超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ゼロ

「ぬっ!」

 

トリックがゼロシステムで動きを予測してブランに舌を伸ばす。

ブランへと真っ直ぐに向かっていく舌を見てブランは左手を横に払う。すると大きな翼がその手の動きに呼応するようにしてブランの目の前を払い、舌を弾き返した。

 

「なっ!」

 

トリックは驚愕する。

未来を見ていたはずの攻撃が防御されたこと。そしてあの強烈な一撃を弾かれたこと。さらに翼には傷もついていないこと。

次に、ブランが目の前に迫っていたこと。

 

「オ、ラァ!」

「ぶべっ!?」

 

ブランの右ストレートがトリックの頬にめり込んだ。するとブランの何倍もの大きさのトリックがぐらつく。脳がぐらつく感覚さえ覚えた。

そしてブランは一回転。

その翼をビンタするかのようにトリックの頬に続けざまに叩きつける!

 

「ぶぼおっ!?」

 

トリックがついにひっくり返った。

そしてブランはまた大きく羽ばたいてトリックから大きく離脱する。

 

《ブラン……》

「ああ、大丈夫!今まだにないくらい力が漲ってるぜ!」

 

ブランが自分の体を翼で包み込む。

そしてそれを開くとブランは両手に巨大なライフルを持っていた。

ツインバスターライフル。合体させることで1つのライフルとしても扱えるライフルをブランは合体はさせずに両手に握る。

 

「ロム、ラム!」

「う、うん!行こう、お姉ちゃん!」

「サポートするね……?」

 

ゼロシステムを持たないロムとラムはトリックに攻撃を当てることが出来ない。

だからこそサポートに徹してブランを援護しようと考えていたが、ブランは2人の背中を優しく手で押した。

 

「いいや、一緒に戦うぞ」

「え?でも……当てられないし……」

「避けられない攻撃をすればいい。ゼロの破り方は私自身が見せたはず」

「試したことのない、攻撃……データで予測できないこと……」

「そっか、新技ね!わかったわ、やってみる!」

「月が出てなくたって……私達は、強い……!」

「その意気だ!やるぞ!」

 

ブランが左手に持ったツインバスターライフルの銃口をトリックに向ける。

 

(予測できない……!?ならば、防御か!)

 

「その判断は誤りだ!」

 

ツインバスターライフルの引き金がカチリと引かれるとそこから強力なオレンジのビームがトリックに向けて飛んでいく。

トリックは腕を組み、持ち前の装甲とタフさでガードしようとしていて、その腕にビームがぶつかる。

 

「ぬ、ぬおおおっ!?」

 

しかし、ツインバスターライフルの威力はビームライフルの範疇を超えていた。

銃ではなく、砲。

ツインバスターライフルは最大出力ならば戦略兵器と言っても過言ではない。

出力を絞ったとはいえ、それでもその熱と衝撃はトリックの装甲を溶かし、退けるほどだった。

 

「なん、という威力……!」

 

後退してしまったトリックが焦げ臭い匂いを放つ腕をさする。

ブランのツインバスターライフルからは膨大な熱量のビームが発射されたことを示すように煙が立ち上っている。

 

「このまま!消えちゃえばいいのよ!」

 

杖の先をモーニングハンマーのように尖らせたラムがトリックに向かう。

 

「ぬっ!」

 

しかし、その攻撃は読まれている。

トリックが伸ばす舌がラムの杖を弾いた。

 

「んっ!」

「私も……!ええ〜い……っ!」

「む!?痛いっ!?」

 

今度はロムがラムの真似をするように杖の先を凍らせてトリックを殴る。

トリックはまるで素人のようにそれを食らってしまい、いくら非力なロムの打撃と言えども脳が揺れる。

 

ゼロに完全に身を任せていたのが間違いだった。もし、ゼロにもたれかかっていなければこんな不測の事態にも簡単に対応できたはずなのに。

 

「お、のれ!幼女を手放せるか!血塗れの幼女を!愛してくれてるんだろう!?そんな顔をするな、素直じゃないなあっ!そんな顔は削り取ってやる!」

《トリック……一体何を……》

「もうアイツはゼロに飲み込まれちまった。自分の欲望がゼロと絶望に混ざってメチャクチャになっちまってる」

 

