超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ロムとラムの登場〜。やっとテスト終わった。やったぜ。


忘却の彼方

「ぜえっ、ぜえっ、ひ〜っ、はあっ!こ、ここまで来れば……」

 

リンダが膝に手をついて息を切らす。

ここは……確か、ルウィー国際展示場の東館だったか。ここまで奥まったところに来れば、追いつかれまい。

 

「……なんか、ムカっ腹が立ってきたな」

 

な〜んで私はムカつく相手から逃げることになるのだろうか。目の前に来たのだからぶん殴ってやれば……って、無理か。それも含めて腹がたつ。

 

「チッ、むしゃくしゃするぜ……!」

 

あいつらが来てから仕事の失敗が目立つ。もちろん、あいつらがいない時に仕事はしているが、それは決まって成功している。つまりあいつらが来るということ=仕事の失敗、なんて嫌な式が出来上がっている。

 

「あ〜、いた!」

「っ⁉︎……って、なんだガキか」

 

声に振り返ると、そこにはこちらを指差すピンクの帽子と服の女の子がいた。女の子というか……幼女?

 

「んだよ、テメエは。私は今イラついてんだからよ、寄るな。しっしっ」

「何を!アンタなんてすぐやっつけちゃうんだから!」

「あ〜、ウゼェ!一体なんだってんだよ!」

 

頭まで痛くなって来た。本当にイライラする。

 

「そんな死にてえなら、ぶっ殺してやるよ!出てこい!」

 

リンダが手を挙げるとドム・トローペンが1機、傍に現れた。

 

《…………》

 

幼女めがけてラケーテン・バズの銃口を向けて躊躇いなく引き金を引く。

 

「………!」

 

幼女は避ける暇もない。悲鳴もあげない幼女の目の前で弾頭が爆発した。

 

「ったく、ザマー見やがれってんだ……」

 

まあ、憂さ晴らしは済んだ。

とりあえず、もう少し安全なところに逃げて……と鉄パイプを担ぐとバズーカが爆発したことによる煙が晴れる。

そこには……。

 

「……うえぇ⁉︎なんで、生きてやがんだ⁉︎」

「ラムちゃんを、イジメないで……!」

「あうっ、うっ……⁉︎ラ……ム……⁉︎」

 

その名を聞いたリンダが頭を抑えてうずくまる。

リンダの目線の先にはピンク色の服を着た幼女の前に立つ水色の服を着た幼女がいた。

 

「痛え、痛え……!あ、ぐぅ……っ!何モンだ、テメエ……!」

「ロムちゃん、ありがと!」

「うん……!2人で、やっつけよ……!」

 

2人の幼女が光に包まれた。

服は消え、代わりにスーツが体を覆ってプロセッサユニットが装着される。そして杖を掴んだ。

 

「なっ、テメエらも女神だったのか⁉︎チッ、ここは逃げるが勝ちだ!」

 

頭痛もするし、ロクに戦えない。ここはおとなしく戦術的撤退だ。

 

「逃さないわよ、ロムちゃん!」

「うん、ラムちゃん……!」

 

リンダが背を向けて逃げる。

追いかけようとするロムとラムの前にドム・トローペンが立ちはだかった。

 

《…………》

 

「2人一緒で!」

「壊れちゃいなさい……!」

 

ラケーテン・バズの弾頭を左右に別れて飛んで避ける。

再びくっついた2人が杖の先を合わせた。

 

『アイス・コフィン!』

 

氷の塊がドム・トローペンに向かって飛んでいく。苦し紛れにラケーテン・バズを撃つが、その程度では氷に傷1つついていない。

 

《⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎》

 

ドム・トローペンは氷塊の直撃を受けてしまい、胴体と足が真っ二つに割れる。それと同時に機体は大爆発を起こした。

 

「……騒がしいわね、終わりの瞬間まで!」

「男は黙って、サッポロビール……!」

 

男かどうかはわからないが、なんならビールを飲めるかもわからないが2人で決めポーズ。

あの下っ端っぽい奴は何処かへ逃げてしまったようだ。

 

「な、なによ今の爆発は⁉︎」

「あっちの方向ですぅ!」

 

「……新手かしら?」

「やっちゃおう……!」

 

2人の意見は合致。

曲がり角から出てくるであろう新手に身構える。

 

「確かこの辺りから……え?」

「お陀仏しなさい!」

「お縄につけ〜……!」

「きゃ、きゃああっ⁉︎」

 

