超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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勝ちたい

何が起こったか、ユニにもわからなかった。

間違いないことは、彼の言葉が勇気を与えてくれたこと。

その勇気に自分の何かが応えてくれたこと。

その何かはユニにはわからなかった。だがユニはそこに懐かしさを感じていた。

だが、今は!

そんな懐かしさに戸惑う暇もない!

このチャンスを、掴む!

 

「出力、よこして!」

 

ユニのプロセッサユニットが唸りをあげた。

ネプギアが使えたのなら、自分だってなんとしても使いこなせなければならない。負けられないのだ。たとえどんな些細なことでも!

 

「強い……!」

 

ネプギアがその勢いに押される。

しかしネプギアも押されたままで終われない。

 

「私だって、負けられないの!」

「それは私も同じ!お姉ちゃんを倒した敵、アナタを倒した敵を超えなきゃいけない!なら、私、どんなヤツよりも!」

 

ネプギアもプロセッサユニットの出力をあげた。

その瞬間、ユニが勢いを抑えてネプギアをいなす。

 

「しまっ!」

「強くなるッ!」

「ああああっ!」

 

背中を見せたネプギア。その背中に容赦なくX.M.Bを撃ち込む。

 

「まだでしょ⁉︎そんなんで、終わるわけないわよね!」

「くっ、やああっ!」

 

再び飛翔するネプギア。

しかし今のビームでプロセッサユニットがダメージを受けてしまったらしく、動きが鈍い。

 

「私には負けられない理由がある!勝ちたいと思う!」

「それは、私も同じ!」

「そう!彼も同じだった!」

 

ユニの放つビームがネプギアを掠める。

 

「でも、彼は戦えてる!あんなに強い!それは何故⁉︎なんであんなに戦えると思う⁉︎」

「っ、スミキさんは……!」

「私が勝てない敵をああも簡単に倒す!だって、そうよ!戦いは……ッ!」

「っ⁉︎」

 

ユニがネプギアに向かって飛翔した。

ネプギアはその気迫に押されて後退してしまう。しかしユニが接近する方が速い。

ユニがネプギアに肉薄した。

 

「勝ちたいって、そう強く思ったほうが勝つ!私はアナタに、勝つ!」

「ええいっ!」

 

苦し紛れにM.P.B.Lを横に振る。

しかしユニはそれすら見透かしたように体を沈めて避けた。

 

「うっ!」

 

ネプギアの腹にX.M.Bが押し付けられた。

そこでようやくネプギアはユニの狙いがわかる。

0距離での……!

 

「でやあぁぁぁぁッ!」

「きゃああああっ!」

 

X.M.Bの最大出力!

ネプギアがビームに吹き飛ばされて海に沈んだ。

 

「ネプギア!」

「ギアちゃん!」

「やめて!」

 

助けようとしたアイエフとコンパがユニの制止で立ち止まる。

 

「真剣勝負なの!手を出さないで!」

 

その剣幕に2人は動くのをやめる。

 

海の中ではネプギアが泡と共に沈んでいた。

意識はあるのに、体が動かない。腹が燃えるように熱い、痛い。

戦いは勝ちたいと強く思った方が勝つ、と言うのなら。ユニが勝ちたいと思う理由はなんだろう。

決まっている、姉のためだ。ノワールを助けたい、そのためにはノワールを倒した敵にも勝たなければならない。だから勝ちたい。

ネプギアだってそれは同じだった。ネプテューヌを助けるために、強くならなければならない。

でも、今はユニの方が強い。それは何故?姉への想いなら負けているつもりはない。

 

(別の、何かを………)

 

なら、他に理由がある。

ユニを強くさせる理由があるのだ。

 

でも私は強くならなければならない。誰よりも。だって、そうだ、私は。

 

「救世主になるんだ……!」

 

彼は騎士になるといった。

私は救世主になる。何故かはわからないが、胸の中から溢れるこの気持ちに嘘をつかず、向き合って……!

 

「私、救世主になる!ゲイムギョウ界を救う救世主に……!」

 

それが私の戦う理由。

救世主になるため、私は……!

 

ネプギアのプロセッサユニットが唸りをあげた。水の柱をあげながら舞い上がる。

ネプギアのM.P.B.Lにラインが入っていく。そしてネプギアは舞い上がった。プロセッサユニットが何故かはわからないが回復している。いや、回復どころか出力も上がっている。

どうしてなんて聞く暇はない。今はこの力を使って!

 

「……………」

「ネプギア、いいわよ、それでこそ!」

「私だって、もう負けられないの。ユニちゃんはきっと、勝ちたいだろうけど……私は!それ以上に勝ちたい!」

「勝敗が決めてくれるわよ!どっちが勝ちたかったかってね!」

 

ネプギアがM.P.B.Lから放つビームが螺旋を描いた。

ユニはそれを避けるが、恐れを感じた。

さっきまでのネプギアではない。武装も、心も、何もかも。

 

「ネプギアぁぁぁぁッ!」

「やああぁぁっ!」

 

だからと言ってユニは怯まない。

狙いをつけてX.M.Bを撃つが、ネプギアはそれを躱す。

 

(動きが違う!)

 

ネプギアのプロセッサユニットが直ったどころか、強化されている。

よく見れば背中にウイングのようなプロセッサユニットまであるではないか。

 

「そこをぉぉぉっ!」

「うっ、やあっ!」

 

ネプギアのM.P.B.Lの斬撃をビームジュッテで受けた。激しいスパークが飛び散る。

 

「私は、救世主になる!お姉ちゃんも、ゲイムギョウ界も救う、救世主に!」

「それがネプギアの戦う理由……⁉︎それでも!」

 

ユニがギリリと歯軋りする。

全人類のために戦う。ああ、なんと立派な理由だろうか。

自分のプライド、自己顕示欲、自己承認欲のために戦っている自分とは大違いだ。

しかし、だからなんだと言うのか。

情けなくても、みっともなくても、それでも私は勝ちたい!

