超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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第6章〜ルート確定。迫る勇気と企み、迎え撃つ女神たち〜
取引〜√魔剣〜


「みなさん、本当によくやってくれました」

 

イストワールが微笑む。

その隣には他の3国の教祖であるケイ、ミナ、チカがいて、その目の前には4国全ての女神と女神候補生が集結していた。

 

「今回の作戦成功で、ようやく先が見えてきました」

 

+アイエフ、コンパ、そしてミズキ。

ミズキは松葉杖をついている状態ではあるものの、顔は笑顔で辛そうな素振りは全く見えない。

 

「あっ……あ〜……っ!肩痛い……」

「私も、若干肩が凝り気味ですわ。あんなことがあれば、仕方ないですけど……」

 

ベールは自分の肩を揉んでチカが伸びをする。

 

「あのデカいのが現れた時は何事かと思ったけど……」

「私達の手にかかれば、楽勝だったわね!」

 

ユニが胸を張る。決して無い胸とは言ってはいけないのだ。

 

「でも、油断はできないと思う。犯罪神の……ビフロンスの復活は今も進んでいるから」

「それには文句無しで同意ね。あんなのがまた現れたら、今度は何をされるかわかったものじゃない……」

「だったら復活する前に、細胞まで消しちゃえばいいのよ!」

「その方が、楽……」

「そうね。復活前に倒すのを初めとして、何かしらの対策は必要だと思う」

 

ミナがロムとラムに同意する。

次にアイツが現れようものなら、何をされるか本当にわからない。

だがまず確定しているのは、アイツを止められなければ人類は滅ぶということだけだ。

 

「それでは、協議通りに教祖達はすぐにでも自国に戻って新法の公布を行ってください」

「了解。時間はあまりないようだし、急いで行おうか」

「あぁ、また仕事が増えるのね……まあ、仕方ないけど」

 

チカの肩が女性とは思えない音でバキバキバキッ!と鳴った。これにはさすがに全員が苦笑いする。

 

「しんぽう……って、なに?いーすん」

「犯罪神の信仰を規制する法律です。具体的にはマジェコンの販売、所持の禁止……加えて違法アップロードの取り締まり。アップロードをした人には厳罰を以て対処します。オークションサイトにも監視の目を入れて、違法出品があった場合にはサイトごと……」

「ちょ、ちょっと待って」

 

ネプテューヌが手を出してイストワールを遮った。

 

「いっぺんに言われても……えと、その法律を使うとどうなるの?」

「上手く行けば、マジェコンのシェアをほとんど潰すことが出来る……」

「多少の反発はあるでしょうけど、まあ妥当な手段よね」

 

イストワールの代わりにブランとノワールが答えた。

 

「マジェコンのシェアがなくなれば犯罪組織のシェアもなくなって……戦いに有利になるし、ビフロンスの復活を遅らせることも出来る」

「なんだ、得しかないじゃん。なんで今までしなかったの?」

「女神がいない状態でこれを公布してもほぼ無意味でしょうから。ですが、みなさんが帰ってきた今、ようやく新法は意味を持ちます」

 

カードは切るべき時に切らなければ意味がないのだ。

持てる効果が最大限に発揮される時に発動してこそ。

 

「でも、それだと私達はやることないわね」

「放っておいても新法がシェアを下げてくれるでしょうし……」

「だから、君達は実働部隊として働いてもらおうと思う。実際にマジェコンの取引現場に行って取り押さえたり、とかね。そういう単純な作業の方が性にあっているだろう?」

「……なんかいちいちチクチクくる言い方ね」

 

アイエフがこめかみをピクピクさせる。

 

「いいじゃんいいじゃん!そっちの方が簡単だしさ!」

「……アンタはもう少し……いや、なんでもないわ」

 

さらに頭を抑えて首を振る。数年越しの再会からそう時間も経っていないのに相も変わらず大変そうである。

 

