地面から無数の鬼のようなモビルスーツが湧いてくる。1つ目で棍棒を持っており、紺色の体。地面から湧き出す様子はゾンビのようでもある。
「こ、これは……」
「やっちまうっチュよ、デスアーミー!」
ワレチューの号令で大量のデスアーミーが襲いかかる。
「っ、多すぎよ!」
「でも、やるしかないです!」
「シェアクリスタルは、守らなきゃ……!」
ネプギアが変身して飛翔した。
上からM.P.B.Lを乱射する。狙いをつけなくても地面を覆い尽くすほどの数だ、勝手に当たってくれる。
「何よこいつら、雑魚じゃない!」
「ドンドン倒すですよ!」
アイエフが拳銃を乱射してデスアーミーに当てていく。デスアーミーは拳銃の弾丸程度でも倒れていく。
コンパは巨大な注射器から毎度お馴染み、よく成分がわからない液体を噴射。デスアーミーはドロドロになって溶けていく。
「これだけの密度なら、まとめて!」
ネプギアがビームを撃ちながら下降する。デスアーミーは棍棒型のビームライフルを構えてネプギアに撃つ。
「っ、濃い……!けど、そんなめちゃくちゃな狙いじゃ!」
しかしネプギアはそれをかいくぐっていく。
そしてネプギアがM.P.B.Lを持ち替えた。
「ミラージュッ!ダンスッ!」
ネプギアの舞うような連撃にデスアーミーはまとめて倒れていく。
地面に足をついたネプギアをデスアーミーが棍棒で殴ろうとするが、当たる寸前に空に逃げている。
「ユニちゃんと戦ってわかる……!こんな弾幕、無意味なんだ!」
狙いも何もない適当な弾幕では弾幕たり得ない。全ての弾が相手を撃ち落とすための弾であってようやく、弾幕は弾幕なのだ。
「邪魔しないでください!私は、私は!」
ネプギアがM.P.B.Lの照準を合わせる。
最も敵が密集しているところを薙ぎ払うように!
「救世主に、なるんですっ!」
最大出力のM.P.B.Lのビームがデスアーミーを薙ぎ払い、地面ごと削り取る。デスアーミーで覆い尽くされた地面がようやく見えたがしかし。
《…………》
「この、数ばっかり!」
「多すぎるですよ!」
すぐに地面からデスアーミーが湧き出してくる。味方の残骸を踏み越え、砕き、前に進軍する。
その様子には一片も死を恐れる様子はない。ただただ進軍し、敵を倒すだけの兵隊。
「キリがない!コンパ、切り抜けるわよ!」
「で、でも、この数じゃ……!」
「どの道このままじゃ数に押されて全滅よ!潰すべきは……!」
デスアーミーの奥の奥。
「中枢よ!」
「ネズミさんを、倒すですか……⁉︎」
「そうよ。覚悟決めなさい!遅れても助けないから!」
ーーーEXAMシステム、スタンバイーーー
「さあ、行くわよ……!」
アイエフの瞳が赤く光る。
2丁の拳銃を手首の動きだけでリロードし、デスアーミーの群れに向ける。
「道を開くです!お注射行きますよ〜っ!」
コンパが注射器から大量に液体を振りまく。
雨のように降り注ぐ液体がデスアーミーを溶かして道を開いた。
「弾が切れるまで、撃ち続けるわ!」
アイエフが拳銃を乱射しながらデスアーミーの群れを突っ切り始めた。コンパもその後について行く。
「んっ……!このっ……!」
ネプギアはデスアーミーの弾幕を避けつつ、M.P.B.Lを撃ち、地道に数を減らす。しかし焼け石に水どころか、数を減らす以上のスピードでデスアーミーは増えている。
「助けに行きたいけど……っ!くっ、数だけ!」
アイエフとコンパの援護に参加したいが、弾幕が濃くて近付けない。
「はっ、ふっ、はっ……くっ!」
アイエフの拳銃の引き金はカチカチと音を立てるだけになる。弾が切れた拳銃を目の前のデスアーミーに投げつけ、両手からカタールを抜く。
「近寄らないでくださいです!」
コンパの液体も底をつく。
針で攻撃して行くが、それでは手数が足りない。
「なんとしても、ここを超え……っ⁉︎」
殺気を感じて攻撃をかいくぐっていたアイエフだったが、突如地面から伸びた手に足を掴まれる。
「しまっ……!」
間髪入れずに周りのデスアーミーが棍棒を振り回してくる。数回はカタールで受けられたが、手が思いっきり足を引っ張ってきた。
「うっ、きゃっ!」
「あいちゃん!」
転んでしまうアイエフ。
身動きが取れないアイエフにデスアーミーが棍棒を振り下ろしてくる。
「っ」
「危ないです!」
コンパがアイエフに覆い被さって庇う。
チョバムアーマーのスキルがあるが、それでもこの数では……。
「コンパ、ダメよ、先に行きなさい!」
「む、無理です!あいちゃんを置いていけないです!あうっ!」
「アイエフさんと、コンパさんが……!やめてくださいっ!」
デスアーミーがコンパを塗りつぶすように上に集まって行く。
それを見たネプギアはM.P.B.Lを構えたが、
(この軌道じゃ、万が一……!)
