超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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運命

「っ、お姉ちゃんのバカッ!」

 

ネプギアが変身して空へ飛んでいく。

Nギアを持っていったから、各国の女神候補生達にも探してもらうつもりなのだろう。

 

「………」

《世話が焼ける。もうお前は好きにしていろ》

 

ジャックも表情には出ていないものの、怒っているようだ。

ジャックはサイバーからミズキを探すつもりなのだろう。

 

「……確かに、メールを送ってきた諜報員はウチにいたけど……」

 

アイエフが携帯を素早くタップしてコートの中にしまいこむ。

 

「とっくに、失踪してるわね。多分、マジェコンヌに寝返ったんでしょうけど」

 

そう言ってアイエフも教会を出て行く。

 

「ねぷねぷ……その、信じにくいのは、わかりますけど……」

「………」

「……命の恩人に、その言い草はあんまりです」

 

コンパも教会を出て行ってしまった。

 

「…………みんな、騙されてるんだよ」

「ネプテューヌさん……」

「記憶を操作されてて、それで……」

 

そういう道を進んだのだ。

今更信じ直しますなんて言い出すことは出来ない。

 

「今回ばかりは、私も擁護できません。……きっと、私がこう言うのも記憶を操作されているのだと思われるのでしょうけど」

 

イストワールもその場からいなくなった。

 

「…………」

 

「はあ、前々からダメなヤツとは思ってたけど……ここまで救いようがないなんて、ビックリだわ」

「……誰」

「アブネスちゃんよ。ま、覚えてないでしょうけど」

 

アブネスがネプテューヌに歩み寄って、その胸倉をつかむ。

 

「っ……!」

「あのね。あんまり私も人の事言えないわよ?何回も何回も死地にアイツを送り出して……死なせかけたこともあるわ?けどね……」

 

そこでアブネスが特別鋭い眼光でネプテューヌを睨みつけた。

 

「アイツが死んだら、アンタのせいだからね」

「っ………」

 

その眼光はネプテューヌが恐怖するには十分だった。

アブネスが手を離すとネプテューヌはふらついて転びかける。

 

「……こんなことになるんだったら、帰ってこなくてよかったわよ」

 

それだけ吐き捨ててアブネスは部屋を出ていった。

教会に残ったのはネプテューヌ1人。

ゲイムギョウ界を揺るがすほどの大地震が起こったのは、それから数時間後のことだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「あ、ユニちゃん!ロムちゃん、ラムちゃん!」

 

連絡を取り合ったネプギア達が空中で落ち合った。

 

「いた!?」

「ううん、こっちはダメ……」

「ルウィーも、ダメみたい……」

「リーンボックスにいるのかもしれないわ!」

 

この状況はいつかの時と似ている。

なんだか、ネプテューヌを切ってミズキがプラネテューヌを出た時……それと同じくらいの焦りだ。

 

「今、ジャックさんが4国の監視カメラとかの映像をチェックしてるけど……写ってないらしくて!」

「じゃあ、何処にいるのよ、ミズキさんは……!」

「あ………」

「ロムちゃん、当てがあるの!?」

 

「ギョウカイ墓場じゃない……?」

 

「ギョウカイ、墓場……」

「……ありえない話じゃないわ。多分、今は誰にも会いたがらないだろうから……」

「……探す?」

「ちょっと危険な気もするけど?」

「少しでも危なくなったら探すのをやめよう。まずは、探せるだけ探さなきゃ!」

 

ネプギア達はギョウカイ墓場へと直行した。

 

 

 

ギョウカイ墓場にたどり着いたネプギア達は息を潜めて先に進む。

道案内もいない中、先に進むのは不用心だが……多少の危険はやむを得ない。

 

ミズキさんを今すぐにでも見つけないと……見つけて、どうするの……?

