Hyskoa's garden   作:マネ

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トリックを重ねるほど、奇術は魔法へと近づく


No.066 Hyskoa's × DOUBLE

 こいつのバトルスタイルは百戦錬磨なんてもんじゃない。もはや趣味の領域だ。いかに自分が楽しむか。そこにある。

 

 自分の命を「賭けて」遊んでいる。

 

 狂ってる。

 

「自分のストロングポイントとウィークポイントはきちんと把握しておいたほうがいいよ♠ パワーとスピード、そして、技、すべてを極めているといってもいいキミがボクに敗北する理由を教えてあげよう」

 

 そんなのとっくに気づいてるよ。

 

 おまえが教えてくれたから。

 

 バカじゃ勝てない。

 

「キミはいつの時代の能力者かな?」

 

 ヒソカは質問を投げかけてきた。

 

「戦いとはただの殴り合いだと思っていた」

 

「戦いの半分はやさしさと思いやりでできている♣」

 

 俺は笑った。今ならその意味が少しはわかる……気がするよ。

 

「ヒソカ、ケリをつけようか」

 

「あぁ」

 

「ヒソカ、練を使ったらどうだ?」

 

「練を使うかどうかはボクが決める◆」

 

「おまえには火力がない。一撃では俺を倒せない」

 

「どうかな?」

 

 練ッ!!

 

 2本のダークセイバーがマックスまで伸びる。

 

 練ッ! 練ッ!! 練ッ!!!

 

 一息で決める。これが最期のターンだ。

 

「ヒソカ、後悔するなよ?」

「それはそっちだろ?」

 

「双竜ダークセイバー!! スカイウォーク!!」

 

 俺は足元につくった放出系のオーラの床を蹴る。ヒソカに突っ込む。ヒソカはバンジーガムで逃げる。方向からいって、ヒソカは『葉』に潜り込むつもりのようだ。無敵バリアを使って、俺のダークセイバーをやり過ごす気か?

 

 ダークセイバーはバリアが張られた狭いところでは効果が半減する。バリアに接触すれば無効化させられる。

 

 それがヒソカの狙い。ゆえに小賢しい。

 

 だが、俺の剣術を舐めないことだ。ヒソカ!!

 

 このスペースがあれば問題ない。この手は読んでなかっただろう。左腕(半身)を捨てればスペースは生まれるんだよ!!

 

 絶にした傍生の左腕が天空闘技場の壁に削り取られる。これでダークセイバーをバリアに触れさせずに振れる。

 

 ヒソカの姿がみえた。

 

 ヒソカは驚愕の表情を浮かべている。左腕を捨てるなんて、普通は考えないからな。捨て身にならなければ虚は衝けない。そして、俺にはそれができる!!

 

 おまえがバンジーガムを使っていないことは凝でわかっている。

 

 余裕の射程距離だ。完全にヒソカを捕えている。

 

 今、俺は完全におまえの上を行っている。

 

 この一振りで、俺はヒソカを越える。そして、俺は俺をも越える。

 

「ダークセイバー!!」

 

 

 

 ヒソカの姿が水平に断ち斬られた。真っ二つになる。

 

 

 

 勝った!! やった!! やってやった! やってやったぞ!!

 

 ついに、ヒソカを倒したぞ!!

 

 

 ゾックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――。

 

 

 背筋に戦慄が走った。

 

 目の前の真っ二つのヒソカがふっと消える。

 

 斬ったはずのヒソカが消えて、後ろにヒソカの気配を感じた。

 

「バカなっ!?」

 

 目の前にいたはずのヒソカが一瞬で後ろに現れた!? ヒソカは両手で下半身を持っている。

 

 まるで、その空間だけ時間が止まっているかのようだ。

 

「うんしょと」

 

 ヒソカの下半身が上半身にくっついた。少なくとも、俺の目にはそうみえる。

 

 冗談だろっ!?

 

「自分自身も瞬間移動させられるのか?」

「まぁね♣」

 

「身体をくっつけられるのか?」

「まぁね♣」

 

「なんで!?」

「さぁ、どうしてでしょう?」

 

 これほどの現象を起こしているのに、ほとんどオーラに変化がみられない。まともに練をしていないという証拠だ。

 

 意味がわからない。

 

 念能力の原理を完全に無視している。まるで魔法だ。ヒソカは完全に俺の理解の外側に存在している。強さや弱さ、そんなものじゃ測れないところにヤツはいる。

 

「おまえは奇術師(マジシャン)かよ?」

 

「あぁ、そうだよ♠」

 

 俺はバンジーガムにがんじがらめに捕えられた。どうやら、バンジーガムは円の効果もあるようだ。ヒソカは俺のオーラ量を測ったらしい。もう俺が戦えないことに気づいたはずだ。

 

「ボクは奇術師ヒソカ♣」

 

 ヒソカはジョーカーのカードをそっと傍生の後頭部に添える。銃を突きつけるように。

 

 傍生のダークセイバーの光が消える。傍生の身体が崩れていく。

 

「奇術師(ボク)に不可能はない♠」

 

「フッ……」

 

 今、俺はヒソカを理解した。理解できないということを理解した。

 

「最期の攻撃は見事だったよ。思わず、我を忘れてしまうくらいに……ジュル♡」

 

 ヒソカはカラダを震わせている。俺の後ろにいてわからないが、おそらくヒソカは頬を染めて、口を半開きにして、形容しがたいヤバい表情をしているに違いない。

 

「ZZIGG=ゾルディックを倒したのはおまえか?」

 

「だ、誰だい? そ、それは?」

 

 ヒソカはナニかに気を取られているようだ。声がうわずって震えている。背中越しだが、ゾクゾクとカラダを震わせているのがわかる。なんか気持ち悪い。

 

「過去に興味はないか……たしかに最強だよ。おまえは……」

 

 こんな気持ちで最期のときを迎えるとは思ってもみなかった。やり切った。いや、やり切らせてもらった。一般兵アンと戦って死んだときとはちがう。完全燃焼。出し切ったよ。ヒソカにすべて。

 

 お互いのことに思いをめぐらせながらの戦い、か。

 

 これがおまえの闘いというヤツか。

 

 最期、ヒソカに何か違和感を覚えたがそれが何か……。

 

 時間だ。

 

 謎は解けず、か。人生とはそういうものだ。綺麗には終われない。

 

「俺の名前はモール……暗黒時代の騎士……」

 

 ―――――――。

 

 ―――――。

 

 ―――。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ヒソカは自分の右頬にふれて、涙のマークを消す。

 

「くっくっく……やっぱり便利◆ ボクのドッキリテクスチャー♣」

 

 ヒソカはバンジーガムを解く。灰になった傍生が地上に落ちていく。

 

「ボクを満足させられるのはやっぱり貴方しかいない♠ クロロ、早く会いたいよ❤」

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

 

 

 

 天空闘技場の屋上から、凄まじいオーラが発せられる。大気が震えている。

 

 天空闘技場にヘリが飛んでくる。

 

「浮気してもいいかな?」

 

 ヒソカはぺろりと唇を舐めた。




ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。

ラストバトルに向けて、伏線を入れておいたほうがいいかと思って、伏線を入れたことによって、ヒソカ×傍生戦において、謎が残ってしまうという結末になりました。

構想では、ここからヒソカ×天動戦の予定でしたが、天動は今、修羅のガード中で動けない。とすれば、ヒソカとラスボスの出会いはすぐそこですが。さて。

まえがきはMr.マリックの言葉です。敬称略

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