超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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機会少ないですよねー、水中戦。水泳部のモビルスーツは可愛くて好きなんですけどね。


水中戦

「けほっ、けほ!ぺっ、ぺっ」

 

びしょ濡れになったユニが地面の上で咳き込む。

口の中に入り込んだ海水で喉が痛い。

咳もおさまると周りがいやに静かであることに気付く。水面のすぐ下では今でも戦闘が行われているのかもしれないのに。

シンとした空気が痛い。さっきのスミキの発言を思い出す。

 

《ユニ、逃げて!絶対来ちゃダメだ!》

 

「……っ」

 

足手まといになったのだ。またしても。

強くなろうとして、姉よりも強くなりたかったのにまたこれだ。

強くなったつもりでいた。しかしそれはつもりだったのだ。これでは何も変わらないではないか。誰も助けられないではないか……!

 

ふと水面を見つめる。

戦闘の様子すらユニにはわからない。なんて無力。水の中に引き込まれた時だって、何もできなかった。スミキがいなければあのまま死んでいた。

 

「私……無力だ……」

 

ユニは自分の服の裾を強く握りしめた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

百式は水中を凄まじい速度で動き回るビグロを目で追う。

モビルアーマーは小回りがきかない。しかしその加速性能や武器の威力はモビルスーツと比べ物にならない。

水中ではライフルを向ける動きすら間に合わないほどだ。

 

《当たらなきゃ、どうっていうことはないけど……!》

 

だからと言ってこうして隙を探られてはジリ貧だ。海上に出たいが、背中を晒せばすぐにでもビグロはこちらを攻撃してくるだろう。そうなれば不利なのはこちらだ。しかしこのまま向かい合ったとて、どうなるものでもない。

 

瞬間、背面に反応。

 

《っ、新手!来たか!》

 

飛んで来たのはミサイル。クレイバズーカを脇の下に構えて撃つと途中で弾頭が弾けて散弾となる。それがミサイルを撃破した。

 

《グラブロか……⁉︎違う、このミサイルの粒子は……ッ⁉︎》

 

勘付いた瞬間、新たなミサイル。

そしてビグロがこちらに真っ直ぐ接近していた。

 

《しまっ、くっ!》

 

後ろを振り向かずに手だけ回してビグロにビームを撃つが、避けられてメガ粒子砲を撃たれる。

ギリギリで避けるが、そのビームは射線上のミサイルに当たる。途端にミサイルが弾けて粘液のようなものをまき散らした。

 

《やはり……!トリロバイト!》

 

最初のミサイルはGN魚雷。しかし今回のミサイルはケミカルジェリーボムだ。

ケミカルジェリーボムというのは着弾と同時に粘液が目標にまとわりつき、瞬時に硬化することで動きを阻害させる爆弾のことだ。

それは百式の右足にまとわりつき、関節を硬化させてしまう。

 

《くっ、があっ!》

 

怯んだところをビグロがクローで掴んでくる。

 

《うぐぐぐ……っ!》

 

そのまま加速され、想定外のGと水に体が叩きつけられる。

そして百式はそのままクローで握り締められる。

 

《くっ、ぐっ……!抵抗、しなきゃ……!》

 

クローから逃れようともがくが、ビクともしない。

頭をクローに向け、自分に当たる危険もあるが頭部バルカンを撃つ。いくつかは自分に当たってしまったが、クローを破ることに成功した。

その一瞬の隙に百式はビームライフルをビグロに向ける。

 

《………》

《僕の方が早い!》

 

ビグロがメガ粒子砲を放とうとするが、百式がその前にビームライフルの引き金を引く。

ビグロはビームが貫通して爆散したが、横からトリロバイトが迫っていた。

 

(ここは、深い……!圧殺するつもりか⁉︎)

 

気付けば水圧で機体はミシミシと悲鳴をあげていた。

捕獲命令でも出ているのか、ユニの時もすぐにメガ粒子砲で狙い打てるのにそうしなかった。

ユニの時は窒息死を、息をしない百式の場合は圧殺を狙ったのだろうか。

しかし捕獲命令が出ているというのなら、トリロバイトのケミカルジェリーボムが厄介だ。

 

(まずは浮上しなきゃ……!)