 

「ネプギア、今は見つけることを考えましょ。お姉ちゃんを説得するのはいつだってできるけど……ミズキさんが、もし、見つからなかったら……」

「……うん」

 

その時、ギョウカイ墓場を、そしてゲイムギョウ界を揺るがす大地震が起こった。

 

「っ、なに!?」

「立ってられな……飛ぶわよ!」

 

全員が宙に浮いて地震の揺れから逃れる。

今回は次元の揺れでもなんでもなくただの地震らしい。

 

「……なんだったの……?」

「ただの地震……だと言いけど」

 

 

「ほう?子ネズミが迷い込んだようだな」

 

 

「っ!?」

 

空から優雅に色白の女が舞い降りた。

その姿、ネプギアには見覚えがある姿だ。

 

「はっ、はっ……!」

 

ネプギアの体から冷や汗が吹き出す。

脳裏にフラッシュバックするのはあの日の記憶。負け、捕らわれた、あの日のーーーー!

 

「マジック・ザ・ハード……!」

 

「ふん、あの時の女神候補生か。コソコソと立ち回っていたようだが……それもこれまでだ」

「マジック……じゃあ、アイツが!」

「お姉ちゃんの……カタキね!」

「お姉ちゃん、死んでないよ……?」

 

しかし、状況は悪い。

決戦仕様の兵装でさえ、ジャッジにあれだけの苦戦を強いられたのだ。実際は勝てなかったようなものだ。

 

「今は、逃げよう……!」

「ネプギア……」

「怖がってるわけじゃない。けど、コイツはみんなでかからなきゃ……!」

 

ネプギアがH-M.P.B.Lを握りしめてマジックを見つめて目を離さない。

確かに体は小柄、しかしその中にはとんでもない戦闘力が詰め込まれているに違いないのだ。

 

「ほう、賢明な判断だ。しかし……アレを見てもまだそれが言えるか?」

 

マジックが指を指す方向を見ると、遠くにあった山が崩れ、その中から人型のモビルスーツが姿を現す。

しかし、その姿……あまりに巨大だ。

 

「アレは……ガンダム……?」

「まさか、ミズキさんじゃないわよね!?」

「そうではない。だが、アイツを相手とっても引けを取らない強さであることは私が保証しよう」

 

巨大モビルスーツは歩いてある方向へと向かっていく。

あの方角は……!

 

「リーンボックスが……!」

 

「そうだな。アレを止めなければ甚大な被害が出てしまうだろうなあ……」

 

マジックがニヤリと笑う。

 

「だが……私がいる限り邪魔はさせん。この意味がわかるか?」

「……戦って、勝たないと……リーンボックスが危ない……!」

「戦うしかないってことね……くそっ、こうとわかってれば!」

「今は、私達だけが頼りだから……!」

「精一杯やるわよ!幸い、今は夜中なんだから!」

 

4人が戦闘態勢を整えて空を飛ぶ。

 

「ネプギア、やるしかないのよ!」

「わかってるよ。でも……」

「ネプギアちゃん……勝つしか、ないよ……?」

「勝つ方法、わかってるでしょ!?」

 

今のままでは、勝ち目はない。

ネプギアが1番マジックの強さをわかっているつもりだ。

だから、勝ち目がないのは目に見えてる。

 

でも、それでも、勝つしかないのなら……!

 

「進化するしか……ない!」

 

「遊んでやろう。……ドラグーン」

 

マジックのプロセッサユニットが展開し、そこから翼のようなユニットが8基分離した。

それがまるで全方位から網のように4人を付け狙う。

 

「くっ……!」

「あの時に得られた力……取り戻してやるわ!」

 

ユニがX.M.Bでドラグーンから放たれるビームを避けながらマジックを狙い撃った。

しかし、そのビームは軽く鎌で弾かれてしまう。

 

「無駄だ」

「ちっ……!」

「っ、この程度の弾幕!」

 

ネプギアがH-M.P.B.Lを発射してドラグーンを撃ち落とそうとする。

記憶を取り戻したネプギア達にはこの程度の弾幕など軽々避けられる。

 

「ほう、やはり前よりは力をつけたようだな」

「舐めないでよね!」

「倒しちゃうんだから……!」

「ならば……その思い上がりを砕いてやろう」

 

マジックの中で種が弾けた。

同時にマジックの視界は大きく広がり、遠く離れたネプギアの毛穴まで見えるほどに目も冴える。

そしてマジックの瞳から光が消え去り……SEEDを発現させる。

 

(来るっ!?)

