超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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リベンジ

マジックの後ろをネプギアが追いかける。

マジックの機動性は確かに高いが、ネプギアが振り落とされるほどではない。

 

「逃がしませんっ!」

 

ネプギアが風で揺れる銃身を必死に抑えながらM.P.S.C(L)を発射する。

 

「鬱陶しい……!」

 

マジックはそれをかわしながらドラグーンを射出。

光の翼の加速でネプギアを引き離しながらドラグーンによる射撃を行う。

 

「っ、くっ、逃げ、ないで……っ!」

 

複雑にネプギアをからめとろうと乱射されるドラグーンを避けながらネプギアが僅かな隙を突いてM.P.S.C(L)を放っていく。

するとマジックがいきなり凄まじい速度で後退してきた。

 

「っ!?」

 

いや、マジックは加速をやめただけだった。

いつの間にかとんでもない速度にまで加速していたネプギアは突如加速をやめたマジックを追い越してしまう。

 

「そこだっ!」

「っ、くうぅっ!」

 

背中を見せたネプギアにマジックが切りかかる。

しかしネプギアも黙ってやられるわけもなく、反転して鎌を受け止めてみせた。

 

「ぅ……!」

「ふんっ!」

 

マジックの光の翼が展開し、凄まじい推進力でネプギアを押していく。

ネプギアもスラスターを全開にして押し返すが敵わない。オービタルの推力もマジックの光の翼の前では大した抵抗にはならない。

 

「う、う、あああっ………!」

 

必死に抵抗するネプギアだったが、マジックの動きを鈍らせることすらできない。

そのまま高空にまで連れていかれ、マジックの膝蹴りがネプギアの腹にめり込む。

 

「うっ……!」

「そらっ!」

「ああっ!」

 

怯んだ隙にマジックのビームサーベルを展開した回し蹴りがネプギアの脇腹に当たる。

ネプギアは吹き飛ばされた後に必死に体を立て直して追撃に備えたが、マジックは追撃をしない。

ズキズキと痛む脇腹を手で抑えるネプギアをマジックは高飛車に見ていた。

 

「っ………?」

「なに、お前が教えろ教えろとうるさいから教えてやろうというのだ。私が女神になにをしたかをな」

 

ドラグーンがマジックの翼に収納されていく。

何か怪しい動きをしようものならすぐにM.P.S.C(L)を撃ち込もうと身構えるネプギアだったが、マジックの構えには殺気がない。

 

「あの爆弾は強力な脳波を飛ばすものだ。ちょうどニュータイプが感じるような脳波をな」

「…………」

 

だから自分やXアストレイは吹き飛ばされたのか。

しかしネプテューヌはニュータイプではないはず。何故ネプテューヌにぶつけるような形であの爆弾を使ったのか……?

 

「それこそが本質だ。私は女神にダメージを与えるためにあの爆弾を使った訳では無い」

 

ネプギアの思考を読んだかのようにマジックが喋る。そしてマジックは妖艶に唇を舌で舐めた。

 

「NT-D……聞き覚えがあるだろう?」

「……ジャッジ、の……」

「そして貴様の姉のものでもあるな。お前達が記憶と共に失った力を使っているというのなら……あの女神の中にもNT-Dが眠っているはず」

 

確かにまだネプテューヌはNT-Dを使うことができない。だがそれがなんだというのか、真意を計りかねるネプギアにマジックが説明を続ける。

 

「そしてNT-Dの発動条件はニュータイプから発せられる敵意をぶつけること……ここまで言えばわかるだろう?強力な敵意は女神の奥底のNT-Dにまで届き、強制的にそれを発動させた……」

「でもっ、NT-Dは……!」

「だからこそ、未だにコントロールもできない女神を選んだ!予想通り、ヤツはNT-Dに飲まれて暴走を始めた……!ニュータイプではない私を襲ったのは予想外だったが、ここまで離れればもう追うこともできないだろう!」

「アナタは、私達に同士討ちをさせるつもりだって言うんですか!?」

「そうだ!アイツを止められるのは誰だ!?どんな傷を負っても立ち向かい続ける女神を止めるには……殺すしかないかもしれんなあ!」

「っ、アナタはッ!なんてことをッ!」

「作戦は成功した!未熟な女神のお陰で戦力差はいくらでも翻る!爆弾のように手当り次第にアイツは殺し続けるのだ……仲間を!自分の体で!誰かに操られてな……!」

 

マジックが鎌を振り回して体を慣らし、ネプギアにその先を向けた。

 

「そんなことは起こりませんっ!ミズキさんが、きっとミズキさんが止めてくれます!」

「クハハ、無駄無駄!あの男は守るべき女神に殺され、お前もここで私に殺される!」

「お姉ちゃんはミズキさんが絶対に止めてくれる……!だから、だから私は!」

 

ネプギアがマジックにM.P.S.C(L)を発射した。

マジックはそれを鎌で真っ二つに切り裂き、ネプギアに突進してくる。

 

「ハハハハッ!」

「アナタに勝つ!前みたいに負けはしませんっ!絶望に未来は渡せない、アナタに……アナタなんかにッ!大切な命を渡しませんっ!」

 

ネプギアのM.P.S.C(L)とマジックの鎌がぶつかり合う。

お互いに渾身の力を振り絞って叩きつけた。

そしてマジックの鎌がカン、と音を立てて弾かれた。

 

(っ!)

「やああーーっ!」

 

ネプギアの拳がマジックの顎を捉えた。

マジックは殴り飛ばされ、一瞬仰け反るがすぐにネプギアに向き直し、ネプギアの顔に向けて掌底を繰り出す。

 

「っ、く!」

 

ネプギアは上体を逸らしてそれをかわす。

ネプギアの視界でマジックの掌からビームが発射されるのが見えた。

 

(隠し武器!)

