俺の家に魔王が住み着いた件について   作:三倍ソル

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一か月以上もの間更新できずすいません。
今回も短いです。申し訳ありません。
出来る限り短い間隔で投稿したかったのです。


ルーツへのツール

 我はその話を聞いて、家に帰って寝た。フウマのベッドはルーツの分でスペースが埋まってしまったので、久々にソファで寝ることにした。

 ちなみに寝心地はそこまで悪くはない。

 ベッドで寝ていたその間、何度も何度もあの言葉がリピートされていた。

 

「どんな時でも綺麗事が勝つとは限らない。時には思い立って、卑怯な手に出るのも一つだ」

 

 ……卑怯な手?

 卑怯な手って何だろう。ってその時は思ったが、よく考えてみるとその意味はいともたやすく分かるものであった。

 ……我には、卑怯な手で勝つ方法しか残っていないのだ。

 

 

 ……一応、フウマも催眠をかけられているとはいえ良心はちゃんと働いているようで、ルーツはもちろん、我の分の朝ごはんもちゃんと用意してくれていた。…心なしかルーツより量が少ないような気がするが。

 しかし我は気にせず食べる。

 

「…フウマ。箸の持ち方分からない」

「何だ分からないのか? これはここをこうやって――」

 

 ……我に箸の持ち方を教えた時はあんなに上機嫌では無かったはずだ。

 フウからある程度の事情は聞いているので事情はかなり理解しているものの、やはり今まで保護者的存在だった人が別の奴に心を奪われているとなると、何と言えばいいのか、心が締め付けられるような感覚に陥る。

 やはり、今日中にケリをつけるしかないだろう。実は、昨日一晩中考えていたおかげてルーツを攻略するある策が出来た。しかしその策は、あまりにも卑怯な方法だったんだ。

 それはまさしく非人道的であり、もっとマシな結末になる攻略法なんていくらでもあったかもしれない。だけど、手っ取り早く、迅速に解決するためには、これしかないような気もする。

 

 我は飯を食べた後に、すぐに着替えてレンの家へと向かった。

 

 

「よっす。どうしたレイ、そんな自分だけの宝島が地球温暖化で沈没したような顔をして?」

「変な例えだな」

 

 玄関で出迎えてくれたのはユウキだった。我としてはレンに用があったのだが、どうやらレンは買い物でお留守のようだ。

 仕方がない、ユウキに用件を聞いてもらうとでもしようか…。

 

「なあユウキ。悪霊を退散させる上で最強の効果を発揮する札ってわかるか?」

「んーまあ……俺は兄ちゃんの仕事の概要については詳しく聞いてないし、あんまり覚えてはいないんだけど……でも、一枚だけあるんだよね」

 

 一枚だけあれば十分だ。作戦を実行に移すことが十分にできる。

 

「それって、どんな模様をしているんだ?」

「模様? 何でそんなことを?」

「今回の件でどうしても重要なことなんだ。それさえわかれば、いろいろと有利になれる」

「ふーん…?」

 

 ユウキは「ちょっと待ってろ」と言って、廊下の曲がり角で曲がった後姿が見えなくなった。

 なんとなく周囲を見渡す。

 我が見ているいつもの光景だ。それに何の変化もないし、何の変哲もない。ただ、その汚れがなさすぎて鏡面反射が起こっている壁面などから察するに、父母どちらかが潔癖性なのだろう。

 

「お待たせ。こんなのしかなかったけどいいかな?」

 

 と言ってユウキが見せてきた札は、それはもう厳つい龍と厳ついもう一つの龍が複雑に絡み合っている模様が描かれた札だった。

 ………えぇえええ……。

 

「どうした苦い顔をして。これが俺が聞いた中で一番効力の強い札だ。あまりにも強い力を持っている妖怪やら悪霊やらなら別だが、かなり強い力のあるやつなら普通に封印できるだろう」

「封印か?」

「そうだ」

 

 それを聞いて、静かに胸をなでおろす。

 

「……ふーん」

「でもこれは効力が効力なだけに生産がとても困難だ。そう易易と渡せるものではないってことは分かっているよな?」

「だろうなと思っていたけど」

 

 模様からしてね。

 

「だけどこれで封印した札をレンに渡せば、いつかレンが後処理を行ってくれるかもしれない。必ず目的のものを封印できるという自信があるのなら渡してもいい」

「自信がないと言えば嘘になるけど……本当にいいのか? こんな代物……」

「かまわん。同じ札なんて他にもいくらでもあるんだ。いくらレアものだとはいえ、勝手に使われたからってレンの身に稲妻が落ちるわけでもないでしょ」

「ごめん信用できないわ」

「えぇ…」

 

 正確に言うと、あんな些細なことでキレて性格が元に戻ってしまったあの時のレンを鑑みるに、今回もそんなことでキレてしまうのかもしれないという不安が頭をよぎって仕方がない。

 

「…まあとりあえず貰ってはおくけども。効果が薄かったりしたら許さないからな? 地の果てまで追いかけるからな?」

「なぜそこまでして恨む」

「…まあ、のっぴきならない状況なのでね」

「どこまでのっぴきならないのかは知らないけど、まあその札は結構効力強いらしいし大丈夫っしょ。んで、他に何か用はあるか?」

「え? うーん…」

 

 そういえばアレを誰に頼むのかは考えてはいなかった。別にユウキにやらせてもいいが、こんな複雑な模様の札でやれっていうのも申し訳ないしなぁ…。我がやるつもりでいたけど、この際借りを作るって形でもう一度頼むっていう案も悪くはないのか…? 我も手伝うって形にしとけば一応プラマイゼロか…?

 

「…ユウキ、これを効力無しでいいからもう一枚作って欲しいが、いいか?」

「え?」

「手伝うから」


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