超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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下に……お知らせありますぐへっ


ホイール・オブ・フォーチュン

教会に戻り、さながら重役会議のように事情を知る者だけが一室に集まった。

アイエフ、コンパ、チカ、そして5pb.。

扉にはしっかりと鍵を閉めて立ち入りを禁じている。

 

「……あ~、つまり?」

「ベールさんへの愛で記憶を取り戻したってことですか?」

「そうなるわね」

「とんでもないわね……」

 

アイエフドン引きである。

 

「……んで、そっちの子は?」

「ひうっ!?」

「……なんで机の下に隠れてるですか?」

「ううっ、見ないで~……。ボク、人見知りなんだよぉ……」

「なんで歌手なんかやってるのよ……」

「ひ、開き直っちゃえばどうにでもなるんだけど……普段はどうしても……うぅ」

 

5pb.は机の下でうずくまって涙目になっている。

 

「で、この子はどうやって?」

「アタクシが教えたのが決定打ね。でも、それ以前からアタクシと5pb.ちゃんは何かしらの違和感を感じていたから」

「それは……素直に凄いです」

「あ、あのね……?ミズキが教えてくれたことが、ずっと胸の中にあって……でも、ずっとそれが何か謎だったの……」

 

歌っている中で胸の中に残っていた何か。歌を歌って想いをたくさんの人に届けることを諦めてはいけない。そんな実感だけが胸の中に残り続けて、でもそれが誰のものかを思い出そうとすると頭痛がした。

 

「で、アタクシが記憶を取り戻して教えたの。そんで、とりあえずケイに聞いたらイストワールに聞けって流されて……アンタ達を呼んだってわけね」

「なるほど……本当なら私たちが先に付いてたはずが、連絡船の事故で足止めをくらい、その間に……」

「チカさんは連れ去られてしまったですね」

「そういうことね」

 

大したことないと思っていた足止めはとても大したものだったらしい。

アイエフとコンパは納得したようにうんうんと頷く。

その会話を聞こうとドアに張り付いている女の子が4人。

 

「…………」

「どう?聞こえる、ネプギア?」

「な、なんとなく……」

 

耳をドアに貼り付けて中の音を聞こうとしているネプギア。

やっぱり何か秘密の話……それも十中八九スミキの話を聞かないわけにはいかない。何か私達にとって重要な秘密のはずなのだ。

 

「ユニちゃんを一応……聞いてみて?」

「……まあ、いいわよ。ロムとラムが見張りはしてくれてるし」

 

ユニもネプギアの隣に座って耳をつける。

 

「ーーーだわ。ーーキの話だけどーーー」

 

(……スミキ、かしら……。ぴったりみたいね)

 

ネプギアも聞き取れたらしく、ユニと目だけ合わせる。

 

「ーーあんなに、弱かったーーら?私のーーってるーーキはもっと強ーーー」

 

(スミキさんがもっと強かった?あんなに強いのに、本当はもっと強かったんだ……)

 

「ーーないわよ。ネプ子ーーまって、自分はーーーなかったーーから」

 

(そういえば、スミキさんはお姉ちゃんを助けられなくて後悔してたって……)

 

「ーーはいいのよ。私がーーーは、腕っ節のーーじゃない」

「それじゃーーーですか?」

 

(腕っ節じゃない……?)

 

「精神的なーーーよ。以前のーーーったら、女神候補ーーにも、教えてーーーはずよ」

 

(私達に、教える……!?何を!?)

 

いよいよ真実にたどり着いたかと、耳を一層澄ます。

 

「ーーー記憶のーーと?」

 

(記憶っ!?)

 

「ええ。ーーーっと、あの子達ーーー乗り越えられーーーしょうに」

「だから、それはーーー」

「不自然ーーーよ。根拠ーーーすぎるわ。何かーーーの理由ーーーわ」

 

(っそ、なんで肝心なとこが聞き取れないのよっ!?)

 

ユニとネプギアが痺れを切らしそうになっていると、静かに肩がポンと叩かれた。

ビクッと一瞬震えたものの、振り返った先にいたのはロムとラムだった。

 

「………!」

 

2人が道の片方を指さして慌てている。

あっちから人が来ているということだろう。ここは逃げるしかないらしい。

 

(いいところで……!)

(見つかったら元も子もないよ、逃げよ……!)

 

4人は物音を立てないようにささっと扉の前から逃げる。

 

(手がかりは……少しだけど、手に入れられた……)

 

今は、逃げるだけ……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

先程の会話ーーーー。

 

「ああ、そうだわ。ミズキの話だけど」

 

チカが話題を変えた。

 

「ミズキってあんなに弱かったかしら?私の知ってるミズキはもっと強かったはずよ」

「それは……仕方ないわよ。ネプ子が捕まって、自分はその間に何も出来なかったんだから」

「そんなことはどうでもいいのよ。私が聞きたいのは腕っ節の強さじゃない」

「じゃあ……なんの強さですか?」

 

コンパが不思議がって聞く。

チカはふぅと鼻で息を吐いて続けた。

 

「精神的な強さよ。以前のミズキだったら女神候補生達にも、教えていたはずよ」

「それは……記憶のこと?」

「ええ。今のあの子達ならきっと乗り越えられるでしょうに」

「だから、それは思い出せないのが怖くて」

「不自然なのよ。根拠が弱すぎるわ。何か別の理由があるはずだわ」

 

ピクリ、とその時5pb.がドアの方を向いた。

 

「どうかした?」

「……ううん。なんだか物音がした気がして」

「そうですか?私達には特に何も聞けなかったですけど……」

「人1倍、音には敏感だから。けど……敏感になりすぎたかも」

 

気のせいだったらしく、5pb.は苦笑いして謝る。

 