ブランは喚くトリックを冷ややかな目で見つめている。あるいはそれは憐憫なのかもしれない。

決して同情はできないし、共感も理解も納得もできない。ただ哀れだと思う。どんな意思であれ、その意思を捻じ曲げられてしまったことには。

 

「……だから殺してやる。アイツは、私が。今度こそ、完全にな」

 

きっと、そうするしか解放はできない。

だから殺す。

憎しみでもなく怒りでもなく、慈愛から来た殺意を以て殺す。

時にはそれが救済になることもある。

 

「あああああああっ!」

 

トリックの喉の奥から体液に塗れた長い砲身が出てくる。

 

「焼けろ……!」

 

「っ、来る……」

「どう来るの!?」

「上だ!飛べ!」

 

全員大地を蹴って空を飛ぶ。

その瞬間、トリックの口から生えた砲身から発射された真っ白なビームが辺りを照らしながらブランがいた場所へ飛んでいく。

ほんの一瞬だけのエネルギーの解放。にも関わらず巻き添えをくらった大地は赤く焼け爛れ、ルウィーの建物をどこまでも削っていく。

 

「っ、クソ……!」

《この、威力は……!》

 

トリックが使ったのはサテライトキャノンだった。

しかし、今は夜でもないしエネルギーをチャージした様子もない。

 

《あらかじめエネルギーを充填していたってこと!?》

「ううん、私達のサテライトキャノンは魔力で撃つ……」

《……魔力の量も段違いってことだね》

「消費を抑えるために一瞬しか撃たなかったんでしょうけど。まあ、一瞬しか撃てなかった可能性もあるわね」

 

トリックの口のサテライトキャノンは煙をあげながら沈黙している。

そしてトリックの舌がまた蠢き始めた。

 

《何をする気だ……?》

 

トリックの舌がトリック自身を守るように動く。

そしてトリックの2枚の舌はそれぞれ自らの両手に突き刺さった。

 

「な……!」

 

トリックの舌が自らの両手を切り落とす。ボトンとトリックの両手が落ち、光になって消えていく。

 

「自傷……?よりにもよってゼロが!?」

 

しかし、ブランはコレが単なる自傷ではないことを思い知らされる。

それはトリックの傷口がモコモコと盛り上がり始めていたからだ。

 

「あ、ァ、うおおオお!ぜぇロぉ!そうヵ、やっぱりソウだよなあ!?愛シて……いるかラぁ!」

 

トリックの傷口を突き破り、新たに2つの銃がその姿を見せた。

トリックの腕から生えるような形で突き出ているその銃は奇しくもブランと同じような形をしている。

 

《ツインバスターライフル……!》

 

「ああぁァぁアアあああァ!」

 

トリックのツインバスターライフルからビームが発射される。2つのビームはあらぬ方向に飛んでいくが、トリックはそのまま腕を曲げ始めた。

 

「っ、避けろ!」

 

するとビームがまるでムチのように動いてブラン達を薙ぎ払う。

ブランは身を沈めて避けたが、他は反応しきれない。

ロムとラムは避け損ねて片足や片手がビームのムチで薙ぎ払われる。

 

「きゃあっ!」

「あうっ……!」

 

そして両手を失ったGセルフも頭部をビームが掠めてしまう。

 

《うあぐっ!》

「ミズキ!ロム、ラム!テメェッ!」

 

ロムとラムは体勢を崩しながら地面に着地したが、Gセルフは墜落してしまう。

もはやGセルフは戦える状態ではない。両腕と武装の殆どを失っているのだ。

なのに、いやだからこそ、トリックの舌がGセルフへと向かっていく。

 

「だぁぁぁあァメじャナいかァぁっ!オれからヨうジョをうばっチゃああアアあっ!」

「させるか、このド変態!」

 

ブランが羽でその舌を2枚とも弾いた。

そしてブランは無骨なツインバスターライフルを合体させ、トリックに照準を向ける。

 

