俺の家に魔王が住み着いた件について   作:三倍ソル

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某漫画家に同じ名前があって驚いたし、その人の実況プレイ動画にこのサブタイと同じ名前が付いててなんか申し訳ない

語り部:アド・マーガトロイド


ルーツの過去(ルーツ)

 前回話した通り、今回はフウマを催眠で洗脳した主犯…というとちょっと聞こえが悪いね。えーと、…なんて言えばいいか分からないや。やっぱ主犯でいいよ。

 つまり、ルーツについての過去を語らせてもらうよ、私の娘よ。

 ルーツっていうのはもう分かっている通り、君の妹である…まあ、知らなかったら今まで何を知っていたんだっていう話になりかねないけどね。

 生まれた詳しい年数は恥ずかしながら覚えてないけど、大体ヘルが産まれた数か月後…だったっけなぁ?

 産親として何でしっかりと記憶してないんだか。いやー恥ずかしい恥ずかしい。

 …で、まあルーツはね、生まれた瞬間にあることが分かっちゃってさ。

 ……えーと、ヘルは髪の毛の色が水色なんだよね。これは母譲りでさ。今私の髪の色は黒く染めちゃってるけど、地毛はちゃんと水色なんだよ? それも結構鮮やかな水色がね。

 ちなみにお父さんの色はちょーっと赤みがかってた水色だっけなあ? …たしか、そんな色だったよねえ。

 だけどルーツの髪の色は白かったんだ。真っ白。何にも染まらない色。見るだけで浄化されそう。

 どうやら隔世遺伝だったらしいんだよねぇ…。水色ばっかりの私の世代の中にわずかに残っていた髪を白くする遺伝子が覚醒して、そんでルーツも白くなっちゃったのかなぁ? ということは、ルーツのアレは隔世遺伝でもあるし、()()遺伝でもあるよね! あっはっは!

 …おっと、純粋な時と比べてちょっと心が狭くなったようだねヘルちん。手刀をこちらに向けなくでいいよ。…ヘルちんという偏屈な呼び方も撤回させてね。

 …だからね、私達なんか人間と共存してるせいですっごく分かりにくいっつーか崩壊してるんだけど、…というか今も母国語でも何でもない日本語で話してるんだけど、本当は人間に仇なす筈の血縁だから…白はね、驚くほど似合わなかったんだ。…この私達特有の水色は、悪魔の色として名高いから、白は…なんて言ったっけ、ハグレ…って言うのかな。そんな感じでさ。ちょいと隔離されたんだよね。

 私は、それが嫌に感じたなぁ。

 ルーツって名前は私がつけたんだけど、これは「例え同種で何か不都合があったとしても、それを撤回…いや、払拭するルーツ(始祖)になればいい」っていう願いが込められていたんだけど…いやはや、頑固な夫にはそれは通じなかったようだね。後に見事に隔離されたよ。

 今思っても不思議だよ。なんでなんだろうね、ロキがそこまでしてルーツを隔離させるのはさ。見るだけで浄化されそうとかさっき言ったけど、きっと私の夫はその言葉を盲信しちゃったから、何の躊躇もなく躊躇いもなくあんな愚行を実行に移せたんだろうね。ああ、怖い怖い。ロキの欠点はそこだよねえ。何でもかんでも自分に不都合を及ぼしそうなものは隔離したり、処分したり、売却したり…考えれば考えるほど節操がないなあ。

 でも私もかつては死神の身だったし、結婚出来た相手と言えばあの人しか居なかったんだろうけどさ…あの触らぬ神に祟りなしを体でこれでもかというほど体現したあの人は、さすがにちょっと引いたなぁ。

 話を戻そうか。んでね、その後ルーツは急遽作られた隔離部屋っていう所に文字通り隔てて離されたんだけど、私はそこにコッソリ入ってコッソリルーツに娯楽やらを教えたりしてたよ。母親としてそれはやっておかないとね、うん。

 ヘルも触れ合ったことは何回もあるよ? まあ、過去を振り返らず未来に向かって歩み続けるヘルにとってはそのことについてはもう覚えてないのかな?

