俺の家に魔王が住み着いた件について   作:三倍ソル

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あー時間かかるなあ
アンケートについてはちゃんと採用させていただきますよ


遊園地の後半とその晩の日常

「じゃあ、次、あの遊具に乗ってみないか?」

 

 そう言ってフウマが指さしたのは、どうやらメリーゴーランドと呼ばれる遊具だった。装飾が豪華であり、子供も楽しくそれで遊んでいる。

 だけど、我はそれを見て怖くなってしまった。無意識にフウマの手を握る力が強まってしまう。

 

「え、ちょ、ちょっとどうした?」

「は、ははは白馬に……棒が貫いて、……それに、子供ががが…」

「……ああ、成程ね」

 

 我はフウマに、あれは本物の白馬ではないと言われた。

 そう聞いてえらく腑に落ちたが、やっぱりどうしても苦手意識を持ってしまう。レプリカにしても、どうしても馬に棒が貫通しているという絵面が我の恐怖心を抉られている気がするのだ。あんな奇妙なフォルムデザイン、子供は怯えないのだろうか?

 だから、あれには乗らない。…と言いたいところだったが。

 

「なんだあの回転楽しそう」

「デザインは気にしてないのか」

「フウマ、乗っていい?」

「いいよ」

 

 こうして、我はメリーゴーランド初体験となるのだった。別に、今回が最初で最後なのかもしれないが。

 

 スタッフに適当な馬に乗れと言われたので、何となく黒い鞍の着いた白馬に乗った。うーん……成程、この一馬身分の高さから見た遊園地の景色はなかなかどうして心地がいい。もっと具体的に言うと、人間をある程度の高さから見下せているのが、心地がいい。

 いつでもこの、誰かを見下せるような景色というのは爽快感がある。まあ、昔ほどではなくなったが…。

 さらにそこから遊具が回転しだした。我は唐突に動いた遊具に危うくずり落ちそうになってしまったが、そこをなんとか重心を調整させて支える。体幹はあまり良くない方だと思うのだが、スピードがゆっくりだったのでずり落ちなかった。

 やが最大のスピードで回りだした。我は馬に刺さっている棒で体を支えながら周りの景色を見る。

 人間が跋扈しており、周りのアトラクション遊具は忙しなく動いている。我はその人間の中からフウマを探し、見つけたら手を振ってみた。フウマは振り返してくれた。

 しかし、この程よい速さだといい感じのそよ風が我の体を突き抜け、たまらなく気持ちがいい。ふふ、思わず表情が綻んでしまい、笑顔を作ってしまった。

 楽しい時間は短く感じる。やがてメリーゴーランドは回転をやめ、スタッフが降りるよう指示する。

 

「どうだったか? メリーゴーランドは」

「楽しかったな。どんな遊具でも見た目で判断してはいけないっていうことを学んだ」

「そいつあ何より。じゃあ次、何に乗ろうか?」

「次は――」

 

 その後、我とフウマは様々な遊具を体感した。もう一つお化け屋敷があったのでそこに入ってまた気絶したり、四方八方が鏡で囲まれて周りが見えなくなる建物の中に入って目が回ったり、我の乗っている席が激しく上下する遊具など、どれも我を楽しませれる遊具ばかりであった。ここが遊園地、ここが遊びの園。前からCMを見た時に行ってみたかったが、これは我の予想以上であった。何だろう、この感じは。楽しいという言葉じゃ形容しきれないほどに、我は今興奮している。エキサイティングしている。心底来てよかったと思う。なんか文章がおかしい気がするがそれも気にしない。

 気が付けばもう日が暮れて、閉演時間が迫っていた。本当に時間が経つのが早い。少々大げさな表現だが、遊園地に入った瞬間にもう夕方になっている感じだった。

 さあさあ皆さんお待ちかねの、アレに乗りますよ。

 

