超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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勝者の栄光

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…………!」

 

(し、死ぬところだった……!)

 

「ほう、よく避けたな。コンテナを切り捨て、身軽になったおかげか。しかし……ほとんどの武器を失った状態で俺に勝てるかな?」

 

もうブレイブの体は赤く発光していないものの、ユニは全身から吹き出す汗が止まらなかった。

今もユニの眼下には凄まじい熱によって蹂躙された地面が映っている。さっきまで体も心も燃え滾るように熱かったのに今は寒いほどだ。

ゾクッとした寒気がユニの体を支配し、そのくせして汗だけは全身から吹き出す。

 

(っ、恐れちゃダメ……!)

 

ユニが生唾を飲み込み、構え直す。

肩のコンテナはなくなっても足のブースターは健在だ。コンテナがあるよりもむしろ機動力は上がっているものの、武装が少ない。これで勝てるかどうか……。

 

 

『必ず勝ってきなさい。約束よ』

 

 

「っ、そうよ……落ち着いて……私は……ふぅ」

 

ノワールの言葉を思い出し、呼吸を整えた。

 

(アイツが身をもって教えてくれたじゃない……何かにとらわれれば剣は出ない)

 

恐怖にとらわれては戦うことなどできない。

あのワープにとらわれては攻撃できない。

あの切り札の巨大ビームサーベルにとらわれては焦ってしまう。

 

「……確かに、アンタは強いわ。子供達だって守れるはずだし、反対する人達も力でねじ伏せられる。その力も……必要なのかもしれない!」

「……何が言いたい?」

「その力も必要、必要だけど……!それだけじゃ、ダメなのよ!」

「お前が何を言おうと、勝たなければ意味は無い……勝たなければねじ伏せられるぞ!」

 

ブレイブが大ジャンプしてユニに切りつける。

ユニは回し蹴りの足を抱えた体勢でそれを受け止めた。

 

「っ、く……!」

「どうした、その程度か!」

 

ユニがブレイブにグググと押されかける。

しかしユニは一瞬だけ力を抜いてブレイブを受け流した。

 

「っ」

「はあっ!」

 

そのまま前に出たブレイブの顔を蹴りながらそしてブースターを噴射して距離をとる。

手に持ったビームライフルでブレイブを狙ったが、全て弾き返されてしまった。

 

「強くなきゃダメ……それは正しいわ!弱い人の言葉や意見は全部叩き潰される!だから、強くなくちゃいけないのは正しい!」

「そうだ……!そして俺は強い!子供を守れるほどにな!」

 

ユニのメガビーム砲もビームライフルも全て弾き返されてしまう。もう実弾を持っていないユニにとってこの状況は絶望的と言っていい。

 

「でもね!そうやって敵を手当り次第に倒して……排除して……!自分の手を見たことある!?」

 

ユニが加速してブレイブへと向かった。

 

「接近戦ならば、俺の独壇場だ!」

「わかってるわよ、だから……長居はしない!」

 

ユニが大型ビームサーベルでブレイブを切り抜けた。ブレイブは剣で受け止めたが、それと同時にユニはすれ違い後方に行っているので反撃ができない。

 

「アンタの手……血でベトベトよ!そんな手で、子供達を抱ける!?子供達まで血に塗れて……守りたいはずだった子供は、自分から死地に飛び込むわよ!他でもない!アンタがそうさせるの!」

「馬鹿なことを!」

「アンタが正しいって思うのよ、子供は!だから子供達も力が全てだって思う!」

「それは正しいはずだ!」

「そうよ!でも、力だけじゃ!ただ守るだけじゃ、足りない!」

「黙っていろ……!奥義、トランザム!」

「っ、来る!?」

 

ブレイブの体が赤く発光した。

同時に後退して様子を見ようとブースターで移動した瞬間、ユニの眼前にブレイブが迫っていた。

 

(速いっ!)

