

「お姉ちゃん避けてっ!」

 

ユニがノワールを追う金属の側面からミサイルポッドを発射する。

膨大な数のミサイルは大多数の金属すらも目に見えて減らせるはずだ。

ノワールの軌道をなぞるように単純に動く金属の動きは予測が容易、ユニのミサイルはしっかりと金属にぶつかった。

 

「……えっ!?」

 

しかしミサイルが爆発したのはほんの数発。

その他は金属がまるで吸収するかのように体内に飲み込んでしまう。

そしてミサイルを飲み込んだ金属は形を変え、ノワールに迫っていく。その形はユニのミサイルそのものだ。

 

「コピーされたっ!?ダメよユニ、ビームじゃなきゃ!」

「だったらっ!」

 

ユニがメガビーム砲を構え、発射した。

ノワールを掠める一歩手前、ギリギリノワールに当たらない場所にメガビーム砲が照射され、そこに突っ込んでいく金属はことごとく蒸発する。

 

「飛んで火に入る夏の虫ね!」

「今のうちに、本体を!」

 

ノワールがブレイブへと軌道を変えて迫る。

ブレイブは振り返り、その時にノワールは初めて変化したブレイブの顔を見る。

その顔は歪んでいた。それが言いようのない不気味さをノワールに感じさせる。人間だが、人間でないような……そんな違和感は大きく膨らんで恐怖へと変わる。

そしてジャッジの口が開いた。口裂け女のように頬まで口が開き、捕食の為ではなく殺傷のための棘だらけの口内を見せた。

そしてーーーーー叫ぶ。

 

「ーーーーー!」

「っ、ああっ!?」

「お姉ちゃんっ!?」

 

その叫び声を聞いた瞬間にノワールが頭を抑えて止まってしまった。

 

「あああっ、やめ……!私には、抑えきれな……!」

「っ!」

 

ユニが素早くノワールの元へと向かい、ノワールを抱き抱えて離脱する。

 

「ーーーーー!」

「ブレイブ……!」

 

ユニはブレイブの名を呼んだが……ユニ自身も最早アレはブレイブではないことをわかっていた。

認めよう、心のどこかで期待していた。生き返ってくれるのなら、今度こそ味方になってくれるかもしれなかったことを。

本当に、本当にそれがブレイブなのなら……歩み寄りたかった。

けど、アレはブレイブじゃない。

ブレイブの皮を被っていただけの何かだった。

そしてその存在は今、ブレイブという皮さえ脱ぎ捨てた。

 

「許さない……!」

 

許さない。ブレイブの皮を被り、その存在を貶めることだけは……私だけは……!

 

「ユ、ニ……」

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

「え、ええ。アナタは大丈夫だった?」

「うん。お姉ちゃんは何を……?」

「……聞こえなかったの?まるで、耳元で大勢の人に叫ばれているみたいだった……」

「……私には、ただの大きな叫び声にしか聞こえなかったけど……」

 

ノワールにだけ聞こえる声があったのか?

それはブレイブの声なのなら……いや、ならむしろユニに聞こえるはずだ。

 

「っ、ユニ後ろ!」

 

ノワールの声でユニが後ろを振り向くとまた膨大な量の金属のミサイルが迫っていた。

 

「っ」

 

ユニはノワールを投げ捨て、ウェポンコンテナからビームマシンガンを取り出した。

 

「お姉ちゃんには、近付けさせない!」

 

ユニのマシンガンの掃射が次々と金属を落としていく。しかし、その中をくぐり抜けた金属の槍がマシンガンにぶつかる。

 

「っ!」

 

そこから金属はマシンガンを飲み込んでいく。鉄の結晶のような物が飛び出し、マシンガンを飲み込んでいく。

それがユニの手に触れる直前、ユニはマシンガンを手放してメガビーム砲で撃ち落とす。

 

「ユニ、逃げなさい!アイツの狙いは私よ!」

「でも……っ!」

 

一旦マシンガンの掃射が止まってしまったために金属はさらなる勢いを増してノワールに迫る。そしてその軌道上にいるユニをも飲み込もうとしていた。

 

「撃ち落とし……きれないっ!」

「ユニ!」

「しまっ……!」

 

ついに金属の槍がユニのIフィールドジェネレーターにぶつかった。

金属はIフィールドジェネレーターをすぐに飲み込み、同化していく。

 

「離しなさいユニ!早くっ!」

「危なっ……!」

 

ユニがギリギリでIフィールドジェネレーターを手放す。

もし遅れていれば……ユニも金属に同化され、そして恐らく……死んでしまうだろう。

 

「物理攻撃が通用しないなんて……なんて敵!」

「ユニ!仕掛けるわ、合わせて!」

「お姉ちゃん、でもっ!」

 

ユニは抑えきれなくなった金属の槍から離れたが、ノワールは未だに追われ続けている。その状態から反撃が可能なのか?

