僕は間違ってなかった。
僕の出した答えは決して間違っていなかったんだ。
君は間違ってなかった。
君の出した答えは決して間違っていなかったんだ。
じゃあどうして、僕らは間違えたのだろう。
間違ってしまったのは、どこから?
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本日のプラネテューヌは朝から雨だった。
女神式典の当日ではなくてラッキー、といったところか。
朝と昼の間、10時ぐらいにネプギアは雨で濡れた窓を眺めた。
「雨って、憂鬱な気分になるなあ……」
「飴が降ってきたら大喜びなのにね〜」
「お姉ちゃん……」
子供じゃないんだから、という目でネプテューヌを見る。
「やっぱ、雨の日こそゲームだよね!さあ、これまでやれなかった分を取り返すよ!ネプギアも一緒にやろ!」
「うん、いいよ。じゃあ、ミズキさんも誘ってみるね」
「お、いいね!ミ〜ズキ〜!どこ〜⁉︎」
ネプテューヌが教会中に響く大声で呼びかけるが返事がない。いつもなら「ネプテューヌ、うるさいよ……」と苦笑いして出てくるはずなのに。
「部屋かな?」
「そうだね、探してみよっか」
部屋で寝てるとかそういうことかもしれない。そういうことなら仕方ない、核爆弾を使ってでも叩き起こしてゲームに参加させなければ。
「物騒だよお姉ちゃん……」
「地の文読まないでよネプギア!」
俺の妹が地の文を読めるはずがない、略して俺妹だね!
ミズキの部屋の前に立ってノックをする。
コンコン。
「知ってるネプギア?ノックを2回するのはトイレの時だけだよ」
「えっ⁉︎」
私も小耳に挟んだだけだけど。
ここで「入ってまーす」とかいう返事が帰ってきたら爆笑モノどころか爆笑しすぎて問題になるね。爆笑問題だよ。
だけど部屋の中から返事も何も返ってこない。
「あれ?寝てるのかな……」
「ミズキったらお寝坊さんだね!仕方ない、この超絶美少女かつ、女神たる私がモーニングコールをしてあげるよ!」
このままだとモーニングコールどころかモーニングフライングボディプレスを食らいそうだがネプギアは口には出さない。
「入るよ、ミズキ!」
ネプテューヌが物怖じせずミズキの部屋のドアを開ける。
「あれ、鍵空いてる……」
「誰もいないみたい……」
部屋は整然としていてミズキの気配すらない。
「どこ〜⁉︎ミズキ〜⁉︎」
ネプテューヌはすぐ引き返してミズキを探すべく部屋の外に出る。
それを追いかけようとしたネプギアだったが、ベッドの下から出てきたモノのせいで立ち止まる。
「ロボット……?」
球体のコロコロ転がる可愛らしいロボット。それが目の前のベッドの下から転がり出てきたのだ。
《ハロー、ネプギア!ハロー、ネプギア!》
目をピカピカ光らせて嬉しそうにしているように見える。
ネプギアはそれを両手で抱えた。
《ネプギア、プレゼント!ネプギア、プレゼント!》
「きゃっ」
その球体が急にぱかっと宝箱のように半分に開いた。ネプギアは驚いて顔を背けはしたが、手は離さなかった。
《ネプギア、プレゼント!ネプギア、プレゼント!》
「これ………USB……?」
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「ねえ、いーすん、ミズキ知らない?」
「私も、ジャックさんを探しているのですが見つからないのです……。もしかしたら、外にいるかもしれません」
「外?この土砂降りの中で?」
「そんなわけありませんよねえ……」
イストワールも首を傾げている。
ネプテューヌは次にコンパを見つけた。
「コンパ!ミズキ知らない?」
「みずみずですか?知らないですぅ。でも、外には出てないと思うですぅ」
「なんで?」
「まだ傘立てに傘が刺さってましたから。雨は朝から降ってるし、傘も持たずに外に出ることはないと思うですぅ」
「そっか……ありがと、コンパ!」
コンパにお礼を言って別れる。
次にネプテューヌはアイエフを見つけた。
「あいちゃん、ミズキを知らない?」
「ミズキ?見てないわね」
ネプテューヌはサアーッと血の気が引いていくのを感じた。
何処にもいないって、もしかして何処かに行っちゃったり……。
脳裏に寂しそうなミズキの笑顔が浮かぶ。何処かへ行っちゃいそうな笑顔。繋ぎ止めていないと消えちゃいそうな、危うげな笑顔。
「でも、教会中探していないなら……屋上じゃない?」
「え?」
「だから、屋上よ。屋上は探した?」
「ううん、探してない……。ありがと、あいちゃん!探してくる!」
すぐに身を翻して屋上に向かう。
確かに、屋上なら少しベンチもあるし、そこには屋根もある。そこにいることも考えられなくもない。
重いドアを開けて階段を上っていく。息が切れることも汗をかくことも気にならない。
「ミズキ!」
バンッ!とドアを開く。
いなかったら、私は……!