 

「唐竹割り!」

「ビームジュッ……ああっ!」

 

ビームライフルから発振したビームジュッテが直撃を防いだものの、勢いまでは抑えられずに下に叩き落とされる。

 

「くっ……アレは、トランザムか……!」

「遅いッ!」

「なっ、きゃああっ!」

 

さらに叩き落とされ、工場の屋根を砕いてユニが工場の中へ落ちていく。

 

「っ、かはっ……!」

「フンッ……!」

 

落ちていくユニに瞬時に追いついたブレイブが腰だめに構えて居合切りの構えをとった。

それを見たユニは足のビームサーベルで防御するものの……!

 

「居合ッ!」

「きゃああああっ!」

 

さらに吹き飛ばされた。柱を砕きながら吹っ飛んでいくユニは大きなタンクに体を埋めた。

 

「あぐ、ふっ……!」

 

「ユニちゃんっ!」

 

今までの連撃、わずか数秒で叩き込まれた。

だがユニはえずきながらも前方のブレイブから視線を逸らさない。ブレイブが大きくビームの刃を展開している姿から目を離さない。

 

「消えろ……一文字……!」

「っ、させるか!」

 

ユニがタンクにビームライフルを撃った。

するとタンクに穴が開き、そこから水が勢いよく吹き出す。それはまるでホースから吹き出したかのようにブレイブに向かった。

 

「ぬっ!」

 

剣で受け止めた。何の変哲もない水だったが、技が中断されてしまう。

 

「小細工を……!」

 

そしてユニは入り組んだ工場の柱の林の中に紛れ込む。

 

(私も小回りが利く方じゃないけど……アイツだって図体はデカい、必ずこんな場所で動き辛いはず……!)

 

タンクやらコードやらが林のようにあちらこちらに生えているから、動き辛くてたまらないはずだ。

 

「今は、時間を稼ぐしか!」

「………まんまとその手に引っかかるか!」

「っ!」

 

ユニの前方の柱からブレイブが現れた。

既に腰だめに剣を構えている居合切りの構えだ。

 

(しまっ、ワープ……!?)

 

「破ッ!」

「くっ!」

 

身を沈めて避けたが、ユニの髪がパラパラと宙に舞った。

 

「私が見えなくても、こんなに正確に追えるなんて……!」

 

ユニが後退して柱の後ろに身を隠す。

しかし、ユニの頭の数cm上の部分から周囲一帯の柱がすべて両断される。

 

「っ……なっ!」

 

ビームサーベルを伸ばして周りの柱を全て両断したのだ。いや、柱のみならず工場の壁すらも断ち切られている。

 

「工場が……!」

「崩れますわ、避けてくださいまし!」

 

ユニを追っていた女神達も上から降り注ぐ瓦礫を避けることで精一杯になっていた。

 

「ユニ……!」

 

「もはや逃げることも叶わぬ!」

「くっ……!アンタは!」

 

「秘技………!」

 

ブレイブの体が量子化して粒子と共に消えていく。

そしてその体はユニの背後で実体化し始めた。

 

「後ろ……っ!」

「はっ!」

「ん、っ!」

 

ユニもそれを見切り、膝のビームサーベルでブレイブを受け止めた。しかし、その瞬間にまたブレイブは体を粒子に変える。

 

「2回連続で……!?」

「この連撃……!」

「っ、あっ!」

「かわしきれるか!」

 

今度はユニの横に現れたブレイブが剣を振るう。ユニの対応は少し遅れ、防御するものの吹き飛ばされてしまう。

 

「っ……!3度目……なんてっ……!?」

「まだだ……まだっ!」

 

吹き飛ばされたユニの背後にブレイブが現れる。ユニはビームジュッテで防御したが、ライフルごと切られてしまった。

 

「ああっ!」

「まだ!」

「そんな……!」

 

瞬時に場所をワープによって変更するブレイブの連撃がユニを屠っていく。

そしてついにユニの防御は間に合わなくなってしまう。

 

(しまった……っ!)

