セブンスターを喫う先生、あるいは黄金瞳の   作:ishigami

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 I don't know what to take
 Thought I was focused but I'm scared
 I'm not prepared
 I hyperventilate
 Looking for help somehow somewhere
 And no one cares
 I'm my own worst enemy

   ―――Linkin Park/Given Up


















■■33 大いなる跳躍、さもなくば死を4

 

 

 

 ◇

 

 

 

 更識楯無は思う。

 

 ――「この世には『狂気』がある」。

 

 彼女が先代の「楯無」からよく言って聞かされたことは、自分らがくすんだ川のなかで共生していることを自覚しなければならぬという言葉だった。それは更識家を率いる身として常に向き合い続けなければならない現代の社会的病理であり、先代の言には、敵を知ることで「己」の見識を戒めるという意味も込められていたのだろう。

 

 だからこそ現代の狂気を象徴する一つが、「IS」という、世界の規律を破壊した兵器である事実はまず疑いようもなかった。篠ノ之束という「天災」がもたらした「規格外」は従来の人間社会を劇的に一変させ、仮に開発者がオッペンハイマーのように戦後世界の修繕へ力を注いだのであれば状況は異なったのかもしれないが――そんなことはさっぱりなかった。天才は天災で奔放で、大多数側の事情などお構いなしだった。

 

 常識的(・・・)に考えれば。

 

 十代の少女たちがスポーツ感覚で大勢を殺戮し得る兵器を駆使して「試合」するという状況は大いに狂っているのだろう、それを観戦し応援し企業までもが参入し大人たちが推奨するさまはドコの「華麗なる殺人」だと皮肉ってやりたいが――あれはフィクションのブラック・ユーモアだからよかったのだ――今や「狂気」は常識に取って変わっており、こうしてまた一人、狂気の意思たちが作り上げた学び舎で、「試合」というルールから逸脱した襲撃者と、何を間違ってか世界で唯一ISを動かせてしまった少年がスポーツ感覚で(・・・・・・・)戦おうとしている最悪の状況をなんとか回避すべく更識楯無は、山積するトラブルに急き立てられながらも必死に灰色の脳細胞を働かせ、マイクに向かって言い放ったのだった。

 

「ままごとやってんじゃないわよ。あなたには任せられない」

 

 声だけで灯火をかき消さんばかりの、強い口調で。モニターに映る織斑一夏が、怯んだ。そこに、隙を見る。畳み掛ける。

 

「気づいてないでしょ? 鈴音ちゃんが今どういう状況なのか。あなたたちのIS情報はこっちでもモニタリングできるのよ。あなたの幼馴染は、機体もそうだけど、本人も甚大なダメージを受けている」

 

「嘘よ!」凰鈴音が叫んだ。「ふざけないで、どこのどいつだか知らないけどね! 勝手なこと言ってんじゃないわよ!」

 

 あと鈴音ちゃんって呼ぶな馴れ馴れしい! 声を張り上げる少女をさらっと無視し、更識楯無は続ける。マイクを握る手に自然と力が入った。

 

「あなたの身勝手に付き合わせるのは止めておきなさい。あなたは英雄的行動をしてみたいのかもしれないけれど、私たちにはそれをさせてあげるだけの余裕なんてないのよ」

 

「聞く必要ないわ! やるって決めたんでしょう一夏、あたしたちで!」

 

「鈴……」

 

「戦ってるのはあたしたちなのよ! 部外者は引っ込んでなさいよ!」

 

 まずい。織斑一夏だけならまだしも、凰鈴音まで想像以上にやる気になっている。一度認めているぶん余計に自分からは引っ繰り返せず、懸想している相手だから、なおさら意固地になっているのか。

 

 ――部外者ですって? 何のために私がこんなに胃を痛めてるのかさえ知らないくせに。もしそうならどれだけ良かったことか、でも残念なお知らせよ、ええ、私は、思いっ切り関係者よ!