だがその心配は杞憂だった。ミズキはちゃんといた。
傘も差さず、屋根の下にも入らず、ただただ雨をその身で受けてこちらに背を向けていた。
「……ミズキ?ど、どうしたの?そんなに濡れたら風邪引いちゃうよ?」
「………ネプテューヌ」
振り向いたミズキの顔は……最悪だった。
優しい笑顔なのに、薄ら寒い。今すぐその笑顔をやめてと頼み込みたくなるような寂しさがそこにはあった。
「ほら、ミズキ、ゲームしよ?今日はミズキのやりたいゲームしようよ。あ、やりたくないならまた後でもいいんだ。だから、えっと、その………」
「ネプテューヌ」
捲したてるネプテューヌをミズキは笑顔を崩さずに見る。
ネプテューヌの胸の中には言いようも知れぬ不安感があった。絶対にこのままじゃダメだと、根拠もなく思った。
「ごめんね、ネプテューヌ」
その一言でネプテューヌは凍りつく。
「僕は、プラネテューヌを旅立つよ」
「……………え?」
旅、立つ?
何処かに、行っちゃう?
「あ、ああ!他国への体験留学とかそういうこと⁉︎な、な〜んだ、驚かせないでよ!私、心臓止まるかとーー」
「いつまでか、わからない」
「思っ……た……」
「もう、帰れないかもしれない」
「え………?ねえ、ミズキ……」
フラフラとネプテューヌはミズキに近付く。
その足元で銃弾が弾けた。
「っ⁉︎」
ミズキが撃ったのだ。その手には銃がある。
「それ以上近付かないで」
「…………………!」
なんで、こんなこと。わからない、私、わからないよ、ミズキ。
「なんで……?なんでよ、ミズキ……」
「………………」
「どうして、行っちゃうの……?」
「………教えられない」
「なんで………?」
喉の奥から絞り出すように声を出す。
だって、だって…………!」
「私達、友達でしょ………⁉︎」
「…………そうだ」
「じゃあ、一緒に行く」
「………………」
「ミズキ1人でそんな危険な目に合わせられない!私もついて行く!」
「………………クス、君ならそう言ってくれると思った」
「ミズキ…………!」
「でも、ダメだ。わかって、ネプテューヌ。僕は、君をこれ以上傷つけたくない」
「私は……!」
違うんだよ、ミズキ。
行っちゃったら、傷つくんだよ。
いなくなっちゃったら、傷つくんだよ。
お願い、ずっと、ずっとここにいて欲しいんだよ……!
「………イヤ。行かせたくない」
「ネプテューヌ、僕に何を言っても無駄だよ」
「でも、私は、それでも………!」
「ミズキの、友達でしょ………⁉︎」
「……………そうだ」
だったら、私は。
ミズキを絶対に引き止める。ミズキは間違ってる。ミズキを私が止める。
何をしたって。たとえ、最低なことをしたって!
「だったら私は!力づくでもミズキを止める!だって私は!ミズキの友達だから!」
「ネプテューヌ………!」
「変………神………!」
ネプテューヌの体が光り輝いた。
髪が伸び、身長も伸び、胸も大きくなる。そして体にプロセッサユニットを身につけ、太刀をミズキに突きつけた。
「行くわよ、ミズキ。どうしても行きたいっていうなら私を倒してから行きなさい!」
「…………変身」
ミズキは握った右拳を胸に当てる。燃え上がる炎のシンボルが見えるのと同時に、ミズキの体が光り輝いた。
青と白を基調にした色。関節部の緑色をしたGN粒子タンク。右手にはGNソード、左手にはGNシールド。肩と腰の後ろにGNビームサーベルとダガー。左右の腰にはGNロングブレイドとショートブレイド。
その機体は完全に修復されていた。
あの時、私を助けてくれた機体。それが今、私に剣を向けている。
ガンダムエクシア。それがその機体の名前だ。
《僕は……君を、傷つける。でも、それでも僕は行かなきゃいけない。だって僕は………!君の、友達だから……!》
2人とも、友達のために。ただ、友達を助けたいがために。なのに、争う。何故、争う。
「…………っ!ミズキイイィィィッ!」
《ネプテューヌウウゥゥゥ!》
次で前日譚が終わりです。次からアニメを追えそう。
この章だとエクシアしか出してないですけど、他のシリーズも出すつもりです。