超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

173 / 212
3つの進撃

「プラネテューヌ軍、教会に到達しました!」

「共同戦線を張って!それと、これだけの数なら魔導師を集められるわね!?集めて!」

 

ミナが号令をかけると兵士が魔導師を集めに階下へ下がっていく。

ミナも懐から魔導書を握りしめ、部屋をあとにする。

 

「私も……!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ロムとラムは防衛ラインの最前線でバグを落としていた。

次々と襲いかかってくるバグに途切れはなく、さすがのロムとラムも疲弊し始めていた。

 

「多すぎんのよ、この!」

「みんなは、やらせたくないんだから……!」

 

それでも2人は一騎当千の働きでバグを叩き落としていく。

すると後方から来る気配にロムがピクッと振り向いた。

 

「ロムちゃん?なにか来るの?」

「……ミナちゃん?」

「え!?」

 

「通して、通してください!」

 

「み、ミナちゃん!?危ないわよ、こんなところ!」

「今からバグを倒す作戦を始めます!援護お願いします!」

「え、え?」

「援護……?」

「敵をこっちに来させないで!みなさん、準備はよろしいですか!?」

 

ミナの後ろには何人もの魔導師がいた。

それぞれ杖や魔導書を持ち、一塊になって空を見上げる。

 

「それでは……今です!」

 

ミナが号令をかけると、空中に巨大な火の玉が出来上がる。

しかし、それは空高く浮かんでいるだけでバグに向かっていく訳では無い。

 

「これが作戦なの!?」

「確かに、すごい炎だけど……」

「ここからです!みなさん、集中して……!」

 

大多数の、しかもルウィーの魔導師が集まったからこその巨大な火の玉だ。それは見事。

しかし、それだけでは、火力があるだけではバグは倒せない。

 

だがその作戦には続きがあるらしく、魔導師達が集中して念を込めていく。

すると、火の玉は段々と小さく、温度も下がり始めた。

 

「な、何してんのよ!」

「いいから!2人は私達を守ることに集中して!」

 

そして空中の火の玉はついに消えてしまった。

ぽしゅんと音を立てて消えてしまった火の玉だが、魔導師達は集中をやめない。むしろこれからが本番だというふうにさらに集中を高める。

 

「んっ、人が多いと、バグも……!」

「近付かないで、よっ!」

 

ロムとラム、それにルウィーの部隊が魔術し達を守る。

人が一箇所に集まっているために大量のバグが引き付けられていて守るのは困難を極めた。

しかし魔術師たちはそんなこと何処吹く風、周りの状況に気を引かれることなく集中を高めていく。

 

「っ、やっ!……あれ?」

「バグが……逃げる……?」

 

すると段々とバグが魔術師達から離れていく。

未だに襲っては来るものの、数は極端に減っていて守る難易度も下がっている。

 

「……違う、逃げてない……」

「引き寄せられる……そっか、そういうことね!」

 

バグは逃げているわけではなかった。

バグは人を正確に狙う。それは人が発する体温と二酸化炭素を検知しているからだ。そのどちらかが検知された場合、バグは一直線に突進してそれを破壊する。

だから、体温と二酸化炭素を検知すればどこにでも向かっていくのだ。だからモビルスーツであるミズキにも突進していくし、車や街灯にも突進していく。

そしてそれは標的が大きければ大きいほど破壊を優先する。

ならば、取った作戦はまさに、『飛んで火に入る夏の虫』。

 

ミナ達が魔法で唱えた火球は確かに消えたが、魔法は終わった訳では無い。繊細に、慎重にその温度を下げているだけだった。

最大火力を出すのは簡単だ。全ての力を注ぎ込めばいいのだから。それは別にルウィーではなくても魔術師がいればできる。

しかし、およそ36〜40°の温度まで魔法をコントロールし、それを維持するのはルウィーの魔導師でなければ不可能。その繊細さはルウィーの魔術師しか持っていないものだ。

 

そしてそれが成された今、空中に浮かぶ人のような体温のナニカに街中のバグが引き寄せられていく。

 

「これなら……!」

「すごいわ、ミナちゃん!」

 

バグ達は幻の標的に向かって突進を繰り返し、ぶつかりあい、砕けていく。

すると大量のバグが集まりあい、密集している空域にブランがやって来た。

 

「良くやったミナぁっ!」

(まとめてやっちゃってください……!)

