「下っ端は何処に逃げた⁉︎」
ジンを倒すなりアイエフはすぐに頭を切り替えて回りを見渡す。
「シェアクリスタルのところ、急がなきゃ……!」
ネプギアが変身して飛翔してシェアクリスタルに向かう。
しかし、リンダは既にシェアクリスタルに肉薄していた。
「へへっ……これで、この装置、を……」
シェアクリスタルに何やら変なお中元ほどの箱のような機械を取り付ける。
「それから、離れてください!」
「もう遅え!来るぜ、でっけえのがよぉ!」
ネプギアが精一杯近寄るが、距離があり過ぎる。
リンダが機械のスイッチを入れると、シェアクリスタルの周りが沈んだ紫色の歪みに包まれた。
「なに⁉︎」
「膨大なシェアを触媒に……生まれろ!そして、この国を滅ぼしちまえ!」
空間の中で何かが形作られる。
それは大きく、強く、速く。ただ強くあらんと強さだけを求めたような機体。
緑色で装甲を染め上げられ、両肩の大きなバインダーが目立つ。最も特徴的なのは、その大きさ。高さ、約4m。
「で、でか……すぎるわよ……」
「ギアちゃん、逃げるですぅ!」
「やっちまえ!」
その名は。
「クィン・マンサ!」
NZ-000 クィン・マンサ。
「っ⁉︎」
背中のコンテナから無数の小さなモノが射出された。
「これは⁉︎」
ネプギアの体目掛け、無数の小さな兵隊がビームを放つ。ネプギアは後退しながらビームの網に捕まらぬよう、逃げていたが……。
「まだ、増える⁉︎」
その数、30基。到底逃げ切れるものではない。
「ううっ、あっ!」
ネプギアの肩をビームが掠める。
(これだけ数が多くても……命令を下すのは、あの大きいの!)
ネプギアがビームを懸命に避けながらM.P.B.Lをクィン・マンサに向けた。
あの図体なら正確に狙いをつけなくても当たってくれる。引き金を何度も引くと、クィン・マンサにビームの雨あられが向かう。
《…………》
「ビームを⁉︎弾く⁉︎あっ!」
しかしそれもクィン・マンサの目前で飛び散った。
動揺したネプギアの腹にファンネルのビームが当たった。
「ギアちゃん!」
「ミズキを呼ぶわよ!それまで援護を!」
地面に落下したネプギアをファンネルが取り囲む。
「………!」
「やめるですぅ!」
コンパのガトリング注射器から液体がファンネルに向かって撃たれる。それに気付いてファンネルは弾が当たる前にその場から離脱し、クィン・マンサの元へと戻っていく。
「バケモノね、アイツは……!」
「へっへっへ、はーっはっは!」
ーーーーーーーー
「座標、確認しました。出撃は『MSN-001A1』……デルタプラス、ですね?」
《そいつが今のところ最も性能がいい。デルタプラスをカタパルトにセットするぞ》
プラネテューヌ地下の格納庫では肩を掴まれ吊るされたデルタプラスがカタパルトにセットされ、足を固定した。
《敵の情報は?》
「ありません。座標と救援要請しかありませんでしたから。逆に言えば……」
《それだけ切羽詰まってるってことだね。気を引き締めるよ》
シックな灰色で統一された機体。背中のウイングバインダーと流線型の盾を持ち、右手にはビームライフルを持っている。
「ったく、開発する度に新しい機体に乗り換えて……もったいないにも程があるわ」
アブネスがぶつくさ言いながら持ち場についた。
「いい、ミズキ!せっかく機体を貸してるんだから、戦果でもあげないとお怒りだからね!」
《了解。期待していいよ》
「極小次元ゲート、開きます」
《システム、オールグリーン。行けるぞ》
デルタプラスの前に虹色の穴が現れた。
デルタプラスは膝を曲げ、衝撃に備える。
《クスキ・ミズキ、デルタプラス!行きます!》
「発進!」
ーーーーーーーー
ファンネルが格納された隙に3人は素早く集まる。
「ネプギア、動ける⁉︎」
「は、はい。あのビーム、あまり威力はないみたいです」
「でも、集中砲火を喰らえば一巻の終わりね……!」
クィン・マンサが大きく飛び上がった。
そして両腕を前に突き出してくる。
「くるわよ!」
クィン・マンサの両腕から放たれたビームは拡散して3人に範囲攻撃を仕掛ける。
3人は不規則に地面を焼き払うビームを避けながら壁へと身を隠した。
「ど、どうするですか⁉︎」
「近寄るしか、ありません!」
「それも難しいけどね……!」
だが、近寄らなければ死ぬのだ。たとえ可能性が低くとも、近寄らなければ勝機はない。
「行くわ……っ⁉︎」
壁から飛び出ようとしたアイエフの目の前にファンネルが降りてきた。
「くっ、うあうっ!」
反射的に身を沈めてビームを避ける。
ビームによって砕けた壁のカケラがアイエフの頭に当たるが、それに怯んでいる暇はない。
懐から取り出した自動拳銃でファンネルを撃ち落とす。