 

百式はビームライフルでトリロバイトを牽制しながら浮上し始めた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「右にはいなかったですね」

「だから言ったのに」

「でも左ならスミキさんが捕まえてくれたかも……」

 

ネプギア達がようやく右の道から戻って来た。さっきの分かれ道を通り過ぎてしばらく行くと、ネプギアの目に飛び込んで来たのはびしょ濡れで膝をつくユニだった。

 

「ユニちゃん⁉︎」

「っ、ネプギア……」

「どうしたの、こんなびしょ濡れで!風邪ひいちゃう、すぐ帰らないと……!」

「……ダメよ。でも、だからって……!」

 

ユニが床を叩く。

駆け寄ったネプギアがその剣幕にビクリと震えた。

 

「なによこれ!地面がボロボロ……!」

 

ネプギアはびしょ濡れのユニに夢中で気付かなかったが、地面には無数の凹みや破片が飛び散ってボロボロだ。

 

「敵が来たのね⁉︎スミキは、どこ⁉︎」

「………ここよ」

 

ユニが指差すのは海。

 

「海の中ですか⁉︎」

「……なにもできなかった。今も……!」

 

ユニが歯軋りする。

アイエフとコンパはその姿に見覚えがある。

やはり、後戻りしている。変身できるようになる前と同じだ。

 

「………私、行きます」

「……はあ⁉︎あのね、海の中なのよ!前もロクに見えないのよ!息も続かない!機動力だって絶望的!悔しいけど、任せるしかないのよ……!」

「でも、だからって見捨てられない……!」

「他でもないアイツが言ったのよ⁉︎来るなってね!」

 

立ち上がったネプギアにユニも立ち上がって激昂する。

きっとユニは咄嗟にミズキに言われた言葉とノワールに言われた言葉を重ね合わせているんだろう。

必要ないから、足手まといになるから。そういう意味でその言葉を捉えているのだ。

違う、その言葉は温かさから来たものだというのに。

 

「でも、私もう目の前で人がいなくなるのを見たくないよ!」

「っ、アナタは見れたからいいかもしれないけど!私は見れもしなかった!待つしかできなかった!もう何年も待ち続けて……!」

「でも……!」

「落ち着きなさい、2人とも」

「あうっ」

「痛っ」

 

アイエフが2人にゲンコツを落とす。

2人が頭を抑えてアイエフを見た。

 

「ユニ様の言うことはもっとも。ゴーグルすらないのに水中戦なんて、プロセッサユニットがあっても絶望的よ」

「ほら!」

「でも、ネプ子達が傷つくのを見れなかったのは今戦ってるスミキも同じ。……アイツも行きたかったけど行けなかった。じゃあ戦えないアナタと戦えてるスミキの違いはなに?」

「…………」

 

ユニが黙り込む。

今必死に戦えているスミキとただ立っているだけのユニ。

何が違うというのだろう。機械の体だからとか、そんな理由じゃない。もっと内側の、本質的なものの違いだ。

 

「これは宿題ね。コンパ」

「はいです!やってるですよ!」

 

しばらく静かだと思ったらコンパは後ろでNギアを弄っていた。

 

「あの、何を……?」

「アイツの場所がどこか、特定してるの。そうすれば敵がどの辺りにいるか大体わかるでしょ。そしたらアンタ達の出番」

 

百式の場所をNギアで特定し、その動きから相手の場所を大まかに予測。

そしたらあとは適当に弾丸を撃ち込むだけだ。当たれば儲け、当たらなくても牽制になればいい。

そしてそれができるのは水上に浮けるネプギアとユニだけだ。

 

「場所、わかったです!これを見るですぅ!」

 

コンパがネプギアにNギアを渡す。

Nギアの画面上では光る点が所狭しと動き回っている。

 

「翻弄されてるわね。アイツ、後退して攻撃を受けてる感じよ」

 

ユニもその画面を覗き込んだ。

アイエフの言の通り、比較的ゆっくりに百式が後退し、一定周期で別の方向に動く。

おそらくすれ違いざまに攻撃されているのだろう。

 

「アンタ達、頭は冷えた?」

 

アイエフがネプギアとユニを見る。

 

「頑張るですよ!」

 

コンパがぐっと手を握って応援してくる。

2人は顔を見合わせてうんとうなづいた。

 

「変身」

「変身」

 

ネプギアとユニが変身してNギアの反応に従い、海面すれすれに浮く。

そしてお互いの武器の銃口を海に沈めた。

 

「行くわよ、ネプギア」

「うん、合わせて」

 

2人はニヤリと笑いあい、引き金を引いた。





マイナーですよね、ビグロとかトリロバイトとか。わからない人もいるかもしれないです。シャンブロでも良かったんですが、アレは強過ぎるのでやめました。百式が敵うわけないでしょアレ。

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