クエストから帰り、ネプギアが寝た後の深夜の教会。そこにアイエフとコンパ、イストワールが集いミズキとジャックと話をしていた。
《そっか、ネプギアは……》
「ええ。怪我はしてないけど、心の方はヤバいわね。負けたことがトラウマになってみたい」
「でも、無理はないですぅ……」
女神達が全員自分の前でやられてしまったのだ。トラウマになったとしてもおかしくはない。
「ミズキ、やっぱりアナタ会ってあげなさいよ。アナタなら、例えネプギアの記憶が戻らなくても励ますことができるはずよ」
《……ごめん、ダメだ。記憶が戻らないなんて、過去のネプギアと今のネプギアを重ねてしまうなんて……僕が耐えられない》
「ミズキ……」
《それに、ネプギア達はあの爆弾を至近距離で食らったのだ。……記憶のロックはお前達より強力だろうな》
それはつまり、そのロックを壊す時にもそれなりの苦痛が伴うということだ。
この場にいる3人もとても苦しんだ。ただでさえ言葉では表せないほどの苦しみなのに、今の精神状態でネプギアがそれ以上の苦しみを味わったなら、ネプギアは今度こそ戦えなくなってしまうだろう。
《……敵はマジェコンヌだ。けど、これはマジェコンヌが望んだことじゃない……》
「全ては、ビフロンスのせいです」
「あの時にアンチクリスタルが消えてたけど……それがこの時のための策だったなんてね」
マジェコンヌとの2度目の戦いの時、マジェコンヌが手に握っていたアンチクリスタルが塵になって消えてしまったことがある。
それはアンチクリスタルに残されていたビフロンスの思念がマジェコンヌに乗り移ったということだったのだ。
そしてミズキが消えてからマジェコンヌの体を支配して活動を始めた。
マジェコンヌ四天王もビフロンスの手によって作られた者だ。今、マジェコンヌ四天王は完全なビフロンスの体を復活させるべくシェアを集めている。
だが、これだけのシェアが奪われていては……。
「復活は、そう遠くないってことですね……」
《時間がない。けど、希望はある》
そう、希望はある。
ミズキが別次元に飛ばされるまでの数瞬でこの世界に残した希望が。
「アナタのシェアクリスタルを集めるのね」
《うん。あの時僕がクリスタルにして守り抜いたシェア……。それがあれば、きっとネプギア達の力になる》
ビフロンスに飛ばされる瞬間、ミズキはその身に溢れるシェアをクリスタルという形で保存したのだ。そしてそれは世界中に散らばった。
《ネプテューヌ達が負けたのは僕の責任でもある……。だから、ネプテューヌ達は絶対に……》
ネプテューヌ達のシェアのほとんどがミズキに託されたために、その後のネプテューヌ達のシェアは少なくなってしまったのだ。
今この世界で循環しているシェアはほんの一部。世界が1つになった時のシェアがこの世界には隠されているのだ。それがあれば、犯罪組織を超えることが出来るはず。
「ミズキさんのせいではありません。悔やむのなら……」
《助けることにその想いを使え》
《……うん、ありがと》
ミズキは物憂げな顔で笑う。
(こっちもこっちで大概よね……。ミズキだって傷ついてるってことね)
何も出来なかったのだから当然だ。
ネプテューヌ達が命の危機に瀕しているというのに、ミズキは何も出来ない。こうして通信することさえ、制限時間がある。
「わかったわ。それはこっちに任せて」
「頑張ります!」
《ありがと。頼むよ、2人とも》
そう言うとミズキは先程よりもほんの少し明るい顔で笑った。
「………あ、そうそう。アブネスからメールがあったわよ」
《アブネスから?内容は?》
「え〜と……『MS-08TX[EXAM]、完成したわよ』……って、これって!」
《…………!そうか、完成したんだ……》
《この形式番号は……ガンダムではないのか》
《うん。ガンダムだとネプギア達が思い出してしまう可能性があるからね。でも、ガンダムと戦ったり、支えたりした機体だってたくさん存在した……。この機体はその内の1つだ》
MS-08TX[EXAM]……機体名、イフリート改。
ーーーーーーーー
「シェアクリスタルを……ですか?」
「そう。この世界中に散らばっている、先代女神が遺したといわれるシェアよ。それを回収しようと思うの」