 

「時間をかけても無駄よ!それに、今この時もラステイションは呑まれてる!」

 

ノワールの言葉にユニがブレイブの足元を見ると、確かに金属は地面の侵略を進めてラステイションの大地を我が者にしていた。

今はまだ街には同化が追いついていないものの、時間をかければラステイションの街へと追いついてしまう。

そうなってしまえば、ラステイションの何もかもがなくなってしまう。

 

「そんなこと……!」

「行くわよ、ユニ!トランザム!」

 

ノワールの体が赤く発光した。

そしてノワールからGNソードビットが射出され、ノワールの真後ろにワープゲートを作る。

 

「まずは地面の敵を根こそぎ焼き払う!」

 

ワープゲートに飛び込み、GNソードビットもワープゲートの中へ消える。

そして金属が届く寸前にワープゲートは消え、侵入を許さない。

ワープゲートは新たにブレイブの背後に開き、そこからソードビットを装着したGNバスターソードを持ったノワールが飛び出してくる。

 

「ーーーーーー!」

「っく、うるさいっ!トランザム……ライザァァァァッ!」

 

GNバスターソードから大地を割るほどのビームが発射された。戦略兵器レベルの威力でありながらその攻撃は砲撃ではなく斬撃。

しかし、ブレイブもその腕をノワールに伸ばすとパクリと腕が裂け、口のように開いてノワールを飲みこもうとする。

それでも攻撃をやめはせず、超巨大ビームサーベルをノワールは地面を焼くように横薙ぎに振り切り、一気に大地と同化した金属を焼き払う。

 

「やった!」

 

大地と同化した金属は完全に消えた。同時にノワールを飲み込もうとした手も地面とくっついていた足も焼かれ、ブレイブが地面に横たわる。

 

「このまま、叩き切るッ!」

 

ノワールは攻撃をやめはしない、そのままトランザムを維持してGNバスターソードとGNソードIVの特大剣二刀流でブレイブに襲いかかる。

そしてユニも片手にはメガビーム砲、もう片手にはウェポンコンテナから引っ張り出したビームライフルを持ってブレイブに狙いをつける。

 

「アナタが何者なのか!それはわからないけど、叫び声は聞こえてる!」

 

ノワールが切り抜け、回り込むように何度も斬撃を浴びせる。その合間にユニのビームが連続で撃ち浴びせられ、反撃の余地を与えない。

 

「バレてないとでも思った!?聞こえてんのよ、ビフロンス!アンタの耳障りな笑い声がッ!」

 

粒子残量、残りわずか。

後先のことは考えない、ここで全ての力を使い切り、絶対にこの敵を沈める!

 

「だから、アナタに聞こえるようにこの答えを解き放つ!見えている道の上を歩いてるだけじゃ、きっと望んだ世界は掴めない……!私とこの剣(フルセイバー)が、新たなる世界への道を切り開く!」

 

ボロボロになったブレイブが叫び声をノワールにぶつけた。ノワールは顔を一瞬しかめたが、それだけ。

 

「悪足掻きしてんじゃないのよッ!消えなさいッ!」

 

ノワールのX字の斬撃がブレイブに浴びせられた。しかし、その瞬間に粒子が尽きてノワールのトランザムは解除。空を浮くことすらできなくなり、地面に転がる。

 

「う、く……!ユニィッ!」

「任せて……!」

 

残り僅かな金属の残骸。アレを欠片も残さずに葬り去る。

私にはできる!メガビーム砲の最大出力なら!

 

「躊躇わないッ!」

 

ユニのメガビーム砲の最大出力が放たれた。

ありったけのエネルギーを詰め込んだビームはブレイブを飲み込むほどの大きさで勝負は決まったかに思えた。

しかし、ブレイブの眼前でそのビームは弾けて湾曲させられる。分裂し、弾けたビームは地面に当たって大爆発を起こす。

 

「ーーーーーー!」

「メガビーム砲が、曲がるっ!?」

 

ユニが照射をやめるとメガビーム砲を曲げた犯人がわかった。

ブレイブが開いた手の先には見覚えのある円盤状の盾、Iフィールドジェネレーター。

 

「Iフィールドジェネレーターまでコピーするなんて……!」

「ーーーーー!」

「なら、ゼロ距離で撃ち込むだけ!」

「ユニっ、やめなさい危険よ!」

「たああああっ!」

 

ユニが急加速してブレイブに接近する。ここで反撃を許されれば攻撃されるのは動くこともままならないノワールだ。だから、今仕留めるしかない。

 

「ーーーー!」

「っ」

 

ブレイブの体全体が口のように開いてユニを包み込もうとする。

反射的に後方に下がって飲み込まれるのは防いだが、さらにそこから触手のようにブレイブの手が伸びる。

 

「速いっ、あっ!?」

 

触手がユニのコンテナにへばりついた。1度触れれば逃げる術はない、瞬く間に金属が同化を始める。

 

「パージするのよ、ユニ!早くっ!」

 

咄嗟にコンテナをパージして切り離したユニだったが、コンテナにまとわりついた金属もただパージされるだけではなかった。

まだ同化を完全に果たしていないにもかかわらず落ちながらも触手を伸ばしてユニの足のブースターに触れた。

 

「しまっ、くっ!」

 

咄嗟にビームサーベルを使って切り離すが、ブースターにへばりついた金属から同化が進む。

このままでは、足に触れてしまう!

