No.064 Hyskoa's × BLANK JUNK
ダークセイバーの間合いを見切られて、ヒソカを攻め切ることができない。間合いの主導権を握る必要がある。そのために必要なのは移動力だ。
あのときもそうだった。結局はそこに行き着く。もう一段階の変身が必要だ。
スーパーアンデッドスリー。
ヒソカには決定的な弱点がある。
それは火力だ。
ヒソカのトランプ攻撃もしっかりと対応さえすれば致命傷になることはない。俺たちのオーラ量は現代の念能力者より遥かに大きい。ヒソカはそれを物理で補って、俺たちを上回ろうとしている。頭脳戦に持ち込もうとしている。
だから、俺がヒソカを頭脳でも上回れば何も問題はないということだ。上回ることができれば……。
硬質のオーラで身体を保護することができれば……だから、その思考がダメなんだ。安易に簡単な答えに飛びつくべきじゃない。
念能力はメインの能力と奥の手(サブ)となる能力の二つを有するのが理想とされている。自分の系統に近い系統で能力をつくることで、容量(メモリ)を抑えることができる。そして、このサブ能力は仲間にすら隠すもの。
バンジーガムと瞬間移動能力。
まちがいなく、どちらもメインとなる能力だ。特にバンジーガムはガムとゴムの二つの性質変化を持っていて、それをさらに融合させた変態能力だ。並みの変化系能力より遥かに容量を使っている。
瞬間移動も容量を使う大変な能力だ。どのくらい大変かというとそれを覚えてしまうと他の能力を覚えるのが難しくなってしまうくらい大変だ。
ヒソカはその大変な能力と変態能力の二つの能力を覚えているということになる。これだけで一流ハンターの容量を越えている。これはあることを示唆している。ヒソカがこれ以外の能力を有していないということだ。
……普通に考えれば。
ヒソカはサービスで瞬間移動能力をみせつけてきた。ヒソカがバカじゃなければ、普通に考えて、さらにもう一つの能力を有しているということになる。本当の奥の手を。
ヒソカはこのメイン能力二つのほかに、さらにもうひとつの能力を有していると考えるのが妥当。
それでヒソカの容量もマックスだ。おそらく。
俺は何かを見落としているんだろうか? 見落としているとしたら、それはなんだ?
◆
――だから、レオリオ、ボクはキミと組みたいんだ♠
◆
ヒソカは両腕を広げて、再び両手にトランプカードを展開した。扇状に。
「ヒソカ、いったい、どういうつもりだ?」
「理解できないかい?」
「何をするつもりだ?」
「みたままだよ♠」
俺の身体にバッジはついていない。何も仕掛けはされていないはず。ヒソカは練をしていない。
ヒソカの視線が動く。視線を戻した瞬間、ヒソカの両手からトランプカードが消える。傍生の身体に次々とカードが突き刺さる。耳が削ぎ落された。
右足にカードが集中する。削り取られる。オーラを右足にまわせば他が手薄になる。破面の影響でオーラコントロールの精度が生前より落ちている。
右足は捨てる!
オーラを上半身に集めていたせいだ。それで上半身のダメージはそれほどではなかった。鋭い攻撃をされてしまっては堅じゃ対応できない。それに空中戦じゃ、足はそれほど関係ない。片足あればいける。
リスクはバネ。むしろ、そっちのほうが念は強く働く。
そして、今、考えるべきはそこじゃない。
バッジを外したのに、どうして……??
どうして不可避の一撃が発動しているんだ? どうして……??
「さて、どうしてでしょう?」
ヒソカ……。
考えられるのは……。
「バッジはフェイク!?」
俺はヒソカの表情の変化に注視する。
「バッジってなんのことだい?」
……………………。
チクショオォォォォォッ!!
ヒソカめが! おちょくりやがって! この俺をおちょくりやがった!!
「くっくっく♣」
自然と俺の身体からオーラが立ちのぼる。
「油断大敵、火がボォーボォーってね♠」
傍生に大きな衝撃が走る。
傍生はガツンと横に吹っ飛ばされた。
天空闘技場の外壁を横に転がるように飛ばされる。ぶつけられたのは天空闘技場の分厚い窓ガラス。吹っ飛ばされた傍生にまわり込んでいたヒソカのカウンターの蹴りが傍生の頭を捕える。傍生は天空闘技場の『葉』に落ちる。
纏が乱れたところにヒソカのカウンターを食らった。あの尖ったハイヒールはオーラを一点集中させるため?
わずかでも、冷静さをかけば……こうなる。
今度は『窓ガラス』を瞬間移動かよ。視界の外だったから、飛んできたのか、瞬間移動なのかはわからなかった。俺をおちょくることで、視野を狭めたのか……。
落ちつけ。落ち着くんだ。
早く瞬間移動の謎を解かなければ……。
どうやって、不可避の一撃は発動されているんだ?
バッジではなかった。いったい何が制約になっているんだ? 制約なしでの発動は不可能のはずだ。
傍生はまがった首を元の位置に戻す。
このダメージ……生きていたら、死んでいたな。
考えられるのは……第三者の可能性!!
ヒソカはニヤリと笑った。
しかし、本当にそうだろうか? ヒソカはそういうタイプにはみえない。独力で相手を攻略し、屈服させることを目標に戦っているように思う。第三者の協力を得るなんて、そんな手を使うだろうか? そういうふうに考えさせるのがヒソカの手か?
思考の罠。堂々巡り。答えが出ない。
推論を立て、検証する。検証方法はオーラの周波数測定。オーラコントロールが難しい破面モードでは測定することができない。破面モードの解除は死のみ。
まるで、魔法をみせられているかのようだ。
ヒソカの魔法。
ヒソカにオレは勝てないのか?
オレは偉大な暗黒卿に仕えし、最強の騎士モールだ!!
現状では不可避の一撃を攻略することはできない。とにかくバンジーガムを切断し、ヒソカの動きを止めるしかない。
傍生はヒソカのバンジーガムを切断するが、すぐに天空闘技場の別のところにバンジーガムをつけられて、逃げられてしまう。ヒソカを攻撃するも、自分の間合いまで接近できず、空振りばかり。ヒソカはバンジーガムに隠を使っているために、常に凝を使わなければならなかった。薄くなった纏をヒソカの不可避の一撃に狙われる。悪循環だった。
単純に戦いにくい。
バンジーガムのせいでヒソカの身体の動きと移動する方向も一致しない。感覚で動けない。頭を使って、次のヒソカの動きを考えなければならない。疲労がハンパじゃない。
このままではヒソカにやられる。
やるしかない。
最後の変身!
武空術は全身のオーラを放出系オーラとして身体と一体化させて、身体を自由に飛行させる能力。武空術を使うと、さまざまな念能力を同時に使うことが難しくなる。しかも、精度も下がる。
ヒソカと戦うためには飛行と一緒に他の念能力も同時に使えないと意味がない。
武空術をメインで使うんじゃない。武空術はあくまでも補助だと意識するんだ。放出系オーラと身体を一体化させるんじゃない。オーラで地面を作って、それを蹴るイメージ。足だけを使った空中歩行術。
傍生は左足で、オーラの地面を作って、そこに立つ。
これで上半身のオーラを自由に使える!
「へぇ♣」
「スーパーアンデッドスリー! スカイウォーカーモード!!」
ヒソカ×傍生戦決着まで連日投稿です
まえがきの言葉は『容疑者Xの献身』に出てくる言葉です