昨日はすいませんでした!予約投稿を合わせるのをすっかり忘れてました…。てへっ☆
それと集合写真が(ようやく)できました。もうなんか、色々雑なんですけど許してください。モブの子供達もパクリなのでキャラわかる人は当てて見てください。
【挿絵表示】
「スミキさんは、何をしてるんでしょう……」
「気になりますか?」
「はい。何を話してるのかな、とは思います」
ルウィーの宿屋でベッドに座ったネプギアが疑問を口に出す。ルウィーは夜になり始め、冷え込んできている。暖房をつけているが、それでも少し肌寒い。
「そうね……。私達も知らないけど」
嘘だ。本当は知っている。知らないのは女神候補生くらいだ。
嘘をつき続けるのは、想像よりもずっと胸が痛む。
けど、それでも彼の方が胸を痛めている。そこまでしてやることは、きっと……。
「きっと、大切なことよ」
ネプギアにとっても。きっと、ミズキが関わったあらゆる人のためにも。
ーーーーーーーー
「……アナタ、は……」
ルウィーの部屋で、ミズキが映像としてミナの前に現れていた。
ミナはその姿を見るなり、フラフラと足元が覚束なくなる。
「すいません、少し、頭痛が……」
《それでいいよ、ミナ。君に、事情を説明するよ》
机に手をつくミナをミズキが心配そうな目で見つめる。だが心を鬼にして、先を語る。
《単刀直入に言う。君はロムやラムと同じように記憶を失っている》
「記憶を……?そんなわけはありません、だって思い出せないことは何も……」
《それを認識できないだけだよ。思い出してみて、ロムとラムが変身できるようになったのはいつから?》
「いつからって……そんなの、決まってます。3年前から……」
《何をきっかけに?》
「何をってそれは……それは……あれ……?」
《僕は覚えている。今と同じように捕えられた女神を救うために、2人は変身を果たした》
ミナの目が曇っていく。必死に頭の中の記憶を整理しているのだろう。
「あれ、あれ……?すいません、ちょっと、混乱してて……」
《……混乱するのはわかる。けど、事実なんだ。ケイもイストワールも、記憶を取り戻している》
「ふ、2人が……?そんな、まさか。だってそれは、アナタのホラ話じゃ……」
《違う、信じて。今ロムとラムが寝込んでいるのも、そのせいだ。元凶は、ビフロンス。倒すべきは、アイツだけだ》
「そんな……そんな、あれ……?っ、すいません、また頭痛が……」
《ミナ、思い出して。スーパーリテイルランドが出来たのはいつ?》
「スーパー……リテイルランド……」
《ここに執事が来たのはいつ⁉︎》
「執事、なんて、募集した……覚えは……」
《資料が残ってるはずだ!仮面をつけた男が……僕が!ここにいたことは事実だ!》
「うっ、あっ……!」
ついにミナが膝をついた。耳を塞いで目を閉じ、必死に痛みをこらえている。
「頭が、痛い……!やめて……!」
《耳を塞いでもいい!目を閉じてもいい!けど、君が忘れてはいけないものは伝える!》
「やめて……!頭が、痛む……!」
《2人の成長を!覚えていなきゃいけないだろッ⁉︎見守ってなきゃダメだろッ⁉︎》
「………………!」
ミナが目を開いた。突如頭の中から見覚えのない光景が流れ込んでくる。
「ブラン……ロム、ラム……!なに、この景色は……⁉︎」
《その景色を、拒まないで!全て、包み込むんだ!》
乱れた髪の間から目を震わせるミナの顔が見える。怯えに飲み込まれそうになる顔だ。だけど、それでもやるべきことがある!
《ミナ!西沢ミナ!その鎖を、壊してっ!》
「っ、あっ………」
突如ミナの体が跳ね上がる。ビクンと体をそらせたミナの体が硬直する。目は見開き、汗は吹き出し、体は震えている。
しかし、わなわなと震える唇から言葉は発せられた。
「思い……出した………」
カクリと糸が切れたようにミナの全身の力が抜けて、床に横たわる。
《ミナ、大丈夫⁉︎》
「っ、はあっ、はあ………。だいじょば、ないですけど……けど……」
息を切らして胸を上下させるミナ。目は疲労困憊といった様子で閉じているがそれでも力を振り絞って話してくれる。
「思い出しました……。ミズキ、さん……」
《ミナ……》
「……少し、休んでもいいでしょうか……」
《もちろんだよ。ありがとう、ありがとう、ミナ……》
そのまま横たわったミナはやがてすぅすぅと寝息をたて始める。無理もない、記憶を取り戻すのは大変なことなのだ。
《ロムとラムの記憶……。せめて、最近の分だけでも……》
ネプギアに同じ苦しみを味わせたくはない。目覚めてた時に記憶も戻っているのが一番いいのだが、その望みは薄いだろう。現時点では今のように苦しませながら無理矢理することしか記憶を取り戻す方法はない。それをロムとラムに強いるべきか。
(……でも……僕は……)
ロムとラムのため、という理由もある。単純に自分が怖いから、という理由もある。
けれど、心の奥に残る浅ましいバカみたいな感情がみんなに思い出すことを強制しない1番の理由だ。
唾棄すべき感情を捨てたいのに捨てられない。この感情の名は、例えるならそうーーー。
《……期待、かな……くす、バカみたいだ……》
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………コソ。
………コソコソ。
………コソコソコソ。
「カサカサ、ですぅ」
「それじゃゴキブリよ……」
まるでテレビドラマで見るような刑事の如くコソコソと足音と気配を殺して動く3人。
壁に張り付きながら道の向こうを伺う様子は怪しいことこの上なく、これが男などだったら通報まっしぐらである。
では何故、そんなことをやっているのかというと……。
「…………」
下っ端の尾行のためである。
毎度毎度シェアクリスタルに近付く度に現れる下っ端。微妙に敵も強力で厄介なことこの上ない。
ここで発想を逆転させたのだ。
シェアクリスタルあるところに下っ端あり、なのなら下っ端あるところにシェアクリスタルあり、なのではないか?
