超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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バグ

ルウィー。

白い雪が1年中国を覆う雪国。静かにしんしんと雪が積もるはずだったその都市は……悲鳴で包まれていた。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ……」

 

幼い子供を抱いた母親が雪に覆われたレンガを蹴りながら走る。

何かから逃げるように息を切らし、火に包まれる建物の間を縫うように動く。

 

「っ、あ………!」

 

曲がり角を曲がった瞬間、目の前に浮いていたのはまるでUFOのような物体。

浮いていたひらべったい円形の物体は枠にチェーンソーを回転させている。

それは母親と子の体温と二酸化炭素を検知、真っ直ぐに突進する。

 

「ああっ……!?」

「うええぇぇん!」

 

母親は子供を庇うように身を伏せた。

円盤型のUFOが母親を切り裂く寸前、キラリと空に閃光が瞬いた。

 

「ッ………オラァッ!」

 

凄まじい速度でブランが飛来、その手に持った斧を力任せにUFOに叩きつけ、切断してしまう。

UFOのような物体は爆発を起こして粉々になってしまった。

 

「…………」

「ぶ、ブラン様!」

「教会だ!教会に向かえ!教会なら安全だ!そこで避難民の受け入れをやってる!早く!」

「は、はい!ありがとうございます!」

「もう見つかるんじゃねえぞ!」

 

母親は子供を抱いたまま立ち上がり、教会の方角へ向かっていく。それを見届けてからブランはチッと舌打ちをした。

 

「犯罪組織……ビフロンス……よりにもよって私の国で、こんなことを!許さねえぞォォッ!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「教祖様、北口の被害甚大!防衛線が押されつつあります!」

「東の部隊をまわして!女神様が到着したわ、あと少しだけ堪えて!」

 

ミナが教会中心部で指示を出す。

ミナの前には広い机があり、そこにはルウィーを記した大きな地図が広げてある。

 

「っ、しまったわ……まさか、ここで反撃してくるなんて……!」

 

始まりは突然だった。

それは教会の耳に入れるまでもない些細な、しかし奇怪な事件だった。とある人が真っ二つに割かれて死んでいただけの。

しかし似たような事件がわずか数10分で急増、ついに警察に届いた通報は以下の通り。

 

『UFOだ!宇宙人が攻めてきた!』

 

警察が迅速に事態を把握したときはもう遅かった。その頃には小型の円盤状物体『バグ』は国中に飛来、国民の虐殺を始めていたーーーーー。

 

「教祖様、避難民を収容するシェルターが満員に近づいています!」

「教会の立入禁止区域を一部解放!絶対に見殺しにしないで!」

 

今はまだ教会周辺は死守できているものの、敵の攻撃は激しさを増すばかり。そして敵戦力も十分に把握出来ていない。

 

「このままじゃ……!」

「教祖様!」

「今度はなんですか!?」

「北口、突破されました!」

「っ、なんですって……!?」

 

ミナが目を見開いた。

 

「急いで東の部隊を向かわせてください!シェルターだけはなんとしてでも死守して!」

 

すると今度は電話が鳴り響く。

 

「ああもうなんですか!?私は……えっ?」

 

イライラしながら受話器を取ったミナが硬直した。

それからボールペンをとって地図に文字をサラサラと書き込んでいく。

 

「はい、はい、はい……やれないことはないです!その程度なら……わかりました!」

 

そしてミナが受話器を置いて部下の1人に指示を出す。

 

「大丈夫、北口はロムとラムが向かったわ!余裕が出来た部隊から魔導師をこちらに向かわせて!」

「は、はい!」

「反撃を始めます!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

北口、そこではルウィーの軍隊が必死に応戦しているが、空中を漂う小さな的にはなかなか攻撃が当たらない。

そしてバグは正確に軍隊の体温と二酸化炭素を検知して襲いかかってくる。

 

「うわああっ、ぎゃああっ!」

「おい、おい、しっかりしろ!」

 

ルウィーの魔法をもってしてもバグ相手には受け身にならざるを得ない。

そして部隊に開いた穴からバグが教会内に侵入していく。

 

「しまった!」

「なんとしてでも止めろ、中には避難民が!」

 

「こんのぉ!いい加減にしなさいよォッ!」

「アイスコフィン!」

 

