超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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参戦、第2R

ブラスティアキャノンが切り裂かれた。

反射的にブラスティアキャノンをパージしたネプギアだったが、間髪入れずにブラスティアキャノンは爆発し、ネプギアの体を衝撃が打ち付ける。

 

「あああっ!」

「これは戦いだ……!貴様達と、私!どちらかが生き残る!分かり合うなど……」

 

爆炎を突き抜けてマジックがネプギアの鼻先に迫る。

 

「有り得んのだァァッ!」

 

M.P.S.Lで振り下ろされた鎌を受け止めた。

しかし、ネプギアはその威力を抑えきれずに真下へ叩き落とされる。

 

「ああっ!くっ……!」

 

必死に逆制動をかけるネプギアの真上からなおもマジックが襲いかかる。

咄嗟にM.P.S.Lを構えるが、再び叩き落とされてしまう。

 

「地に落ちろ、女神!」

「うううっ……!フォートレス……っ!」

 

フォートレスに換装、地面に落ちる寸前にホバーを全力でふかして滑るように逃げる。

両手と両肩のM.P.S.Cをマジックに撃つが、その全てがマジックには当たらない。

1発1発が十分にダメージを与え得る弾丸ではあるものの、目標には掠りもせずに地面や壁を砕くだけ。

そのビームの雨を掻い潜ってマジックの溶岩弾が向かってくる。

 

「上……!オービタルっ!」

 

瞬時にオービタルに換装、真上に飛んで溶岩弾を避けきった。

 

「耐えきらなきゃ……!」

 

M.P.S.C(L)を撃ってマジックの動きを鈍らせようとするが、マジックは光の翼を展開。

楔形のビームがマジックを追尾するよりも大きくマジックは動き、ネプギアとの距離を徐々に詰めていく。

 

「ううっ、くっ……!」

 

ネプギアも不規則に軌道を変えてマジックを振り落とそうとするが、マジックはネプギアと同じ軌道をなぞるようについてくる。

 

(離れてくれない……!また切られる……っ!?)

 

「女神も大したことは無いな!これでハッキリした!絶望に挑むのは……っ!」

 

ネプギアのM.P.S.C(L)の銃口、その下にマジックがスルリと滑り込む。

 

「っ」

「私だァッ!」

 

マジックの鎌がネプギアを切り上げてくるのを何とか阻止する。

そのまま鍔迫り合い、お互いの武器で火花を散らす。

 

「なんで、なんでなんですかっ!?ビフロンスと戦うというのなら、協力を!」

「貴様の頭はどこまでお花畑だっ!」

「アナタ1人で勝てる相手じゃないんですよ!?」

「部下はいくらでもいる……!」

「頭を冷やしてっ!」

 

互いに離れてビームと溶岩弾を同時に放つ。

ぶつかり合い相殺されると爆発して弾ける。

 

「知ってるんですよね!?ビフロンスは、犯罪神じゃないって!」

「無論!私が忠誠を尽くすのは犯罪神様のみ!」

「だからビフロンスを……っ!?」

「そうだ!犯罪神様の魂を汚したヤツを許しはしない……!だから機を待った!」

「機会……!?」

「貴様を含む全女神を再び捕らえ、魔剣を振るうのさ!」

「魔剣……ゲハバーン!?」

「僅か3人の犠牲で犯罪神様を封じ込めた剣だ……9人もの犠牲があれば、あの女さえも殺してやれるだろう!」

「そんなことしなくても!きっと、力を合わせることが出来れば!」

「だから甘いと言っているのだァァァッ!」

 

再びネプギアに接近し、鎌を振るマジック。

ネプギアはそれを受け止めて間合いを離すが、直後にマジックが鎌を投げつけてきた。

 

「なっ、ああっ!」

 

まるでブーメランのように高速で回転して鎌が飛んでいく。M.P.S.C(L)で受け止めたが、あまりの勢いに弾け飛んでしまった。

戻ってきた鎌を掴み、マジックがネプギアとの間合いを詰める。

 

「魔剣の糧となれ、女神ィィッ!」

「っ!」

 

再びマジックが鎌をぶつけてくるのかと思い、M.P.S.C(L)を防御に使うネプギア。

そのM.P.S.C(L)がなんとマジックの手に握られた。

 

(素手でっ!?)