「ああ、そう、話を戻すけどーーアタクシがここにアナタ達を呼んだのは記憶のことを聞きたいこともあったのだけど、そのことも気になったから」

 

だけど、とチカはアイエフとコンパを見る。

 

「その様子だとアナタ達も知らないみたいね」

「悪いわね。私達だってミズキのことを全部知ってるって訳じゃないの」

「ええ。それは当然よ。だから……それはアイツが、自分の中に押し込めてるってことよ」

 

チカは少しだけ、寂しそうな目をする。それは悲しさから来たものではあるのだろうが、何というか、それが何処に向けられた悲しみなのかわからない。

 

「もう1度言うわよ。押し込めてる。『押し込めてる』ってことは『閉じ込めてる』の。誰にも教える気がないの。自分の中で完結させてるの。いえ……完結したなら、どれだけ楽なことか」

「……何が言いたいの」

「アナタ、1度くらいはしたことない?自問自答ってやつ。多分、思春期には体験すると思うんだけど」

「……それが?」

「自問自答を知ってるならそれでいいの。自分に問うて、自分で考えて、自分で答えるのが自問自答でしょ?それで、よ。ミズキはそれを繰り返してると思わない?」

「それ……わかる、かも」

 

5pb.が前に出た。

 

「誰にも言えない悩みって、自分で解決するしかなくなるでしょ?でも……たまに解決出来ないことがあるよ」

「じゃあ、どうするんです?」

「大抵の人は流しちゃうんだよ。忘れちゃう。どうでもいいやって、そうする。だから大丈夫なんだ。でも……その内容がどうやっても忘れられないことだったとしたら……」

 

5pb.は俯く。

 

「ボクは、ミズキに見抜いてもらえたから……答えを教えてもらえて、ボクの歌は1歩先に進んだよ。けど、ミズキのことは、誰にも見抜けない……」

「女神様は彼の心の中で言われたんでしょ?助けてあげなくちゃ、いずれ彼はいつか壊れてしまうと。早いとこ見抜いてあげないと……」

 

ドスをきかせた低い声で冷徹にチカは言い放った。

 

「彼、死ぬわよ」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

真っ暗な空間、そこには何も存在しない。

地面、それと水。しかも最低限だけ。

光はなく、生命はなく、文明もない。

その中で立ちすくしていたミズキがうずくまる。

 

「ヴ……あ、ガフッ!」

 

咄嗟に口を抑えたが指の間から鮮血が垂れる。

その血は無機質な大地を赤黒く染めたが、すぐにミズキはその跡を踏みつけて消し去る。

 

赤黒い色は嫌なヤツを思い出す。世界中を絶望に包み込もうとする色だからだ。

見ているのなら別の色がいい。緑、白、黒……そして紫。

 

「クソッ……どうしたんだよ、僕の体……!」

 

口から血反吐を吐き捨てて口の周りについた血をぬぐい去る。

確かに、酷使し過ぎたかもしれない。

ここ最近の戦闘は文字通り命を削るような戦闘ばかりだ。

だが、こんな傷や疲労くらいすぐに治るはずだ。それが自分の体だからだ。

だが、ここまで尾を引くということは……治るスピードと同じ……あるいはそれ以上のスピードで自分の体が傷ついていることの証明に他ならない。

 

「だから……だからなんだって……なんだっていうんだよォッ!?」

 

誰もいない空間で叫ぶ。

誰に向けたわけでもない言葉だが……不思議と帰ってくるのは嘲笑の気がした。

 

「僕達は何と戦っている……何の、為にッ!?」

 

繰り返した自問自答の1つ。

この答えは既に出た。

 

「決まってる!みんなの為だ……!僕が、生きて!生きてみんなと、添い遂げるためだッ!」

 

叫んだミズキの口から血が飛び散る。

しかし、ミズキはそれを意に介さない。

 

「………ウウッ!」

 

けれども、ミズキは頭を抱えてしゃがみこむ。

その先に意味があるのか。みんなが生きて、それで再会できたとしても……思い出せなかったとしたら?

それは、再会できなかったことと同じで……2度と会えないのと同じなんじゃないか?

 

「ウッ、ぐえっ、げほっ、ごほっ、ヴアッ!」

 

キリキリと胸の奥が締め付けられる。

 

血を吐くのが辛いんじゃない、今もまだ彼女らに会えないことが……彼女らが未だに思い出してくれないことが、辛い!

 

「うぅ、あううっ……!」

 

締め付ける胸の痛みに耐えかねて倒れ込む。

地面についた血で自分の顔が汚れようと気にならない。

 

血でできた小さな水たまりはミズキの顔を映し出す。

随分と髪が伸びた。

随分とヒゲも伸びた。

目の周りは赤く腫れた。

目は……随分と濁った。

 

「誰か……僕を、見抜いてよ……っ」

 

弱々しい声は次元の壁など超えられるわけがない。

 

この悲痛な叫びが……後に、運命を変える歯車になってしまうことを誰もしらない。

 





すいませんでしたぁっ!
正月案外忙しく……ここで、書き溜め分が終わってしまいまして……はい……。
たくさん書くとか言ってたのはどこのどいつだよぬっころす。
そんなわけでまた少し休みです……また、1ヶ月くらいかと。
目標は……うん、頑張りゅ。ブレイブさんが出てくるまでは頑張りたいです……。
そんなわけです……ごめんなさいでした。

その間、また感想や活動報告でセリフやアイデア待ってます。アイデアなんて大層なものではなくても、私が読者さんと関わりたいので、雑談感覚で十分です。
話題に困ったら「早く書けカス」と書いていただければ即刻ソーラ・レイをぶっぱします。
以上です、ほんと、ごめんなさいでした…。

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