「ケリをつける……!これ以上長引かせねえ、ミズキはやらせねえっ!」

「アアあああははハハハはッ!だぁぁァァァアめなんだゾぉぉぉオオッ!?」

 

トリックも両手のツインバスターライフルと口のサテライトキャノンの砲口をブランに向けた。

2人の大火力兵器にエネルギーが集中していく。銃口が光り輝く。光が溢れ出す。

ブランの目には網膜の上に照準が映し出されていた。ゼロが見定める最高の照準に従い、必中の狙いを定めた。

 

ロックオン。

 

引き金を引いた。

 

「ツインバスターライフル……!最大出力ッ!」

 

2人同時に極太のビームが放たれ、2人の中心でぶつかり合う。

あまりの熱、有り余りすぎる威力。

2人のビームは灼熱の奔流を巻き起こし、相手を蒸発させようとただ真っ直ぐに進み続ける。

そのビームの近くに寄るだけでも火がつくほどの熱さ。現に大地は発火し始め、暴風を巻き起こしている。

 

 

無理だ!無理だ!無理だ!あの威力では敵わない!

 

「知ってる、んだよ……!言われなくてもッ!」

 

逃げろ!逃げろ!逃げろ!

 

「逃げ、たら……!ミズキが焼かれるだろうが!」

 

ゼロが撤退の指示を出し続けるが、ブランはそれを無視し続ける。

しかしゼロの計算は正確無比、ブランのビームは押されていた。

 

「う、く………!」

「ひゃはハぁ!」

「ッ!」

 

舌が来る!

 

「知ってる!ぐあっ!」

 

さらにビームから回り込むようにしてトリックの2枚の舌がブランに迫る。発射の姿勢を崩せないブランはそれを避けられない。

肩に舌がぶつかる。

 

「ぐ、あ……っ!」

 

何回も何回もブランに打ち付けられる舌の連撃。それがブランの翼に大穴を開けた。

 

「ぐあああっ!」

 

ガクンと崩れる姿勢を無理矢理押さえつける。

さらに容赦なく加わる連撃がブランの体にとてつもないダメージを蓄積していく。

 

逃げろ!逃げろ!

 

「う、るせぇ……ッ!」

 

逃げろ!逃げろ!……死ぬぞ!

 

「私は1人じゃねええェェェッ!」

 

ブランが叫んだ瞬間、トリックの周りに巨大な魔法陣が出来上がる。

それはトリックを完全に取り囲んでしまうほど大きく、莫大な魔力を孕んでいる。

 

 

ーーーー『WHITE REFLECTION』

 

 

「あァ?」

「お姉ちゃん直伝の……禁断魔法……!」

 

その魔法を唱えていたのはロムだ。

杖を握りしめ、ありったけの魔力を注ぎ込む。

 

「月がなくたって!夜空に輝く北斗十字……!」

 

トリックを囲む魔法陣が光り輝き始めた。

しかしトリックはそこから動く気配はない。

逃げない?いや、逃げられない。

 

逃げれば一瞬でツインバスターライフルがトリックを飲み込む。かと言って逃げなければ……!

 

「追い詰められてたのは私じゃねえ!お前だ!」

「月がなくても、星が力を貸してくれる……!ノォ………ザン……ッ!クロスっ!」

 

ロムがノーザンクロスと唱えると、魔方陣めがけて天から巨大な氷の魔力が降り注ぐ。

十字を描く巨大な5つの魔力の塊。それがトリックにぶつかって凍てつく冷気をぶつける。

 

「うおおおァあああアあアアァ!?」

 

トリックの皮膚がパキパキと凍りついていく。

だがトリックの体力と防御力は尋常ではない。

だから、まだ、終わりじゃない!