 

「お前達は……私と戦えるほどのステージに立っていない」

 

「っ………!」

 

ネプギアの前にマジックが移動していた。

ネプギアは咄嗟にH-M.P.B.Lで防御するが、

 

「堕ちろ」

「ああっ!!」

 

蹴飛ばされた。

地面に落ちたネプギアがマジックを見上げると、その膝から脛にかけてビームサーベルが展開していた。

 

「速い……!」

「でも、油断しすぎじゃないの!?」

 

しかし後ろにラムが回り込んでいた。

ラムの杖の先端は凍りついているだけでなく、氷自体が尖った強力な武器になっていた。

 

「ええい!」

「ふん」

 

しかし、マジックは軽々とバク転して鮮やかにかわしてみせる。

ラムは逆に背後をとられてしまう。

 

「しまっ……!」

 

音もなくマジックが手に持った鎌でラムの背中が切り裂かれた。

 

「うっ……!」

「ラムちゃん……!」

 

傷は浅いが、ネプギアとラムの2人を軽々とあしらったマジックは未だに余裕の表情を浮かべている。

 

「ネプギア、動けるわね!?見せつけてやるわよ、私達の連携!」

「う、うん!」

 

ネプギアがマジックに飛び込むとユニがその真後ろに陣取って射撃を行う。

正確無比な射撃はネプギアの体をうまくすり抜けてマジックめがけて飛んでいく。

 

「ふん……」

 

マジックはビームを鎌で弾くが、ネプギアがH-M.P.B.Lを持って接近してきている。

 

「やああっ!」

「で、それがどうした?」

 

切りかかろうとしたネプギアとマジックが交差する。

その瞬間、ネプギアが体勢を崩して崩れ落ちた。

 

「う……」

「ネプギア!」

「人の心配をしている場合か?」

「くっ!」

 

マジックの鎌をビーム・ジュッテで受け止める。

 

「もう、やめて……!」

 

ロムが後ろから氷を作り出してマジックに撃ち出す。

マジックはそれを見もせずに鎌に力を入れ、ユニと体位を反転させる。

 

「えっ、きゃああっ!」

「ユニちゃん……!」

 

マジックに向けて撃たれた氷はユニに当たってしまう。

そして倒れたユニの陰から現れたマジックが指をパチンと鳴らした。

 

「え……きゃああっ!」

 

いつの間にかロムの周りを包囲していたドラグーンが集中砲火を行い、ロムの全身を焼き払った。

ロムまでもが地面に落ちてしまう。

 

「う……く……」

 

「どうした、もう終いか?」

 

(強過ぎる……!)

 

無論、まだ戦える。

しかし、ここまで軽くあしらわれてしまっては……!

 

 

「待ちなさい!」

 

 

しかし、空から3人の女神が舞い降りてマジックの前に立ちはだかる。

 

「お姉ちゃん……」

「テメエ……よくもやりやがったな!」

 

ノワール、ブラン、ベールの3人が女神候補生の援軍にやってきた。

そして少し遅れてネプテューヌもその列に加わる。

 

「お姉ちゃん……」

「………」

 

「ふっ、誰かと思えば負け犬どもか……」

「ああん?」

「あの時とは状況が違う……今度は負けないわ」

「覚悟するのは、アナタではなくて?」

 

4人が武器を構え、マジックの相対する。

 

「………まあ良い、また捕らえてもいいが……2、3人殺しても……問題はないだろう」

「舐められたものね!」

「ぶっ殺してやる……!」

 