「ネプギアさんが帰ってきたので、その余裕も出てきたからです。もちろん、まだシェアは万全とは言えないのでクエストもこなしてもらいますが……」
「その片手間に探す、ってことです」
「はあ……なるほど……」
ネプギアはふむふむと納得してくれる。
こんな作り話を信じてくれるネプギアに感謝すると同時に、3人の胸にはチクリとした罪悪感が芽生える。
「それでは、お願いできますでしょうか」
「はい、わかりました。ところで、アテは……」
「全くと言っていいほどありません」
「妙な自信ですね……」
ズッパシと言い切ったイストワールに苦笑いするネプギア。
そのままネプギア達はドアを開けて出て行った。
それからしばらくして、またドアが開く。
「失礼するわよ」
《ウチ、テレビないんで》
「集金人じゃないわよ⁉︎全く、せっかくこれを……っく、持ってきたっての、に……!」
アブネスが後ろから車に乗せた大きい箱のようなものを持ってくる。
「くあ、重っ……!もう、腰が痛いわよ」
《クスクス、ありがと。出来はどう?》
大仰な箱を開くとそこには鉄色をしたモノアイの機体があった。腕にグレネードランチャー、足にはミサイルポッドが装備され腰にヒートサーベルが2本マウントされている。
《あれ?色塗らなかったの?》
「アナタが出来るだけ早くもってこいって言うからよ!」
《ごめんごめん。でも本当にありがとね》
「……まあいいのよ。幼年幼女に間違ったことをさせる犯罪組織は許せないの。オマケにそれを正すべき大人まで間違ったことを容認したりとか」
《やっぱり大人は嫌い?》
「嫌いよ。でもアナタは別。だからお金を費やしてこれを作ったんじゃない」
大富豪になってほんの少しだけ大人びたアブネスがコンコンとイフリート改が入った箱を蹴る。
《だが、報酬は取るつもりなのだろう?》
「もちろん。報酬は幼年幼女の笑顔。……そのためならなんだってしてあげるわ」
《ん?》
「え?」
《今、なんでもするって言ったよね》
「え、いやそれは……」
汚い会話を繰り広げるとジャックがイストワールに目配せし、イストワールが書類の束を持ってくる。
《お金は返すよ。子供達の笑顔も保証する。だから、あと少しだけ僕に仮初めの力をくれる?》
「……あ〜もう仕方ないわね!軍隊だって作ってやるわよ!作ればいいんでしょ、作れば!」
《クスクス、ありがと。それじゃ、早速……》
《起動テスト、だな》
ーーーーーーーー
昼頃、3人はひたすらバーチャフォレストを歩いていた。
「………ないわね〜」
「ないですね〜」
「ないですね……」
ない。
シェアクリスタルがない。
何もない。
「な〜い!ナイアガラの滝!華厳の滝!鉄華団!2期!」
「なんで連想ゲームなんですか……」
後半はもうわけわかんないし。
「でも、本当にないですね……。ついでと思って受けたクエストも全部達成しちゃいそうです」
「ほんと、手掛かりくらいないかしらね……」
「……逆に考えてみましょう!……チェス盤をひっくり返すんです!」
「どうして言い換えたのかはあえて聞かないわ。それで?」
「そのシェアクリスタルが何年も見つかってないってことは、人が探すような場所にはないってことです!つまり、こんな草原にシェアクリスタルがあったら誰かが見つけてるはずなんです!」
「なるほど、一理あるわね」
「それで、心当たりはあるですか?」
「……みんなの頭の後ろにあって……それを壊せば、私達の魂が元の体に戻ると……」
「そんな銀の戦車がレクイエムしてないわよ!」
肝心の心当たりがない。どうしたものか。
「………そうだ。心当たりならあるわ。このバーチャフォレストの最深部。そこなら人は寄り付かないはずよ」
「本当ですか⁉︎じゃあ、行ってみましょう!」
「は、はい!………ブラボーです!」
「チャリオッツしないで!」
3人はバーチャフォレストの最深部に向かうのだった。
ブラボー!はっはっは、ブラボー!(ぱちぱちぱち
これから先しばらくはミズキの変身はガンダム以外の機体に。
……ぬぅわぁぁぁん話がしたいもぉぉん!
今これを読んでるアナタ、好きなガンダムを教えてください(切実
教えなかった人の家にはザクレロを送りつけます。