超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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決戦前夜

「ごめんなさいお姉さまっ!」

 

リーンボックスに帰ったベールを出迎えたのは教祖チカの謝罪だった。

頭が足につくんじゃないかってくらいに頭を下げるチカにベールは首を傾げる。

 

「え〜と……どうかしましたの?」

「うぅ、実は……」

「ハッ、まさか四女神オンラインのログインを忘れたと!?」

「い、いえ!ちゃんとログインしていますわ!」

「では素材周回を怠ったと!?」

「ち、ちゃんと周回しました!」

「……ではなにを謝るのですか?」

 

それを除けば謝る理由が思いつかない。いや、それはそれで問題だが。

 

「うぅ、実は……お姉さまの追加装備の完成が間に合わないかもで……」

「ああ、そのこと……。そんなに大作業なんですわね」

「張り切り過ぎてしまい……間に合うかどうか……間に合ってもテストとかそのあたりはなしのぶっつけ本番……」

「よくってよ。もし間に合わなくても、なんとかしてみせますわ」

 

確かに追加装備があれば楽だろうが、そんなものなくても戦える。

 

「ごめんなさい……あ、でも、完成すればこのチカ、戦闘の途中でも届けに行く覚悟です!」

「それが1番ありえるかもしれませんわね。そうですわ、1度その追加装備を見ても……」

「あ、はい!こちらですお姉さま!」

 

チカの先導に従ってリーンボックス教会の地下へと降りていく。

そして目的の部屋のドアを開いた時、ベールは開いた口が塞がらなかった。

 

「…………」

「これが、お姉さま専用の追加装備です」

「……確かに、これは時間がかかりますわね……」

 

まだ完成度は7割くらいか。

今日の夜には出撃だから間に合うかどうか……。

 

「きっと間に合わせます。だからお姉さまも……」

「ええ。きっとマジックを倒しますわ」

 

 

 

 

 

ルウィーではブランとロムとラムがミナに連れられて教会へと赴いていた。

 

「これが……私の、武器」

「はい。その名もメッサーツバーク」

 

机の上にはツインバスターライフルよりも少し小さいくらいの3つの銃が並んでいた。

ブランがその1つを手に取ると金属の冷たさが手に伝わった。

 

「3つあるってことは……」

「残りは私達の分ね!」

「やった〜……!」

 

ロムとラムもメッサーツバークを持ったが、そこそこの重さがあるらしく2人は顔をしかめた。

 

「私はともかく、2人は持てるの?」

「強化魔法を使えば、なんとか……」

「持てないほどじゃないわ!」

 

若干心配だが任せるしかあるまい。

 

「それにしても、ロムとラムに銃を持たせるの?2人は魔法中心のスタンスだけど……」

「実は、その武装はブランさん、アナタの専用装備なんです」

「私の?」

「メッサーツバークは1つだけでもツインバスターライフルの通常射撃に勝るとも劣らない威力を発揮します」

 

しかし、とミナが前置きしてモニターにメッサーツバークを映し出す。

 

「その3基は合体し、ドライツバークと呼ばれる形態になるんです」

 

モニターの中の3基が合体し、ドライツバークへと生まれ変わった。

 

「それを私が使うのね」

「いいえ、まだです。さらにこのドライツバークはツインバスターライフルに取り付けて威力を増大させることができます。この状態はドライツバークバスターライフル」

 

さらにドライツバークが追加の銃身のようになってツインバスターライフルに取り付けられた。

 

「この状態の威力は未知数です。恐らく、ロムとラムのツインサテライトキャノンすら超える威力だと思われます」

「……アレを、超える……」

「すごい威力……それがあればあの変態も一撃ね!」

「ですが、高すぎる威力の代償として、外せば国への甚大な被害は避けられません」

「外せないってこと……なんだ……」

「十分よ。ありがとう」

 

ドライツバーク。そしてツインサテライトキャノン。

この2つを持つルウィーは恐らく、4国の中でも火力が最大だ。他の国の追随を許さないほどに。

これなら、勝てるはず。

 

「それと、これを」

 

