「は〜、まだ肩が凝ってるぜ。慣れねえことしたからなあ……」
「そもそも。お前みたいなガサツな女に変装なんて無理だったっチュ。見てて変だったっチュ」
「うるせえ!アタイはもっと荒っぽい仕事の方が向いてるんだよ!」
「そんな単細胞だからいつまで経っても出世できないっチュ。物を壊すなんて誰だって出来るっチュ」
「テメエに言われるとほんっとに腹立つなぁ……!」
ワレチューとリンダは口論していた。
場所はリーンボックス地下、アンダーインヴァースの最深部。チカが捕まっていた場所よりもさらに深く、マグマの熱気も伝わってくる。
「このシェアクリスタルも壊していいんじゃねえの?奪われたら大ごとだしよ……」
「だぁから単細胞って言われるっチュ。こんなに効率よくエネルギーを得られるのにみすみすそれを手放すっチュか?」
「その単細胞ってのやめろ!」
「じゃあ下っ端っチュか?」
「テメエが下っ端って言うな!」
「そうね。そうやって呼んだのは私達が先なわけだし」
「そうだ!だからテメエに呼ばれる所以は……ん?」
「そうやって大声で喧嘩してたら、こっちも見つけやすくて助かるわ」
「ああっ、テメエら!」
「その、アンタの後ろにあるのがシェアクリスタルね。返してもらうわよ」
リンダの後ろには眩い光を放つ巨大なクリスタルがある。
女神候補生+アイエフとコンパで総勢6人が構えるが、リンダは慌てるそぶりもない。むしろ、不敵に笑っている。
「コンパちゅわぁん!会いに来てくれるなんて、嬉しいっチュ〜!」
「うるせえこの発情ネズミ!」
ワレチューは満面の笑みどころか、目がハートマークだが。
「気をつけて、みんな。多分また……」
「あのロボットを出してくるのよね?大丈夫よ、これだけの数に勝てるわけないわ!」
4人は変身して身構える。
しかし、突如ネプギアとロムの耳にとある音が響いた。
「え……?なに、この音……」
「鈴の……音……?」
「鈴の音?そんなの聞こえないわよ」
「ううん、聞こえる……。シャララン、シャラランって……」
「………ロムちゃん、よけて……!」
「えっ?」
「早く……!」
ロムがラムを押し出してその場から離れる。
その瞬間、アンダーインヴァースの天井がひび割れ、そして……!
「っ………!」
「ビーム……⁉︎」
真っ赤なビームが天からの雷のようにラムのいた場所を貫いた。
ロムがラムを押し出していなければ、今頃消し炭になっていただろう。
「なに、この威力は……⁉︎」
「す、スミキさん!この攻撃はなんですか⁉︎」
《わからない……!けど、僕も出る!》
突如空間に穴が空き、そこから真紅の機体が飛び出した。節々に緑色のクリスタルを装備した機体はギラーガ。ギラーガはギラーガスピアを持ち、シェアクリスタルへと飛ぼうとするが、
《鈴の音……⁉︎くっ⁉︎》
急停止する。
ギラーガの目の前には強烈なビームが天井を突き破って発射されていた。
「スミキさん!」
《大丈夫!原理はわからないけど、狙い撃たれてる……!鈴の音に気をつけて!》
「気をつけるったって、聞こえないのよ!」
《ネプギアとロムのフォローを受けて!まずは狙撃をしてくる機体を倒す!》
「させるか!」
「ごめんっチュよ、コンパちゃん。コンパちゃんのことは大好きっチュけど、仕事は裏切れないっチュ!」
シェアクリスタルから新たに機体がいくつも生まれる。
腕から発振したビームをまるでヘリコプターのように回して飛ぶ蜂のような色の機体、シャッコーだ。
「はぁ⁉︎モビルスーツってあんな飛び方すんの⁉︎」
「ヘリコプターみたいです!」
《来るよ、避けて!》
何機ものシャッコーが右手に持ったビームライフルを発射してくる。
《当たりはしない!落ちろ!》
ギラーガの手のひらから発射されたビームバルカンがシャッコーを落としていく。
しかし、その数は膨大だ。
「この程度……!っ、鈴の音!」
ネプギアが身を翻すとそこにビームが落ちてくる。
「邪魔……!アイス・コフィン……!」
「まとめて落ちちゃえ!」
ロムとラムが氷塊をシャッコーに向かって放つ。
しかし、その氷は横から発射されたビームに弾き飛ばされた。
「なに……⁉︎」