躊躇う。
デスアーミーに当たらなければコンパに当たってしまう恐れがあるからだ。
「吶喊、しますっ!」
ネプギアが弾幕の中に突っ込み始めた。
射撃がダメだというのなら、近接攻撃しかない。
「2人から、離れてっ!」
コンパの上にまたがるデスアーミーから切りつけて倒す。
低空で飛んで周りのデスアーミーも倒すが、キリがない。
「うっ、く……!」
「ネプギアも、逃げなさい!あのネズミを探して、とっちめるのよ!」
「でも、それでも、私は……!」
見捨てることができない。
甘えていると、縋っているだけと思われても仕方ない。それでも今ここで傷つく人を捨てられるほど、今の私は強くない……!
「また見捨てたら、あの時と同じだから!」
「っ、アンタは!」
後ろからデスアーミーか棍棒を振るってきた。
「っ、あっ!」
M.P.B.Lで受けたが、弾き飛ばされてしまった。海の中にM.P.B.Lが沈んでいく。
「しまっ、くっ……!」
正面のデスアーミーが棍棒を振り下ろしてくる。
捨てる強さは持っていない。きっと捨てられる人は強い。捨てられるだけの覚悟がある。何かを捨てて、何かを得ることのできる人だ。
でも、きっとそれでは誰1人救えないから。私は誰かを救いたいから。
「一緒に行くんです!私達が、救世主に!」
腕をクロスして棍棒を受ける。
ネプギアの腕が砕かれると誰もが思ったはずだ。
しかし、砕かれたのはデスアーミーの棍棒だった。
《………⁉︎》
「使いこなす……!私の中に眠る力を!」
ユニの時に使えた力。それを今こそ発揮する時だ。
もっと強く、もっと硬く、もっと重く!
きっと、この力は私の意思に応えてくれる。
なら、叫べ!心の奥底から、願え!
「ビーム・グロォォォブッ!」
ネプギアの拳がビームに覆われる。そしてその拳を、デスアーミーの顔面に叩き込む!
「ビーム・ストレートッ!」
《⁉︎⁉︎⁉︎》
デスアーミーがネプギアの拳で吹っ飛んでいく。
吹き飛んだデスアーミーは後方のデスアーミーをも吹っ飛ばし、大きく直線状の道が出来る。
「……チュ……?」
「素手だからって、諦めない……!」
デスアーミーが吹き飛んでできた道の向こうにはワレチューがいた。
すかさず周りのデスアーミーがワレチューを守るように立ちはだかる。
「素手だからって諦めるほど、私は素直じゃないから!」
ネプギアの右足の先からビームが現れ、ネプギアの右足を覆っていく。まるでドリルのようにつま先が尖ったビームは脛まで伸びている。
「ビーム・ブーツ……!地面からアナタ達が湧いてくるのなら!」
ネプギアが大きく舞い上がり、右足を地面に向ける。
「やあああぁぁぁッ!」
「っ、チュ⁉︎ま、まさか……!」
急下降したネプギアの右足がついでのようにデスアーミーを貫き、さらに地面にまで突き刺さる。そしてネプギアの足が突き刺さった部分から小島はヒビ割れ、そのヒビはパキパキと音を立てて小島全体に広がっていく。
「この小島の中央には小島を支える支柱があります……!今、その柱を砕きました!」
「と、いうことは……チュ〜っ!」
小島が砕け散り、海に破片をまき散らした。
デスアーミーも足場をなくし、次々と海に落下していく。
「きゃっ、わぷっ、水……⁉︎」
「お、溺れるですぅ〜!」
「今、引き上げます……っん!」
アイエフとコンパをネプギアが引き上げて近くの小島へと立たせた。
「はあっ、ふぅ……助かったですぅ」
「ったく、びしょ濡れ……って、アレは……」
小島があった場所から何かが浮上してきた。
巨大で眩く輝くその結晶は、見紛うことのない……!