「それじゃあ、早速行きましょうよ!」

「マジェコン見つけて、壊すだけ……なんだよね……?」

「うん、そんなに抵抗もないはずだし。それじゃ……」

 

笑顔で踏み出そうとしたミズキの肩ががしっと掴まれた。

 

『留守番』

 

「……はい」

 

素直に受け入れてミズキは部屋に戻っていった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「思い出した……思い出したっチュよ……」

 

ワレチューが特別性の椅子に座って頭を抱えながらブツブツと呟く。

 

「な、なんてヤツにオイラは協力してたっチュか……おかげで死にかけたっチュ!」

 

犯罪神様から直々に呼び出され、ウキウキと御前に言ったのが運の尽き。

そのまま何がなにやらわからないままあのデカいガンダムの生体ユニットにされた。体は改造されてはいないようだが、未だに体に負担は残っているのかたまに頭痛がする。

 

「………それに……」

 

そして、戻ってきた記憶が本当ならば。

 

「下っ端とオバハンは………無事なんチュか……?」

 

 

 

「ったく、しょうがないわねぇ」

 

 

 

「チュ!?」

 

特別性の檻の外から声がした。

 

「だ、誰っチュか!?」

「あら、まだ忘れてるの?悲しいわぁ、昔のことは思い出したみたいなのに」

「お、お前は……!」

「手を貸しなさい?……悪い話じゃないはずよ」

 

ブラブラと鍵をチラつかせる。

 

「アナタはここから出れる、アタシは協力者を得られる、ウィン・ウィンの関係ってヤツよ」

「……簡単に信用できるわけないっチュ!」

「まあそうだけど……」

「そもそも、オイラに何の協力をさせる気っチュか!前みたいなことなら絶対にーーー!」

「悪鬼……ビフロンスを倒すための活動よ」

「な……!」

「どうする?」

 

檻の外に立つ影が鍵を地面に落とした。

ほんの少し悩んだが……ワレチューはその鍵をしっかりと掴んだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ミズキは部屋で溜息を1つ吐いた。

 

「………暇だ………」

 

ここ数日ずっと暇。動いちゃいけないっていうのは身に染みてわかっているものの、やることも書類整理しかなく……。

 

「………“コレ”も、行き詰まったし……」

 

椅子に座ったミズキがパソコンの画面を見ると、そこには設計図のようなものが描かれていた。

既にそのほとんどは完成している。すぐにでも作り始めることは可能だ。

しかし、これでは……動かない。

 

「絵に描いた餅というか、机上の空論というか……実現できないよね、これじゃ……」

 

動力炉が決まらない。というより、ない。

非常に高出力の動力炉が欲しいのだが……。

 

「ツインドライブのトランザムなら……けどそれじゃあ稼働限界時間が短いし……V2のでもいいんだけど……それだと、なあ……」

 

うーむと唸る。

結局は形のない力に頼るしかないのかもしれないが、それは危うすぎる。安定性もないし。

 

「贅沢な悩みねぇ」

「ん、アブネス。どうかした?」

「そうね、単刀直入にいえば金返せってことね」

「う………」

 

部屋に入ったアブネスが早速皮肉をぶつけてくる。

 

「返済はいつになるのかしらねえ……」

「か、必ず返すから……」

 

ミズキは目をそらしてはぐらかすことしか出来ない。

作った機体は合計6機。はてはて、合計金額はいかほどか。

 

「まあ、さすがにこんな状態のアンタを働かせる気は無いけど……これも私に作らせる気?」

「いや、自分で作るよ。予備パーツとか、壊れたパーツを再利用してね。………ま、作れるかもわからないんだけど」

 

アブネスがパソコンの画面をのぞきこんで設計図を見る。

さすがに6機も作っていれば慣れたのか、ある程度設計図を見るとアブネスはパソコンから目を離した。

 

「動力炉が未定なの?」

「というより、動かせない。いや、もちろん普通の動力炉を使えば普通に動くよ?でも……普通だから」

「普通じゃビフロンスは倒せない、と。目標出力は?」

「100万」

「は?本気で言ってるの?」

「できれば測定不能が好ましいけど」

「………測定不能って目指すものじゃないわよ……」

 

