超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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新章です。これから3国を巡り巡ってエブリワンすると思います。


黒〜ノワール〜

翌日、呼び出されたネプギアはイストワールからとある端末を受け取っていた。

 

「これって……Nギア?ですか?」

「はい。ですが、カスタムをしてあります。きっとこれからの旅に役立つ機能を追加しておきました」

「旅、ってことは……」

「ええ。私達はこれからラステイションに向かうわ」

「………!」

 

アイエフの言葉にネプギアは嬉しそうな表情をする。

もしかしなくても、ユニに会えることが原因だろう。

 

「そのNギアの機能は様々ですが……メインの機能はそのボタンを押せば分かると思います」

「ボタン……?えっと……」

 

ネプギアがカスタムされたNギアのボタンを押す。

するとコール音が鳴って、しばらくすると電波が繋がる音がした。

 

《はい、こちらクスノキ・スミキです》

「えっ、これって……?」

《クスクス、昨日ぶり、ネプギア》

「スミキさん……?」

「はい。彼との通信機能が主なカスタム点です」

「え?でもこれってただの通話機能じゃ……」

「彼はとても遠いところにいるのです。それこそ、電波などなかなか届かないような場所に」

 

本来なら1日に数時間ほどしか通信できなかったが……シェアが増えたおかげか通信だけならほぼ制約がなくなった。このまま行けばミズキは別次元から脱出もできるかもしれない。あくまで可能性の話だが。

 

「電波が届かないって……でも、昨日は」

「アレも通信で動かしていたんです。あのモビルスーツがスミキさんの本体というわけではありません」

「モビルスーツ……それが、あのロボットの名前……」

「私達も知り合いなんですよ」

 

ネプギアはじっとNギアを見る。

クスノキ・スミキという名前に、なんだか少しの懐かしさがある。でもこの名前は知らないはずだし……何かに似ている?

 

「ネプギア?聞こえてる?」

「え、あ、はい!聞いてますよ!バッチリです!」

「じゃあ何を言ってたかわかる?」

「えと……アレです、やっぱりロッテリ○よりマ○ドナルドの方が人気ですよねっていう……」

「全然違うわよ!全く話聞いてないじゃない!」

「うう、すいません……」

《クスクス……》

 

ネプギアが恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 

「ラステイションだけじゃなく、その後は他の国にも行くわよって話だったです。ですよね?」

「そういうこと。ネプギア、準備はいいわね?」

「は、はい!大丈夫です!」

「それじゃ、行きましょうか」

「お気をつけて……」

「任せてください、いーすんさん!それじゃ……」

 

ネプギア達は手を振って部屋を出ていった。

それを確認してからジャックが出てくる。

 

《行ったか。しばらくは静かになるな》

「ええ。そうです……ね……」

《……どうかしたか?》

「いえ、なんでも。なんでもありません」

 

よくよく考えればこの先しばらくは2人きりではないか……とイストワールは気付く。

結局、あの戦いのゴタゴタがあって未だにジャックに返事ができていないのだ。その後は記憶がなくなってしまったし、取り戻した後もジャックの体がないので一緒に酒を飲もうにも飲めない。つまり、返事ができない。

ジャックは自分よりも辛いだろうが、それでもイストワールはなんというか体がムズムズする。

 

《体のことなら、もうしばらく待ってほしい。この戦いが終わるか、みんなが帰ってくるまでの辛抱だ》

「でも、体くらい作れます。その気になればいつでも……」

 

ワガママだと思う。

教祖たる者、こんなワガママは今は言ってはいけない。自国ないし世界の情勢を考え、国民のために尽くすべきなのだ。

頭ではわかっている。だがこうも理論も理屈も無視して己が気持ちのままに動きたくなるのは感情の仕業だろう。

だがその感情は横暴で、屁理屈で、自己中心的だ。今だって自分より辛いはずのジャックに気持ちをぶつけてしまっている。気持ちをぶつけたいのはジャックの方なのに。

 

《俺は……今、イストワールに触れることはできん》

 

ジャックが手を伸ばしてイストワールに触れようとする。が、光の手はイストワールをすり抜けてしまい永遠に触れることはない。

イストワールもその手に触れようとするが、空を彷徨うだけだ。

 

「わかってます……。ワガママですよね」

《だがそれでいい。気持ちをぶつけたくなるのは悪いことではない。……その方が人間らしい》

「じゃあ、ジャックさんは人間ではないと?」

《俺だってぶつけたい。我慢しているだけだ》

「…………」

 

また前みたいなことを言う。

このままでは口喧嘩にまでなってしまいそうなところで着信があった。

 

「ん……ケイさんから、です」

《なら俺はしばらく消えていよう。またな》

 

ジャックはいなくなり、イストワールだけが残される。そしてイストワールが神宮寺ケイ……ラステイションの教祖からの着信に応えた。

 

「はい、私です。どうかしましたか?」

 

目の前にケイが現れる。もちろん、投影されているだけだが。

 

《久しぶりだね、イストワール。君に……ん、どうかしたかい?》

「はい?私どうかしてますか?」

 

ケイがイストワールの顔を覗き込んでくる。イストワールは自分の顔をペタペタと触るが特に変なところはないはずだ。

 

《やたらと不機嫌そうだけど……もしかして迷惑だったかな?》

「へ?い、いえ違います!不機嫌なのはその、他の理由があってですね……!」

《やっぱり不機嫌なのかい?》

「そ、それは……多分」

 