 …ん? 勝手なイメージを押し付けるのは止めて欲しい? まあそうだね。昔人間を統治してた君が後に人間の配下に置かれてる未来は想像したくないもんね。…冗談だよ。その拳を向けるのは構わないけれど、実の母親に向かって殴りかかろうとしない。

 それともあれかな? チョキを出せばいいのかな? 情けでパーを出してもいいよ。

 話が良く逸れるなぁ。私の悪い癖かな。

 …ルーツに娯楽を教育し続けたのが悪いのか何なのか分からないけど、ルーツは何故かヘルの事を溺愛するようになっちゃった。

 本当、何でなのかよくわからないけれども…というか、必要じゃない限りその理由はあまり知りたくはないんだけども。これ、俗にいうレズってやつだよねえ。

 でもさ、それに気づいたのは後の事であって、私は当時全然そのことに気付けなかった。私はその後ヘルをその部屋に連れ込まずに、しばらく一人で遊ばせちゃったんだ。

 理由は、丁度その時私が忙しいのもあったし、ロキの愚行(隔離)を受動してるルーツにはたまには一人で行動してみてほしかった。

 だから結局のところバッドタイミングだったんだよ。あの時君をちゃんとまだ遊ばせてやれていればあんな風にはならなかったのかもしれないねぇ…。

 え、どうなったのかだって?

 性格があらぬ方向にねじ曲がってねじ曲がってねじ曲がってねじ曲がってねじ曲がって、ルーツはサイコになってしまった。毎朝毎晩奇声を発して、部屋の物を何でも壊すようになったんだ。

 …まあ、今は大分沈静化して、あんな風になっちゃったけどね。…ある意味、元に戻っているともいえるけど。

 そういえばさ、私達の血筋に生まれてくる人は、必ず何かしらの能力と魔法の素質を貰えるらしいんだ。能力も具体的に言うと、《グレート・アーム》とか何とか…。紛らわしいのとしてジャガノくんが考えた《ルッキング・デストロイ》は私たちが持っている能力とは違ってジャガノくんが考えた名前であって、実際はジャガノくんの血筋が持っている能力だから違うんだ。ややこしい話だよね。自分でもわからないよ。

 もちろん、それは君も例外ではないよ。今までに2回ぐらいは使ったことあるから分かるはずだ。

 ……《タイムスリップ》をね。

 それについての概要は知ってるだろうし省くけど、ロキから後の代は何故か有能な能力を持っていることが多かった。

 《タイムスリップ》に。

 《テレキネシス》に。

 そして、《ヒュプノシス》。

 それぞれ時間逆行と超能力と催眠術って意味なんだけど、ルーツは催眠術が得意らしいから、ヒュプノシスだね。

 ちなみに、テレキネシスっていう名前の能力を持っている人は誰なのか知っているかい? またそれは後で話すことになるけど、…無論、今も生きているけど、それはこの件には関係ないので割愛させてもらうよ。後々重要な伏線となる可能性もあるしね。

 …あれ、ルーツについてどこまで話していたっけなぁ…あ、そうそう、ルーツが狂ったって所らへんの話だったか。

 その後も変わらず隔離されてたよ。まあ、奇声のせいで最早寝られなくなったときはロキって人は壁に防音材を敷いたらしいんだけど…。本当、あの人の行動力には呆れを通り越してちょっと憧れちゃうぐらいだね。そんなことをしている暇があったなら魔王らしく人間でも統治すればよかったのに…って、そのために魔王っているんだけどさ。

 というか魔王って存在はあまり人間からいいように見られてないんだけど、その理由って二つあるのは知ってたかな? 一つ目はまあ分かる通り、やっぱイメージのせいかな。本来の魔王ってやつは規制一つに我慢できず防音材敷いちゃうほどにやることのない種族だったしさ。