「何よ、あの真っ赤なデメキンは!」
背中に大型のメガビームキャノンを装備した真っ赤な機体。
その機体がメガビームキャノンを展開して腹に構え、ロムとラムに向かってビームを放つ。
「当たらないわよ!」
機体の名はゴトラタン。
ビームは外れたものの、メガビームキャノンから放たれたマイクロミサイルがロムとラムを襲う。
「しつこい!」
「氷の粒で……!」
細かく割れた雹のような氷が放たれ、ミサイルを爆破させる。
「あいつ、エースってことかしら⁉︎」
「やっつける……!」
「あいつ、何者⁉︎」
「援護した方が……ッ⁉︎」
ネプギアとユニの間にメガ・ビーム・キャノンほどではないものの、強力なビームが放たれた。
そこにいたのも真紅の機体。まるで牛のような角を持った機体はリグ・コンティオ。放ったビームは右肩のヴァリアブルビームキャノンだ。
「あいつも毛並みが違うわね!」
「エース機が、2機も……!」
リグ・コンティオの放つビームライフルを避ける。
「接近戦を仕掛けます!」
「援護するわ!安心して行って来なさい!」
ユニの援護射撃を受けながらネプギアが前に出る。
しかし、リグ・コンティオの左肩の爪のような武装が分離してユニに向かう。
「何よ、この爪!」
「ユニちゃん、避けて!」
ビーム内蔵式ショットクローだ。
無線式で動くそれはユニにビームを放つが、ユニはそれを避ける。避けられてはいるものの、邪魔をされて援護射撃ができない。
《…………》
「くっ、やあっ!」
ネプギアのM.P.B.Lとリグ・コンティオのビームサーベルが鍔迫り合う。
「今回は強敵ね!」
「落としても落としても、キリがないです!」
《っ、アイエフに来た!》
「了ッ、解!」
アイエフがその場を動くとまた天からビームが落とされた。
「なんで地下にいるのにこうも正確に!」
《敵の姿は感じる……!多分、また脳を使ってるんだ!君達を感知して、そこにビームを撃ちこんでる!》
「その敵はどこにいるですか⁉︎」
《上空!恐らく、成層圏レベルの高いところだ……!》
「そんな高いところ行けるの⁉︎」
《厳しい……!くっ、今はこの雑魚を!》
シャッコーの弾幕を避けながら、ギラーガが関節を光らせる。そこから胞子状のビームの球体がいくつも現れ、ギラーガの周りを覆う。
《ビット!》
自由自在に宙を駆けるビットがシャッコーに次々とぶつかる。
ビームシールドで防御したシャッコーには後ろからビットが突撃する。
「このヘリコプターみたいなやつ、増えてるわよ!」
《それを超える速度で撃ち落とす!》
ギラーガの胸から高威力のビームバスターが発射された。しかし、シャッコーのビームシールドに阻まれて届かない。
《ぐっ……!》
またギラーガが上から放たれるビームを感知する。
避けたものの、このままではやられるのが目に見えている。
《一旦退くしか……⁉︎》
ビームバルカンで牽制しながらビットで敵を撃ち落とす。しかし、こんなもの焼け石に水だ。
圧倒的戦力差に押し潰されそうになった時、その戦場に弦楽器の音が響いた。
「あん?」
「ギター……っチュか?」
凄まじい速度でギターが演奏され、最後にギターの音が洞窟内にこだまする。
洞窟の入り口に立っていたのは、水色の髪の女の子。
《5pb.……!》
「みんな、盛り上がってるかい⁉︎」
5pb.がギターを弾き始め、自ら歌い始める。
全員が唖然としてそれを見つめる中、ギラーガだけはその歌の力を感じていた。
《上の敵が、引き摺り落とされてる……⁉︎シャッコーの生産も鈍い……》
「なんですか、この歌……。力が、湧いてくる……!」
「体が軽い……⁉︎」
しかし、味方はむしろパワーアップしている。5pb.の歌にはそういう力を感じていた。まるで神の加護のように、悪を挫き、正義を助ける力を。
「な、なにぼーっとしてやがる!あいつを撃て!」
《っ、させない!》
シャッコーが5pb.にビームライフルを向ける。
すかさずギラーガが前に立ちはだかり、ギラーガスピアを回転させてビームを弾いた。
《もしかして、チカの言ってた助っ人って……!》
「うん、ボクだよ。ごめん、遅れちゃったね。でも……」