ちなみに、Ex-Sガンダムの変形時出力で12250kWである。

 

「いい?あのね?測定不能って失敗作なのよ?」

「それは予定していた出力を大幅に超えすぎたからでしょ?初めから測定不能を目標にすれば成功になる」

「なによその暴論……」

 

アブネスは頭痛が起こったように頭を抑えたが、どうやらミズキの目を見る限り本気でそんなことを考えているらしい。

 

「もちろん、復活前に倒せるのが1番いい。けど……アイツは準備してくる。最高の頭脳から作り出される、最高の機体で待ってるはずなんだ」

「それを、超えなきゃダメってことね」

「油断も妥協もできない。だから……と思ったけど、行き詰まった……」

 

ミズキが椅子に座ったまま天を仰ぐ。

 

(……私に、やれること……)

 

「ん」

 

アブネスがミズキを退けてまたパソコンを見た。

核融合炉、核反応炉、太陽炉、エイハブ・リアクター………数多の動力炉の選択肢はあれど、どうやらミズキはその中のどれもお気に召さないらしい。

 

「……むちゃくちゃガン積みするとか?」

「それも考えたけど、結果として大きくなっちゃうから」

「ん〜……」

 

アブネスは腕を組んで考える。

 

「……逆転の発想とか」

「どんな?」

「……動力炉を積まない、とか?」

「Iフィールドで動かすとかも考えたよ。サイコ・フレームとかならあるいは……と思ったけど動く確率は低いし」

「………じゃあ、割り切りましょう。そんな動力炉なんてないのよ」

「な、ないって……それじゃ勝てなくなっちゃう」

「そ、そうよね……。………ん、待って?」

 

アブネスの頭に電流走る。

そしてブツブツ呟き始めた。

 

「いや、待って、可能なの?……というより、それは本当に測定不能だし……そもそも、許されること………?」

「アブネス?」

「………動力炉の案、あるわ」

「えっ!?痛っ!?」

 

ミズキが椅子をすっ飛ばして立ち上がった。

するとズキンと傷が痛む。

 

「い、いたたた………」

「そ、そんなに慌てないで。もしかしたら、って案だから」

「ど、どういう案?」

「だから、動力炉はないのよ」

「………はい?」

「これも運命かもね。アンタ達の力を結集してもビフロンスは倒せなかったらしいけど……ここならできるかもしれない」

「も、勿体つけずに教えてよ」

「だから、動力炉はないの。……少なくともアンタ達の次元では」

 

アブネスのなぞなぞにミズキがゆっくりと椅子に座りながら答えを考える。

 

「えと……言っている意味が……」

「だから、つまり!動力は、アンタの次元になくてこの次元にあるものよ!」

「………ああっ!」

 

ミズキがまた急に立ち上がった。

 

「痛っ!?」

「……もしかしなくてもアホ?」

「え、いや、待って、それって……可能なの?いや、可能だったとして……」

「でしょ?だからこそ、測定不能。というか、未知数よ!」

「……賭けかな。いや、どうだ……確実にとんでもないエネルギーは出るし……」

 

ミズキが椅子に座り直して頭を巡らせる。

 

「…………うん、やってみよう。ありがと、アブネス」

 

長い逡巡の末にミズキはパソコンの新しいページを開いて新しい機体の設計図を描き始める。

 

「1から設計し直しだ……嬉しい悲鳴だね」

「いいの?そもそも動くかもわからない動力炉だけど……」

「……信じるしかないよ。それで、信じてもらうしかない。そうすれば……ん?」

 

パソコンが音を立ててメールが届いたことを示した。

 

「……なに、これ」

「何処から?」

「知らないアドレス。けど……」

 

見覚えのない上に意味もないような文字の羅列のアドレス。

件名はーーーー。

 

『取引』

 

「………怪しいわね」

「………誰からだ?」

 


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