空からやってきたラムが教会内に侵入したバグを叩き潰し、ロムが氷塊でバグをまとめて砕く。

 

「ロム様、ラム様!」

「ごめんなさい、遅れたわ!でももう大丈夫!」

「ここから、押し返すよ……?」

 

「は、はい!」

 

ロムとラムがバグをどんどん撃破していく。

それを見た兵士達も体勢を立て直し、加勢していった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

大気圏用バックパックを背負い、空を飛行するガンダムが次々にバグをビームライフルで撃ち落としていく。

Gセルフは空中を漂うバグを正確無比な射撃で撃墜していくが、その中で燃える家を見つけた。

 

《アレは……!》

 

コースを変更、燃える家に向かって急降下してその中へ壁を壊しながら突っ込む。

 

《っ、いた!》

「うぇぇぇ、えええぇん!」

《もう大丈夫、おいで!》

 

火の中で泣き叫んでいた子供を抱きしめ、外へ飛び出る。そこには燃える家を泣きながら見ていた夫婦がいた。

 

「あっ、ああっ!」

《大丈夫、怪我はないはずです!教会へ向かってください、あそこなら安全です!》

「は、はい!」

 

子供を受け渡してから空を見るとまたバグが夫婦の体温を検知して数機向かってきていた。

Gセルフはライフルを構えるが、引き金を引く前にビームによって全て撃墜される。

 

「ミズキさんっ!」

《ユニ、大丈夫!?》

「この程度、どうってことないです!けど……数が……!」

《今は少しでも数を減らす!時間はかかるけど、ルウィーの力ならバグを一気に倒せる作戦が発動できるはずなんだ!》

「でも、家の中にまで入り込んでちゃ!」

《やるしかない!1人でも多くの人を救うんだ!》

「っ、はい!」

 

ユニがまた空へ飛んでバグが比較的密集している空域を目指す。

 

「ミサイルで!」

 

そしてGセルフもまた空へと羽ばたく。

ユニとは逆方向に向かい、そのバックパックを巨大な物に交換した。

アサルトパック。長距離用の武器を多く内蔵したバックパックはGセルフをまるまる包み込むほど大きく、Gセルフのフォトン装甲を赤く染める。

 

《くそっ、くそっ、くそっ!》

 

バグを手当り次第にアサルトパックの大型ビームライフルで撃墜していく。

そして目の前に迫るバグをアサルトパックから離脱して迎え撃つ。

 

《っ……!落ちろ!》

 

そのバグは血に濡れていた。既に誰かを殺めた証拠であるそれをGセルフはビームサーベルで叩き切った。

 

《もう……殺すなぁぁっ!》

 

そしてビームサーベルを手首で高速回転させ、Gセルフから排出される二酸化炭素を検知して寄ってくるバグを次々と切り刻む。

 

《次!》

 

そしてすかさずアサルトパックを装着し直し、また飛んで行った。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「状況はどうなってますか!?」

「拮抗です!押し返しはしましたが、今のところは、まだ……」

「魔導師も手を回せませんか!?」

「無理です!あのUFOの迎撃に手一杯で!」

「……っ」

 

状況は女神達が帰還したことで有利になったものの、それでも有利にまではならない。

一気にバグを消す作戦はあるが、そのためには大量の魔導師が必要だ。するとその間は部隊は減り、バグの進行を許してしまう。

 

「どうすれば……!」

「き、教祖様!」

「なんですか!?」

「に、西から……!」

「西から、なに?」

「西から軍隊です!」

「軍隊……!?」

 

ミナは兵士からその軍隊を撮った写真を受け取る。

 

「これは……!」

「はい、プラネテューヌの軍です!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「お姉ちゃん、来たよ!」

「ようやくね……ネプギア、少しの間ここを頼んだわよ!」

「うんっ!」

 

ネプギアがオービタルのM.P.S.C(L)で次々とバグを撃墜していく中、ネプテューヌが後退してプラネテューヌ軍の前に立った。

 

「いいわね!?1人でも多くの民を救い、1機でも多くのバグを倒すのよ!」

 

ネプテューヌの掛け声に軍隊は雄叫びをあげる。

 

「ここをプラネテューヌだと思いなさい!私に続いて!」

 

ネプテューヌが飛んだ後からプラネテューヌの軍隊が進んでいく。それは確実に犯罪組織側を窮地に陥れるはずの軍だった。


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