「力は任せたよ。想いはボクがやる、ミズキ!」
《っ、5pb.………!》
「大丈夫、覚えてるよ!さあ、次のナンバーいくからね!」
5pb.が次の曲を歌い始めた。
やはり、力がみなぎるのを感じる。
「アンタ、覚えてるの⁉︎」
5pb.はアイエフにウィンクして返事する。
どうして、は今聞くことではない。
《勝機が見えた!ビット!》
ビットがシャッコーを撃墜していく。
《5pb.、このまま地上に出るよ!》
「地上に?」
《歌いながら走れるかい⁉︎》
「任せて!しっかり守ってくれるんでしょ?なら!」
5pb.が反転して地上へと駆け出す。
《僕は上のヤツを倒す!ここは任せたよ!》
ギラーガも5pb.を守るように後退し始めた。
「させないっチュ!追うっチュよ!」
しかしそれを見過ごすわけもなく、シャッコーの大群が2人へと向かう。
そのシャッコーの大群は横からの射撃で数を減らされた。
「全滅……は無理そうだけど、数は減らすわ!」
「かかってくるです!」
アイエフとコンパだ。
シャッコーは一瞬判断に迷うような素振りを見せたが、おおよそ半々に分かれてギラーガ達を追う部隊とアイエフ達を倒す部隊に分かれる。
「私達はあの赤いのを倒せばいいのね!」
「簡単……。今の私達なら……!」
ロムとラムはゴトラタンを担当し、ネプギアとユニはリグ・コンティオを担当する。
「ひええっ!うわわっ!」
5pb.は逃げ回りながら地上へと向かう。
流れ弾が通路や壁に当たり、その爆発で驚いて身を竦ませたり飛び跳ねたりしている。
《安心して、5pb.!指一本触れさせないから!》
「わ、わかった!次、歌うよ!」
ギターを背負い、アカペラで歌い始める。
ギラーガは接近戦を仕掛けてきたシャッコーにギラーガスピアで対抗した。
《ふっ、はっ!》
双頭の槍のようにビームが発振してシャッコーのビームサーベルを受ける。すかさず返してシャッコーを切り裂いた。
《よし!》
シャッコーが爆発して後続のシャッコーを邪魔する。
これでだいぶ時間を稼げるはずだ。
「み、ミズキ!この先足場がないよ!」
《わかった、捕まって!》
5pb.が走ろうとしている橋は崩れ落ちてとてもジャンプでは越えられないほどだった。
ギラーガは5pb.の前に出て手を掴む。
《せーのっ!》
「うわわっ!」
そのままギラーガは空を飛び、橋を越える。
「ミズキ!あれ、出口だよね⁉︎」
《出ても歌い続けてね!》
「おっけー!」
ダンジョンから飛び出ると、そこは草原だった。
すかさずギラーガが上を見上げると、そこには巨大な円盤があった。
《そうか、ザンネック!もう邪魔はさせない!》
ギラーガが上に飛翔する。
上空から狙撃していたのはザンネック。やや大型のモビルスーツで、ザンネックベースと呼ばれる専用の円盤のようなサブフライトシステムに乗っている。
(鈴の音……!やはり、あいつもサイコミュを使えるのか!)
ザンネックの両肩の三日月型の粒子加速器が専用武器、ザンネック・キャノンを駆動させた。
それはギラーガへと向けられる。
《当たりはしない!》
ギラーガは機動性重視の機体。
ザンネック・キャノンを軽々避けてみせる。
《…………》
(やっぱり、5pb.の歌で徐々に下降している……!これなら、攻撃が届く!)
《ビット!》
ギラーガビットがザンネックベースに突撃する。
しかし、ビットはベースに当たった瞬間に弾かれてしまった。
《あそこはビームを防ぐのか……!》
ザンネックは大型と言えども、ザンネックベースのおかげで素早く動く。ギラーガでも追うのに手間取るほどだ。
《…………》
ザンネックの粒子加速器が最大駆動した。粒子が輪を描き、その形状が三日月型から円環状へと変わる。
《今までで1番デカいのか!》
流れ弾が万が一アンダーインヴァースを崩れさせては笑い話にもならない。
すかさずギラーガはザンネックよりも高度を上げる。
《怖くない……!5pb.が歌ってくれて、覚えてくれてるから何も怖くない!》
放たれたビームを軽々避ける。
ギラーガスピアの両端から槍のようにビームが発振される。
《はぁぁぁっ!刈り込むッ!》