超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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リーンボックス

「ここがリーンボックス……暖かい国……」

《南にあるからね。ルウィーの後だと尚更暖かく感じるんじゃない?》

 

ラステイションからの定期便で無事にリーンボックスに辿り着けた。

途中、連絡船が壊されていて直すための材料を集めなければならなかったが……それもせいぜい1日くらいのタイムロス。

 

「けど、誰が連絡船を壊したのかしら。船なんてそうそう壊れないわよ?」

「中世とかならいざ知らず、今の船が突然壊れるなんて聞かないですよね……」

「足止めされてた……ってことですか?」

「もしかしたらね。これが致命的なロスにならなきゃいいけど」

 

とは言いつつもアイエフもあまり足止めされていたとは思っていないようで、顔は明るい。

 

「治安は……ちょっと悪そうですけど、いい国です」

《この国には女神がいないからね。信仰も落ちてるはずだよ》

「それでも最低限の秩序を保ってる教祖は相当のやり手なのね」

《あ〜………あ〜、うん、有能だね》

「……なんで言葉を濁すのよ。私何か変なこと言った?」

《いや、何も間違ってないよ。ただ……うん、大丈夫大丈夫》

「すっっっごい気になるんだけど……」

 

(シスコンだなんて言えない……いやシスコンでもないし……)

 

シスコンとはシスターコンプレックスの略だ。女神は……ゴッデス?ゴッコン?いやむしろ合コン?語呂が悪い、ベールコンプレックス略してベルコン?ベルが好きそうだ……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「失礼しま〜す……あ」

 

ネプギアが恐る恐る教会のドアを開くとそこには薄い緑色の髪をした女の人が立っていた。

 

「もしかして、アナタがチカさんですか?」

「…………」

 

チカは呼びかけても反応しない。こっちにピクピクと引き攣る頬を向けているだけだ。

 

「あの、チカさんですよね?」

「え、あ、はいはい。私がチカですよ。すいません、ぼーっとしてて」

 

ネプギアの再度の呼びかけにチカは慌てたように応じる。

 

「あの、疲れてるとかですか?危ない時は休んだ方がいいですよ?」

「い、いやいや、ほんと、本当にぼーっとしていただけですから。心配してくださってありがとうございます」

「そうですか……。じゃあ、私を呼んだ理由はなんですか?」

「へ?ネプギアさんを呼ぶ?」

「あ、私の名前知ってるんですか?嬉しいです!」

「え、あ、いやいや、有名ですから。実は私、ネプギアさんのこと応援してるんですよ?」

「そうなんですか!ありがとうございます!えへへ……」

 

記憶がないネプギアはなんの疑いもせず接しているが、他の3人は訝しげな目でチカを見る。

 

《チカ、本当に大丈夫?なんだか調子がおかしいけど……》

「ギク。ほ、本当に大丈夫ですってよ。最近忙しいから、そのせいかと……」

「やっぱり疲れてるじゃないですか。休んだ方がいいですよ?」

「じゃあ、お言葉に甘えてネプギアさんとの話が終わったら寝させてもらうことにします」

「んで、その話の内容はなんなのよ」

「え?え〜っと、それは……そう、モンスター退治です!」

「そのためだけに、ギアちゃんを呼んだですか?」

「そ、それはその……この国には女神がいませんから。モンスター退治をするにも一苦労なんです」

 

いちいち挙動不審だ。

しかしネプギアは応援してると言われて舞い上がっているのか、ウキウキして快く依頼を引き受けてしまう。

 

「大丈夫ですよ!この私におまかせください!」

「そう言ってもらえると心強いです。お願いできますか?」

「はい!さ、そうと決まれば行きましょう!」

「あ、ちょ、こら、引っ張るな!」

「うんたら草原の敵ならそんなに強くなくて安全だと思いますよ〜!」

 

ネプギアに引っ張られてみんなが出て行ってしまう。それを見てからチカは大きく息を吐いた。

 

「は〜っ……急に来るから、心臓に悪いぜ……ったく」

 

ピンと伸ばしていた背筋を曲げてだらしなく足を広げる。カツラを外した顔は化粧がされていてもわかるほど見覚えのある、リンダの顔だ。

 

「アタイの完璧な変装にまんまと騙されやがって。単純な奴ら……うん?」

 

奴ら……って誰だ?

 

「………あ、決まってる。あの憎たらしい3人と機械のヤツ1人だ」

 

思い出した。どうやら頭がぼーっとしているようだ。気を使ったからか……?