「ジェットコースターーー!!」

「これは俺も実は楽しみにしてたんだ。ジェットコースターとか子供の事から乗ってみたかったしなあ」

「うん、そうだな。いやー……3時間も並んだ甲斐があった」

「うん……。何だろう、半世紀位ここに居た気分だよ……」

 

 あの激しく上下する遊具から我とフウマはジェットコースターに乗るべく列に並んだ。その時はよく確認してなかったから分からなかったが、中々乗れないから途中でジェットコースターの方を見てみたら、大体400メートルぐらいの大蛇の列が出来ていたことに気付いた。我は唖然してしまい戻ろうかとも考えたが、あそこまでやって本命の方だけやらないなんてそんなショートケーキのスポンジの部分を食べてイチゴを残すなんてこと出来ないのでそのまま並んだ。

 正直言ってジェットコースターに乗る気力がない。三時間何もしないで過ごしたというのがどんなに辛かったことか…!!

 

「つぎのかた、どうぞー」

「おっしゃあ乗るぞー!!」

「あんまり騒ぐんじゃない」

 

 騒ぐなと言われても、三時間立ってて足が浮腫みまくって体力を無駄に消耗した我はこんぐらいの掛け声を上げないと元気が湧いてこない。

 …まあ、空元気だけど。状態異常にもかかってないけど。

 

 今更だけど、ジェットコースターの特徴を紹介していこうと思う。

 我とフウマがたった今乗るジェットコースターの名前は『轟音 go-on』であり、ジェットコースターのコース自体は単調なのだが、そのスピードが異常であり、並のジェットコースターの1.5倍ぐらいは早いとかなんとか。

 ちなみにもう一つここにはジェットコースターがあって、そっちはあんまり早くない代わりにコースが気持ち悪いほどくねくねしている奴だったのだが…。そういうとこに行って酔って吐きたくないからこっちを選んだ。

 我とフウマは隣同士で一番前の席に座った。一番景色も刮目することができるし、何よりジェットコースターとしての機能を最大限に楽しめるからだ。

 

「それでは、出発しまーす、轟音特有の超スピード、ご堪能くださいませ~」

 

 スタッフの予告通り、ジョットコースターが動き出した。

 まずジェットコースターの定石。最初ちょっとだけ走った後に大きい山があり、その大きい山を登山(比喩)して登り切って下山(比喩)するときにかなりのスピードが出て、そこからがジェットコースターとしての本領を発揮する。

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 乗ったことのある奴なら伝わると思うが、兎に角全身に当たる風が超気持ちいい。今の我とフウマの叫びは、ジェットコースターの想像以上の速さと目まぐるしさと、そしてその躍動感に驚いてたというのもあったが、一番の理由としては気持ちがよかったからだろう。

 いや、本当にもう、言葉では言い表せないほどに気持ちがよかった。気持ちよかったとしか言いようがない。気持ちが良かった。

 気持ちよかったがゲシュタルト崩壊しそう。

 だけど、このほかにももう一つ感じたことがある。それは何なのか。察しが良かったら大体予想つくだろうか?

 我はその感情を自身の鼓膜すら破れんばかりの声で、顔面に襲い掛かる風圧にも負けずこう叫んだ。

 

「楽しいいいいいぃぃいいいいぃぃぃぃいいいいい!!!」

 

 

「はふー、満足満足!」

「……」

「いやー楽しかったなあフウマ。スナップショット見たか?あの我の満面の笑み!」

「……」

「フウマの顔、何か青ざめてたな。まあいい。というかどうしたんだ、さっきから寡黙を貫いて?」

「……酔った」

「早く言えよ!」

 

 

 

 場面は少し飛び、我とフウマは遊園地を出て車の中へと入った。

 夏だから車というドアも窓も締め切ったこの密室空間は太陽の光でこれでもかというほど暖められており、我が入ろうとしたときにここはサウナかと間違えそうになった。

 とりあえず運転中も窓を全開にして熱気を追い出す。遊園地のアトラクションよりもこの車の中でじっとしていた方が疲れそうだった。

 

