超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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申し訳ないですけど、お休みの報告です。
これから正月とか色々忙しい時期に入るので、ルウィーのお話が終わってから落ち着くまで投稿を休みます。ルウィーのところまではすでに書き終わってるんですけど、リーンボックスはまだなんでその間にそこも書きたいなと思ってます。


アイエフのコートの中には秘密がいっぱい

「す、すいません!遅れました……!」

「危ないわね。あと少しで置いてくところだったわよ」

「ってことは……」

「はいですぅ。ついさっき、下っ端さんが電話してたですよ。そしたら『シェアクリスタル』とか、『ブロックダンジョン』とか、『金ピカ』とか聞こえてきて……」

「金ピカ……?」

 

何だろう、それは。

 

「随分遅かったわね。何してたの?」

「あ……いや、あの……大したことじゃないです」

「ふぅ〜ん……。まあいいわ、行くわよ」

 

ロムはあの後すぐに気の向くまま、風の吹くままに何処かへ向かってしまった。

まるで、自分の直感に……何か得体の知れないものに動かされているかのように。

 

「ぎあちゃん?どうかしたですか?」

「……いえ、なんでもないです。急ぎましょう」

 

きっと、見つかる。探し物は、何処かにあるものなのだから。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「…………違う……」

「ちょっと、ロムちゃん!何処行ってたのよ!ミナちゃんも私もすごく心配して……!」

「ちょっと待って……」

 

帰ってくるなりロムは自室のタンスというタンス、箱という箱をひっくり返していた。

クローゼット、ない。服だけだ。

机の中、ない。ガラクタだけだ。

本棚の中、ない。絵本だけだ。

 

「ない、ない、ない……」

「ちょっと?何探してるの?手伝うわよ」

「……わかんない。でも、これじゃない……」

 

おもちゃでも、服でも、絵本でもない。

もっともっともっと、大切な何か。

 

「宝物、だよ……。宝物が、ないの……」

「宝物?それって、この机の中にあるヤツとか?」

 

道端で拾ったガラス細工。

 

「違う……。そんなんじゃない……」

 

確かに綺麗だ。今も大切にしたいと思っている。けど、そんなものじゃない。もっともっともっと……。

 

「……ない……どこ……?」

 

ひっくり返したもので部屋の中はだいぶ散らかってしまう。そんな海の中でロムは頭を抱えた。

 

「宝物……?私の部屋にあるかもしれないわ。探す?」

「うん……」

 

散らかった部屋を片付けることもせず、ロムはラムの部屋に向かう。

 

「違う、違う……。こんなものじゃ、ないの……!」

 

さっきよりも散らかさずに探してはみるものの、見つからない。

 

「ううっ、ひぅ……!ない、ないよぉ……!何処にあるの……?」

「わ、わわっ、ロムちゃん泣かないでよぉ〜……。あ、ミナちゃんなら知ってるかもしれないわ!」

「ミナちゃんが……?」

「ちょっと私、聞いてくるわね!」

 

ラムが走ってミナのいるはずの部屋に向かう。

部屋の扉を大きく開け放ったラムはそのままミナに駆け寄った。

 

「ラム?どうしたの、そんな乱暴にドアを開けて……」

「あ、あのあの!ロムちゃんが泣いちゃって……えと……」

「……?落ち着いて、事情を説明して?なんで、ロムが泣いているの?」

 

ミナがしゃがみこんでラムの顔を覗き込む。

 

「ロムちゃんが、何か失くしたって、それで探し回ってるんだけど……見つからなくて……それで、泣いちゃったの。ミナちゃん何か知らない?」

「失くしもの……?何を失くしたの?」

「それが……わからないって。わからないけど、何か失くしたって……」

「…………」

 

要領を得ない。

でも、ロムが泣いているのは事実なようだ。直接聞きに行くのがいいだろうか。

 

「……わかったわ。ロムは何処にいるの?」

「私の部屋!」

 

