超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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マジック・ザ・ハード

「……もうすぐ日が沈むな」

「マジック様?」

 

マジックはプラネテューヌ教会の屋上に立ちながら夕焼けを見ていた。

日は半分以上沈んでいて、空は赤く染まっている。

その横にいるのはリンダだった。

 

「それがどうかしましたか?」

「いや……リンダ、一旦ギョウカイ墓場へと戻れ」

「はい?な、なんで!?」

「別に他意はない。この箱を届けてきてほしいだけだ」

 

マジックがリンダに箱を手渡した。

箱は軽く、機械や何かが入っている様子はない。

 

「なんすか、これ?」

「書類だ。重要な書類でな、貴様に任せたい。よもや断るまいな」

「は、はい!わかりました!絶対ギョウカイ墓場に届けてみせます!」

「頼んだぞ、リンダ」

 

リンダは大仕事を任されたのが嬉しいのか、微笑みながら敬礼をしてマジックの前から去る。

それを見届けてからマジックはギョウカイ墓場の方角を見た。

 

「……失敗か……ついに犯罪神様の復活をこの目で見ることは叶わなかった……」

 

マジックは戦士だけでなく、軍師としても優秀だ。

だから彼我戦力差も完全に見えていた。

この戦、勝てる可能性は非常に低い。しかし、策はある。活路はある。そこを進む。

だが……そんな綱渡りに巻き込みたくはなかった。

 

「許せ、リンダ。……我が身は既に犯罪神様に捧げた。裏切ることは許されんのだ」

 

マジックは目を伏せた。

その時、ギョウカイ墓場とは反対方向から爆炎が上がった。

 

「来たか」

 

マジックは巨大な鎌を握りしめる。

 

「気付いたよ、リンダ。犯罪神様は私達の知る犯罪神様ではないのだな。記憶を奪われた貴様を助けてやりたかったが、その方法もわからん。だが……」

 

私が忠誠を誓ったのは犯罪神だ。ビフロンスではない。

私が欲しいのは平和などではない。ただ、犯罪神が治める世界が欲しいだけだ。

もう助けられない。ほとんど抜け殻と化した犯罪神のために……私は忠誠を尽くし続けよう。

 

「私は犯罪神様のために戦おう。残った最後の四天王として……今は亡き犯罪神様のために!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

プラネテューヌの中心から犯罪組織のEXモンスターが襲い掛かってくる。

空を飛ぶ女神に対抗して鳥型や龍型のモンスターが目立つ。

爆炎が起こった場所はまだ遠い、空を飛ぶモンスターですら視界にすら映らなかった場所から白い閃光が瞬く。

 

その瞬間、モンスター達は一瞬にして凍って崩壊していく。

空を飛んで急行していたモンスター達はほとんど消え去り、氷漬けにされた。

 

「ツインアイシクルサテライトキャノン……」

「今よ、行って!」

 

道が開いた。

サテライトキャノンによる先制攻撃で敵の軍団の中央には大きな穴が開く。

そこを風よりも速く女神達が突き抜けていく。

 

「私は地上を援護いたしましょう」

「んじゃあ私は空の敵でも潰してる」

 

ブランが道を逸れ、ベールは下降していく。

ベールがドラグーンによる射撃と目にも留まらぬ槍さばきで犯罪組織の構成員を倒していき、ブランは横から迫ってくるモンスターの中心部に行ってツインバスターライフルを構える。

 

「お前らに未来はねえ……消えろ!」

 

両腕を広げてツインバスターライフルを構え、最大出力で発射する。

ブランの両脇の敵が消えたが、さらにブランは回転し始めた。

ローリングバスターライフル。ブランを中心にして敵モンスターは次々と灰になって消えていく。

 

しかし、敵はまだ追いついてくる。

早くも前方にモンスターが迫ってきていた。

 

「私とユニで道を開くわ」

 

ノワールの体が赤く染まった。

ユニもそれに合わせて速度をあげる。

 