「魔王、今日は家帰ったら何食いたい?」

「ハンバーグ!」

 

 どうやら、我の好物はハンバーグだということが分かったらしい。封印される前までは何が好物だったかは定かではないが、何かベジタブルなものしか食べてなかったような気がする。だから肉を美味しく感じるのだろう。

 

「オッケー、じゃあひき肉買って準備しますか!」

 

 フウマはそう言って車の中の暑さにも負けず雨にも負けず(車の中に雨なんて降るはずないが)車の運転スピードをちょっと上げた。交通事故を引き起こさないかちょっと心配になってきた。

 途中スーパーマーケットによってひき肉とその他諸々を買い、そして無事交通事故も起こさず、違反スピードギリギリの速度で家に帰った。

 玄関を開けると何かお母さん(アド)がリビングに勝手に入ってなんかスタンバってた。

 

「あ、おかえりーヘルとフウマ君。ハンバーグなんだって?」

「いやなんで俺の家に居るんだアンタは」

 

 我が返事をしようとした途端フウマが先に返事をする。いやせずには居られなかっただろう。

 何せまた新たな人物が『住み着いて』いるんだもの。

 ……いや、『お邪魔して』いるだけか。

 

 語り部:フウマ

 

 アド。

 魔王の母。

 本来なら俺も目の前に立たれれば土下座をしなければいけないほどの偉大な存在らしいのだが、あの件があったせいで俺は一応立ち位置としてアドと対等に置かれている。

 だから、タメ口もお前とかの呼び方もセーフ。

 最初会った頃は俺に対して敬語だったが、そのうち友達になったかのような馴れ馴れしい態度で俺に接するようになってきた。まあその方が俺も話しかけやすかったし、助かる。

 

「人間の料理を頂きに参った」

「ふーん、じゃあカップラーメンでいいか?俺らはハンバーグ食うから」

「んっ?カップラーメンって何、ハンバーグって何?」

「カップラーメンはこれ」

 

 俺はそう言ってキッチンの必要な物入れにしまってあったカップラーメンを見せる。アドはほうほうと頷き、ハンバーグの方はどうなんだと急かしてくる。

 

「ハンバーグはこれ」

 

 俺はそう言って今度は俺がいつも参考にしている料理本からハンバーグの項を開き、そこにあった写真を見せる。

 ジューシーに見せる加工がしてあるので、より一層見た目が映える。

 

「へー、これを私が食べてフウマ君がカップラーメンを食べるのか!いやー太っ腹だね!」

「露骨に俺が食う飯をすり替えようとするな」

「ねーこれ食べたいからさー、フウマはあのカップラーメンとやら食っといてくれよー」

「本音で勝負するな。俺はもうこれを食べると決めたんだ」

 

 …何だろう、こいつの反応が反応なだけに俺が愚かしい奴に思えてきた。

 

「……フウマ君、一ついいことを教えてあげよう」

「?」

「私の年齢は700歳だよ。つまり私の方がフウマ君より年上なんだ――」

「カップラーメン用意するからリビングで待ってろ」

「んー!?年上に対する気遣いってのを知っているのかな!?」

「知らん。キヅカイって何なんだ食い物か?」

「堂々と言わないでよ!?」

 

 愚かしい奴ではなく、俺は罪悪感を感じない人だったらしい。

 俺はカップラーメンにお湯を注ぎ、アドに三分間待ってから開けるように忠告した。

 その間に俺は挽肉をこねて野菜を炒めて混ぜて焼いて二人分盛って、もう既に一人カップラーメンを食べているアドを差し置いて魔王と二人でカップラーメンを食べることにした。

 魔王は心底羨ましそうな目でハンバーグを見つめるアドを横目でチラチラと見て、一口分ハンバーグをフォークで切って、それをアドの口に寄せた。

 