 

パルマフィオキーナをかわしながらネプギアがバク宙、足でマジックの顎を下から蹴ろうとするがマジックは一歩離れて避ける。

 

「っ!」

「ぬんっ!」

 

お互いに間合いをとった2人がまたぶつかり合う。

 

「っ、ぺっ」

「うっ!」

 

マジックが口の中の血反吐をネプギアの顔に吐きかけた。

ネプギアに殴られた時の跡、その傷から吸い出した血はネプギアの目にかかって一時的に視界を封じる。

 

「食らえ!」

 

マジックがネプギアとの間合いを取り、ネプギアの傷口……マジックがビームサーベルによる蹴りを食らわせた部分にまた蹴りを叩き込む。

 

「っ、ああああっ!」

 

痛みに悶絶しながら吹き飛ぶネプギアにマジックが溶岩弾をいくつも撃ち出す。

薄目の視界で防御魔法を展開して必死に防御するが、衝撃に体が軋む。

 

「ドラグーン!」

 

ネプギアが目の血を拭った時にはマジックのドラグーンが迫っているところだった。

ネプギアが脇腹を抑えながらビームをかわすが動きに冴えがない。

 

「は、やい………!ああっ!」

 

ネプギアの足をドラグーンのビームが掠めた。

それを皮切りにネプギアにドラグーンのビームが命中し始める。出来る限り防御魔法で弾くが、ついにネプギアの背中にビームが直撃する。

 

「うっ、くっ!」

「裂いてやる!絶望に挑むのは……私だッ!」

 

マジックが光の翼を展開しながら怯んだネプギアに突進する。

そのままネプギアは肩から真っ二つに裂かれてしまうように見えた、が。

 

(今……!)

「がっ!?」

 

マジックが後ろからぶつかってきた何かに体勢を崩された。

その瞬間にマジックに生まれた空白の思考の時間を逃さずにネプギアはM.P.S.C(L)でドラグーンを1基沈める。

 

「何が……っ!?」

 

マジックにぶつかりながらすれ違ったのは大きなコンテナ。

それは真っ直ぐに飛びながらネプギアの元へと向かっていく。

 

「行かせるか!」

「コレは渡しません……!」

 

マジックがドラグーンをコンテナに向かわせ、同時にネプギアもコンテナを迎えにいく。

ドラグーンのビームがコンテナ目掛けて発射されるが、コンテナはその外壁だけをパージしてビームを防いだ。

 

「そこっ!」

 

コンテナに気を取られていたドラグーンがネプギアと射撃で1基落とされ、さらにネプギアに切りつけられて1基落ちる。

そしてコンテナの中に入っていたものーーブラスティアキャノンの砲身ーーを掴んで即座にノーマルに換装。M.P.S.Lに接続してマジックに向けた。

 

「チッ!」

「充填完了……完成版ブラスティアキャノンの!」

 

マジックが上に跳ねる、それと同時にネプギアのブラスティアキャノンから純白のビームが放たれた!

 

「くっ、おおあああっ!」

 

マジックは避けきったもののその余波で吹き飛んでしまう。

姿勢を必死に直すマジックはネプギアが砲身を動かすのを見た。

 

「薙ぎ払い、ならアァーーーッ!」

 

ネプギアのブラスティアキャノンの薙ぎ払い。逃げ遅れたドラグーンは巻き添えになってビームの中に飲み込まれていき、3基が塵も残さず消える。残りのドラグーンは2基。

 

マジックは光の翼で逃げながらネプギアに溶岩弾を撃つ。

しかしそれすらもブラスティアキャノンの射線上に重なり、溶岩よりも遥かに温度の高いビームで消え去る。

 

「くおおおっ……!ドラ、グーン!」

 

残り2基のドラグーンを動かし、ネプギアに向かわせる。

 

「っ、限界……!」

 

ネプギアはブラスティアキャノンの照射をやめてドラグーンのビームを避けた。

僅か2基になってしまったドラグーンはさっきまでと比べて格段に避けるのが容易だ。

ネプギアはドラグーンの射程距離から離れてブラスティアキャノンの再チャージを開始する。

 

「2度と撃たせはせん……!」

 

しかし、ネプギアには引っかかることがあった。

 

「アナタ、今、さっき……!」

「ミラージュコロイド散布、光子散布……光の翼ッ!」

 

マジックが何人にも分身してネプギアに突撃する。

ブラスティアキャノンをチャージしているために牽制の射撃すら行えないネプギアに近接攻撃は脅威。

 

「っ、く!」

 

だからこそネプギアは距離をとって逃げようとする。

しかし光の翼の推進力は異常、オービタルに換装できないためにノーマル状態になっているネプギアの機動力ではそう長く逃げられはしない。

それでもネプギアはほんのわずかでも時間を稼いで問い質したいことがあった。

 

「アナタはっ!絶望に挑むって……!」

「………チッ」

「どういうことなんですかっ!?」

「今ここで死にゆく貴様に、話すなど無駄だ!」

「教えてくださいっ!もしかしたら、一緒に戦えるかも……!協力できるかもしれませんっ!」

「甘いことを……ッ!」

 

ドラグーンがネプギアの背後から射撃する。

ネプギアは反射的にそれを横に動いて避けるが、その僅かな時間だけでマジックはネプギアに迫った。

 

(間合いに!?)

「言うなァァーーーーッ!」

 

マジックが目にも留まらぬスピードで鎌を振る。

次の瞬間、ネプギアのブラスティアキャノンは真っ二つに切り裂かれた。


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