「砕けろ!テンツェリン・トロンべ!」

 

ブランが斧を回転させながら空域に突撃、バグの群れに突っ込んでいく。

逆にチェーンソーでバラバラにされてしまうのではないか、とロムとラムは一瞬思ったがそんな心配は必要ない。

 

ブランは何の引っかかりもなくバグの群れを飛び抜け、斧についたオイルを振り払う。

するとバグは次々と砕け、割れ、爆散する。そこにあったバグは1機残らずブランの斧の前に撃破された。

 

地上の軍隊からブランを讃える声が響き渡る。

ミナは作戦の成功にほっと息をついて集中を解いた。

 

「まだ気を抜くんじゃねえ!街中にまだバグは残ってる!1機も残すな、全部砕くぞ!」

 

ブランの号令で士気が上がった軍隊が町中へ散っていく。

プラネテューヌ軍もいる、このままならバグが全滅するのも時間の問題だろう。

ようやく勝ちが見えた、指示を出すべく教会に戻っていくミナの携帯が鳴った。

 

「はい?あ、イストワールさん、助かり……えっ!?」

「ミナちゃん?」

「え、や、それはどういう……イストワールさん?イストワールさん!返事してください!イストワールさん!」

「どうかしたの……?」

「そ、それが……!」

 

ミナが慌てて事情を説明しようとすると、空からネプテューヌとネプギアが急いでやって来た。

 

「待って!ギョウカイ墓場の方から……!」

「ルウィーのみなさん、待ってください!ここで散っちゃ……!」

 

さらに同時にベールが舞い降りてくる。

 

「急いでくださいまし!町外れの方に……!」

 

ブランがその様子を見て間に入る。

 

「お、おい、待て!お前らまず順に説明を……!」

 

「プラネテューヌの教会が占拠されました!」

「ギョウカイ墓場からEXモンスターが!」

「町外れに大きな敵モビルアーマーが!」

 

 

『………ええっ!?』

 

 

ーーーーーーーー

 

sideルウィー国境近くーーーー

 

「……EXモンスター……久しぶりね」

「私達だって成長してるけど……でも……」

「この数は、大変ですわね」

 

森を埋め尽くすほどの赤黒いモンスター達。緑と白に覆われるはずの大地は赤黒いモンスターが蠢くものになってしまっている。

 

EXモンスター担当、ノワール、ユニ、ベール。

 

と、言ってもこんな数、とてもじゃないが3人で相手するのは無理だ。

 

「……泣き言言ってる場合じゃないわ、ビビってる暇があったらすぐ始めましょう!」

「互いに潰しあっていないあたり、連携は取れていないもののある程度の制御はなさっているようで。まったく、面倒なこと……!」

「ふるいにかけるわ!ミサイルポッド!」

 

ユニが先行してミサイルポッドを2つ射出する。そこから降り注ぐ108×2、合計216発のミサイルがEXモンスターに降り注いだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

sideプラネテューヌ外れーーーー

 

プラネテューヌを担当しているのはネプテューヌ、ネプギア。

2人は慌ててルウィーからプラネテューヌに戻っているプラネテューヌ軍よりも遥か先に進み、教会を目指していた。

 

「ルウィーの援護で手薄になったところを狙われるなんて……!」

「お姉ちゃん、みんな無事かな……!?」

「きっと無事よ!急ぎましょう、プラネテューヌを渡すわけにはいかない!」

「……うん!」

 

ネプテューヌとネプギアがさらに速度を一段階上げて矢のように先に進む。

教会の上部が2人の視界に映る水平線から顔を覗かせた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

sideルウィー外れーーーー

 

「ミズキ!」

《ブラン!ロム、ラム!》

「今助けるわ!……ってなにあれ!?」

「大きい……花……?」

 

ルウィー外れ、そこから現れたのは巨大な花形のモビルアーマー、ラフレシア。

周りに大量のバグを侍らせ、ルウィーの教会に向かって浮遊している。Gセルフはそれを止めるためにラフレシアと戦っていた。

 

「コイツが元凶か!んの野郎!」

《ブラン、待って!》

「止めるな!コイツが私の国を……!許せねえ!」

 

ブランがGセルフの静止も聞かずにラフレシアに向かって突撃した。

 

「叩き割って……やるッ!」

 

