超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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スライヌ地獄再び

アイエフが先を照らすとびっしりスライヌだった。壁、天井、床、全てにびっしりとスライヌが張り付いていてスライヌがいない場所を探す方が難しい。

 

《どうかしたの?》

「ああ、そういえばアンタは知らなかったわね……」

「前にも似たようなことがあったですよ……」

 

ちょうどミズキを追いかけていた頃、ラステイションで似たような状況になったことがある。あの時は触手モンスターが多めだったが。

忘れた人は読み直して、どうぞ。

 

「もしかして、ロムちゃんのイヤな予感ってこれ?」

「たぶん……」

「バカバカしいわね!こんな雑魚モンスター、私が簡単にうぎゃーー⁉︎」

「ロムちゃん……!」

《早いね……》

 

勝ってくるぞと勇ましく誓って国を出たラムが一瞬でスライヌの津波に飲まれた。

津波を舐めてはいけない(戒め)。

 

「あは、くは、くすぐったい……!あははは!」

「た、助けないと……!」

「やめといた方がいいですよ。多分また飲み込まれるんで」

 

経験者は語る。

 

「じゃあどうするの……?」

「今すぐ命の危険ってわけじゃないし、放っておけばいいんじゃないですか?」

「でも、下っ端さんに逃げられちゃうですよ?」

「あ〜……。でも2度とああなるのはイヤなんだけど」

「それは私もですぅ……」

「せめて遠くから数を減らしましょうか」

「う、うん……。そうする……」

 

ロムは魔法、アイエフは拳銃、コンパは液体を噴射して遠くから……本当に遠くからスライヌを駆除していく。

 

「や、ダメ、そこは〜っ!」

「こ、この、調子にのるなっ!」

「ひ〜ひひひっ、も、もう降参、ダメダメ!」

 

「2度とああはなりたくないものね」

「私も……いや……」

 

「た、助けてくださいアイエフさん!スライヌが服の中入ってきてゃん!」

「無理よ無理。ネプギアに弾が当たっちゃうもの。自分の周りのは自分で倒しなさい」

「そ、そんな〜!いや、そこはダメダメ!」

「あははははっ、ロムちゃん、助けてぇ〜っ!ぷくくくっ、うはは!」

「やだ……。ラムちゃんみたいになりたくない……」

「お、お願い、お願いだからひゃははは!」

「頑張って、ラムちゃん……」

《案外ロムって薄情だよね……》

「こ、この、いい加減にしろぉ〜っ!」

《あ、ユニがキレた》

「駆逐してやるわ!この世から、スライヌを、1匹残らずぅぅっ!」

 

キレたユニがライフルを構えて乱射し始めた。そして自分の体にまとわりついたスライヌをちぎっては投げちぎっては投げ。

 

《なんか、駆逐してやるって人によって受け取り方が違うよね》

「そうなんですか?」

《普通の人は巨人を駆逐しようとするけどさ、DMMのしもべはロリを想像するし訓練されたガンダマーならトランザムするじゃん》

「1番歴史古いのはトランザムですよね?」

《タブンネ〜》

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「ぜえっぜえっ、はあ、はあ、残りはどこだぁっ⁉︎」

《ユニがバーサーカー化してるね》

「いない、いないわね⁉︎」

「うぅ、服ベトベト……」

「はあっ、はあっ、腹筋が壊れるかと……」

「ラムちゃん、大丈夫……?」

「うん、心配してくれてありがと……って裏切り者!」

「な、なんのことかな……?ひゅー、ひゅー……」

「口笛吹けてないわよ!」

 

「だいぶ時間を稼がれちゃったです」

《多分見失ったね……》

「でしょうね。けど諦めるわけにもいかないし、先に進みましょう」

 

女神候補生がそこそこ大変なことになっているがとりあえず放っておいて先に進む。

すると舗装された……というより人の手が入ったような道が急に開けた。

 

「……蒸し暑っ」

「溶岩……です」

 

急に人の手が全く入っていない岩場が現れた。

溶岩の海の中から飛び出た岩が床を形作っていて、万が一そこから落ちれば骨も残らないだろう。

 