「ネプギア、頑張りなさいよね!」

「ネプテューヌ、しっかりやるのよ」

 

ネプテューヌとネプギアが返事をするよりも早く2人が駆けた。

トランザムによる機動力にモビルアーマーの加速は追いつく。

信じられない速度のままにユニのミサイルポッドが射出され、ノワールもその先へ飛んでいく。

 

ユニのミサイルポッドは敵モンスターを逃げ場のない面攻撃で殲滅し、残った敵もノワールが次々と切り裂いていく。

 

みんなが開いてくれた道をネプテューヌ、ネプギア、ミズキが通っていく。

 

教会まではそう時間はかからなかった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

プラネテューヌ教会、屋上。

さらにその上の教会の天辺の上にマジックは立っていた。

針の先程しかない足場なのにマジックの体は揺らぐ様子すら見せない。

 

「………来たか」

 

マジックの視界に3人の影が映った。

ガンダムAGE3の力を得たネプギア、変身したネプテューヌ、そして見覚えのない……しかし見たことのあるシルエット。

 

「先制攻撃を仕掛けます……!」

「僕が追い込む!」

「私が決めるわ!」

 

ノーマル状態のネプギアがM.P.S.Lを構えた。

銃口に充填される凄まじいエネルギーが解き放たれ、ビームとなってマジックに向かっていく。

マジックはそれを足場を蹴って軽く飛んで避けた。

 

「マジック……!」

「来るか、ガンダム!」

「いっけえええええっ!」

 

ガンダムの背から4基の円錐形の物体が分離した。

さらに腰のサイドアーマーもまるで鮫のように歯を開き、マジックへと飛んでいく。

合計6基の物体はコードに繋がれたままマジックを囲むべく動く。

 

Xアストレイ。またの名をドレッドノート。

背中には4基のドラグーンがX字に装備されていて、それがこの機体の名前の由来となっている。

さらに両腰にはプリスティスビームリーマーと呼ばれる特殊なドラグーンを装備したガンダムだ。

 

それらが全てマジックに向けられた。

まずはプリスティスによるビーム。

 

「ふっ、はっ……」

 

マジックは舞うようにプリスティスの2発のビームを避ける。

しかしドラグーンがマジックに正確に銃口を合わせる。

ドラグーンの砲口は1基につき10門。4基ならば40門。

拡散し、逃げ場を奪うビームがマジックを襲った。

 

「ふん」

 

しかしマジックは自分の前面を完全に防御魔法で覆い、拡散ビームを防ぐ。

しかし拡散ビームが防御魔法に弾かれた瞬間、ネプテューヌはマジックの前にいた。

 

「たああっ!」

「っ」

 

マジックは鎌の柄で受けたがネプテューヌの勢いに押される。

三位一体、珠玉のコンビネーションだ。

 

「ふん、何をしに来た?歯も立たなかった貴様が……」

「あの時はそうかもしれなかった……でも今は違うわ!」

「同じだよ、何も変わらん!」

「どうかしら、ねっ!」

 

ネプテューヌがマジックを押すのと同時にその反作用で後退する。

それと同時にネプギアがマジックの後ろに回り込んだ。

 

「ええいっ!」

「チッ」

 

M.P.S.Lによる斬撃。

マジックは振り向きながら身を沈めて避け、2発目の斬撃は再び鎌の柄で受け止めた。

 

「歯が立たないのは、今度はアナタの方です……!」

「貴様らにかまっている時間はない。残り6人もの女神を相手しなければならないのだ」

「いつまで、その余裕が続くか!」

「スーパードラグーン……!」

 

マジックの背から8機のドラグーンが分離した。

瞬時にネプギアに狙いを定めたが、ネプギアはすぐに後退してビームから逃れる。

 

「っ」

「ドラグーンは僕が抑える!」

「もう貴様にも遅れはとらん!」

 

Xアストレイとマジックのドラグーンが射撃戦を繰り広げた。

Xアストレイのドラグーンの方が数は少ないものの、砲口の数では圧倒的にXアストレイが勝っている。

範囲攻撃でマジックのドラグーンを追い詰めようとするが、ドラグーンはビームの間を縫うように避けて攻撃が当たらない。

 

(動きが違う!)

