超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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ネズミ登場。黄色い電気ネズミでもないし茶色い喧嘩するネズミでもないし夢の国のネズミでもない。ハハッ♪



右か左か

「チュ〜……」

 

「……なにあれ」

 

ユニはリピートリゾートで素材ーー擬似太陽炉とガンダニュウム合金ーーを探していたのだが、その途中で変かつ(齧歯類にしては)巨大かつ黒いネズミを見つけた。

前のめりに倒れていて、いい死に方をしてるなあと一瞬思ったがやはり近寄りがたい。ていうか率直に言うとキモい。

 

「…………」

「チュ〜……」

 

ライフルをネズミからそらさずにじっと見る。

撃つべきだろうか。

ネズミはペストを運ぶと言うし、何より害獣なのは確かだ。キモいから殺したいし。ペストは別名黒死病というが、ネズミもペストにかかると黒くなるのだろうか。だとしたらここで倒れているのはペストにかかったせいだということだろうか。

 

「……………」

 

しばらくしてユニは1つの結論にたどり着く。

 

(放っておこう)

 

触らぬ神に祟りなし。この場合は触らぬネズミにペストなし。

そんなわけでユニはさくっとネズミを見捨てて先へ行った。

すると目の前には分かれ道。右か左か、ライトオアレフト。

 

「……左ね!」

 

その数分後、今度はそこに、

 

『…………』

 

ネプギア、アイエフ、コンパがやってきた。

 

「えと、あの、これは……?」

「見捨てるわよ。先でスミキも待ってるだろうし」

「ま、ま、待ってください!あの、さすがに見捨てるのは可哀想というか……!」

「私も見捨てるのはイヤです。せめて、絆創膏だけでも」

「だってキモいじゃない」

「そ、そんな身も蓋もない……」

「あいちゃん達は先に行っててください。私ほんの少しだけ治療しますから」

「だからって置いて行けるわけないじゃない……。はあ、わかったわよ、待ってるわよ」

 

ネズミ……もといワレチューに絆創膏を貼る。

するとワレチューがゆっくりと立ち上がった。

 

「チュ〜……あ、あなた様は……」

「もう、ネズミさんまた怪我ですか?気をつけないとダメですよ?」

「は、はい……」

(あ〜またこうなるのね)

 

また好かれたらしい。記憶が戻ってもワレチューはワレチューか。

 

「さ、気が済んだ?そんじゃ捕まえるわよ」

「あ、あの人、いや、あのネズミってマジェコンヌの……」

「チュ⁉︎つ、捕まってたまるかっチュ〜!」

「あ、逃げた!」

 

コンパの手元からするりと抜けたワレチューが逃げる。ネプギアとコンパは必死に、アイエフはそこそこに追いかけたがさすが逃げ足が速い。

やはり腐ってもネズミ、猫と仲良く喧嘩しても大抵勝つだけある。

 

「チュ、チュ……?左っチュ!」

 

そしてそれを追う後続の3人。

 

「ど、どっちでしょう……?」

「左手の法則とかいうけど」

「じゃあ右ですぅ!」

「話聞いてた?」

 

と、すれ違った末に、左の方の話。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ふん、大したことない……!」

 

ユニのライフルの1射でモンスターが光になって消える。

 

「ったく、あのモビルスーツとやらは全然出てこないし……。こんなんで本当に集まるのかしら……」

 

ユニがライフルを肩に担いで歩く。

しかし道の先のものを確認した途端に素早く身を屈めた。

 

(アレは……!)

 

すぐ先のブロックに金色でピッカピカの機体。

確か、ケイに聞いた擬似太陽炉を搭載した機体の中には金色のものもあったはず。

慎重に呼吸を殺して音もなくライフルを構える。照準に狂いはない。

 

(当たる……!)

 

そう確信して引き金を引いた瞬間、それを察したかのように金色の機体がこちらを振り返る。

 

《敵ッ!》

(勘付かれた……!)

 

ライフルを撃ったが避けられる。

こちらに金色の機体が海を越えて飛びかかって来るのを前転して避ける。

振り返ってライフルを構えようとするが、それより先に額に銃口が当てられる。

 

「ッ……!」

《って、ユニ。何してんの?》

「……へ?」

 

金色の機体は警戒を解いてライフルを背中にマウントする。

金色の機体は百式であった。金ジムではなかったようである。

 

《ああ、そっか、わからないよね。僕はスミキだよ。ほら、Nギアで話してた》

「え、あ、ああ!」

 

その言葉にハッとする。

確かに声は同じだ。

 

《ユニも素材を探しにきたの?》

「そ、そうよ。言っとくけど、譲る気はないからね?」

《クスクス、じゃあ早い者勝ちだね》

「そういうことよ」

 

さっきは不覚を取ったが、次はそうはいかない。

そんな心持ちでいると百式がユニの後ろを見る。何事かとユニも後ろを振り向くと、そこには見覚えのある黒いネズミ。

 

「チュ、チュ、チュ〜……。ここまで来れば……」

「アンタ、さっきの……」

《あ、ワレチュー》

「チュッ⁉︎ここでもオイラのことを知ってる奴がいたっチュか⁉︎」

 

