超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ラフレシア

ノワール、ユニ、ベールが一斉に散開して飛翔した。

クラーケンは小さくなって弱体化したものの、まだ油断はできない。少しでも油断すれば腹に風穴が開いてしまうだろう。

 

「ノワール!」

「道を開くわ!」

 

変幻自在、切っても新たな形で再生してしまう触手は攻撃の手段が読めない。

攻めあぐねるユニとベールだったが、後続のノワールが左肩に装備した盾を構えながら突進する。

 

「GNソードビット!」

 

盾から分離した6基の小型の剣型ビットがノワールの意のままに緑色の粒子を散らしながら動く。

触手を惑わすようにソードビットが機敏に動き、その隙をついて別のソードビットが触手を切断する。

それにばかり気を取られていると、今度はノワールが後ろからGNソードVで触手を真っ二つに切り裂いてしまう。

 

「今!」

 

多数の触手が引き裂かれたのをきっかけにユニとベールの2人が触手の内側に入り込む。

 

「ベールさん!」

「いつでも構いませんわ!」

 

2人が呼吸を合わせ、左右に広がる。

そしてクラーケンの横に回り込み、互いに武器を構えた。

 

「照準……合った!いっけえええっ!」

 

ユニの右手のメガビーム砲が撃たれる。

大威力のビーム砲はクラーケンの厚い肉をも簡単に貫き通して心臓に到達。

 

「キュロロロロ!?」

 

大穴を開ける。

 

「掘削しますわ……」

 

それと同時にベールが接近して槍を構えた。

さっきのレイニーラトナビュラではダメージを与えたものの、心臓に至るまでは槍が届かなった。

いくら槍のリーチがあろうと厚い肉の向こうにある心臓には穂先が届かなかった。

………だから。

 

「塵を積んで山と成しましょう!」

 

ベールの周りにドラグーンと無数の魔法陣が現れ、魔法陣からは槍の穂先が覗く。

 

「はああああっ!」

 

そして目にも留まらぬ速さで槍が打ち込まれる。

ドラグーンが放つビーム、魔法陣から無限に発射される槍、そしてベールが持つ2本の槍が無数の穴をクラーケンの表面に開ける。

そしてそれはクラーケンの再生よりも早く穿ち続けられ、クラーケンの肉は段々と掘削されていく。

 

(見えた!)

 

そして肉の合間、心臓を見つける。

 

「カタラクト・ラトナビュラァァッ!」

 

ドラグーンのビーム、魔法陣から放たれた槍、ベールの2本の槍が心臓めがけて一斉に突き刺さる。

そしてベールが離脱すると同時に心臓からは血が吹き出した。

 

「ノワール!」

 

ラストワン。

最後の心臓をこの瞬間に潰さなければならない。

 

「来て、ソードビット!」

 

ノワールのGNソードVにソードビットが集まっていく。

そしてその刀身の周りに6基のソードビットが合体、GNソードVをGNバスターソードにする。

 

「トランザム………!」

 

ノワールの体が赤く光り、体中からGN粒子が吹き出す。

そしてノワールがGNバスターソードを両手で持ち、高く天に掲げた。

 

「ライザーソード……!これで!」

 

GNバスターソードから天に向けてとんでもない長さのビームが発射された。

クラーケンなど目じゃない、その数倍数十倍もあるほどの長さだ。

しかもそれは砲撃ではなく、斬撃。ビーム砲ではなく、ビームサーベルなのだ。

 

「コレって……ブレイブの……」

「さよなら……はあああああっ!」

 

ノワールがライザーソードを振り下ろす。

天を割り、地を裂き、海を断つ。

その巨大なビームサーベルは何の抵抗もなくクラーケンを真っ二つに切り裂いた。

 

「キュロ………ロォ……」

 

「やりましたか」

 

ベールがクラーケンを見極めるが、クラーケンはすぐに光になって消えた。

地面から生えていた触手も消え、後に残ったのは荒れた地面だけだ。

 

「終わった……?守りきれた、の……?」

「いいえ、ユニ。……あの子が、守れなかった」

 

不思議とそこには達成感はなく、力不足を痛感したノワールがいた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ルウィー町外れ、そこでブラン達がラフレシアと戦っていた。

 

「近寄れ、ねえっ!」

「遠距離攻撃なら………」

 

ブランはテンタクラーロッドに阻まれて近寄れずにいる。

少し離れたところからロムとラムが氷塊を作り出す。

 

「これならどうよ!」

 

巨大な氷塊をラフレシアに向けて撃つ。

しかし、ラフレシアは急上昇して氷塊をかわしてしまった。

 

「ウソ!」

「速い……それに、反応も……」

《アサルトで!照準は、逸らさない……!》

 

Gセルフのパーフェクトパックのメガキャノンが展開し、その2つの砲口をラフレシアに向ける。

 

《っ、牽制……牽制……!》

 

砲口を向けたまま発射はせずに、手に持ったビームライフルを撃つ。

獲物を行き止まりに追い込むように、ラフレシアの動きを制限して……!

