超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

141 / 212
可変機体の出番。変形合体換装は男のロマン。


トランスモビルスーツ

ルウィーへとたどり着いたネプギアは慌ただしく教会へ向かう。

もし、もし2人の身に何か取り返しのつかないことが起こったのだとしたら……大変だ。

ネプギアは脇目もふらず駆け出した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ロムちゃん、ラムちゃん!」

 

教会のドアを乱暴に開くと、そこにはミナがいた。

ミナがどうしてと尋ねる暇もなくネプギアが駆け寄った。

 

「あの、2人は!?」

「え、えと、あの、その……」

「まあ落ち着きなさいってばネプギア」

 

突然のことにしどろもどろになったミナを見てアイエフがネプギアを引き剥がす。

 

「と、突然すいませんです!ルウィーのシェアが急激に下がったと聞いて……」

「そ、それは本当です……」

 

ミナは俯いて事実を認める。

 

「私の責任です……。私が、犯罪組織の活動を予見できていれば……」

「ふ、2人は!?」

 

ネプギアが聞くが、答えはすぐにわかった。

騒がしいのを聞きつけてラムがやってきたからだ。

 

「なによ……うっさいわね……」

「ら、ラムちゃん!大丈夫!?」

「大丈夫よ……。少し、怠いだけで……」

「でも、顔色悪いです……」

「お世辞にも、体調がいいとは言えないわね」

「ろ、ロムちゃんは?」

「あっちで寝てる……。大丈夫よ、こんなことで……」

 

ネプギアの眉尻が下がる。

今はまだ重い風邪を引いたような状況でもこのままシェアが奪われ続ければ……いつかは……。

 

「なんとか、しなきゃ……!」

 

ミナがラムを心配して部屋に戻しに行く。

その間にネプギアは2人を助けられる手段を考え続けた。

 

考えろ。いち早く体調が回復するようなものはなんだ。

薬が必要なわけでも栄養が足りないわけでもない。強いていえば足りないのはシェアで必要なのもシェアだ。

シェアを集めなければならない。

 

ネプギアは自分が助けられた時のことを思い出す。あの時、瀕死とも言える姿で捕まっていたネプギアはシェアクリスタルの光で回復した。

そうか、シェアクリスタル……。

 

「あの、すいませ……」

「シェアを!」

「はい?」

「私達がシェアを集めます!そうすれば、2人はすぐ……!」

「シェアを?いや、でも、すぐに犯罪組織に奪われてしまいます」

「手に入ったぶんをすぐにクリスタルにすれば、大丈夫です!」

「ですけど、アナタ方に助けてもらってばかりでは……。こちらの国にも立場というものがあります」

「立場って……!」

「私はこの国を守る義務があります。確かに申し出はありがたい……ですけど、そこに付け込まれてしまっては、国そのものがなくなってしまう」

 

ミナの気迫にネプギアが下がる。

そんなことを言っている場合か。叫びたいのをネプギアはこらえる。

ミナの言うことにも一理ある。だが決してそれは素直に受け入れられるものではない。

 

「なら……そちらの国から何かと交換、ってことならどうですか?」

 

アイエフが助け舟を出した、

 

「そ、それなら……ですが、この国に今渡せるものなんて……」

「……2人を」

「え?」

 

アイエフのウィンクでネプギアは全てを察した。

 

自分の目の前に立ちはだかる壁、犯罪組織。

その四天王、ジャッジ・ザ・ハード。そしてマジック・ザ・ハード。

ネプギアの脳裏に蘇るのはあの日の記憶。

女神達が倒され、恐怖に身をすくめて戦うことを諦めたあの日。

そして愛する姉が目の前にいたのに逃げ出すしかなかったあの日の記憶。

まだ勝てるという確信はない。けれど……。

 

「ロムちゃんとラムちゃん!あの2人を、私達のお姉ちゃんを助ける作戦に同行させてください!」

「……はい?」

「もちろん、元気になってからで構いません。それなら……」

「お、お待ちください。今、姉を……女神を助けるって」

「本気です」

 

嘘じゃない、そんな意思をネプギアは瞳に乗せて伝える。

 

「それは妥当な取引かしら……いえ、なんだかこちらにばかり利があるような……」

「ミナさん、お願いします!お姉ちゃん達を助けるためには、2人の協力が不可欠なんです!それに……」

 