ノワールとブランが武器を持ってマジックに向かおうとしたその瞬間、2人の前にビームが落ちてその勢いを止める。

 

「っ!?」

「何者だ!?」

 

撃ったのはマジックではない。

その、はるか後方。

 

「釣られたか……女神を傷つければ出てくると思ったぞ」

 

赤、青、白の装甲に身を包んだ機体が赤い翼を広げて向かっている。

そして背中に装備した長いビーム砲をマジックに向けた。

 

「ふんっ」

 

マジックが飛び上がるとそこをビームがなぎ払い、地面に大きな溝を作る。

そしてそこに機体は舞い降りた。

機体の名はデスティニー。デスティニーガンダム。

今、その機体はまるで血の涙を流したような顔をして……。

 

「み、ミズキさん……」

 

《……みんな、怪我はない?》

 

「は、はい……けど……」

 

《ごめんね、ネプテューヌ》

 

「………っ」

 

《もう会わないって言ったのに……ごめん》

 

「おい、待てよ。なんで邪魔したんだ?」

「私達を心配するのはわかるけど、ちょっと乱暴だったんじゃないの?」

 

ノワールとブランが突っかかる。

それは紛うことなき、不信の現れ。

けど、ミズキももう、そんな反応をされることは……予想していた。

デスティニーはそれを無視してマジックの方を向く。

 

「おい、無視すんな!」

 

 

 

《待たせたね。遅くなった。だから……もう……引っ込んでてよ》

 

 

 

「な………!」

 

ブランが絶句して言葉を失う。

言い返そうと口が開く前にミズキは畳み掛ける。

 

《邪魔なんだ、弱くて。せめて足でまといにならないで。それくらい出来るでしょ?》

「ちょっと、それはあんまりですわよ。言っていいことと悪いことが……」

 

肩を掴んだベールの手を弾いた。

 

《裏切り者とか嘘つきとか……好き勝手言って》

「っ………」

「裏切り者?いったいなんの……」

《嘘をついたのも、裏切ったのも……君達のクセに!》

 

デスティニーのアイカメラの光がベールを射抜く。

何故かその眼光にベールは何も言い返せない。

 

《やめてよ……もう、やめてよ……!みんながあの時と同じ、優しいみんなだってわかってるよ!分かってるけど!僕のことを覚えていないのは……それじゃもう、君達は……僕の知ってる君達じゃない!》

「…………」

《そんな知らぬ存ぜぬって……!……わかってたよ、そんな顔されることも……!》

 

ミズキがベールの肩を押して退けた。

ベールは少しふらついて戸惑った顔をする。

 

《もう、君達に僕は必要ないんだろ……!?あの時の約束も、誓いも、忘れる程度のものだったんだろ!?》

 

「おい、何を話している」

 

「……!」

 

気がつけばデスティニーの周りをドラグーンが女神ごと包囲していた。

しかし、デスティニーは女神を押しのけて背中の対艦刀……アロンダイトを抜いて、一閃。

 

「な………!」

 

ドラグーンは全て切り落とされた。

誰も反応できない、体の大きさほどもある大剣を目にも見えない速度でデスティニーは振り回して見せたのだ。

 

《どいてよ……僕に、近寄るつもりだったら……巻き添えを食らっても、文句言わないでよね》

 

デスティニーがアロンダイトを構え、赤い翼を広げた。

そこから虹色の光の翼膜が展開した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『ヒッ、ヒーーヒヒヒヒヒッ!!』

 

『アナタの中に植え付けられた絶望はまだ形を残している。赤黒い、私の色で!』

 

『その、絶望は……きっと壊してしまう!』

 

『耐えられるかしら?私の……絶望の罠に!ヒーーヒヒヒヒヒヒヒッ!!』





こういう役はホントデスティニーの出番。ごめんねデスティニー。でもなんかこう、デスティニーって激情が現れる感じだったからさ…シン然りね…?

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