「突撃!行くわよ!」
これではっきりした、隠れても無駄だ。
一か八か、突撃しかない。
「牽制します!」
3人が一斉に別方向から飛び出てクィン・マンサに向かう。空を行くネプギアがM.P.B.Lを撃つが、やはり見えない壁のようなものに弾かれる。
「ビームが、効かないなんて……!」
「なら、スティレットで!」
「お注射ガトリングです!」
アイエフはスティレット3本を、コンパは注射器から液体をマシンガンのように高速で撃ち出す。
《…………》
しかしファンネルがクィン・マンサの前に網のようにビームを撃ち、それら全てを撃ち落としてしまう。
「なんて馬鹿げた機体よ!」
「バリアの内側に入り込めば、あるいは……⁉︎」
ファンネルが3人へと向かう。
「来たです!」
「ここからが正念場よ!」
高速で動くファンネルが何本ものビームを浴びせてくる。
クィン・マンサに搭載されているファンネルは30基。先程アイエフが1基撃墜したとは言え、1人あたり約10基のファンネルが襲っているのだ。
その弾幕は濃く、強く、逃げ場がない。
「うっ、あっ、やっ!」
ネプギアが3連続でビームを浴びせられた。
「ギアちゃん、あうっ!」
「この……!」
それに気を取られたコンパも弾幕に捕まってしまう。
2人が怯んだ隙に集中砲火を食らうかと思われたその時、空に虹色のゲートが開いてその中からデルタプラスが現れた。
《…………》
《馬鹿な、巨大モビルスーツ⁉︎》
デルタプラスに気付いたクィン・マンサが両腕を向け、拡散ビームを照射する。
《変形!》
デルタプラスは変形し、ウェイブライダー形態になる。デルタプラス最大の特徴はこの変形だ。前を向いていたデルタプラスは変形したことにより、真上に飛翔した。
《バカな、強力すぎる!しかも、ファンネルまで……⁉︎》
機械にファンネルが扱えるわけがない。あの兵器はなんだ⁉︎パイロットがいるのか⁉︎
デルタプラスは変形を解き、上からビームライフルを撃つ。しかしネプギアと同じようにそれも弾かれてしまった。
《Iフィールド……なら!》
デルタプラスが盾をクィン・マンサに向けるとそこからグレネードが発射される。
しかしクィン・マンサが頭部から放つ拡散ビームでそれも撃ち落とされた。
《くっ!》
ネプギアはそれを見ながら、ファンネルの動きが鈍ったのを見抜いた。
あの機体に、スミキに注意がいってるのだ。なら……!
「勝負を決めます!タイタス!」
ネプギアが地上に降りて力を振り絞った。M.P.B.Lは消え、手と足にビームを纏う。
「ネプギア、待ちなさい!」
「やらなきゃやられます!大丈夫です、タイタスの防御力なら!」
しなやかな体躯で地面を駆ける。ファンネルの反応が一瞬遅れてネプギアの突破を許してしまった。
《近接戦しかないか……!》
再度変形したデルタプラスが回り込みながらクィン・マンサへと近寄る。
《………!》
《うくっ⁉︎この感じ……!敵意を感じた!》
クィン・マンサの中にいる何者かの意識を感じた。
だが妙だ。思考が単純すぎる。とても人間のものとは思えない。まるで獣のような……本能の敵意をぶつけられている気がする。
《なんでもいい!倒してみせる!そして、救い出す!》
その敵意を跳ね返し、モビルスーツ形態へと変形する。
急停止し、モビルスーツの小回りを生かして急旋回。
シールドから飛び出たサーベルの柄をキャッチ、ビームサーベルを形成する。
《懐!もらった!》
クィン・マンサの懐に入ることに成功した。しかし、クィン・マンサもすんでのところで身を翻し、ビームサーベルは胸の部分を掠るだけで終わる。
《くっ……なら、次!》
そのまま抜けてウェイブライダーへと変形。距離を取りつつ旋回するが、その目にクィン・マンサへと走り寄るネプギアが映った。
《ネプギア⁉︎無茶だ!》
「はあああっ!」
クィン・マンサもネプギアに気付き、胸からメガ粒子砲を拡散させて発射する。
しかしネプギアは腕を組んでその中を強引に突破する。
「くっ、くっ……!無茶しなくちゃ、ダメなんです!無茶な相手を倒すには、無茶しないと!」
ついに懐に入り込んだネプギアがブレーキをかけて拳を握り締める。
「ビィィィィム、グロォォォブ!」
《…………》
クィン・マンサは左右の大きなバインダーのうち、右側から大型ビームサーベルを引き抜いた。
「ビーム・アッパァァァッ!」
《……………》
ネプギアの昇龍拳と縦に振り下ろすビームサーベルが激突する。
「うっ、ううっ……!ああっ!」
軍配はクィン・マンサにあがる。
それもそうだ、あの巨体からネプギアの体躯を軽く超えるほどのビームサーベルが振り下ろされたのだ。
ネプギアは地面に叩きつけられてしまう。
「かはっ……!くっ……」