ネプギアが真摯な瞳でミナを見つめる。その瞳にはーーー。

 

「2人を、失いたくないんです……!」

 

ああ、まるで。

どこかの誰かのような悲痛な目をしている。

助けたくて助けられなくて、それでも諦めなかった人のような目をしている。

そんな目をされては、断れないではないか。

 

ネプギアの後ろにミズキが立っているような錯覚をして、ミナは頭を振った。

 

「わかり、ました……」

「やったぁ!交渉成立ですね!」

 

ミナが頷いた途端、ネプギアは飛び跳ねて喜び、ドアへ向かう。

 

「アイエフさん、コンパさん、早く!」

「わ、また走るですか~っ?」

 

アイエフもコンパもその後に続いて教会を出て行く。

それを見届けてからミナは唇を噛んだ。

 

「似てます……ネプギアさん、なんだか、ミズキさんに似てきて……」

 

あの目に圧された。

了承させる以外のあの目をやめさせる方法がわからなかった。

 

「変なところばっかり……悪いところばっかり、似て……っ!」

 

珍しく吐き捨てるように悲しむミナは、拳をぎゅっと握りしめる。

あの目は、破滅しか招かないというのに。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「と、飛び出したはいいものの……」

 

アイエフとコンパ、ネプギアが一息つく。

ルウィーのギルドに設置されたベンチに3人揃って座った。

 

「はあ、疲れた……」

「でも、まだまだやらなきゃ……」

「私達が怪我しちゃ元も子もないです。少し休むですよ」

 

3人は大量のクエストをこなし、ルウィーのシェア回復に貢献していた。

確かにルウィーのシェアは向上しているものの……。

 

「でも、元を断たなくちゃ話にならない。またシェアを奪われるだけよ」

「何が起こったんでしょう?ルウィーのシェアがあんなに一気に奪われるなんて……」

 

シェアを集めても、減る原因を突き止めなければイタチごっこだ。それもこっちが圧倒的不利の。というか負けが見えている。

原因、つまり何かしらの犯罪組織の活動を突き止めて妨害しなければ。

 

「少しばかりそっちにも気を配りましょうか。人気がないところとか、そのあたりを探しましょう」

「です。もう少し、頑張るです!」

 

休憩を終えてベンチを立ち、外を歩く。

人通りが多い道をそれ、少しばかり閑散とした道へと向かった。

 

「……あら?」

 

しかし、閑散としているはずの道はそこそこの人に包まれていた。

だが妙だ。こんなに人がいるのに人と人の間が空きすぎている。女子供もいない。偏見で言わせもらえば人相が悪い人というか、いかにも怪しい人が多い。

 

「あれ?ここも人が多い……。もう1つズレますか?」

「いえ。……少し、ついていきましょう」

 

少し視線を下げつつ、人の波に従って動く。するとじきに声が大きく聞こえてくるようになり、それは道の曲がり角の向こうから発せられていた。

 

「これは……!」

 

「さあさあ、今だけっチュよ!今だけマジェコンがこんなに安くなってるっチュ!」

「やった!これでガードされてたゲームがまたプレイできるぞ!」

「よかった~、みんな持ってて俺だけ仲間外れだったんだよな~」

 

「なるほど、これが元凶だったわけね」

「こらっ!ネズミさん、やめるです!」

 

コンパがワレチューの前に出て腰に手を当てて怒る。

だがワレチューにはまったくこたえていないらしい。

 

「チュ!?これは夢っチュか!?コンパちゃんが自分からオイラに会いに来てくれるなんて……」

「そんなの売ってたらめ、です!全部没収するですよ!」

「没収!?それは困るっチュ!……うう……けど、コンパちゃんになら没収されたいと思う自分もいるっチュ……」

「ネズミさん!?」

 

ずずいっとコンパがワレチューに詰め寄る。

 

「う、う、う~……!で、でもこれはまだ製造数の少ない希少品!コンパちゃんにも渡すわけにはいかないっチュ!逃げるっチュよ!」

 

ワレチューと残りの部下が一瞬のうちにマジェコンをかっさらって逃亡した。

 

「あっ!」

「コンパ、ネプギア、追うわよ!これ以上こんなことをさせるわけにはいかない!」

「待つですよ、ネズミさ~ん!」

 

3人もそれを追って駆け出した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

街からだいぶ離れた草原でワレチューは一息つく。

持っていたマジェコンが入っている袋を置いて呼吸を整えた。

 

「ここまで来れば、いくらコンパちゃんといえども……」

「見つけました!」

「チュ!?」

 

その声にワレチューか振り返ると立っていたのはネプギア。

だが、1人だけだ。

 

(どうしよう……追ってる間にはぐれちゃった……)

 

けど、だからといってワレチューは見逃せない。たとえ1人だって……!