 

「アタイの任務は、このままチカを演じ続けること……。うん、大丈夫だ、忘れてネエ」

 

大丈夫、ハッキリしている。さすがに心配のし過ぎか。

 

「……うん?なんの心配だっけか……」

 

リンダの疑問は2度と思い出されることはなかった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

リーンボックス、ガペイン草原。

そこを歩く足取りは軽い。ネプギアだけだが。

 

「ふんふふ〜ん、ふふ〜ん♪」

「あ〜あ、浮かれちゃってまあ……」

《応援されてるってのが嬉しいんだよ》

「それはわかるけど……普通あんなに浮かれる?」

「応援は嬉しいものですよ?昔折りたたみ式の携帯ゲーム機でも、応援団のゲームがあったです!」

「古過ぎるわ……。それライトになる前のソフトじゃなかった?」

《懐かしいなあ。でっていうのアイランドの難易度が高くて高くて……》

「私そんな昔のは覚えてないわね。覚えてても……『スピン』が導入された某有名ゲームのギャラクシーから」

《僕は結構古いのからわかるよ。ガンダムも出演しているスーパーなロボットの大戦の話はαやったことある》

「あるふぁ⁉︎それって……確か、出演してたのWのエンドレスワルツまでよね⁉︎」

《うん。ちなみに筆者がガンダム好きになった理由はそのゲームだよ》

「あ、ガンダムチーム組むんですよね⁉︎わかるです!」

《昔はやっぱりスーパーロボットが好きだったんだけどね。ストナァァァァァとか、バスタァァァァァとか叫んでたよ》

「古過ぎる……」

 

ゲーム話に花を咲かせていると、だいぶ街から離れた場所にまで来ていた。

 

「あ、アレじゃないですか⁉︎ほら、大きいのがいますよ!」

「本当、ね……。って、アレ結構強そうじゃない?」

「大丈夫ですよ!私に任せてください!」

「あ、ちょ、待ちなさい!」

 

目の前にはだいぶ大きいモンスター。強そうどころか間違いなく強い。

ネプギアは浮かれているのかビームソードを構えて何の躊躇もなく飛び込んでいく。

 

「えいっ!」

 

シンボルアタック!

 

「あ、あれ?」

 

空にフワフワと浮かぶクジラのようなモンスターがこちらをギロリと見る。

ネプギアのビームソードはしっかりクジラに当たったはずだが傷1つ付いていない。

さすがクジラだ!何ともないぜ!

 

「ブオオオオオオ!」

「わ、わあ!怒らせちゃいましたぁっ!」

「んもう、バカッ!」

 

クジラが咆哮を轟かせてネプギアに向き直る。

 

「ギアちゃん避けるです!」

「えっ、わあっ!」

 

クジラの尻尾が地面を叩きつける。

飛んで避けたが、地面が尻尾の形に凹んでしまっている。

 

「あわわわ……」

《僕が出た方がいい⁉︎》

「そうしてもらえると助かるけど⁉︎」

 

 

「どいてっ!」

 

 

「へっ?」

「ブオッ⁉︎」

 

クジラの顔面に弾丸がぶち当たり、その後数瞬置いて……!

 

「きゃあっ!」

 

爆発する。

 

「なぁにやってんのよネプギア!」

「ゆ、ユニちゃん!」

《ユニ……!》

「ネプギア、早く立って!逃げるわよ!」

「は、はい!」

「逃げる?……そんなこと、するまでもないわよ!」

 

変身していたユニがX.M.Bを構えた。一見形は変わっていないように見えるが、そこから発せられるエネルギーは以前の比ではない。

 

「ブオオオッ!」

「ラステイションの科学力よ!冥土に持って行きなさい!」

 

怒り狂うクジラだったが、ユニは威嚇にも怯まずにむしろその隙を狙う。

 

「ロケット弾よ!」

「ブオッ⁉︎」

 

なんと、X.M.Bからロケット弾が撃たれた。

それはクジラに命中して大爆発を起こし、ユニは怯んだクジラにさらに追撃を加える。

 

「散弾!」

 

X.M.Bから発射された弾丸から飛び散る破片がクジラの皮膚に傷をつける。

 

「貫通弾!」

 

螺旋を描く弾はクジラの硬い表皮をも穿って穴を開ける。

 

「ラスト!最大出力よ!」

 

ユニから撃たれたビームは絶大な威力で、クジラの体を焼き払い、大穴を開ける。

 

「ブオオオオ………」

 

クジラは光になって消えた。クジラの後方にはビームが当たってできた焦土が広がっていた。

 

「ふふん、どんなもんよ!」

「す、すごいよユニちゃん!」

「ふふっ、大したことないわよ。これくらいは女神として当然」

 

「あんな威力……3年前だってなかったわよね」

《ほら、ラステイションのこと覚えてる?多分、ヴァイエイトのジェネレーターの技術を使ってるんじゃないかな》

「ああ、それなら納得はいくわね。敵性技術って凄いわね〜」

「弾の種類も多かったですね」

 

どうやらパワーアップしてきたみたいだ。あんなに強そうなモンスターを軽々倒しているとなると、いつにも増して頼もしい。

 

「あ、でもどうしてここにいるの?」

「ん、それはね……」

「その前に、ネプギア」

「はい?」

「お説教ね」

「………はい」

 

やっぱりネプギアはネプギアだった。


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