 

 舌打ちを抑えた。ダメよ、冷静になりなさい。言い合いは避けないと。かぶりを振った。次なる口撃(・・)。しかし明らかに苛立っている。ダメか。否、まだ。諦めてはだめ。逃げ道を用意しなさい。説得できないとしても、せめて時間を稼ぐ。第二アリーナ強行突入作戦が整うまでの猶予を。

 

 思考と同時に次なる一手を繰り出す更識楯無。

 

 その、背後で。

 

「織斑先生。(わたくし)も協力いたしますわ」

 

 白雪雫が中央制御室から去って間もなく、この場にいたもう一人の一般生徒であるセシリア・オルコットが声を上げた。別モニターに映る、織斑千冬と向かい合って言う。

 

「私の『ブルー・ティアーズ』は一対多数に向いたISですので、雫さんたちの戦闘に参加するとなると、悔しいですがかえって邪魔になりかねませんけれど………シールド突入時の支援(アシスト)くらいなら出来るはずですわ」

 

 学園に点在する三つの脅威。セシリアは自分に今何ができ、そしてできないのかを考えていた。

 

 頭にあったのは「持つ者が背負う義務(ノブレス・オブリージュ )」の言葉。名門オルコット家を背負う自身にとって、何よりも大切な指標。傍観という選択肢は初めからなかった。

 

 恐怖は無論、ある。

 無いはずがない。それでも。

 

 立ち向かう、白雪雫の姿を見て。

 

 覚悟を――決めたから。

 

「それは……正直言うと、助かります。何にしても人手は必要です。でも、いいんですね、危険ですよオルコットさん?」

 

 織斑千冬と、山田真耶の、必要とは言え生徒を危険に晒すという行為に忸怩たるものが滲んだ表情へ、

 

「もちろん承知の上ですわ。でも、その代わりというわけではないのですけど、一つ。お願いを聞いて下さらない、白雪先生?」

 

 打つ手を止めて、白雪軍人(しらゆきむらと)が振り返った。なんだ、と紺の色付き眼鏡越しに訊いてくる。どこか怖い顔。少女はちょっと緊張しながら、それでも笑顔を意識して、期待を込めつつ、言う。

 

(わたくし)に、お願い(・・・)して欲しいんですの。頼む、頼んだ、と。それと、これからは、セシリアと。私のことは、そう呼んでくださいまし」

 

 彼は。この一風変わった「お願い」に虚を突かれたような顔をしてから、口元を緩めると。

 

 くつくつと、風船から空気が抜けるように強張りを解いてから、やがて小さく首を振った。

 

 ――呆れられてしまったかしら?

 

 微かに不安がもたげるが、白雪軍人はセシリアと向き合うと、鷹揚に頷き、そしてやさしく、やわらかい笑みをして、

 

「ああ。……君がそう望むのなら。セシリア――頼むよ(・・・)

 

 ――その響き。

 

 ぶるり、と。背筋が震えた。

 

 ――彼に呼ばれて、言われたという事実だけで、ああ、こんなにも特別な響きを以て、甘美に、私の耳朶を震わせる。

 

 気が付けば、綻んでいた。笑顔が、勝手に(こぼ)れてしまう。

 

 ――胸の奥から、込み上げてくる温かいものがあって。力をくれる。できる(・・・)、という自信を。

 

 ――これは、ぜったい、応えなくっちゃ、ダメですわね。

 

「……はい!」

 

 晴れやかな、生き生きとした気分に満たされた少女は、赤らんだ、満面の笑みで「お願い」に応えるのだった。

 

 

「万事は請負いましたわ。このセシリア・オルコットにお任せあれ!」

 

 

 状況は、光明の兆しが見え始めている。

 

 だが。

 

 マイクの切断音が響く。

 

「――ったく、取り付く島もありゃしないわ。ほんっとに、織斑先生はいったいどんな教育をしてきたのかしら、ぷんぷん!」

 

 少女が去って間もなくすると、更識楯無は当てつけのように愚痴をこぼした。

 

「すまない……」

 