ビシッと指をさして百式が言うとワレチューが飛び退く。

 

「チュ〜……このまま逃げてもまたあいつらと鉢合わせするだけっチュ……。なら!」

「っ、何⁉︎」

《ユニ、避けて!》

 

海中からミサイルが飛んで来る。

不意を突かれたユニを百式が押し飛ばす。

 

「きゃっ!」

《くっ、う……!》

 

ユニの代わりに百式にミサイルが襲いかかる。

百式はバルカンで撃ち落とすが、避けきれずに数発を食らう。

 

《この程度……!フレームに当たってないなら!》

「っ⁉︎なっ……!」

 

耐えた百式だったが、押し飛ばされたユニの手を海中から伸びる何者かの手が掴んだ。

そのままユニを強引に引き摺り込む。

 

「っ、がぼっ!」

《ユニ⁉︎》

「や、助け………!」

 

一瞬でユニが水中に引きずり込まれる。

不意を突かれたためにライフルも手放してしまったようだ。

 

《水中用モビルスーツ……⁉︎そうか、だから……!》

 

リンダも海中に逃げ込んだのだ。そして素早く逃走できた。

百式は海の中に迷わず飛び込む。

水中用モビルスーツなら相手の独壇場だ。みすみす死地に飛び込むだけの行為かもしれない。

だが、それでも、ユニを見捨てることはできない!

 

《今いくよ、ユニ!》

 

水飛沫を上げて百式が飛び込んだ。

それをワレチューが冷ややかな目で見る。

 

「チュ、馬鹿っチュね。あいつらを水中で相手にして勝てるわけないっチュ」

 

トテトテとワレチューは歩き出す。

 

「今のうちに逃げるっチュ!それと……」

 

立ち止まって何を言うかと思えば。

 

「コンパちゃん天使!マジ天使!チュ!」

 

お変わりないようで。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「がぼ、ぐ……!」

 

わけもわからないままに泡と共に水中に引きずり込まれた。

目を開くが、海水であるためにろくに目が開けない。

辛うじて数瞬の間だけ自分を引っ張るモノを見た。

ぼやけていてよく見えないが、その機体が不気味に赤く目を光らせるのが見えた。

 

《…………》

「ひっ!」

 

足を振るが離してくれるはずもない。手持ちのライフルで撃ち抜こうとしたが、その時にようやく両手が軽いことに気付く。

 

(しまった!地上に……!)

《…………》

(やられる……!)

《ユニ!ユニ!》

(………!)

 

百式が潜行する。

肉眼とは違い、水中を見渡せる百式のカメラはユニの足を掴む機体を確認した。緑色の装甲に、巨大な2つの爪。

 

(ビグロ……!モビルスーツじゃない、モビルアーマーか!)

「がぼっ、が、ば……!」

(ユニの息がもたない……!減衰率が激しくても!)

 

ユニが手足をばたつかせ始めた。

水中ではビームの弾丸であるミノフスキー粒子の減衰率が激しく、射程と威力が落ちてしまう。

しかし設定を調整してビームを細く放てば、地上ほどとはいかなくともある程度はマシになる。

百式が背中のビームライフルを構えてビグロに向けるが、ユニが間に入り込んでいて危険だ。

 

《ならば、サーベルで!》

 

左手でサーベルを引き抜く。

これもエネルギーを絞って細く展開し、水中でも最低限使えるようにする。

ビグロがミサイルを発射してくるが、百式はうまく身動きが取れない水中でもなんとか体を動かしてそれを避ける。

 

「が、ば………!」

《そんな旧型に、負けるかっ!》

 

接近してビグロの爪の片方を切り裂いた。

ユニが解放されるが、もう息が切れる寸前だ。

百式は急いで浮上し、水面にユニの顔を出す。

 

「が……!はっ、けほっけほっ!うえっ、がふっ!」

《良かった、ユニ……っ⁉︎》

 

ユニはなんとか水面に顔を出すとむせながらも酸素を得る。

しかし安心したのもつかの間、百式は足元に迫る機体を感知した。

 

《ユニ、逃げて!絶対来ちゃダメだ!》

「きゃっ、痛っ!」

 

ユニを放り投げて地面へと投げつける。

やや乱暴になってしまったが、命の危険よりはマシだ。

 

《この、しつこいよ!》

 

百式が再び潜行するとビグロがその口のような部分にエネルギーをスパークさせる。

 

《………》

《メガ、粒子砲か!》

 

すかさず避けるが、百式は不用意にビグロには近づかなかった。

先程自分達を攻撃して来たミサイル。アレは対地ミサイルだ。しかしビグロは対地ミサイルを装備していない。

ならもう1機以上、モビルスーツかモビルアーマーがいるはずだ。

その思考に間違いはなく、ビグロの後ろでアイカメラを光らせるモビルアーマーが1機いた。





ビグロにはギレンの野望でお世話になりました。速いし射程長いのでなんだかんだ最後までいた気が。まあ油断すると速攻でぶっ壊されましたけど。

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