 

「チュ?お前1人っチュか?いらないっチュ!」

「い、いらない!?」

「どうせならコンパちゃんに会いたかったっチュ!」

「がーん……」

 

別にワレチューがどうということではないが、いらないと言われるとそこそこ傷つく。

心に無駄なダメージを受けていると、ワレチューは小さな手を上に向ける。

 

「マジェコンは渡せないっチュ!やっちまうっチュよ!」

「な……!」

 

空中から円形のUFOのような機体が現れた。

機体の下部に設置された大型ビームライフルがネプギアを狙っている。

 

《………》

 

「っ!?」

 

ビームがネプギアに撃たれ、砂埃が舞い上がる。

しかし……。

 

「えいやぁぁぁっ!」

 

《!?!?!?》

 

砂埃の中から飛び出したネプギアが変身しながら敵に向かう。

敵の名はアッシマー。

アッシマーはネプギアのM.P.B.Lの斬撃にうろたえたように見えたが。

 

「えっ!?」

 

アッシマーが一瞬で変形した。

人形へと変形したアッシマーがビームサーベルを掴んで斬撃を受け止める。

 

《………》

 

「でもっ!」

 

素早く状況を把握したネプギアはアッシマーを蹴飛ばし、銃口を向ける。

 

「これでっ!」

 

《!?!?!?》

 

M.P.B.Lに撃ち抜かれたアッシマーが大爆発する。

 

「やった……?……っ!」

 

一息ついたのも束の間、ネプギアをビームが掠める。

その瞬間、ネプギアは背筋が凍りつくのを感じた。

 

 

………完全に包囲されている。

 

 

ネプギアを囲むように銃口を向けていたのはガザC。人型のガザCはナックルバスターという大出力のメガ粒子砲の引き金を一気に引いた。

 

「っ、タイタス!」

 

苦し紛れに逃げながら防御力の高いタイタスへと換装を行う。

しかし、ナックルバスターのほとんどの射撃はネプギアに直撃した。

 

「ああああっ!」

 

ネプギアの体が煙をあげながら吹き飛ばされた。

辛うじて顔を上げたネプギアの目に映ったのは次なる射撃準備を完了させたガザC達。

 

「っ……!」

 

《………》

 

狙いは正確、完全にネプギアに当たるようにナックルバスターが放たれた。

 

(当たるわけには……いかないっ!)

 

どくん。

どくん。

 

ネプギアの頭に2度の脈動が走った瞬間、ネプギアは放たれる全てのビームの軌跡が見えた気がした。

 

どくん。

どくん。

 

そして、何よりも速く動ける気がした。

 

「ッ!」

 

高速で動き、放たれたビームとすれ違う。

 

(なっ!?)

 

その速さに驚いていたのは、ネプギア自身だった。

 

(この速さ、今までのものとは違う……!?スパローでもない、スパローよりも速く、タイタスよりも強い……!?)

 

体が勝手に動く。

まるで自分の体ではないような高揚感にネプギアの体が踊る。

ネプギアは既に手にM.P.B.Lを握りしめていた。

 

『君は、進化する……』

 

「進、化……」

 

『君は更なるステージに立つ!』

 

「更なる、ステージ……」

 

まるで、時が止まったかのようだ。

頭の中に響く声をなんの不快感もなく受け止められている。

 

『先へ、先へ、先へ!』

 

「先へ、先へ……先に!」

 

ガザCはビームサーベルを引き抜くが、遅い。

ネプギアが振るうM.P.B.Lが受け止めることさえ許さずにガザCを切り裂いた。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……」

 

ネプギアの、目の前で両断されたガザCが爆発する。

それと同時に、ネプギアの不思議な高揚感も消え去った。




噛ませアッシマー。実弾だったら生きてた。

ネプギアがミズキに似てきたらしく。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。