「いいですよ、言ってみただけだから。べつに、冗談ですよ。笑えない冗談ですけど。笑えもしない冗談って虚しいわよね」

 

「本当に……」

 

「会長! 第一迎撃部隊から通信! 北第一校舎にて敵個体Bを発見、戦闘に入りました!」

 

「こっちはやっとね。了解よ、必ず仕留めるように言って。第二部隊の状況は?」

 

「依然交戦中、なお作戦領域は東第四校舎方面へと移動しています!」

 

「拙いわね――避難施設が近くにある。押し留めるように指示して」

 

「了解しました!」

 

「楯無、できたぞ」

 

「え!? ホントに!?」

 

「ああ。取り戻した(・・・・・)。今校内の全カメラを再起動してる。……来た」

 

「っ――少しでも余裕のある子はこっち(・・・)を手伝って、直ぐによ!」

 

「どこだ、箒――」

 

 矢継ぎ早に変化するモニター。

 

 第二アリーナ近くから洗って、次々と無人の廊下を映し出す――

 

 

「いました!」

 

 

 生徒が叫んだ。

 

「南第一校舎二階、実験棟の――ああ!? あ、ISです! ISがいます! 篠ノ之箒ともう一人、それに、ISです!!」

 

「そんな、嘘よ――だって、襲撃者は三体のはずじゃ。……四体目(・・・)!? 最悪だ――」

 

「楯無、ここは任せる。情報は無線のほうで知らせてくれ」

 

「ちょっとムー兄さん!? どこ行くの!?」

 

「決まってるだろ、箒のところだ」

 

 それ以外に何がある、というような顔をして、言う。

 

「そんな勝手に、私の指示を……ってああもお勝手に行くなバカ―――!」

 

「通信入りました、あの……突撃作戦の準備が完了したそうです」

 

「あのバカッ、あのアンポンタン、スカポンタン絶対に許さないんだから! なんで私の周りには人の話を聞かないやつばっかり……覚えてなさいよ……なに、完了した? 分かったわ、ならそのまま指示を出すまで待機よ、いつでも出られるようにね」

 

「は、はい……了解です」

 

「まったく、もうっ――展開中のIS部隊に連絡して、篠ノ之箒ともう一人の身柄をすぐに確保するよう通達!」

 

「か、会長!」

 

「今度は何よ!?」

 

「カメラが新たなハッキングを受けてます!! 物凄い速度です、このままだとまた――」

 

「――――」

 

 絶句し、威嚇するように歯を剥き出しにした状態――恐ろしい笑顔――で硬直した生徒会長は、胃がきりきり(・・・・)と軋むのを感じながらも自身も電子盤に向かい、指揮官である自分が指揮以外に関わるのは悪手であると自覚しつつ、それでも人手が足りないからと、先程までいた白雪軍人の穴埋めとして奮闘を開始した。

 

 

 そんな、てんやわんやな自分たちの様子を、モニター越しに眺めている存在(・・・・・・・・・・・・・・)がいるなどとは、一縷たりとも想像しないまま――

 

 

 

 

 

「――ふふ」

 

 笑い声、だった。

 

 IS学園から遠く離れた――あらゆる監視と諜報から偽造された、誰にも探し当てられない秘密の場所にて。

 

 青色(ブルーライト)が照らし出すのは、部屋いっぱいに敷き詰められた無数の演算機(コンピュータ)が稼働する作業場所。その中央で、さながら機械を統べる女王のように。

 

 二七〇度を三〇以上の空中画面(ウインドウ)で囲まれた、エプロンドレスの、胸元を大きく開けた格好をして空中入力盤(パネル)入力(タイプ)している女が、小さく笑みを零した。誰に聞かせるでもなく、言う。

 

「まあ、及第点ってとこかな。この程度も出来ないんじゃ箒ちゃんの隣にいる資格なんてないもんね。さあて、いよいよお姫様の救出かな? ここまでお膳立てしたんだから上手くやらなかったらきーくん許さないんだからね? しくじったらぶっコロ、だぞー?」

 