立ちはだかるバグを切り捨てながらラフレシアに近づく。

するとラフレシアの花弁のような部分から触手のような武器、テンタクラーロッドが大量に現れてブランに襲いかかる。

 

「なっ!チッ、この、クソ!」

 

ブランが足を止め、テンタクラーロッドを斧で振り払うがテンタクラーロッドは距離を取ってくれない。隙あらばブランを先端のチェーンソーで切り刻む気だ。

 

「お姉ちゃん、後ろ!」

「なっ、あっ!」

 

しかし、テンタクラーロッドはブランの後ろにも迫っていた。しかもテンタクラーロッドはビームさえ撃てるのだ。

威力は低いもののビームが背中にもろにあたって体勢を崩したブランの両手両足をテンタクラーロッドが巻きついて捕らえてしまう。

 

「くっ……ぐっ!」

 

振り払おうとするが頑丈で引きちぎれない。

そのブランを花弁のうちの1枚がメガビームキャノンで狙う。

 

「………っ!」

《コピペシールド!》

 

ブランを守るようにGセルフが前に出た。

Gセルフが構えたシールドには薄い結晶のようなバリアが張られ、それがメガビームキャノンのビームを吸収していく。

気付けばGセルフのバックパックは新たなものに換装されていた。

パーフェクトパック。文字通り今までのバックパックの機能を全て集約したバックパックだ。

 

《高トルク……!》

 

ビームを吸収したのはビームを吸収して自分のエネルギーに出来るリフレクターパックの機能。

次にGセルフはラフレシアに向かいながら右足を緑色に変えていく。次のパックは高トルクパック。高出力を生かした高機動パックの効果を右足にもたらしたのだ。

 

《吹き飛べぇぇっ!》

 

Gセルフの全力の飛び蹴りを受けたラフレシアだったが、体勢を崩しただけで後退はしない。

 

《っ、重い!》

 

Gセルフは素早く離脱しながらビームサーベルでブランを捕らえるテンタクラーロッドを切断した。

 

「悪ぃ!」

《ラフレシアに死角はない、怒るのはわかるけど慎重に!》

 

Gセルフとブランがラフレシアから離脱していく。

 

《…………》

 

Gセルフの脳裏によぎったのは数週間前の出来事だった。

 

 

 

あの日、みんなと仲直りした日にジャックから告げられたことだ。

 

『さて、お前達に知っておいて欲しいことがある』

 

それはみんなの涙が乾き始めた頃だった。

 

『ミズキがあの時、限界を超えた戦いをしていたのはお前達もわかっているだろう。そのツケの話だ』

 

いくら謝っても、嘆いても、過去にあったことは消せない。まだ少しミズキとの接し方がわかっていないのもそのせいだし、そんな精神的なもの以外にもミズキには後遺症が残っていた。

 

『たとえこの先、ミズキがどれだけ体調が良くなろうと……限界を超えれば傷が開くだろうということだ』

『限……界………?』

『具体的には機体の限界以上を叩き出すシステム。もしくはパイロットが人間の限界を超えてしまう能力の発揮だ』

 

それはつまり、ニュータイプ能力の最大発揮であり、M.E.P.Eであり、明鏡止水であり、ゼロシステムであり、SEEDであり、トランザムであり、FXバーストであり、阿頼耶識システムに身を委ねること。

 

『そうすれば……どうなるかはわからんぞ』

 

ジャックは暗にそんなことのないようにしっかりと守ってやれと言っているようだった。

 

 

 

《………ラフレシア……手強い……》

 

「おい、ミズキ!バカなこと考えてんじゃねえだろうな!?」

《っ、ブラン……》

「本気でやりあえねえんだろ!?少しくらいは私達に任せろ!」

「執事さんは下がってて!援護をお願いするわ!」

「月が出てなくても……アレくらい、倒せる……!」

 

Gセルフの前にロムとラム、そしてブランが出た。

 

「執事さん、あの敵……」

《うん、いる。多分中心部……そこはダメージを与えないで》

「余裕ね!花占いするみたいに、1枚1枚取っちゃえばいいのよ!」

「いいか、絶対に教会にたどり着かせんな!何としてでもここで仕留める!」

 

背中を見せる3人の少女に不思議な安心感を覚えながらーーーーGセルフはライフルを握り直す。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。