「貰ったぁっ!」

 

マジックが溶岩球を魔法で放つ。

Xアストレイにその魔法が向かっていくが、その前にドラグーンが立ちはだかる。

 

「バリアを!」

 

Xアストレイのドラグーン4基の間にビームの膜が張られ、溶岩球を防いだ。

Xアストレイのドラグーンはバリアを張ることすら可能なのだ。

 

「そこよっ!食らいなさい!」

「甘い!」

 

後ろからネプテューヌがマジックに切りかかるが、その前にマジックの足がネプテューヌの腹にめり込んだ。

 

「っ、く……!」

 

ネプテューヌは吹き飛ばされるものの、すぐに体勢を立て直す。

そして間髪入れずに次はネプギアの攻撃。

 

「読めた……当たって!」

 

オービタルへと換装したネプギアのM.P.S.C(L)から楔型のビームが放たれた。

横に広いビームのために上に飛んで避けたマジックだったが、

 

「なっ」

 

クンッ。

 

ビームが曲がる。

マジックを追尾するように軌道を変えたビームがマジックに届いた。

 

「ぐっ!」

 

鎌で受け止めたが、後退することになる。

その隙を逃すほど3人は甘くない。

言葉を介さずとも3人はマジックを取り囲んで一斉に攻撃を仕掛けていた。

 

「ここで……!」

 

ネプテューヌが太刀で切りかかる。

 

「追撃します!」

 

ネプギアがM.P.S.C(L)の引き金に手をかける。

 

「落とすっ!」

 

Xアストレイのドラグーンがマジックを取り囲む。

 

絶体絶命、完璧に決まった連携を無傷で耐えるのは不可能。

今までのマジックならここで大ダメージを受けて戦闘不能に陥っていたところ。

しかし、マジックは……不敵に笑った。

 

「フッ……他愛ない」

 

衝撃でマジックの眼帯が外れた。

フワリと風に乗って落ちていく眼帯。開いた目の色は左目と同じ真紅の瞳。その瞳は……ハイライトを失っていた。

 

 

パリィ………ィ……ィィ………ン………ッ……!

 

 

SEED、発現。

 

「いくら策を弄しても……私はその先を行く」

 

マジックが鎌を振りかぶり、一瞬で気を漲らせた。

 

偶然。ほんの偶然だった。

この時、3人の位置は1つの平面上にあった。

 

「アポカリプス……」

 

3人がその予兆を感じるのは遅すぎた。

1番近くにいたネプテューヌはマジックの全身に漲る力を見極め、ネプギアとXアストレイはニュータイプ能力で危険を察知した。

ネプテューヌは後退を開始し、ネプギアとXアストレイも回避運動にシフトする。

 

……本当に偶然だったのだろうか。

もし、3人がこの平面上に動いたのではなく……“動かされた”のなら?

マジックは予想を遥かに超えて、恐ろしい。

 

「ノヴァ………ッ!」

 

ネプテューヌとネプギアは防御魔法、そしてXアストレイは左手に装備されたシールドでガードを試みる。

だがその威力はもはやそんな陳腐なガードでは威力を逸らしもできないほど……!

 

『……ッ!』

 

遠くの女神はその斬撃を見ることが出来ただろうか。

マジックが自分を中心に円形に振り回した鎌が斬撃を振り撒く。

綺麗な円盤状、鎌の刃の厚さほど、ほんのmmもないような厚さだった。

しかしその攻撃範囲は極大、その威力をまた、極大だった。

 

「あああああああっ!」

「きゃあああああああああ!」

《うわああああああっ!》

 

ネプテューヌ、ネプギア、Xアストレイが吹き飛ばされていく。

マジックは莫大なエネルギーの中心で口の端を歪めた。

 

「他愛ない……フッ、他愛ないな」

 


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