ラムと一緒にラムの部屋に向かう。

部屋の中に入るとロムが真ん中でうずくまってしくしく泣いていた。

 

「……ロム、どうかしたの?」

「ミナちゃん……。あのね、ないの……。何処を探しても、見つからないの……!」

「何が、ないの?」

「わかんない……」

「わ、わからないって……」

「でも……なにかが失くなってるの……!大切な、何か……」

「もしかして、何も言わずに外に出た理由はそれ?」

「うん……。ごめんなさい……」

「それは……もういいけれど。でも、何を失くしたかもわからないのに探してるの?」

「うん……」

「じゃあ、なんで失くなってるってわかるの?」

「……わかるの……。すっぽり、抜けてるの……」

 

ロムが胸に手を当てた。

 

「大きい、何か……。足りなくて、穴が空いてて……空で、それで……」

「……………」

 

抜けたもの、ロムに足りないもの。

それはつまり、記憶のことだろうか。昔も、ロムは何かを感じていたことがある。記憶は無くとも、その力は無意識のうちに使えているということなのかもしれない。

けれど、ミズキに言われた。教えてはならないと。

だからミナは何も言えない。泣いてるロムの涙を拭うこともできない。

彷徨った手はロムの頭を撫でることしかできない。

 

「ううっ、ひぐ……」

 

ふと、ミナは部屋の中を見渡して……異常に気づく。

 

(アレは……)

 

荒れた机の上にある写真。それだけはまったく動かないでそこにある。女神候補生が4人で集まった写真にはネプギアもユニも写っている。

なのに、この2人はそれに気付かない。これが、違和感を消し去ることの意味。

2人は、この写真を認識することすらも……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

先回りして、下っ端よりも先にシェアクリスタルを見つける作戦。

それは無事、上手く成功してくれた。

 

「あった!アレじゃないですか⁉︎」

 

ブロックダンジョンと呼ばれる、世界中の迷宮の第1階層。その果てにキラキラと大きく輝くクリスタルが見えた。

 

「よし……!先回りできた!」

「早く、アレを触りに行くです!」

「は、はい!」

 

ここからではだいぶ距離があるが、それでもこちらが先回りできるだろう。

色とりどりの様々な大きさのブロックが床を、壁を、階段を形作っている世界中の迷宮。

規則正しい立方体が作り出す通路を超えると、大きな広場が広がっていた。

すると、聞き覚えがありすぎる声が聞こえる。

 

「見ぃつけた。見つけたぜ、シェアクリスタル!」

「あ、下っ端!もう追いついてきたの⁉︎」

「げっ、お前ら!なんでここに⁉︎」

 

広場に繋がる別の通路から出てきたリンダと出くわしてしまった。

しかも、タチの悪いことにリンダの方がシェアクリスタル側にいる。

 

「ふっふ〜ん。下っ端さんの電話を盗み聞きして、ここまで来たですよ?」

「げっ、汚ねえ!お前らそれでも女神かよ!」

「なんとでもいいなさい。世の中には年賀状の住所からアジト突き止めた人もいるくらいなんだから」

「くっ!だけどよ、アタイが遅れたのは、それなりの準備をしてたからなんだぜ!出てこい、モビルスーツ!」

「っ、また!」

 

3人が飛び退いてリンダから距離を取る。

リンダとネプギア達の間に現れたのはトサカのようなツノと羽、モノアイと灰色の装甲が特徴的なモビルスーツ、ジンだ。

手にアサルトライフルを持った機体が2機いる。

 

「なによ、たった2機程度!」

「すぐやっつけてやるです!」

「へへっ、おいジン!無理はすんなよ!じゃあなっ!」

「あっ、下っ端が!」

「逃げたですぅ!」

「時間稼ぎってわけ?でもね!」

 

全員が武器を構えた。

ジンもアサルトライフルの銃口をこちらに向ける。

そしてジンが引き金を引くのと同時。

 

「来るわよ!」

 

バッと3人が別方向に飛んだ。

アサルトライフルの弾は虚空へと吸い込まれる。

 