 

正気の沙汰ではない。

剣の刃の部分を素手で掴むのだ、容易に手が切れるのは赤子にでも想像できる。

現にマジックの手からは血が吹き出し、手のひらに大きな裂け目ができていた。

 

その時、ネプギアの脳裏に浮かんだ一瞬の景色があった。

 

(しまっ、マジックの手は!)

 

隠し武器。

 

パルマフィオキーナの存在がーーーー!

 

「あああああっ!?」

 

キンッ、と一瞬の閃光が瞬いて次の瞬間にネプギアのM.P.S.C(L)が爆発した。

衝撃で吹き飛ばされるネプギア。ネプギアがその手に握ったM.P.S.C(L)を見ると、

 

(私の武器が!)

 

砕けていた。

 

刃と銃身の部分がまるまる砕けていて、手元には柄と僅かな刀身が残るのみ。それさえヒビが入っていつ砕けるかわかったものではない。

しかしネプギアは思考をすぐに切り替える。

パルマフィオキーナの威力とか剣がどれだけもつか……そんなことよりも急務がある。

耐え凌ぐこと。このマジックの猛攻を!

 

(今はっ!)

 

爆炎を突っ切って何かが飛んでくる。

ネプギアは一か八か、それに拳を向けて殴ろうとする。

しかし、拳にぶつかったのは生身の感覚とは違う非常に強固な装甲。

 

(ドラグーンっ!?)

 

ネプギアの拳が痛みを伝えた瞬間にネプギアはその正体を把握した。

しまったと思う間もなくフェイントをかけたマジックが飛び出し、宙に浮いたネプギアの腕を握り締める。

 

「っ」

「とったぁっ!」

 

振り払う時間などない。

ネプギアの腕にパルマフィオキーナが撃ち込まれ、ネプギアは腕に走る激痛に顔を歪ませた。

 

「あっ……あああああっ!」

「そこも……もらったっ!」

 

そのままマジックがビームサーベルをまとった足でオーバーヘッドキック。

残った手で受け止めようとしたが耐えられるはずもなく、ネプギアは真下へ落下していく。

 

「あっ、うっ!」

「落ちろっ!」

 

さらにマジックが鎌の柄でネプギアを地面に叩きつける。

 

「はっ……」

「ククク……」

 

呻くネプギアの腹を足で踏みつけ、首元に鎌の刃を添えた。

腕を動かそうとするとマジックはネプギアの鳩尾を強く踏みつけて中断させる。

 

「ううっ……!」

「さあ質問だ。3秒待ってやるから答えろ」

「ぅ……!」

「お前が答えなければ国民1人1人を殺していく。いいか、3秒だ。それ以上は待たん」

 

ネプギアの左腕の前腕は真っ赤に腫れ上がってしまっていた。怪我の症状は詳しくわからないが、今はもう動かそうとすると激痛が走るので動かせない。

そうでなくても身じろぎ一つすれば肌を切り裂くほど密着した鎌のせいで迂闊な動きができない。

しかもM.P.S.C(L)は手の届かない場所に落ちてしまっていた。

 

「ゲハバーンはどこにある?教会跡地にはなかった、お前は知っているのだろう?」

「わ、私は……!」

「1……」

「……!」

「2……」

「げ、ゲハバーンは……!ゲハバーンはもう、ありません……っ!」

「……なに……?」

 

今はこれしか方法が……!