 

(やりたくはないけど……!)

 

金属がへばりついた足のブースターにメガビーム砲の照準を向ける。

出力を絞り、ブースターは壊しても足になるべくダメージがないように……!

 

「っ、ああああっ!」

 

歯を食いしばって引き金を引く。

ブースターは破壊されたが、足のダメージもやはり大きい。それでも火傷ですんだのは幸運と言うべきか。

落下していくユニは片足のブースターだけでなんとかバランスを取って空中に浮こうと苦心する。

しかし、やはり片足のブースター……それも大出力のブースターでは体勢を直すのは至難の技だ。

頭を下にして錐揉み落下していくユニは体勢を立て直すのをやめた。

 

「…………!」

 

落下、回転、自力で照準を合わせるのは不可能に近い。タイミングを合わせ、引き金を引くしか。

地面に落ちれば再び舞い上がるのは多分、無理だろう。今、この時に勝負を決める。

 

その時だった。

それは、ノワールがトランザムを使用したために高濃度のGN粒子が蔓延していたためだろうか。

または、ユニの覚悟に何かが応えたのだろうか。

もしくは、あの金属の中にブレイブの意志が少しでも残っていたのだろうか。

 

ユニは声を聞いた。

 

「まったく、世話が焼ける……おちおち寝てもいられん」

「ブレイ、ブ……!」

「諦めていないのだろう?なら、やり切って見せろ」

「わかってる……!私は、私には……!」

「そのための力は貸そう。さあ、撃て!俺を倒したのならできる、俺の紛い物などに遅れをとるな!」

 

迷いはない。躊躇いも超えた。

 

「私は託された!託された、責任がある!結んだ約束は、私が覚えている限り……!」

 

ーーーーブレイブカノン。

 

「消えはしない……守ってみせる!」

 

それは、弾丸と呼ぶにはあまりにもチャチなものだった。

最大出力のビームとは比べるのも烏滸がましい、まるでコルク栓が弾け飛んだかのようなビーム。

だが照準は正確、まっすぐブレイブに向かっていく。

 

無論、ブレイブはIフィールドを展開している。

Iフィールド……ビームを弾く電磁力の膜のようなもの。どんなビームであれ偏向してしまうこのバリアはビームに対して絶大な防御力を持つ。

だから、ユニのビームは呆気なく弾かれた。後は線香花火の火花のようなビームが落ちていくだけである。

 

しかし、ノワールだけはそのビームの本質を見抜いていた。

 

「っ、ソードビット!」

 

なけなしの粒子を振り絞ってソードビットを射出、前方にGNフィールドを展開して身を守る。

 

「まったく、安心して眠れもしない……」

「もう大丈夫よ、ブレイブ……ありがとう」

 

落ちていった火花が地面に当たった。

その瞬間、その火花がカッと輝く。

ブレイブショットの正体は圧縮されたエネルギー。限界寸前まで小さくなった破裂寸前のエネルギー。

それが地面に触れたという小さな刺激で解き放たれる。

Iフィールドはビームを決して通さない。しかし、それ以外の物体は通してしまう。

最も効くのは実弾だが、それはブレイブの体の性質上封じられたようなもの。

だが……!

 

「ーーーーー!」

 

地面に落ちた火花が大爆発を起こした!

まるで核爆弾でも落ちたかのような半球形の火のドームを作り、煙雲が湧き上がる。弾けたためにブレイブの周囲でその爆発が巻き起こり、膨大な熱量と衝撃がブレイブの体を砕いていく。

 

「っ、ああああっ!」

「これで……ううっ!」

 

だがノワールとユニもその爆風をもろに浴びてしまう。

ノワールはGNフィールドで飛んでくる物体を防御したが、ユニはそのまま吹き飛ばされて地面に落ちてしまう。

ゴロゴロと転がるユニはそのまま気絶してしまい、地面に横たわった。だが、その顔はとても満足気だ。

 

「ーー、ーーーーーー……」

 

爆炎が消え、黒焦げになったブレイブだけが残る。最後の悪あがきか、腕をノワールに伸ばしたが届きもせずに手先から灰になって砕けていく。そして風と共に消えていった。

 

「…………」

 

ノワールが立ち上がってコンテナが落ちた方向へ向かっていく。コンテナと同化を続ける金属をノワールはGNガンブレイドで撃ち抜いた。

 

「ミッション、コンプリート……ようやく、終わったのね……」

 

はあ、と息を吐いてノワールが尻餅をつく。

ブレイブになりすました金属……ELSは2人の手によって完全消滅した。


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