 

「はあああっ!」

「きゃああああっ!」

 

ブレイブの太刀がついにユニの腹に完全に入った。しかしブレイブは1度きりの命中で満足せず、また瞬間移動をする。

 

「そこっ!」

「うっ!」

「ふんっ!」

「くああっ!」

 

ユニが吹き飛ばされた先にブレイブは瞬間移動していてまたユニを吹き飛ばす。

まるでビリヤードの玉のようにユニが吹き飛ばされ続けてしまう。

 

「ユニちゃんっ!」

 

ネプギアの声も届かない。

ユニは目を開けていながらももう気を失っていてブレイブにされるがままだ。

その体に何回も何回も剣による生傷が刻みつけられている。

 

「これでトドメにするっ!」

 

ユニがブレイブによって高く打ち上げられた。

ブレイブは何度も何度もユニの真下に瞬間移動してユニを空高く打ち上げてしまう。

 

「……………」

「これで……!俺の勝ちだ!」

 

遥か空高く、工場よりも遥かに上に打ち上げられたユニは腹を上にして空へ浮いていた。

その首にブレイブが剣を当て、落下していく。

 

「アレは……!」

「アイツ、あのまま首を叩き切る気だわ……!」

 

重力に引かれた落下によりユニとブレイブは段々と速度を上げていく。

今はまだユニの首に剣が当てられているだけだが、あの技は地面に着地した瞬間に完成してまるでギロチンのようにユニの首を真っ二つに切り裂いてしまうはずだ。

 

「ユニちゃん、逃げてっ!」

「高い……!」

「受け止めるしかないじゃない!」

 

「ふん、もう手遅れよ!どちらにせよ、ここで受け止めればコイツの首は2度と胴とは繋がらん!」

 

もう落下の速度は受け止められないほどになっていた。ブレイブの言う通り、下手に受け止めればユニの首を切ることになってしまう。

 

「……………」

「肝心のコイツは気絶している。もう勝ち目はない!」

 

ユニはただされるがままに首に剣を当てられていた。全身は脱力し、目はつぶってしまっている。

 

「そんな……!」

「ユニちゃん、起きて、起きてっ!」

 

ロムとラムが必死に呼びかけるが応答はない。ブレイブとユニは既に工場の天井近くまで落下してきていた。

 

「これで、決まりーーーー」

 

 

 

「ユニィィィィッ!!アンタ、何をやってんのよぉぉぉっ!」

 

 

 

「………おね……ちゃ………?」

 

ノワールの大声にユニがうっすらと瞳を開いた。

 

「あのね、ユニッ!私がアンタを送り出したのはね、アイツよりもアンタが強いと思ったからじゃないのよ!?」

 

「ふん、戯言を………」

 

「アンタが!アンタの!他でもない、ユニだけの魅力がブレイブとの技量の差を埋めてくれるって計算して私はアンタを送り出したのッ!」

 

「私だけの………魅力………」

 

「いい!?アンタの魅力の1つはね、前に進もうと思えることよ!私みたいなのを目標にして、そこにたどり着こうと思えること!そしてもう1つ!アナタの、最大の魅力はーっ!」

 

「何を言おうがもう終わりだ!これでッ!」

 

ブレイブとユニが地面にまで迫っていた。

全員が目を覆うか息を呑む中、ノワールだけはユニの瞳を見つめた。

 

「誰かに、自分に課したことを絶対にやり遂げる……!責任感なのよッ!」

 

「………!」

 

「ユニ!勝ちなさい!」

 

 

 

ーーーー自分に課された仕事は絶対に遂行するーーーー

 

 

 

ーーーー勝つ!

 

 

 

ーーーー『the Winner』

 

 

 

「私はまだ死ねなぁぁいっ!」

 

ユニが地面にあたる寸前に目をカッと開き、メガビーム砲とIフィールドジェネレーターを捨て、両手でブレイブの剣を白刃取りした。

 

「らあああっ!」

 

そして刃を持ち上げ、自分の首から距離を離した。

 

「馬鹿なっ!」

「っ、く!」

 

そして足のブースターで横に急加速、メガビーム砲を掴みながらブレイブの剣から逃れた。

 

「そう、それでこそよ!」

 

「あうっ、くぅ、うぁ!うく……!」

 

ブレイブの剣が工場の地面に大きく亀裂を走らせた。

ユニは地面にぶつかって転がりながらも残った最後の武器、メガビーム砲だけは手放さずに耐えきった。

 