「ネプギア……落ちないでよ?落ちないでよ?」

「フリ⁉︎本当に押さないでね⁉︎押さないでね⁉︎」

 

別に一歩足を踏み外せば落下みたいな細い道はない。足場が崩れたりしない限り、そうそう落ちはしないだろう。

 

「ロムちゃん、何か感じる?」

「ううん……」

 

そうそう都合よくビビッとは来てくれないらしい。

しかし幸運なことにここから先は一本道だ。迷う心配はないので先へと進む。

 

「……あれ?アレって人ですか?」

「本当ね、倒れてる。……ってまさか、あの人!」

 

道の向こうに倒れた女の人がいた。アイエフは急いで駆け寄り、体を起こさせる。

かまされた猿轡と腕を後ろ手で縛っている縄を解いてぐったりとした女に呼びかけた。

 

「ちょっと、起きて下さい!無事ですか⁉︎」

「あいちゃん、私が診るです!」

「……ぅ……アナタ達は……」

 

「あ、あの、その人は……?」

 

女神候補生も追いついて女の人を見つめる。

薄い緑の髪に特徴的な服。見覚えのある姿、この人は……。

 

「チカさん、ですか?」

「ええ、多分ね」

 

「ぅ……私は、もうダメ……」

「そんな、元気出してください!」

「わかるのよ……。自分のことは自分が1番よくわかる……」

「出会ったばかりなのに、チカさん……!」

「ごめ……なさ……」

 

《はいはい、やめやめ》

 

「え?」

《悪ふざけはやめてよね、チカ……。わりかし本気で心配しちゃうからさ》

「う、嘘じゃ……」

《あ、ベールだ》

「お姉様っ⁉︎」

《はいダウト〜》

 

ベールの名前を呼んだだけでチカは飛び起きた。

周りをキョロキョロ……いや、ギョロギョロ見渡す姿はとても死にかけとは思えない。健康体そのものだ。

 

「……スミキ、これはどういうことなの」

《チカは良く仮病するんだって、昔ベールに聞いたことがあってね。本当に体は弱いらしいから全部が仮病とは限らないらしいんだけどね?》

「どっかでそんな話聞いたことあるわよ。え〜と……」

「オオカミ少年……」

「そうそうそれそれ!」

 

「アンタ、騙したの⁉︎」

《つい直前までチカが僕達を騙してたんですがそれは》

「むぐ……」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「先程は見苦しいところを見せたわね。アタクシがこのラステイションの教祖、箱崎チカよ。覚えておきなさい」

「さっきまでとは態度が全っ然違うわね」

「あんな小娘と一緒にしないで。これが本当のアタクシよ」

 

踏ん反り返って傲岸不遜というか……良い意味でも悪い意味でも偉そうで高圧的というか。それ良いニュアンスないな。

 

「あの、私を呼んだのは今の……本当のチカさんなんですよね?」

「ええ。まあ、正確に言えば呼んだのはそっちの彼の方だけど」

 

チカが目線をネプギアに向ける。

だが『彼』と言ったのだから、ネプギアに向けて言ったものではないのは確かだ。

 

「まあそれはいいわ。それよりも……」

「それよりも?」

「アナタ、ベールお姉様のことを知ってるのよね⁉︎」

「え、ええ、いや、はい……。あの、チカさん?なんか目が怖いですよ……?」

「ベールお姉様のこと、教えなさい!今すぐ今でしょホラ早く!」

「うぇ、ちょ、あの〜……!」

 

 

 

「そう、お姉様は今も犯罪組織の手に……」

「はい……」

「あらためてその話を聞くと、やっぱり不安になるわね……」

「お姉ちゃん、無事かな……?」

「き、きっと大丈夫よ!多分……!」

 

女神候補生達はそう言ってはいるものの、あの時無事だったからと言って今も無事だという保証はどこにもない。

暗示のように、そう信じたいだけだ。

 

「それで、あの、シェアクリスタルについては……」

「……それがね。もう奪われたと考えていいわ」

「ええ⁉︎」

「私が捕まってる間にあの下っ端くさいやつが言ってたわ。シェアクリスタルは確保しただのなんだの」

「そんな……」

「じゃあ、この国のシェアクリスタルは壊されたのかしら?」

 