 

「まだ、まだ……!夜空に輝く南十字!」

 

その反対側、地球の裏側にある十字星までもがトリックに向かっていき、さらなる冷気がトリックを凍てつかせる。

 

「サウザンクロス!」

「あァああアアァあァああ!?」

 

トリックの体の芯まで冷気が届く。

熱を奪い尽くす極限の冷気はトリックの体を足元から凍らせ、その氷は腹にまで及んだ。

 

「っ………!」

「次は私よ!」

 

魔力が尽きて膝をつくロム。

その次に杖を握りしめたのはラムだ。

 

「冷えちゃえ、冷えちゃえ!これが私の全魔力!」

 

ラムの体を幾重の魔法陣が包んでいく。

何重にも重ねられた魔力はそれぞれの威力を何倍にも高め、その冷気をさらに鋭く尖らせる。

そして限界まで高まったその魔力をラムは一気に解放する。

 

「アブソリュート・ゼロ!」

 

絶対零度。

その名を冠した強大な氷魔法はトリックの体をさらなる冷気で包み込む。

ビームの熱すらゼロに叩き込む圧倒的な冷気はやはりトリックの体の芯まで届く。

 

「これで終わりじゃないわ……!最後!」

 

ラムの前に3重の魔法陣が出来上がった。

莫大な魔力が秘められたそれをラムは杖で叩き割る。

 

「ええーーーいッ!」

「あアああぐグあアアっ!?」

 

さらに氷はトリックの体を包み込む。

それはトリックの首まで届き、なんとツインバスターライフルを装備した腕まで凍らせる。ツインバスターライフルが生み出したビームでさえ凍てつかせ、残るはトリックの頭部のみとなる。

 

「っ、く……!」

「お姉、ちゃん……!」

 

「うあああああああっ!」

 

ブランが雄叫びを上げて手に力を込める。

残るはトリックのサテライトキャノンのみ。後はこの撃ち合いに勝つだけ。

 

「う、く、クソ……!」

 

しかし、トリックがダメージを受けたようにブランも舌によるダメージが残っている。しかも舌は今でさえブランの体を突き続けているのだ。

 

「あ、ぐあっ!」

 

ブランの翼の1枚がついにもげた。大きな翼は後ろに吹っ飛んでいく。

ブランは大きく姿勢を崩してしまい、立て直そうとするが上手くいかない。

 

「負け、られねえんだ……!」

 

しかし、ブランは不安定な姿勢のままキッとトリックを睨みつける。

 

「………殺す……っ!」

 

ツインバスターライフルのビームがサテライトキャノンを飲み込み始めた。

それは瞬く間にサテライトキャノンを飲み込んでいき、トリックの眼前に迫る。

 

「ンな……!」

「っ………!」

 

ツインバスターライフルのビームがトリックを飲み込んだ。

ロムとラムが作った氷魔法すら一瞬で溶かし尽くし、トリックの皮膚を壊していく。

急激に冷えた後に急激に熱せられることにより、トリックの体は壊れやすくなっていた。トリックの皮膚はバキバキとひび割れ、柔らかな皮膚を晒していく。

 

「うオアアあアアアっ!」

 

照射が終わる。

白目を剥いたトリックがブスブスと焦げ臭い匂いと黒煙をあげて立ち尽くしている。

しかし、まだ。

………死んでいない。

 

「ッ………!」

 

第2射。

最大出力で叩きつけられるツインバスターライフルのビームは何の減衰もなくトリックの肉を焼いていく。

燃焼しろ、融解しろ、昇華しろ。

ゼロが叫ぶ。このまま、このまま、と。

ブランはそれに従い、ただひたすら引き金を抑え続ける。

トリックが凄まじい勢いで後退し、壁に叩きつけられた。その壁すら溶けてまた後退し、壁にぶつかる。

そして照射が終わる頃には、トリックの体はもはや原型を留めていなかった。手足は灰になり、残るのは胴体のみ。

もう立つことすら出来なくなっているが、まだ!

まだ、戦える!

まだ、生きている!

まだ、まだ……倒し切っていない!

 

「ラス、ト………!」

「………ァ……ぐ……!」

 

トリックの執念は凄まじい。いや、ゼロの執念と言うべきか。

こんな状況下にあってもブランに向けて舌は飛んでくる。

 

「引き金、を……!」

 

ブランの体も限界に近かった。

大きなダメージを受けながら、さらにツインバスターライフルの反動に耐えていたのだ。

ブランの腕はガクガクと震え、持つのが限界で照準が定まらない。

 

「……ぐ………!」

 

トリックの舌が迫っている。

早く、早く引き金を引かなければ。

しかし照準が定まらない。外してはおしまいだ。ここで外しては、もう撃つ気力はない。

腕が震える。片目は開かない。体の感覚はとうにない。それでも!