「おのれ、今のを逃れるか!」

「っ、あくっ、う……!」

 

しかし状況が不利なのは変わらない。

ユニは落下のダメージを負ってしまったし、Iフィールドジェネレーターも、失ってしまった。しかもブレイブのトランザムは未だに持続している。

 

しかし、ユニの瞳に灯った炎は消えはしない。

前に出たユニが怯む暇も惜しいとばかりにブレイブに向かう。

 

「ビームは食らわん!」

「っ……私が、ビームを垂れ流すだけのバカだと思わないでよッ!?」

 

剣を構えたブレイブだったが、ユニはそれを飛び越えてブレイブの顔面に蹴りを押し付けた。

 

「ぬっ!?」

 

そしてブレイブの頭の角を掴んで自分の体を固定する。

 

「燃えなさい、バーナーの炎よ!」

「なああっ!?」

 

足から吹き出したブースターの炎がブレイブの顔面を焼く。

剣を使えば自分の顔に当たってしまう可能性もある、ブレイブは顔が焼けることに耐えながら手でユニを握りしめた。

 

「っ」

「おのれ、離せっ!」

「きゃああっ!」

 

投げ飛ばされたユニが地面に転がる。

しかしそれでもユニは瞳の炎は消えはしない。再び立ち上がり、ブレイブに相対する。

 

「うくっ、おのれおのれ……!」

「ざまあみなさい、ようやくダメージが入ったみたいね!」

「これで、今度こそ終わりにする……!」

 

ブレイブの体が量子化して消えた。

 

「また、あの攻撃!」

「ユニちゃん………!」

「卑怯よ、出てきなさいよ!」

「黙って見てなさい、アンタ達」

「でも、このままじゃユニちゃんは……!」

「もうアレの対策もユニはわかってるわ。後は黙って……ユニの本気を見届けるだけよ!」

 

 

「ふん、子供を守る剣士サマは随分と臆病なのね!隠れんぼが得意とは思わなかったわ!」

 

なんとでも言え……勝った者だけが全てを語れる!

 

「ええ、そうね!死人に口無し、アンタの口からはもう言葉は出ないもの!」

 

その程度の挑発に俺が乗るとでも……!?

 

「いい、ブレイブ!確かに、強くなきゃ生きれない!でも、でもね!優しくなきゃ!優しくなければ、生きる資格はないの!」

 

………!

 

「その技、もう見切ったんだから!」

 

どこからか量子化したブレイブの声が聞こえる。

その声も特定の場所から聞こえてくるようでどこからも聞こえるようでもある。

声からブレイブの場所を探ることは困難だ。

そして、視覚嗅覚触覚を駆使してもブレイブを見つけることは不可能。ニュータイプ能力もユニにはない。

だからーーーー!

 

「さあ、どこからでもかかってきなさい!」

 

ユニはタンクを背にしてメガビーム砲を構えた。

 

(あの時、トランザムしていたのにも関わらずブレイブには攻撃が通った……!)

 

つまり量子化の直後、もしくは同時に攻撃すれば実体化したブレイブを叩くことが出来る。

ならば!

 

「背中を壁にして、どこからか来る攻撃に反射神経のみで対抗してみせると……?」

「確かに無謀ね。でも……最善よ」

 

(上か、下か?正々堂々に前からか……もしくは横からか!)

 

誰も声を出さない。

さっきまで弾丸と熱線が飛び交っていたのが嘘のように静まり返っていた。

神経を研ぎ澄ます。

どこから来ても対応できるように。

 

しかし………ユニが取った策は“そういうこと”では無かった。

ユニは最善を超えた絶対を取った。

ユニが乗り越えた幾多の戦いで身につけた勘が言っている、これは絶対に成功する策だと!

 

確かに、反射神経で相手するのは妥当な手段だ。

だがブレイブの強さが命取り。的確に正確に勝ちへと突き進むブレイブの強さがあるからこそ、この策は最善を超えた絶対となった!