「シェアクリスタル!」
「なるほどね、無限に湧いてきておかしいとは思ったけど……これをエネルギー源にしてたのね」
「チュ、作戦失敗っチュ!こうなれば、逃げるが勝ちっチュね!」
ワレチューはネプギアがアイエフ達を降ろしたのとは別の小島にギリギリで逃げており、そこからダッシュで逃げる。
「覚えておくっチュよ。……それと、コンパちゅわあん!また会いにきて欲しいっチュ!待ってるっチュよ〜っ!」
「あ、待って……!」
「いいわよ、放っておきなさい。それより、あのクリスタルを」
ネプギアが浮遊してシェアクリスタルに近づく。
光を浴びているだけで暖かく、傷や疲れが癒えていく気がする。そのクリスタルにネプギアが触れるとクリスタルはさらに大きく輝き始めた。
「あ…………」
クリスタルが天へと舞い上がり、弾けて世界中に光の粒子を散らす。まるで光のシャワーのようだ。
「………これで、お終いですね」
「そうね。1度帰ってから、報告しましょう」
「…………」
ネプギアは頭の中にムズムズするような感覚を覚えた。
決定的に、足りない。何かはわからないけど、足りない。
最初は違和感なんて感じなくて、最初にシェアクリスタルに触れた時は違和感を感じるようになった。
今はさらに強く、確かにそれが感じられる。だからこそ、ネプギアは心が晴れない。
恐れ、焦り、哀しみ。負の感情ばかりが募っていく。
ネプギアは胸がきゅうっと締め付けられるのを感じた。この負の感情は一体どこまで高まっていくのだろうか。
そんなことを考えながら。
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《……確かに、シェアの大幅な回復を確認したよ》
「こちらでもです。ネプギアさん達がやってくれたみたいですね」
《そのようだね。……しかし……》
ケイが厳しい顔をして顎に手を当てる。
《彼は……ミズキはどうしたんだい?一緒に戦ったわけではないみたいだけど》
「それが……通信が乱れたんです。今は復旧したんですけど……ちょうど戦いの前後に連絡が取れなくなり……」
《今までに似たようなことは?》
「特には。現在は原因を解明中です」
ふむ、とケイは顔を緩めた。
次元科学はまだまだ未知の科学。解明には時間がかかるだろう。
《しかし……彼は悔やんでるだろうね》
「恐らく。アイエフさんとコンパさんは空気を読んで『大したことなかった』と言ってくれましたが、もし誰かがまたいなくなっていたら……」
《今度こそ、終わりだ。ゲイムギョウ界も……彼も》
改めて危ない橋を渡っているのだということを認識させられる。今にも切れそうな細い細い糸の上を綱渡りするような感覚だ。
「それで……その、様子はどうですか?シェアが戻りましたが、ユニさんの様子は……」
《大きな変化はこちらでは確認していないよ。だが、最近物思いが増えたように思える。無論、僕が過敏になっているだけかもしれないけどね》
「……ですが、彼女にも芽生えましたよ」
《わかっているよ。だけど、記憶が多少なりとも戻っているのならもっと大きな反応を見せるはずだ》
「それはすなわち、ミズキさんを思い出すということだから……ですね」
ガンダムの力が、ユニとネプギアに再び芽生え始めた。
だが、それにもかかわらず2人はミズキの手がかりすら思い出していないのだろうか。
《別にユニ達が薄情というわけじゃない。むしろ、ユニ達ですら思い出せないことに驚くよ》
「確かに、恐ろしいことです。でも、でも……」
《自力で思い出して欲しいとは思うけどね。ミズキのためにも》
「昨日が奪われるのが、こんなにも堪えることだとは思いませんでした。昨日を奪われると、手の中にあるはずの明日さえ嘘に見えてくる……」
イストワールが表情を曇らせる。
シェアを取り戻すことで、彼女らの記憶が戻っていくのなら。
一刻も早く、集めて欲しい。イストワールはそう切に願った。
デスアーミーは後でスタッフの皆さんがおいしくいただきました。嘘です。
沈んで勝手に死にました、ということにしときます。DG細胞があるわけでもないですし。