「一口ならいいよ」

「ヘルってば相も変わらず優しい~!」

 

 ぱくっ。と、魔王が何か食う時と似たような声を出して一口サイズのハンバーグを食べた。

 直後、まるで天国に行ったかのような恍惚とした顔に変わる。

 

「美味しーい!!こんなに美味しいものが人間たちは毎日のように食っているのかい!?」

「いや、毎日じゃないよ。というかこの料理お前らが生まれた時代にゃなかったのか?」

「いやー父が厳格な人柄でね。人間の食うものは食べてはいけないなんてヘンテコなルールを思いついてたんだよね」

「そうそう。だからハンバーグとかじゃなくてもステーキとか、本で見る限りすごく美味しそうだったからさ。だからフウマには感謝してるよ」

「それは何より」

 

 …どうやら無意識のうちに食レポを語る性格はお母さん譲りではなかったようだ。

 しかし、父が厳格な人柄だった、か。確かに無理矢理魔王を連れ戻して幸福円満な暮らしを再び実現するとか、人間の食うものは食べてはいけないとか、それは厳格な人柄ではなく、単に人間を恐れての過保護だったのではないだろうか?

 親の心子知らず、って奴かな。

 

「はふー、ご馳走様でした。やっぱりフウマの作るハンバーグは美味いな」

「カップラーメン……ハンバーグと比べりゃそんなに美味しくなかったなあ」

「日清食品に喧嘩を売るな。あの会社は美味しさと引き換えに三分で十分な麺類を食える大発明をしたんだぞ」

「それを言われたらそうだけど…もう少し美味しく出来ないもんかなあ」

「難しい問題だ。今の今まで年月を重ねてきてこの味があるんだしねえ。ひょっとしたらあと50年ぐらい経ったらすごく美味しくなるんじゃないか?」

「だといいな」

 

 アドは少しの間食べ終わったカップラーメンの容器をじっと見つめて、意を決したような顔で俺にこう言った。

 

「……よし、私、日清食品に就職するよ」

「はい!?」

「ちょっと履歴書書いてくるから元の場所に戻るね。お邪魔したよん、ばいばーい」

「あ、ちょ、ちょっと待っ――」

 

 アドは善は急げと言わんばかりに体から眩い光を発し、そして消えた。

 ……行ってしまった。

 

「……アイツのテンポについていけてねえな、俺」

「お母さんはおっちょこちょいなんだよなあ。そこらへんは勘弁してくれ」

 

 ともあれ、俺らは食器を片付け、テーブルの上を掃除して食事の支度を終えた。

 そして歯磨きをし、同じベッドに二人並んで中に入る。

 

「ああー今日は疲れた…本当。いつもより気持ちよく寝れそう」

「最近はフウマと一緒に寝ることが多くなったな」

「…まあ、何だかお前をソファで寝かせるなんて今考えて申し訳ないことしたなあとか思ってるから」

「ふーん、なんだ、母性ってやつか?」

「男性に対してそれを言うかい普通?」

「ふふっ。冗談だよ、フウマ」

「冗談キツイなあ…」

 

 そんなことを話しているうちに、俺らはほとんど同じタイミングで完全に瞼を閉じて眠りに就いたのであった。

 お互いに、すぐ隣で寝ている生き物の温もりを、温かみを、無意識にじっくりと感じながら。




どうも、三倍アヲイです。ちょっと長いですが話をさせていただきます。

次回はアンケートのどちらかの意見を採用させていただきたいところですが…。やはりうまくそのアイデアでストーリーが作れません。
ドタバタギャグはこの小説のギャグ方針に噛み合ってないし、二人の脳内の声が漏れるようになったという意見は上手くその旨のストーリーを考えることが出来ないのです。
一応書いてはみますが、上記の理由がゆえにクオリティが低くなる可能性があります。その際はご了承ください。

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