顔を出したネプギアがロムとラムに氷の塊をぶつけられそうになる。危うく顔を引っ込めて避けた。

 

「これ、氷……!」

《ってことは、ロムとラム!》

 

壁からネプギアが飛び出す。

 

「待ってロムちゃんラムちゃん!私だよ、ネプギア!」

「……ネプギア?」

「そう!ほら、私だよ!」

 

 

「………誰?」

 

 

「え…………?」

《…………⁉︎》

 

ぞわりと背筋が凍る。この国が寒いとか、2人が氷魔法を使うからとか、そんなレベルの寒さじゃない。体の芯の芯から凍え切ってしまうほどの悪寒を感じる。

 

「な、何言ってるの⁉︎私だよ、ネプギア!プラネテューヌの女神候補生で、2人の友達!」

「……知らない……。私達の、友達じゃない……!」

「そ、そんな……⁉︎」

「しかも、プラネテューヌの女神ってことは敵ってことじゃない!」

「て、敵だなんて、違う……!」

 

ネプギアが汗を垂らしながら数歩後ずさる。

目の前の現実が受け止められていないような顔だ。

 

「ちょっと、冗談が過ぎます!ちょっと前に見舞いに来たばかりじゃないですか!」

「嘘なんかじゃないわよ。私達が、敵と友達になんてならないもの!」

「て、敵じゃないですぅ!そんな、なんでですか!」

「ルウィーのシェアを奪う、敵……。敵と分かれば、容赦はしない……!」

 

2人が杖を構えて舞い上がった。

 

「そんな……。ロムちゃん、ラムちゃん……」

(どういうことだ⁉︎記憶がさらに消されている⁉︎ビフロンスの仕業か、それとも……⁉︎)

 

つい数週間前の記憶が消えている、ということか⁉︎けど、ネプギアもユニも今以上に記憶は消えていなかった。さらに記憶が消えることなんてあるのか⁉︎

 

「アイス……!」

「コフィ……!」

 

《っ、ロム、ラムッ!》

 

ミズキが声を荒げる。

すると2人はまるで親に叱られたかのようにビクンと身を強張らせた。

 

「な、なに……?」

「誰よ、アンタ……」

 

2人の杖の先にあった氷塊が消えていく。

それと同時に2人が杖を落とした。

 

「っ、ああっ……⁉︎」

「ううっ、あ……!」

 

「っ、ロムちゃん、ラムちゃん⁉︎」

 

突然頭を抑えて2人が墜落し、苦しみ始める。

その姿に茫然自失としていたネプギアが我に帰り、2人の元に駆け寄った。

 

「ネプギア、ネプ、ギア……!ともだ……ち……っ!」

「ラムちゃん、しっかりして!ロムちゃんも!」

「ネプギアちゃん……!頭が、痛いよぉ……!」

「ロムちゃん⁉︎泣かないで、私、どうしたら……!」

 

「ちょっと、アレって……!」

「まさか、戻り始めてるですか⁉︎」

(そうか、記憶が……!)

 

何があったのかは知らないが、頭の中がぐちゃぐちゃになっているのだろう。もともと不自然な形でロックをかけられていた頭の中をしっちゃかめっちゃかにしてしまい、その結果記憶障害が起こったということか……⁉︎

 

「う……あ……」

「ネプギア……ちゃ……」

「ロムちゃん?……ロムちゃん!ラムちゃん⁉︎イヤ、ダメ!」

《2人を教会まで運ぶよ!急いで!》

「は、はい……!」

 

ロムとラムの変身が解けて気絶してしまった。頭痛が酷すぎたのだろう。

ネプギアは変身して2人を肩に担ぐ。

 

(一体、2人に何があったんだ……⁉︎)

 

 

ーーーーーーーー

 

 

それからしばらく後。

ネプギア達は水色の髪をした女の人の前に立っていた。博士のような帽子にメガネ。普段なら穏やかな人物なのだろうか、状況が状況のためかその顔は引き締められている。

彼女の名は西沢ミナ。ルウィーの教祖だ。

 

「……あの、2人は……」

「大丈夫です、命に別状はありません。今は穏やかな顔で眠っていますよ」

「良かった……」

 

ネプギアが胸をなで下ろす。

しかしミナの顔は厳しいままだ。

 

「完全にこちらの管理不足です。まさか、ネプギアさんのことを忘れているなんて……」

《……前に、何かあったんですか?》

「はい。つい数日前に教会の中で2人が倒れているのを見つけたんです」

 