「見た目がザコなのよね、アンタら!」

 

アイエフが両手で拳銃を持ち、片目を瞑って狙いを定める。

 

「関節部を狙えば、実弾だろうと!」

 

アイエフの弾が数発、ジンの首の関節近くの装甲に当たる。

危機感を抱いたのか、2機のジンは大きく飛んで距離を取りながら弾を撃ってくる。

 

「相手は、あいちゃんだけじゃないですよ!」

《………》

 

後ろからコンパが着地を狙って待機している。

ジンの片方はアイエフに牽制の弾丸を放ち、もう片方は反転してコンパの方を向いた。

 

「やあっ!」

《…………》

 

ジンは腰の重斬刀を引き抜く。

まるで中世の騎士のような形の剣を片手で持って上から斬りかかる。コンパの着地を取る戦法を逆手に取ったのだ。

コンパの注射器と重斬刀とがぶつかり合い、一瞬火花を上げた後に弾かれあった。

 

「きゃあっ!」

 

負けたのはコンパ。

尻餅をついてしまったコンパにジンが重斬刀を向けるが、

 

「甘いですよ。ええ〜い!」

 

コンパの注射器から水鉄砲のように液が噴射された。

 

《⁉︎⁉︎⁉︎》

 

ジンの装甲が煙を上げて溶けていく。全ての装甲を溶かしきるには至らないが、それでも関節やモノアイなど、脆弱な部分へのダメージは十分だ。

 

《…………》

 

スパークを散らしながら膝をつくジンを庇うように、もう片方のジンがアイエフへの牽制をやめてコンパに銃口を向ける。

しかし、それをネプギアが許さない。

 

「ていやっ!」

《⁉︎》

 

すんでのところでネプギアに気付いたジンはネプギアから離れる。

しかし、そのせいで傷ついたジンが救えない。

 

「安らかに、眠ってください……!」

 

動けないジンにネプギアがビームソードを突き刺した。

爆散しかけるジンだったが、その寸前に生き残ったジンに重斬刀を投げた。

 

《⁉︎⁉︎⁉︎》

 

コンパとネプギアが飛び退くのと同時にジンが爆発した。

生き残ったジンは地面に転がる重斬刀を持ち、二刀流でネプギアに襲いかかる。

しかし、横からアイエフが拳銃を撃ちながら近寄る。

 

《…………》

 

「頭にきてんの⁉︎いっちょまえに、機械のくせして!」

 

アイエフがコートの中に手を突っ込むと、それぞれの指の間に3本のナイフが握られた。

 

「スティレット!」

 

投げられたナイフの後部からジェットが噴射し、自分で推力を得た。

そしてジンの装甲を容易く貫き通して右肩に3本まとめて突き刺さる。

 

《⁉︎》

 

「私達はね、とっくに頭にきてるのよ!それが、わからない⁉︎わからないなら……!」

 

ジンは残った左腕の重斬刀をアイエフに向けて突進する。

しかしアイエフは身を屈めてその場から動かない。

 

「溶け落ちてしまいなさい!」

「いくですよ〜!」

 

コンパがアイエフの後ろから走ってくる。そしてアイエフの背中を踏んで飛び上がった。

 

「お注射、ガトリングモードです!」

 

コンパの注射器の針の部分が3つに分裂した。それが回転しながら高圧の液体を弾丸のように撃ち出す!

 

《⁉︎⁉︎⁉︎》

 

華麗にジンの上を宙返りしながら液体を浴びせていく。

そしてジンの後ろにコンパは着地した。

 

「これが、私達のコンビネーションです!」

「退きなさいよ、機械は!」

 

液体によって溶かされ、蜂の巣になったジンが爆発する。その光を浴びながら不敵に微笑む2人は、とても勇ましかった。






スティレットはブルデュエルのヤツです。あのナイフ。
ガトリングはアレックスのイメージ。さすがにコンパの腕がガッシャンはアレなのでせめて手持ち武器で。

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