 

《……いや、まだかもしれない》

 

 

「え?でも、普通はそんな敵の助けになるものなんて壊すですよね?」

「いや……。ルウィーのことを思い出して。あいつらはシェアクリスタルを悪用していたわよね」

「あ……。じゃあ、ここもルウィーみたいに……⁉︎」

《有り得る話だよ。すでに侵攻の準備が整ってるかもしれない。けど、準備を終わらせる前に計画を頓挫させ、さらにシェアクリスタルを取り返すことができれば……》

「私達のだいしょーり!ってわけね!」

「じゃあ、早速追いかけよう……?」

「でも、何処にいるかわからないよ……」

 

リンダは完全に姿をくらました。

スライヌで足止めされた上にチカを助けていてさらに時間を食った。

もうリンダを追う術はないと言っても……。

 

「……その、シェアクリスタルを集めることはアナタ達の力を上げることに繋がるのよね」

「え?は、はい……」

 

チカが瞑目しながら喋り出す。

 

「それはつまり……お姉様の救出のためになるのよね」

「それは……はい。それを集めれば、きっとマジェコンヌの敵だって……」

「手を尽くすわ。数時間待ちなさい」

《す、数時間って……まさか、それだけの時間でリンダを探し出すつもり⁉︎》

「愛の力に不可能はないの。あんまり教祖ナメんじゃないわよ」

 

チカが身を翻し、カツカツとビールを鳴らして奥へと向かっていく。

みんなはそれを唖然と見つめていたが、チカは思い出したようにクルリと振り返った。

 

「全部終わったら、彼と話をするわ。それじゃ」

 

ブツブツと呟きながらチカは奥へと消える。

 

「国は立て直す。お姉様は取り戻す。両方やらなきゃあいけないのが教祖の辛いところよね……」

 

「……ミナちゃんもあんなに凄かったっけ?」

「ううん……。もっとぽんこつ……」

「ぽ、ぽんこつって……。ミナさんも普通に優秀だと思うんだけど……」

「ウチのケイは優秀よね。まあ、あの性格を除けばだけど」

「そ、それはチカさんだって同じだもん!こっちのいーすんさんの方が……」

「ミナちゃん、勝てない……?」

《いや、ミナは普通に優秀だし普通に普通だから。ただ、目立たないだけで……》

「いーすんさんは人柄も能力も良いですよね⁉︎」

《イストワールは……背がね?》

「た、体格もですかっ⁉︎」

「だったらミナちゃんが1番ね!どかぁんのばるるんだもん!……ばる……るん……」

「……まだ、成長期だもん……」

「わ、私だってそうよ!ええ!」

「わ、私も……。お姉ちゃんくらいには……」

 

「なんか喧嘩してたはずなのにいつの間にか沈み込んでるですぅ……」

「…………」

「あいちゃん?」

「……なんでもない。ええ、なんでもないわよ?」

 

胸の話から逃れる。

 

「あ〜、もしもし?アンタ達?ちょっと!」

《あ、チカ?どうかしたの?》

「どうも何も……見つかったわよ。マジェコンヌの構成員」

《もう⁉︎》

「変なフードかぶった女とデカい黒鼠の目撃情報があったの。あっさりすぎて怖いくらいだけどね」

「もう隠れる気ないのかしらねあいつら。忍びなれども忍ばない的な」

 

カクレンジ○ーか、ハリケ○ジャーか。え?どっちでもない?

 

「なんでもいいわ。早くとっちめて、クリスタルを取り返すわよ!」

「急いだ方がいいですよね」

「そうね。悪いけど、今すぐ向かってくれるかしら」

《わかった。それじゃ、行こっか》

 

全員が気を引き締めて教会を出て行こうとする。その背中をチカが呼び止めた。

 

「あ、そうだ。アタクシの厚意で助っ人を1人送るわ」

《助っ人?》

「ええ。呼ぶのに時間がかかるから、先行ってていいわよ」

 


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