さっきのことから考えて、記憶が戻りかけたことによる頭痛が原因だろう。恐らく、ビフロンスのかけた呪いを破りかけ、違和感を抱いたのだ。

 

「その時は何か変化はありましたか?」

「いえ、怪我もありませんでしたし……2人も昼寝から起きたみたいに元気だったので、何もないかと思っていました。……今日までは」

 

アイエフの問いに心底悔やむように俯く。責任感が強いのだろう、自責の念を感じているようだ。

 

「実は、ギアちゃんの記憶が抜けてた……つてことですか?」

「恐らく、ネプギアさんに関する記憶だけではありません。ここ数年の記憶が抜け落ちてしまっています」

「そんな、なんで……」

「わかりません。俗にいう、記憶喪失でしょうか。頭を強く打った形跡などはなかったんですが……」

 

打つ手なし、といったところなのだろう。目覚めた時に2人が記憶を少しでも取り戻していることを期待するしかない、と。

 

(………教えるべき、か……?)

 

自分の中に問うてみる。

ケイは言った、求めなければ手に入らない、と。

それはミズキも十分に納得できる。2人が手を伸ばさなければ手は繋げないのだ。

今まで僕は相手が伸ばした手を掴もうとしていた。けれど、それじゃダメだ。自分が手を伸ばして、待たなければ。急かさなければならない。

 

「それで、アナタ方は何故この国に……?」

「私達は、シェアクリスタルを集めに来たんです。古の女神が遺したという、シェアクリスタルを……」

「古の女神が遺した……シェアクリスタル……?」

 

ミナが首を傾げる。

 

「そんな話、聞いたことありません」

「え?でも、実際にシェアクリスタルはあるし、いーすんさんも……」

「イストワールが知っていたのですか?……一体どこからそんな情報を……」

 

そりゃ知っているわけはない。作り話なのだから。

 

「事実としてシェアクリスタルはあります。最近大幅なシェアの増加がありましたよね?」

「それは……はい、確かに。では、本当にそんなものが存在したのでしょうか……」

 

まだミナは半信半疑だ。アイエフが助け舟を出してくれたものの、信じきれないのだろう。

 

「じゃあ、ミナさんはシェアクリスタルについては……」

「すいません、力になれそうにありません。申し訳ありません、迷惑ばかりお掛けしているのに、こちらは何もできない……」

「そ、そんな、構いませんよ。ダメで元々って感じだったので」

 

一層申し訳なさそうにするミナをネプギアが慰める。

 

「ネプギア、今日は日を改めましょう。あっちも忙しいだろうし、私達も情報を集める必要があるわ」

「そう、ですね。2人の看病もしなきゃいけないですもんね」

「申し訳ありません。シェアクリスタルについては、こちらでも調べ直してみます」

「お願いしますです」

 

お辞儀をして教会を出ようとする。

ドアを開いて出ようとしたその時、ミズキが意を決したように声を発した。

 

《待って。……話が、したい》

「え?スミキさん、何かまだ言うことがあるんですか?だったら……」

《ううん、前みたいに2人だけで話がしたい。多分、リーンボックスでも頼むと思うんだけどね》

「そんなに重要な話を……。スミキさんって、教祖さん達と知り合いなんですか?」

《まあ、そんなとこ。……今は忘れてるだろうけど、きっと思い出してくれるよ》

 

ネプギアとスミキが話すのをミナが手持ち無沙汰に見ている。それに気付いたネプギアがミナに駆け寄り、Nギアを差し出した。

 

「あの、スミキさんが話をしたいって。話をしていただけませんか」

「それは……構いませんが。それは重要な案件……なんですよね」

《重要だよ。とても……とても》

 

ともすれば、ロムとラムの容態に関することと同じくらい。

また、頭痛を強いることになる。ほんの少したりとも苦痛を和らげてあげることすら今の僕にはできないけれど……。

 

「わかりました。2人きりの空間で、話をしましょう」

《ワガママを聞いてくれてありがとう。ついでに、もう1つワガママがある》

 

ミナがそのワガママの内容を訪ねる前に、ミズキが強い語気を込めて言った。

 

《覚悟を、決めて》





記憶をさらに失った2人。どうやらほんの数週間前のお見舞いのことすら忘れている模様。一体何があったのか。

いや〜、追いつかれる……。早く続き書かないとですね〜。

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