 

《そこ!》

 

メガキャノンから太い2本のビームが発射された。

1本は外れてしまったが、1本はラフレシアの進行コースにバッチリ重なる。

しかし、メガキャノンはラフレシアに当たる前にいともたやすく弾かれてしまった。

 

《Iフィールド……!くっそ!》

 

「どうしよう……当たらないよぅ……」

「近付こうにも、あのウネウネが邪魔だし!」

 

襲いかかるバグを撃破しながらラフレシアを見るが、その機敏な動きに比べて氷塊は遅すぎる。

しかし塊を小さくしてしまえばダメージにはならない。

 

「ラムちゃん、来るよ!」

「もう、邪魔くさい!」

 

2人にビームを撃ちながら突撃してくるラフレシアを散開しながら避ける。

 

「ミズキ、なんか弱点とかはねえのか!?」

《さっきも言った通り、ラフレシアには死角がない!》

「正攻法でどうにかするしかねえってことかよ!」

 

バグを破壊しながら2人が背中を合わせる。

 

《僕が気を引く、その隙に……》

「囮なんか任せられっか!」

《じゃあ、僕がトドメを……》

「んな危ねえことやらせられっか!」

《どうすればいいの!?》

 

若干支離滅裂なブランにツッコミ。

 

《気持ちは、わかるけど!》

「見てろ!私の力を見せてやる!」

 

ブランがラフレシアへと向かっていく。

ラフレシアは機敏に動きながらビームをばら蒔くが、それを避けながらブランは手のひらでいくつかの小さな氷の粒を作り出す。

 

《ダメだ、それじゃ威力は出ない!》

「試してみるか!」

 

そしてブランは斧をまるで野球のように振りかぶった。

 

「私が!斧で叩くしかできねえ近接バカとでも思ってんのか!ゲフェーアリヒシュテルン!」

 

そして全力のフルスイング。

小さくとも硬さはピカイチの氷の粒はブランの斧のフルスイングにも砕けずにラフレシアへと飛んでいく。

そしてラフレシアの装甲にあたり、貫きはしないもののその装甲を凹ませた。

 

「っしゃあ!」

《し、信じられない……》

「お姉ちゃん、凄い……」

「恋する乙女のぱわー……」

 

しかしラフレシアは崩れた体勢をすぐに立て直し、再びビームをばら蒔く。

 

「けど、こんな豆鉄砲じゃいつまで経っても倒せねえ……私達には制限時間があるんだ!」

《そうだね、教会に辿り着いたら……多くの人に被害が出る!》

「そうでなくても、ルウィーが今、コイツのせいで荒れてやがる……それが許せねえ!」

《だからって、また無遠慮に突っ込むのはやめてよね!》

「わかってる!ロム、ラム!」

 

ブランがロムとラムを呼んでラフレシアを回り込むように動いていく。

 

「わかってるな!?」

「了解、お姉ちゃん!」

「特大の、いくよ……!」

「どんとこい!」

《まさか、やれるの!?》

「やる!」

 

ラフレシアのテンタクラーロッドから放たれる無数のビームを避けてブランがラフレシアに追いすがる。

 

《近付きすぎないでよ!?》

「ミズキこそ、流れ弾に当たるんじゃねえぞ!」

 

「やるわよロムちゃん!」

「アイス……コフィン!」

 

ロムとラムが特大のアイスコフィンを発射した。

それは真っ直ぐラフレシアに向かっていくがラフレシアは難なく避けてしまう。氷塊が届く頃にはもうラフレシアは影も形もない。

しかし、その射線上にはブランがいた。

 

「ゲフェーアリヒシュテルン!アイス・コフィン……バージョン!」

 

ブランが思いっきりアイスコフィンに斧を叩き込む。

 

「くうう………くううっ!」

 

ブランはアイスコフィンを打ち返してラフレシアにぶつける気なのだ。

しかし、アイスコフィンはさっきの粒とは質量が違い過ぎる、さすがのブランもアイスコフィンを打ち返せずに逆に斧を持っていかれそうになっていた。

 

「くっ………そ……!」

 

ただのその場にあるアイスコフィンなら打ち返せたかもしれない。しかし、今回のアイスコフィンはブランに向けて放たれたものだ。

その勢いまで加わってアイスコフィンはブランでは打ち返せないほどの威力になっていたのだ。

 

「ぐ……!」

 

ブランの手から握力が抜けていく。

斧ごと吹き飛ばされそうになってしまったその時、後ろから頼もしい声が聞こえた。

 

《ブラン!1人じゃ無理なら、僕が手伝う!》

「ミズ、キ……!」

《Iフィールド・アシストマッスル!》

 

Iフィールドによって補助的な力を受けたGセルフの左腕が緑色に染まっていく。

今再び、高トルクパックのパワーを使うべき時だ。

 

《タイミング合わせて!高トルクパンチッ!》

「う、おおおおあっ!」

 

ブランが抜けかけた握力を再び入れた。

半ば諦めかけていたが……しかし、きっと、今ならば!

 

《いっぱああああつ!》

 

Gセルフの高トルクパンチがブランの斧を後押しするようにぶつけられる。

まずは1発目、そのエネルギーでアイスコフィンは動きを止め、その場に留まった。

 

「ミズキ!」

《もう、いっぱああああつ!》

 

そして再び同じ腕で2度目の高トルクパンチ。

それがぶつかるのに合わせてブランが腕に力を入れ、アイスコフィンを吹き飛ばす!

 

「うおおおおらああああっ!」

 

ついにアイスコフィンが猛烈な勢いでラフレシアに向かっていった。

ただロムとラムが打ち出すアイスコフィンよりも数倍速い。それは空気を切り、ラフレシアに思いっきり衝突した。

 

《!?!?!?》

 

ラフレシアにアイスコフィンが命中し、ラフレシアは錐揉みしながら地面に墜落する。

アイスコフィンはラフレシアにぶつかるのと同時に砕け散ってしまった。

 

《っ、ふう……やったね、ブラン》

「ああ、サンキュ」

 

自分1人の力では打ち返せず、少しばかり気恥ずかしくてそっぽを向いていたブランだったが……Gセルフが手を上げるとそれに合わせて思いっきり手を振った。

 

「ほらよ!」

《痛っ!?》

 

ハイタッチ。

それをロムとラムは顔を見合わせてクスクスと笑いながら見ていた。


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