ミナが3つの小袋を渡した。

それは手作りのお守りだ。何も文字は書いていないから何の効果があるのかはわからないが……。

 

「きっとこのお守りが、アナタ達がピンチの時に助けてくれます」

「お守り……コレが守ってくれるの?」

「これ……魔力が入ってる……?」

「はい、正解ですよ。あらん限りの魔力を詰め込んでみました」

 

つまりお守りを使うといわゆるMPが全回復するということか。

 

「その魔力を何に使うかはアナタ達次第です。これが、私に出来る全て……」

「これだけあれば負けるわけないわね!」

「楽勝、楽勝……♪」

「あの変態は私達の手でもう1度地獄に叩き落としてやりましょう」

 

ブランとロムとラムが変身した。

ブランは背中から翼を生やし、ロムとラムは夜空に輝く満月を確認した。

 

「行ってくるぜ。すぐ終わらせてミズキの援護に行くぞ!」

 

 

 

 

「………」

「そう気を悪くしないでくれ。何度も言うが、時間がなかったんだよ」

「……にしたって……」

 

ユニが頬をふくらませて唇を尖らせた。

 

「……私だけ新しい武器、ないなんて」

「やれるだけの強化はしたさ。姿形は変わらなくても、威力は格段にあがっている」

「……かもしれないけど……」

「コンテナの中にもより様々な武器を盛り込んだ。今の君は空を飛ぶ弾薬庫と言っても差し支えない」

 

ケイがユニをなだめるが、やはり地味は地味。

だってそうだ、今目の前で新しい武器を装備しているノワールを見たらお世辞にもユニのパワーアップは地味としか言えない。

 

「……かっこいいなあ」

 

ノワールの左腰には今まで使っていたGNソードV。そして左肩にも既存のGNシールドとGNソードビットがある。

ノワールの新たな装備は右肩に装備されたGNソードIVフルセイバーだ。右肩に装備されたそれはバスターソードして使うものであるが、接続されている3つのGNガンブレイドの位置を組み替えることにより様々な武器として扱える優れものである。

全身を剣で固めた文字通りフルセイバーとなったノワール。それを見るとどうしても自分だってと思う。

 

「そもそも、もう君のプロセッサユニット自体強化ユニットみたいなものなんだ。完成形と言ってもいい」

「む〜……」

「それは君だけがマジェコンヌ四天王を1人で倒せたことからも明らかだ。君にしか出来ていない、偉業だよ」

「ま、いいじゃないユニ。単純な性能なら私よりアナタの方が上よ?」

 

ノワールが武器を装備し終えて戻ってきた。

ノワールが肩を動かすなどして装備の心地を確かめる。

 

「その装備は戦うための装備だ。対話を行いたいならフルセイバーユニットをパージする必要がある。心得てくれ」

「わかった。武装が多くて苦労しそうだけど……」

「状況に応じて使い分けてほしいな」

 

ノワールが歩く度にカチャカチャと装備が揺れる音がする。

ユニもその後についていって変身する。

 

「僕はここで君達の勝利を祈ってるよ」

「ええ。サッサと叩きのめしてくるわ」

「行ってくる」

 

ユニは胸に手を当てて息を深く吸い、吐く。

 

「大丈夫、大丈夫……。今度だって、絶対……」

「そう気負わないの。今度は私だっているんだから、大船に乗った気でいなさい」

「……うん」

 

 

 

 

「……ねえ、これホントに大丈夫?」

 

変身したネプテューヌの背中にぞくぞくと新たな装備が付け加えられていく。

背中に2つのハイパーバズーカ、その砲口にグレネードランチャーが装備。さらにバズーカ自体をプラットホームにしてミサイルポッドを1基ずつ、合計2基。さらにさらにハンドグレネードを脚部に3発×4セット、バズーカにも3発×4セットの合計24発。

背中に太刀を背負い、両腰にもさらに2本。手には主兵装、ビームマグナムを持っている。

 

「こんなんで動けるのかしら?とんでもなく重そうだけど……」

《今からブースターユニットを装備して推力を補います。小回りは効かなくなりますが、直線移動なら軽装時とほぼ同等の加速ができるはずです》

 