そんなわけで下っ端を追いかけて何か情報を持っていないか、持っていればそれを聞き出すつもりなのである。
「……今。足音殺して」
諜報員であるアイエフの指示で動く。アイエフはこういうことのプロだけあって動きが違う。餅は餅屋ということか。
「……動きがないわね」
「本当は下っ端さん、何も知らないんじゃないですか?」
「かもね。だったら、とんだ無駄足だったわね……」
じ〜っと見つめてみるが、特に動きはなく暇を持て余しているような感じだ。
「ううっ、寒〜……」
「上着してても染みるですね……」
「確かに、寒いわね。ネプギア、ちょっとあそこの店行ってあったかいもの買ってきてよ」
アイエフが指差す先には大型のスーパーマーケット。あの中になら何かあたたかいものが売っているはずだろう。
「わかりました。リクエストありますか?」
「コーヒー。微糖」
「バケツお願いするですぅ」
「はい、微糖のコーヒーとバケツ……。……⁉︎」
高速修復材が必要な状況なのだろうか。まさか、コンパの正体は……。
「い、行ってきますね……」
深く聞くことはせずにスーパーへと向かう。
自動ドアが開くと暖かな空気が体を包み込んでくれる。
「あったか〜い……」
財布の中から小銭を取り出して飲み物コーナーへと向かう。
「コーヒーの、微糖は……。この、マックスコーヒーで」
ここにアイエフがいたら全力で制止していただろうが、それも叶わない。アイエフが将来糖尿病になることが決定した。
「バケツ……は……ないなあ……」
さすがにないか。近所の鎮守府ってあったかなあ……さすがにないよね。
「体をあっためるには……お酒だよね。このメチルアルコールを……」
ここにアイエフが以下略。コンパ即死確定。
「私は……うぅん、悩むなあ、何買おう……」
迷った末に手にしたのはカフェオレ。1人だけまともなものである。
さっさとお会計を済ませて外に出る。
するとそこには……。
「……ない……。もうちょっと、こっち……?」
ウロウロするロムがいた。
「………」
声をかけようと手を伸ばしたが、その手が止まって宙ぶらりんになる。
敵と呼ばれるとは思わなかった。いつものロムじゃないとはわかっていながらも、傷ついた。そして、恐れている。
「……っ……ぁ……」
困っているみたいだ。地面を見ながらウロウロして何かを探しているよう。
「……ロム、ちゃん……」
「………?」
意を決したつもりだったが、声はずっとか細くなってしまう。
そんな声でも呼ばれたことに気付いたロムは顔を上げた。
「……前の……悪い女神……」
「悪くなんか……。私、ロムちゃんの友達だよ……」
「違うよ。だって……」
「違くない!友達だから、ロムちゃんが困ってると思って、それで……」
ロムの顔が見れない。
はっきりとした敵意を持ってこちらを見てくるロムの目なんか、見つめられるわけない。
もう限界だった。
どんな罵倒の言葉をかけられても、言い返せる気はしなかった。何か言われれば、そのまま逃げ帰ってしまうのがわかる。
ロムが何か言い出せば崩れてしまうほどの脆い空間。
ロムが何か声を発しようとして息を吸う音にネプギアは首をすくめる。
しかしロムが発した声はネプギアの予想外のものだった。
「……悪くない」
「え……?」
「わかるよ。真っ直ぐだもん。……真っ直ぐだよ」
「ま、真っ直ぐ?えと、何が?」
「ネプギアちゃんが、曲がってないってことだよ。もしかして悪くないかもしれないけど……頭は悪い?」
「え、え、ええ?ま、真っ直ぐ?曲がってないって?ええ?」
さらっと酷いことを言われたが、ロムの言ってることの意味がわからない。1人大混乱しているネプギアにロムが唇を不満そうに尖らせながら言葉をかける。
「感じないの……?ネプギアちゃんはね、ピーンってしてるよ……。グネグネしてない。わかる……?」
「ご、ごめん……。わかんないや……」
頭がおかしくなった……わけではない、よね?
「……あ、そういえばロムちゃんは何を探してるの?」
話を逸らす。正直これ以上話しててもロムの言うことを理解できそうにない。
「……わかんない」
「え?」
「わかんないけど……忘れた気がする……。何処かに、起き忘れたものがある気がするの……」
「……………」
そう言うロムの顔を見てネプギアはようやく理解した。
感じているのだ、ロムは。
漠然としていて、それがなんなのかも見当がつかずに、それでも不安を感じている。
その心が感じるままに、動いている。それはきっと凄いことだ。誰にでもできるわけじゃない。
「何処にあるかなぁ……」
そう呟くロムの顔はとても儚げで、寂しげだ。
「あ、あのね、探し物ってね」
「うん……」
ロムが感じていることはネプギアにはわからない。伝えて欲しくても、まだ幼いロムにそんな漠然とした感覚を教えろと言う方が無理だろう。
だからネプギアは自分の経験則からしか何かを言うことができない。
「灯台下暗し。……案外近くにあるものだよ?」
少しでも役に立てばいいなと、そんな無責任な思いを抱きながら。