 

 

「そこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

ガン!とユニが振り返って“タンクの中”にメガビーム砲の砲口を埋め込んだ。

そしてユニが引き金を引くのと同時にユニの頭スレスレをビームサーベルが掠めてタンクを両断した。

 

「バカ……な………!?」

 

タンクの中にいたブレイブの体の赤い光が消えていく。その腹には大きく風穴が開いていた。

 

「っ、まだ!」

 

ユニがブレイブを持ち上げ、天高く舞い上がる。

 

「何故……!?今のを、見切るとは……!?」

「その強さが命取りだった!アンタなら、必ず予想外の手段で来ると思った!だからこそ、だからこそよ!」

「………完全に、上を行かれた、か………!」

 

そしてユニはブレイブの腹にメガビーム砲の砲口を当てたまま落下し始める。ユニのブースターが唸りをあげ、凄まじい速度で地面に向かう。

 

「っ、何してんのよ!最後まで抵抗しなさい! アンタは、強いでしょ!?」

「む、無理を言うな……さっきの一撃で、全部、持っていかれた……もはや指1本も動かせぬ……」

「何を弱気な……!ブレイブ!戦いなさい、戦いなさいよ!私が勝ちたいって思ったアンタは、もっともっと大きかったはずよ!」

「ふっ……強さがなくては生きていけない、優しくなければ生きる資格はない……そうお前に論破された時点で、俺の負けは決まっていた……」

「しっかりしなさい!アンタの、思いは!」

「ユニ……子供達の未来……託すぞ……!俺にないものをお前は持っている……!それが、あれば、きっと……っ!」

「ブレイブっ!」

「撃て、ユニ!勝者の務めだ……!俺を撃ち抜き、勝利をその手に掴めッ!」

「っ………!メガビーム砲、最大出力……!」

 

メガビーム砲の砲口が閃光を放ち始めた。ユニがその引き金に指をかける。

 

(それでいい……)

 

 

「シューーーートッ!」

 

 

天から雷が落ちたかのような巨大な威力のビームが天から真っ逆さまに地面に撃ち落とされる。

 

「っ……!」

 

下にいた女神達はそれが地面に落ちたことによる衝撃と風に体を揺さぶられる。

工場には巨大なクレーターが出来上がり、赤熱した地面と吹き上がる蒸気がビームの激しさを物語る。

その真ん中にブレイブは胴体に風穴を開けられたまま大の字で横たわっていた。

 

「………………」

「はっ、はっ、はっ………!」

 

そしてそのブレイブの隣にユニも息を切らしながら横たわっていた。変身が解け、体中が傷だらけでも目を開いて立ち上がる。

 

「……っ、私の勝ちよ、ブレイブ………」

「………」

 

立ち上がったユニの元に全員が向かう。

みんながユニの元に辿り着く前に、ユニはもう何も答えなくなったブレイブに声をかけた。

 

「確かに託されたわ、ブレイブ……アナタの思いも連れていく……この先の未来に、連れていくから……」

 

その言葉が終わるとまるで安心したかのようにブレイブの体が光になって消えていく。何も言葉がなくとも、何も感じられなくても、ユニはただそれを見つめ続けていた。

そしてブレイブが完全に消滅したのを見届けると、ふらりとユニの足から力が抜けた。

 

「ユニ!」

 

しかし倒れる前にノワールがユニの前に回り込み、抱き抱える。

そしてゆっくりと2人でその場に座り込む。

 

「良くやったわね、ユニ……!アナタ、勝ったのよ……!」

「う、ん……ねえ、お姉ちゃん………」

「……なに、ユニ?」

 

ノワールの胸に顔を埋めたユニが静かに嗚咽を漏らした。それを見たノワールがユニを優しく包む。

 

「勝つって、嬉しいことばかりじゃ、ないんだね………っ?」

「ユニ………」

「絶対、分かり合えたのに……思いは同じだったのに……!方法が、立場が、違うってだけで……っ!」

「………そうね、悲しいわね、ユニ……」

「う、う……!お姉ちゃん……お姉ちゃん……っ!」

 

ユニがノワールに強く抱きつく。

掻き毟るように、理不尽をぶつけるかのようにノワールを抱きしめる腕は強い。

ユニは疲れ果てて眠りにつくまでずっとノワールのことを抱きしめ続けていた。


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