1通りの装備を終えたネプテューヌの背中に2基のブースターユニットが取り付けられた。

これがネプテューヌの強化兵装、フルアーマープランだ。

 

《本来ならもっとネプテューヌさんの力を生かした装備を用意したかったのですが……》

「いや、いいのよ。逆に、傷ついたプラネテューヌがよくこれだけの装備を集められたものだわ」

 

新開発の武器はネプギアのM.P.B.Lを改造したビームマグナムのみで他の装備は全て既存の兵器だ。しかし、ただ考えなしに武器を積んだわけではない。

ネプテューヌのバランス、推力も参考に入れた上で使い終わった武器はデッドウェイトにならないようにパージできるようになっている。

 

《私の協力もあったってことも忘れないでよね〜!》

「……恩着せがましいわね……」

 

ネプテューヌが武器を装備している場所はトリックによってめちゃくちゃにされたカタパルト。アブネスやイストワールがいる場所は管制室の中だ。

管制室やカタパルトはマジックが再利用でもしようとしていたのか、ある程度の復旧は済んでいてすぐに使うことが出来た。

 

「次はネプギアの番だね」

「………」

「ネプギア?」

 

管制室の中で俯いていたネプギアが思い詰めたようにミズキを見た。

 

「あの、私、おかしいでしょうか……」

「何が?」

「……あんなに倒したいと思ってたのに、今はなんだか、倒したくないと思ってる……分かり合いたいって、そう思ってるんです!」

 

キッとネプギアがミズキを見つめる。

 

「それは、おかしいことなんでしょうか……?」

「きっと、そんなことないと思うよ」

 

だからミズキも真剣な顔で言い返した。

 

「自分がしたいように、やりたいようにやってくればいい。君はもう、立派な女神なんだから」

 

出会った時のネプギアの面影など少しもない。

あの時よりもずっと強くて、頼りになって、可憐で、そして優しい。

例えこの瞬間にネプギアがネプテューヌの代わりに女神の座につこうとも、ネプギアになら国を任せられる。ネプテューヌだってそう思ってるはずだ。

 

「それじゃあネプギアさん、カタパルトへ……」

「……ごめんなさい、いーすんさん。それ、必要ありません」

 

変身したネプギアがイストワールを見た。

その姿は今までのものとは違い、武器も装備も一新されている。

全身に剣のような武器を取り付けていて、その姿はまるでハリネズミのよう。M.P.B.Lも新たな形に生まれ変わっており、M.P.S.Lよりもずっと小型化している。

 

「ネプギアさん……」

「行ってきますね、いーすんさん!私、もう誰にだって負ける気がしません!」

 

弾けるような笑顔をイストワールに向ける。

イストワールが呆気に取られるが、そのままネプギアはカタパルトへ駆け出してしまう。

 

「ネプギア……このっ」

「いたっ、いたたっ!?」

「この、土壇場で……!ったく、もう!」

「お、お姉ちゃん、いたい、あははっ、痛いってばぁっ!」

 

ネプテューヌがネプギアのこめかみをグリグリする。

痛がるネプギアだが、お互い本気でやっているわけではなくむしろ笑いあっている。

ポカンと理解が追いつかないイストワールの肩をジャックが叩いた。

 

「そういうことだ」

「あっ、えっと、はい」

 

イストワールが我に返った。

それを見てクスクスと笑ったミズキもカタパルトへと向かう。

 

「それじゃ、僕も行くね」

「死ぬんじゃないわよ」

「任せてよ」

 

アブネスに笑顔で返す。

そしてミズキは自らも姉妹のじゃれあいに突入した。

 

プラネテューヌにはジャッジ・ザ・ハード。

ラステイションにはブレイブ・ザ・ハード。

ルウィーにはトリック・ザ・ハード。

リーンボックスにはマジック・ザ・ハード。

ギョウカイ墓場には犯罪神。

 

今、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。




また休みのお知らせです
忙しくてあんまり進められず…続きはまた1ヶ月後になります
すいません

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