 笑みを、まるで悪戯の結果を期待するようなにたにた(・・・・)顔に変えながら、続いて視線を、別の空中画面(ウインドウ)に向ける。

 

「じゃあそろそろ、こっちもお終いにしようか」

 

 そう、呟いた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 第二アリーナ――

 

 

 「白」と「赤紫」が入り乱れ、空間をかき回す破壊音はさしずめ輪舞曲か。

 

 突撃の前フリを繰り返すこと数回。求めたのは最良のタイミングと位置、距離。必勝へ通じる隘路は一瞬だろう、その瞬間(とき)にすべてを賭けるべく、片時も集中力を切らしてはいけない。

 

 チャンスは一度きりだ。動力数値(シールドエネルギー)も残り少ない、二度目の余裕はないだろう。観客席に、IS部隊が展開されるのが見えた。そのなかには「紺」の全身装甲ISがある。ここで決めなくてはならない。今のチャンスを逃してはならない。すると少年のなかで、ついさっき言われた言葉が蘇った。

 

 ――「あなたにヒーローは任せられない」

 

 更識楯無。生徒会長。学園最強の称号を持つ二年生。先輩。

 

 辛辣な言葉だった。なぜ一度しか会ったことのない相手に言われなくてはならないのか。反発心が沸き起こると同時に、自分のなかの後ろめたい部分を指摘されたような気がして、咄嗟に言い返すことが出来なかった。

 

 答えに窮した少年の代わりに、相棒である少女が答えた。邪魔をするな、これはあたしたちの戦いだ。怪我をしていると更識楯無は言っていた。もしかすると予想以上に危険なのかもしれない。ふと、寒気のする予感がしたところに、

 

 ――「あたしを信じなさい、一夏。あたしがあんたを信じるように!」

 

 まるで臆さない、透徹な瞳をして彼女は言った。だから少年は、僅かでも疑った自分を恥じ、強く思い直した。

 

 ――「ああ。……信じるからな、鈴!」

 

 戦っているのは自分たちであり、彼女は自分の背中を預ける唯一(・・)の味方なのだ。疑うべきではなかった。信じなければならなかった。自分を信じてくれている彼女のことを、何より自分が裏切るわけにはいかなかった。

 

 ――勝つんだ。

 

 勝って、そして証明するのだ。決して守られるだけの自分ではないと。

 

 少年は、自身の感覚が過去最高にISと一体化していることに気づいていた。

 

 やがて――

 

 幾度目になるであろう円盤の残骸が、火を噴きながら落下した。一つ/切断、二つ/両断、三つ/割断――四つ。瞬く間に木ッ端となる。空を彩る花火と違って危険極まりない爆雷の合間をプレッシャーと共に掻い潜り、ついに「白」が動いた。

 

一〇より始め(テン・カウント)――」

 

 掛け声と共に、素早く、

 

(ナイン)!」

(エイト)!」

 

 「赤紫」、力強い声で。高速機動下での衝撃砲。体勢反転。引き鉄(トリガーオフ)

 

 円盤を撃墜。撃墜。炸裂。回避。回避。爆風。衝撃。炸裂。爆風。撃墜。撃墜。撃墜。撃墜。撃墜。撃墜。撃墜。撃墜。撃墜。熾烈に。苛烈に。

 

(セブン)!」

 

 爆炎を掻い潜る。「白」も止まらない、文字通りの全力疾走。常に「白銀」の背後を取るべく立ち回る。攪乱せよ。瞬時加速(イグニッション・ブースト)。擦れ違いざまに両断、爆発。爆風から逃れる。重力方向急激転換。構わない、掻き回せ。「白銀」の機械瞳(センサーレンズ)が「白」を追いかけ、その意識(・・)を一身に引きつけておくために「白」は少しでも多くの円盤を撃墜し高速機動。目まぐるしく動き、思考と同様に一瞬たりとも止めなかった。

 

(シックス)!」

(ファイブ)!」

 

 吼える。叫ぶ。自らを奮い立たせるために。雄々しく。猛々しく。

 

 俺は此処だ(・・・・・)と知らしめるように、強く。

 

 強く!!