どうも私は自分で思っているより顔に出やすいらしい。これからは気をつけよう。

 

《都合が悪いなら、また日を改めるけど?》

「いえ、構いません。私に直接連絡してきたってことは何か大切なことがあるんですよね?」

 

1度切り替えてケイを見る。

先程は二の次にしてしまったがやはり私は教祖。やるべきことと責任がある。

ケイはイストワールに見つめられてゆっくりと口を開いた。

 

《……僕は、自分で言うのもなんだけどビジネスライクな性格だと思ってる。感情とか抜きにして、合理的にモノを考える》

「それは……はい、そうですね」

 

確かにケイはそういうところがある。ボランティアが苦手というか、自分に徳がないことをやらないというか。そういう考えの持ち主だ。

 

《一応、本当にビジネスもやっている。だからこそこの話をすることになったんだが……この考えばかりは、自分でもとても合理的とは思えない》

「はあ……」

 

話が見えてこない。ケイは何が言いたいのか、怪訝な目をしてケイを見ているとケイは意を決したように口を開いた。

 

《単刀直入に聞く。イストワール、君は記憶が抜け落ちていると思ったことはないか》

「………!」

 

その言葉にイストワールは目を見開く。

その反応を見てケイも何かを確信したようだった。

 

《その反応、自分もそういうことがあるか……もしくは何か知っている顔だね》

「………アナタは……自分で……そうですか……」

《ビジネスの記録を見るとどうしても記憶にない仕事の履歴があるんだ。しかもふとした拍子にそれを忘れてしまう。メモしていなければならないくらいだ。だから僕は記憶がなくなったという結論に行き着いたんだけど……どうだい?》

「……もし、もしケイさんがそれを興味本位で聞いているのなら……今すぐにやめてください」

《…………!》

 

イストワールは強い表情でケイを見た。その顔には拒絶の感情さえ感じられる。

 

「その真偽を知りたいなら、それ相応の覚悟を持ってください。でなければ、知らない方がいいことです」

《……そんなに重大なことなのかい?》

「覚悟はあるのかと、聞いています」

 

キッとイストワールがケイをいつになく厳しい表情で見つめる。そんな迫力はケイが今まで見たことがないものであった。

 

《……わかった、考えよう。それについての質問は保留する。それと、もう1つ質問がある》

「なんでしょうか」

《プラネテューヌで謎のロボットがマジェコンヌを退けたとの情報が入っている。これについて知っていることを答えてくれないか?》

「……それについてなら答えられます。ですけど、合理的に考えるとここで今私が答えるのはあまり良くないのではないかと思います」

 

イストワールがようやく表情を緩めてくれる。

ケイは少し驚いたような顔をしている。

 

《珍しいな、君が冗談を言うなんて》

「そうですか?私も、変わったのかもしれませんね」

 

ネプギアは記憶を失った。アイエフとコンパは記憶を取り戻して強くなった。

私もきっと、どこか変わっている。誰のせいかはわからないけれど。

 

「じきにネプギアさん達が教会にお邪魔するかと思います。その時にクスノキ・スミキという方に質問してください」

《それは、最初の質問もかい?》

「覚悟ができたなら」

《わかった。協力感謝するよ、イストワール》

 

ケイは少し微笑んで消えてしまった。

1人残されたイストワールはふぅと息を吐いて力を抜いた。

……ケイは3年をかけて思い出した。アブネスは数ヶ月で思い出した。もしアブネスがいなかったなら私達は何年かけて思い出したのだろう。ネプギアはあとどれくらいで違和感に気付いてくれるのだろうか。

物憂げな気持ちになっているとコンコンとドアを叩くノックの音がした。みんなは行ったし、多分今来るのは……。

 

「アブネスさんですか?どうぞ」

「失礼するわ」

 

やはり来客はアブネスだったようで、手には大束の書類を持っている。

 

「ミズキはいるかしら?新しいモビルスーツ開発の報告に来たんだけど」

「ミズキさん、ですか……」

 

一応ここからでも通信は繋げるが、今はまだネプギア達と話しているだろう。

 

「これからしばらくは連絡が取りにくくなると思います」

「何かあったの?」

「いえ、ずっと通話する人ができたので」

「ああ、そういうことね」

 

アブネスはなんとなく事情を察したのか、机の上に書類の束を置いた。

 

「『MSN-100』とメガ・バズーカ・ランチャーが完成したわ。ついでにコンセプトが似てる『MSN-001A1』の開発も進んでるって報告」

「ありがとうございます。助かります」

「はあ、疲れたわ〜。なんかない?こう、疲れが取れる方法とか食べ物とか」

「そう、ですね……。ジャックさんに子供達の笑顔でも集めてもらいます?」

「あ〜、ありね、それ!そうと決まれば早く検索かけてよ!ジャック、ジャック〜⁉︎」

《わかったわかった。そう焦らなくてもすぐに集まる》

「癒されるわ〜……。ジャックって本当有能よね〜……」

《なんで上から目線だ。そして俺の力をそんなことに使うな》

「珍しいですね、ジャックさんがツッコミに回るなんて」

《…………うるさい》

 

ジャックはこめかみを抑えて俯いたのだった。




あの金ピカ機体とスタイリッシュな機体。
シャアある意味可哀想ですよね…。金ピカでクソ目立つ上に目立たせてまで塗ったビームコーティングもあまり効果はなくフレームが露出して防御力は低い上に必殺のメガ・バズーカ・ランチャーは「ええい、照準が定まらん!」。ま、カッコいいから許されますけど。

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