 

「負けたくない……!負けるのは惨めだから!強くなりたい!強くないと、誰にも認められない!お姉ちゃんにも、褒めてもらえない!」

「それが、ユニちゃんの……⁉︎」

「みっともないと笑いなさいよ!情けないって罵りなさい!けど、それでも、私は勝つ!勝つのッ!」

 

ユニの背にコーン型のプロセッサユニットが新たに2つ、装備された。

そしてX.M.Bが段々と縮んでいく。

 

「強くなりたいと!そう願うことが……ァッ!」

 

お互いに間合いを取って武器を構え、引き金を引く。

お互いのビーム同士がぶつかり、弾けて消える。

 

「小型化されてる……!この取り回しと、連射力なら!」

「私も強くなりたい!強くないと、誰も救えない!だから……!」

 

2人がビームを乱射しながら突進し合う。

2人の体に向かって正確にビームが飛んでいくが、2人はそれを最低限避けながら進む。

無論、完全に避けきれるはずもなく、お互いの体にビームが当たる。

それでも2人は進む。退がる選択肢はない。退がるということは即ち、勝ちたい気持ちが負けているということだから!

 

「しぃぃぃずめぇぇぇぇぇッ!」

「はああああぁぁぁッ!」

 

2人の銃の銃口がぶつかり合った。

そして引き金を引くのも同時。

 

「あうっ!」

「あっ!」

 

2人のライフルが音を立てて爆発する。

2人の間を煙りが覆い、視界を奪う。

 

「やああっ!」

「っ、あっ⁉︎」

 

しかしすぐにネプギアは前に出ていた。

武器は持っていない、己の拳で殴りつける!

 

「はぁぁぁっ!」

 

怯んだユニにタックルしてプロセッサユニットの出力を上げる。

そのまま加速してネプギアはユニを地面に激突させる。

 

「あうっ!」

「っ、はあっ……!」

 

ユニが強く体を打ち付けた。

ネプギアはユニに跨って拳を振り上げる。

 

「……………!」

「……私の、勝ちだよ」

 

だがその拳を解いてゆっくりと下ろす。

ネプギアは立ち上がってユニの上からどく。

ユニも立ち上がって振り返り、上を向く。涙を流したくないからだ。しかし嫌でも嗚咽は漏れる。

 

(負けた……!あの時、拳が出ていれば……!)

 

心のどこかで退がろうと思ってしまった。だがネプギアはあの時前に出ようと思ったのだ。その差がこの敗北だ。

 

みんなのために戦うネプギアと、自分のために戦うユニ。勝ったのはネプギアだった。それはつまり、ユニが間違っていたということだ。

 

「ユニちゃん……」

「っ、く……!」

 

ネプギアの方が強かった。そして彼は、きっとさらに強い。

強いということはそれだけ譲れないものが多いということだ。自分には背負うものが少な過ぎる。

 

「次は、勝つ……っ!次こそはっ……!」

「あ……」

 

飛び立ったユニの背にネプギアの声が聞こえた。

数瞬悩んだ末にユニはネプギアに向き直る。

 

「次は絶対に勝つから!せいぜい、それまでに強くなってなさい!いい、約束よ!」

 

涙を零しながらユニがネプギアの目を見てそう言う。

 

「ユニちゃん……」

 

少し嬉しそうな顔をしているネプギアの顔をそれ以上は見つめていられず、ユニはまた飛び立った。

少なくとも、今回はネプギアから逃げなかった。

それだけは、自分を評価してあげてもいいかもしれないと思いながら。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「あ、終わったらしいわよ、ネプギア」

「本当ですか⁉︎」

 

アイエフが携帯を弄りながらネプギアに言う。

場所は宿泊先のホテル。

あの後、教会に行きケイに報告を行なった。

 

『やあ、集め終わったみたいだね』

『一応報告に来てるんだから、先回りするのはやめてもらえるかしら?』

『はは、すまない』

『君達、良く集めたね……』

 

青年は目をまん丸にして驚いていた。

 

『回収はこちらで行おう。頼めるかい?』

『了解しました。ですが、バーチャフォレストの方は……』

『うん、こちらからイストワールに連絡しておこう。とりあえずは海に沈んだ擬似太陽炉を』

『はい』

 

ケイがそう言うと青年は部屋を出て行こうとした。しかし、唐突にケイがそれを呼び止める。

 

『そうだ、君』

『はい?』

『………。……気をつけてくれ。まだマジェコンヌが残っている可能性もある』

『はい、わかりました』

 

何かを言い損ねたような感じだったが、青年は特に違和感を感じずに行ってしまった。

 

『あの、ところで、シェアクリスタルの方は……』

『ん。ああ、調べはついているよ。大体の場所だけどね。だけど……』

 

ケイが我に帰ったように言ったが、途中で言葉を切る。

 

『いいのかい?君、武器が壊れたみたいだけど』

『あ、そういえば……』

『修復はこちらですることになるかな』

『まぁた素材集めに行けって言うの?』

『はは、そんなことは言わないさ。もともと原因はユニにあるのだし』

『そんなことまで知ってるですか?』

『ユニを見ればわかる。これでも長い付き合いだからね』

 

というわけで、場所はわかっていながらもシェアクリスタルを集めに行けない状況にあったのだ。

 

「じゃあ、行くです」

 

むん、と立ち上がったネプギアは支度を整え始めた。





続編が出た時のキャラが序盤の方は弱い技とか能力使ってる率は異常。もしくは最強レベルの技が最低レベルになってたりとか。
その例に漏れずネプギアとユニも退化。

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