 

(フォー)!」

 

 そして。

 

(スリー)――!!」

 

 合図(・・)。最良のタイミングと位置、距離だった。「白」が円盤を斬り裂いて瞬時加速(イグニッション・ブースト)、「白銀」が「雪片弐型」贋作(モドキ)で刀剣を防ぐ――その背後から突撃した「甲龍」が落雷の速度で「双天牙月」を振り落ろした。

 

 まさに一瞬。隘路への挑戦。

 

 被弾も厭わぬ強行突破、全身全霊、電光石火、加速を乗算した渾身の一撃が「白銀」のシールドを鋭く斬り裂き、体勢(バランス)がついに崩れる、「零落白夜」は起動済み、逃げようが逃がさない、今更何をしようがもはや遅すぎる、計画は完璧だ、仕上がりも完璧だ、「白式」の「雪片弐型」のほうが圧倒的に速い、つまりはこれで(・・・・・・・)――

 

「俺たちの、勝ち(・・)だ!」

 

 しかし(・・・)

 

 「甲龍」は動かなかった。

 

 

「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――■■■」

 

 

 「甲龍」は動かず、強行突破の直前に突然大出力のビームによってシールドを貫かれ甚大な被害を受けたことで視界も意識も真っ白に染まり、

 

 「白式」もまた突撃間際に立ち塞がった円盤を両断しようとした瞬間に独りでに分割した円盤から放たれたビームで穿たれて動きを止めてしまい、

 

 眼前(・・)に「白銀」が、いた。

 

「―――――」

 

 「白」は。

 

 「白」が逃げようとするよりも速く、刀剣を握った利き手を掴まれて。

 

 「白」を握る「白銀」の掌が「閃光」を放つよりも先に、「雪片弐型」を振るうことが出来なかった。

 

 逃れられなかった。

 

 息も、つかぬうちに。

 

 衝撃(・・)

 それは一瞬で、肉を伝い――

 骨を貫き――

 潰し、

 砕き、

 融かし――

 

「―――」

 

 青白い火花。装甲(アーマー)を鎧った部分。テノヒラ。ずっと離さなかった刀剣は、破片と共に放り出されている。思考停止。右の、親指の付け根からうえ。

 

「―――――ァ」

 

 声。引き攣った喉。誰の。わからない。判らない。思考は停止している。わかるのは一つだけ。熱。

 

 灼熱。

 火のように熱い。燃えるような赤。

 

 赤。

 血のように赤い赤。

 

 血。露出した肉。赤。飛沫。焼け焦げた臭い(・・・・・・・)は、まだ、意識には届かない。それよりも早く。空白化した意識に、喰い込むように追いつく感覚があった。すべてを塗り潰す暴虐的感覚。脊髄が凍りつく、恐ろしい予感(げんじつ)が一瞬で沸点に達し、膨らみ、はじけ、

 

「ァァ―――――――――ァ、」

 

 次の瞬間。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

 

 

 

 絶叫が迸った。

 

 

 

 

 

 

 

 ――終局(フィナーレ)は間近に、されど演目は続く。

 

 ヒーローは、まだ。

 現れない。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 呼び出しています(コール)

 呼び出しています(コール)

 呼び出しています(コール)

 呼び出しています(コール)

 

 呼び出しています(コール)

 呼び出しています(コール)

 呼び出しています(コール)

 

 呼び出しています(コール)

 

 呼び出しています(コール)

 

 

「―――は、はい!?」

 

 

 通信。

 

「箒か!?」

 

「ひゃッ、ちがいみゃしゅ!」

 

「……誰だ、お前」

 

「ああのッ、わたし、ティナ・ハミルトンです……あの、その、私たち、その!」

 

「落ち着いて話せ」

 

「あの……お願いします!」

 

 泣き縋るような声をして、少女は言った。

 

 

 ――箒さんを助けてください!!

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「ああ」

 

 助けるよ。

 

 

 必ず――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






















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