《ネプギア、避けて!》
「はっ、きゃあっ!」
デルタプラスの声で上を見上げると、クィン・マンサの足がネプギアを踏み潰そうと持ち上げられているところであった。
すぐに飛び退いて躱すが、その隙を敵が逃すわけがない。
「あっ、離して!くぅああっ!」
クィン・マンサがネプギアを掴み上げ、握りしめた。
体と骨が軋む感覚にネプギアは悲鳴をあげる。
しかし苦悶に閉じる目が微かに開いた先の物に悲鳴すら忘れた。
「ひっ………!」
クィン・マンサの頭部メガ粒子砲が光り輝いている。このままネプギアの頭を吹き飛ばす気だ。
「や、いやあっ!」
《ネプギアを離せーーッ!》
デルタプラスが旋回し、ネプギアを握る手の根元、腕の部分にグレネードをぶつける。
拘束が緩み、するりと手から落ちるネプギアの手をウェイブライダー形態のまま伸ばした手で掴む。
《ネプギア、ノーマルに換装を!》
「は、はい……⁉︎」
ネプギアの手を掴みながら高速で離脱して距離を取る。名残惜しそうに当たるはずもない拡散ビーム砲を撃ってくる。
《あのバリアはビームを通さない……!だからと言って、実弾では決定的なダメージを与えることは難しい!》
「なら、どうやって……!」
《ゼロ距離でビーム攻撃をぶつける!突破口は僕が開くから!》
速度を落としたウェイブライダーに空を飛ぶネプギアが追従する。
《乗って!2人の推力を合わせて、突破する!迎撃は僕が全て避けてみせる!》
「そんなこと、可能なんですか……⁉︎」
《信じて!今は遠い少女とさえ、いつか隣で、笑い合って歩けるはずだから……!》
「…………!」
瞬間、ネプギアは脈動に似た何かを感じた。
自分の内側で心臓のようにドクンと脈動した何か。それはネプギアに確信に似た何かを感じさせる。
第六感。あるいは、勘。それが何故かはわからないがネプギアに訴えかけている。『信じろ』と。
「スミキさん、私……!」
《行こう!お互いの無茶は、お互いでフォローする!》
ネプギアがウェイブライダーに飛び乗った。
少しだけウェイブライダーは沈んだがすぐに態勢を立て直し、全速力で前進しながら旋回する。ネプギアもプロセッサユニットの出力を上げて加速させる。
「くううっ、うっ……!」
《突撃する!振り落とされないでよッ⁉︎》
クィン・マンサの正面から突撃するネプギアとデルタプラス。それにクィン・マンサは残った左手と胸、頭から拡散ビームを放つ。
《…………ッ!》
「ああもう!あいつらはまた無茶して!いっつも尻拭いは私達の役目よ!」
「あいちゃん、援護を!」
「わかってる!スティレットの特別バージョンを食らわせてやるわ!」
アイエフとコンパが脇から回り込む。
高台に登ったアイエフは懐からスティレットを取り出して投げつけた。
《………⁉︎》
「腕1本、もらっていくわ!」
クィン・マンサの残った左腕に突き刺さったスティレット。それはただ突き刺さるだけではなく、光り輝いて……!
「爆散!」
爆発した!
大爆発を起こしたスティレットはアイエフの宣言通り、クィン・マンサの左腕を見事に破壊してみせた。
「私だって、負けないですよ!」
コンパの注射器はさらに巨大化、キャノン砲となる。
コンパはその砲筒を段差に置き、その巨体へと照準を定めた。
「お水なら、防ぎようがないんです!」
コンパが注射器を押すと高圧の液体の弾丸が発射された。
反射的にファンネルが液体を防ごうと網目のようにビームを張るが、そこを通る僅かな液体を蒸発させるだけに終わる。
《⁉︎⁉︎》
クィン・マンサの左胸に命中。左胸のビーム砲は封じられた。
「このチャンス……いけます!」
《ここを活かせなかったら、男じゃない!決めるよネプギアァァッ……!》
残ったファンネルと右胸のメガ粒子砲、頭部のメガ粒子砲がデルタプラスを撃ち落そうとするが、それをことごとく避ける。
《まだ、まだだ……!》
「っ………!」
ビームがデルタプラスを掠めた。ほんの数瞬前までネプギアがいた場所をビームが横切る。
緊張感と安心感の調和。その不思議な感覚に身を任せた時、2人の目の前に、
「ぎあちゃん!」
「スミキ!」
ビームが迫った。
ファンネル30+Iフィールド+全方位に撃てるメガ粒子法(戦艦主砲レベルから拡散まで撃ち分け可能)+ZZのミサイルを全身に食らっても軽く動く装甲+大出力のビームサーベル。
……どうやって勝つねん!
ZZはやっぱりモビルスーツがカッコいいですよ。ジムIIIの肩にミサイルつけた装備とか下手すればZZより好きっていう。
コンパの注射器砲はイメージ陸戦型ガンダム。撃て!注射器が焼けるまで(?)撃ち続けろ!的な。
突撃イメージははい、アレです、UCのシャンブロへの突撃の時です。撃てませぇぇぇぇん!