 というかもう一つの理由はそれにあるね。あまりいいように見られていないのは事実だけど、百歩譲って魔王がこの地を統治するのを肯定した人もいる訳で、その人たちから私達はどうやら怠惰に見えていたらしい。もっと魔王らしく生活できないのか! みたいなことを何回も言われた覚えがあるよ。そんなこと言われたってどうしろとって感じなんだけど。何なら私だって魔王の妻という称号をその人たちのいずれかにあげても良かったぐらいなんだけど……人間は身勝手だっていう話はあまり間違ってはいないねえ、やっぱり。

 でさ。話が何度も逸れたことに反省に反省を重ねて反省を反芻したわけだけど、もう夜も更けてるし話をここらでまとめさせてもらうよ。見た感じ、夜に無理矢理こっち来てルーツの概要を聞きに来た君も疲れているように見えるからさ。あ、ちなみに私はそこまで疲れてはいないよ。結構人と話すのは好きだからね。疲れ知らずなんだ。

 まず、ルーツは今催眠術…もとい、《ヒュプノシス》を駆使してフウマを操り、その後何かをさせようとしているのかは明確ではない……んだけれど、私としては予想が付くんだよね。

 そのために勝手ながらいくつかの仮定をさせてもらうよ。

 まず、ルーツはヘルの事が好きであり、一緒にずっと居たかったがために精神が狂い、あのような生活に陥った……それほどにヘルの事を愛していたわけだから、その思いを今でも忘れているわけがないだろう。

 あと…これはフウマ君が語り部だった時だから君は知らないだろうけど…ルーツは何もかも記憶がないって話、真っ赤な嘘である可能性が高い。何で知らない人…というか君を匿っている人間にピンポイントで話しかけ、そのままナチュラルな勢いでヘルが姉だということを看破したのか。

 少々展開に無理が利いているとは思わなかったかい? 逃避していたヘルには、そのことには気づかなかったみたいだけれど。

 ということはルーツがフウマ君に話しかけたのは恐らく意図だ。そしてヘルがいたことを確認し、ルーツはまずフウマ君を催眠術にかけて、今もベッドで夜を共にしている…。一度言ってみるとやっぱりその予想は確定してきたような気がする。

 だから、要するにルーツにとって必要なのは姉であり好きでもある君なのであってフウマ君はあの子にとって邪魔者でしかない。なので催眠をかけて、フウマを気付かれずに操る……その先にルーツがとらせる行動は、勘のいい君ならもう分かるだろう。

 ……フウマ君の排除、だよね。やっぱり。でも、ただ普通に殺すだけでは催眠をかけた意味がないだろう。だから、予想ではルーツはこの後フウマを自殺させようとすると思う。そうすれば、完全犯罪…やっぱ聞こえが悪いな。…えーと、完全犯罪が見事に成立し、ルーツの野望もめでたく叶うだろう。

 …だけど、君にとってフウマ君は親のような人であって、そして命に代えてでも守りたい人ではあるだろう? 私もそう思うよ。あの人になら、どんな命令をされたってかまわない…冗談さ。

 だけど、私はこの件について一切の助言をしないことを誓うよ。でも本当にヤバくなったときは私も少し助けようと思うけど、大部分は君のお頭で考えて、常に最善手を掲示してくれることを願うよ。

 …でもまあ、最後にこれだけ話させてほしい。安心して、どうやらもうフラフラに見えるけどこの話を聞けば本当に最後だ。

 この言葉は忘れてもいいけど、できれば頭の片隅に置いておいても構わないんじゃないんかな。

 

 どんな時でも綺麗事が勝つとは限らない。時には思い立って、卑怯な手に出るのも一つだ。

 

 …えーと、12時…君が来たのが11時だから、一時間ぐらい話し込んじゃったのかー。いやーごめんね、30分ぐらいで終わらせるつもりだったのにここまで話し込んじゃうとは。

 じゃあね、ヘル。時には完全なるハッピーエンドを目指さなくてもいいと思うよ。贅沢しすぎるのも考え物だからね。




……寝なきゃ。
というかこんなに手が速く動くとは思わなかったよ……。

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