 

「ツインバスターライフル……っ、ぐあっ!」

 

引き金を引く寸前、トリックの舌がブランの右腕を射抜いた。

限界以上に酷使された腕はそのダメージを受けてしまってはもう使えない。

そして今まで両手でようやく持っていたツインバスターライフルも支えることすらままならない。

 

「く、そ……!」

 

ツインバスターライフルが崩れ落ちる、その瞬間にブランに光線が当たる。

 

「っ、これは……!」

《ブラ、ン………!》

 

しかしその光線を受けてもダメージはない。

ブランの体を縛るように全身を覆うビームはGセルフから発射されていた。

Gセルフのバックパック、そのトラクターフィンから発射されるトラクタービームだ。

トラクタービームは本来、相手を金縛りにすることで動きを封じるビーム。

だが今は、ブランにそのビームをぶつけることで……!

 

(体が、固定されて……!)

 

体が固定された。

照準はトリックに向いたままビクともせず、後は指に力を込めるだけ。

 

《指に、力を!ブラン、引き金を引いてっ!》

「っ、く、ああああっ………!」

 

プルプルと震える指先が少しずつ引き金を押さえ込んでいく。

今のブランに出せる最大の力を込めて指が曲がっていく。

しかし、そんな悠長なことをトリックは許してはくれない。

トリックの舌がブランへと向かっていく。

 

「……ターゲット、ロック……!」

《ブランはやらせないッ!》

 

トラクターフィンの片方が射出され、まるでミサイルのようにトリックの舌に向かう。

それはトリックの舌を壊しはしないものの、ぶつかると同時に爆発して動きを鈍らせる。

そしてトリックの舌の動きが鈍った、そのほんの一瞬が勝負を決めた。

 

「………最後だ……!」

 

カチリ。

静かに引き金を引く音が鳴り響き、ツインバスターライフルから超弩級のビームが発射された。

それはトリックの舌を巻き込み一瞬で蒸発させる。その痛みがトリックに伝わるよりも早く、ビームはトリックへと到達した。

 

「ァーーーー」

 

まるで核爆弾でも爆発したような巨大な炎のドームが一瞬にしてトリックを包む。

大きなキノコ雲が立ち上り、トリックの体は何の欠片も残さずに電離化してしまう。

そこにトリックがいたのか……その痕跡は何処にもない。ただそこにあるのは巨大な爆炎。

 

ブランの翼がボロボロに朽ちていく。

ツインバスターライフルの反動、余波、その影響にボロボロのブランの体は耐えられなかった。

ツインバスターライフルすらもひび割れ、手放し、後ろへ反作用でふわりと飛んでいく。

目を閉じ、全ての力を使い尽くして脱力したブランは目を閉じる。

ゼロから届いた声は『終わりだ』。

安心し尽くして安らかに地面に落ちていくブランの体と地面の間に変身を解いたミズキが滑り込む。

 

「っ、ブラン………」

「……………」

 

ブランの変身が解けた。

翼は小さな羽毛の輝きとなって消え、まるで泡のよう。

ブランのクッションとなって受け止めたミズキだったが、ミズキもダメージは受けていた。

 

「……参ったな……クスクス、これじゃ腕、取りに行けないよ……」

 

幼子のように眠るブランをどけることは出来ない。したくない。

ミズキも疲れがどっと襲ってきたのか、あるいは腕から流れ出る血が意識を奪っているのか、目を閉じる。

 

……絶望の罠は、再び退けられた。





ぬあ〜書き溜め分おしまいです…
というわけでまたお休み。今回は1ヶ月…もう全然話が残ってないので…
mk2編も終わりに近づいてます
あと2回、3回の休みで終わるかと
その先のことはまだ考えてないです…

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