 

「私達が壊しました!あんなもの……私達には必要ないんです!」

 

大嘘だ、ハッタリだ。

だがこの嘘を貫くことが出来ればマジックは引き下がってくれるはずだ。

 

「……フ、フフ………ククク、ハハハハッ!」

「……っ!?」

「そうかそうか、貴様の姉か……もしくはミズキとかいう男か?隠し通すならばあの男の力が役に立つかもなぁ……」

「違っ、本当にゲハバーンは!」

「見苦しいぞ。お前の口は嘘を吐こうとも、体はその嘘を隠しきれない」

 

僅かな筋肉の動き。呼吸の乱れ。心拍の揺らぎ。所作、仕草。

SEEDによる観察はその全てを鮮明に捉えてしまう。

 

「お前はここでしばらく眠っていろ。起きた頃には全部終わっているはずだ」

 

ネプギアの目に涙が滲んだ。

任せたのに、勝つことも出来ず。あまつさえネプテューヌで手一杯のミズキのところへ敵を行かせてしまう。

 

「どうして……っ!」

「………」

「戦いなんて手段、なんで選んだんです⁉︎争わなくても世界は変わる、変えられるのに!」

「そんな悠長なことは言っていられない。それに我らが目指す世界はお前達とは相容れないものだろう?」

「どうして、目指す目標は同じのはずなのに、なんですれ違っちゃうんですかぁっ!」

「目標は違えど、道が違えば敵同士だ。だからこの世から戦乱は消えんのだ」

 

マジックが鎌を持ち上げ、柄の部分を鳩尾に向けた。

マジックが鎌の柄をネプギアに振り下ろして気絶させようと腕を上げた瞬間だった。

ネプギアはXラウンダー能力で、マジックはざわめいた空気の揺れで。

接近する何かを知覚した。

 

「ーーーッ!?」

 

マジックが振り返ると遥か遠くに紫の光が瞬いている。

空が鳴くように、空気が怯えるように震えている。それを敏感に肌で感じとってマジックは一瞬戦慄した。

 

(今だっ!)

 

ネプギアも何か来るという予兆を感じた。

しかし、ネプギアは予兆を感じながらも振り返ったマジックの一瞬の隙を見逃さなかった。

 

「ぬっ!?」

「っ……!」

 

ネプギアが自分の腹に乗ったマジックの足を払い除けた。

バランスを崩したマジックがふらつく足を着地させる前にネプギアが回転してマジックの足元から離れる。

 

「貴様ッ……!」

 

足を着地させてネプギアを睨むマジックだったが、空気のざわめきがネプギアに注目することを許してくれない。

いよいよ空気の揺れは地震でも起きたかのように大きくなり、ゴォという音を立ててマジックの鼓膜を震わす。

 

そして空気の音が一瞬だけ止む。

それと同時にマジックは再び振り返った。

目の前にいたのは見覚えのある顔。

 

(バカなっ!?)

 

こんなに近かったか?

さっきは点のように見えた光だったのに。

もうその光は人の形を取って自分の目の前にーーーー

 

「うぐあっ!?」

 

マジックが吹き飛ばされた。

宙返りして両足と片手を地面に擦り付けて必死にブレーキをかけるマジックの目の前で太刀を構えていたのは女神。

暴走させたはずの女神。

ネプテューヌはそのままマジックに反撃の時間を与えずーーーー!

 

「はっ!ふっ、たああっ!」

「がっ、ぐっ、っ!」

 

鎌で辛うじて攻撃を防ぐマジックが凄まじい勢いで後退していく。

攻撃を受け止めてはいてもその衝撃は蓄積して後退は加速していく。

そしてその連撃は加速していき、ネプテューヌの必殺剣がマジックを襲う!

 

「ビクトリィー・スラッシュ!」

 

ネプテューヌがマジックにV字の斬撃を叩き込む!

 

「があっ、ぐあっ!」

 

鎌で受けたマジックはあまりの威力に壁に吹き飛ばされ、その体を埋めた。

その直後、まるで斬撃は受け止めても衝撃は受け止められなかったかのように壁にV字の亀裂が走る。

 

「が、ぐ……っ!」

 

マジックが壁から離れ、膝をつく。

ネプテューヌは体の緊張を解き、太刀を構え直す。

 

「貴様……!」

「来なさい、マジック!アナタは私が倒す!」


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