「レオリオ、キミ、放出系だろ?」
「なんでわかったんだ?」
「くくく……そんなに簡単に認めちゃダメだよ。自分の系統は隠さなきゃ♣」
「ぐっ」
カマかけられた!
「具現化系と放出系は相性がいいんだ。強化系と変化系も相性がいい。強化系のゴンとうまくやっているキルアは変化系だろうね。逆に、具現化系と変化系はビジネスライクでドライな関係になりやすい」
ヒソカがオレの表情を伺う。キルアの系統なんて知らねえよ。操作系なんじゃねえのか? キルア(アイツ)は警戒心が強いからな。オレやクラピカにだって、自分の能力は話さねえだろうし。
「キルアとクラピカの関係はドライじゃないかい?」
言われてみれば。
「クラピカと二人っきりで会ったときのことを思い出すとドライだったなぁ◆」
二人っきりで……? 会った……?
べつにヒソカとクラピカが何しようとオレには関係ねえし……ぜんぜん気になってなんかねえし……。
「クラピカとのデートを想像すると互いの欲求を解消するだけで終わりそうな気がするよ。ちゃんと心も通わせてシたいけどね」
「なにを?」
「くっくっく……♠ ボクのカンが言っている。そのときはもうすぐそこまで来ている」
◆
ヒソカとレオリオの前に、50名のアランカル兵が立ちはだかる。
「纏を使えば銃で死ぬことはない……と思うよ♠」
「死ぬかもしれないのかよ!」
「くくく……まだ堅は使えないんだろ?」
堅……なんだそりゃ?
ヒソカはレオリオの身体に右手でピタリとふれる。
レオリオの身体をバンジーガムの膜が覆う。
防御力が上がったッ!?
「ないよりはマシだろ?」
ヒソカは変化系だから、手元から離れると精度は半分ほどになる。
レオリオのオーラとバンジーガムは干渉しなかった。オーラ同士は干渉し合うんじゃなかったのかよ。
これがヒソカか。
……………………。
「20秒ってところかな」
「なにが?」
「ボクが彼らをヤる時間だよ。キミにはちょうど良いレベルアップバトルになると思うよ。修行で得られるのは戦術面だけ。勝ち方は実戦の中でしか磨けない◆ そして、負けたときより、勝ったときに得られる経験値は遥かに大きい。このバトルは今のキミには最適だよ」
「ハードル、高すぎやしないか?」
アランカル兵が銃を構える。
「撃て!!」
ヒソカはレオリオの前に立つ。ヒソカとレオリオに向かって、銃弾が放たれた。ヒソカは踊るようにクルクルとまわる。
「バンジーガム!」
銃弾がヒソカの身体に覆ったバンジーガムにとらえられる。銃弾の勢いでバンジーガムが伸びる。数十の弾丸が。
「ゴムに銃弾は効かない♣」
バンジーガムがギリギリまで伸びる。
「解放♠」
バンジーガムが縮み、銃弾が全弾はね返される。放たれた倍以上の速さで。すべてアランカル兵の急所に命中する。20人ほどが倒れた。
なんつーコントロール力してんだ。それに20人の動きを同時に見切ったっていうのかよ。まったく信じらんねえぜ。
念を覚えて、改めてわかる。ヒソカの凄さが。
アランカル兵の士気が一気に下がる。
「レオリオ、今がチャンスだよ♣」
マジでオレに戦わせる気かよ。
やってやんぜ。
「練ッ!」
レオリオのオーラが高まる。
「不器用だね♣」
「ほっとけ」
レオリオは練ったオーラを纏で留める。
「ふぅ……」
大きなボールをつかむように、両手の間に空間をつくる。
「これがオレの必殺技だ!」
削り取る不可避の一撃(ブランク・ジャンク)!!
レオリオは両手のオーラを柱にぶつける。アランカル兵の足元からオーラ弾が出現し、アランカル兵を吹き飛ばす。
「瞬間移動の不可避の一撃♠ これは使えるね♣」
ヒソカは不敵に笑った。
「ぜぇぜぇ……」
あと3発。
練ッ!!
インターバルなしの練は辛れぇな。マジでゴンやキルアはバケモンだな。これを余裕でやるんだから。
――努力だよ。レオリオ。
才能だよ。ゴン。
レオリオの身体からオーラが立ちのぼる。
「意外に器用だね。だけど、放出系の使い方までは教わっていないようだ」
「基本は教えてもらったぜ」
「あと3発で打ち止めだろう?」
!?
「それじゃ、全員は倒せない♣」
レオリオは2発目を放つ。
アランカル兵をぶっ飛ばす。まだ半分も倒せていない。
練ッ!!
だいぶオーラを消費してしまったようで、練に時間がかかりはじめた。オーラ量が少ないほど練に時間がかかる。
あと2発。
アランカル兵たちはヒソカとレオリオを囲もうとまわりこんでくる。
ヒソカはレオリオと肩を組む。
レオリオは固まる。
「キミはまだ放出系の本質を知らない♠」
「放出系の本質? なんだ、それ?」
「くっくっく……まわりをよくみるんだよ」
「まわり? って、敵しかいねえよ。オレひとりじゃ倒せねえよ」
「倒せないのはキミがまだ自分の技を完全に修得していないから。このピンチはくぐり抜けられる◆ まわりをよくみるんだ」
ヒソカはレオリオから離れて、ストレッチをはじめる。
「どうしたんだ?」
「あとはよろしく♣」
「へ?」
「それじゃ♠」
そういって、ヒソカは入ってきた窓から出て行ってしまった。
「おいおいおい。ウソだろ。冗談だろ。ヒソカさん? マジかよ」
アランカル兵たちの士気が戻っていく。今の今まで葬式のようだったのに。警戒が解かれていく。突っ込んでくるつもりだ。これって絶対絶命ってヤツじゃないのか? いま突っ込んで来られたら終わりだ。牽制しないと。早くオーラを練らないと。
これが今のオレの評価だ。いつもそうだった。ハンター試験でも。ヨークシンでも。ゴンやキルア、クラピカはオレの遥か前を走ってる。到底追いつけないところを。
やっべえぞ。
練が追いつかない。この状況で撃てるのはあと1発だ。
考えろ。ヒソカは言っていた。この状況は突破できるって。こいつらは倒せるって。
アランカル兵のリーダーと思われる兵が手を上げた。手を下げた。
「確保ッ!」
レオリオはしゃがみ込み、床を叩いた。先頭で突っ込んできた兵を吹き飛ばした。
「ヤツは弾切れだ。行けッ!」
クソォッ。
レオリオは倒されて、床に押さえつけられた。
ここまでなのか?
――オレは単純だから、医者になったるって思ったぜ。
――こっ恥ずかしいけど、オレが手に入れたいのは笑顔だ。
――大丈夫だ。レオリオ、おまえはいつでも恥ずかしいのだよ。
――うるせぇ。
――無償で外科手術を行った伝説のハンターのようにさ。
どんな病気も治せる
――ハンターになったるんじゃああああああああああッ!!
ここで終われるかよ。オレはまだ何もしちゃいねぇ。オレはまだ何も手に入れちゃいねぇ。オレはハンターだ。ハンターなんだ。
アランカル兵にレオリオは頭を蹴られた。腹を蹴られた。思い切り腕をねじり上げられた。
意識が……切り取られる……。
真っ暗な中に、ぼぉっとした光がみえる。目も開けてられねえのに……。
「殺せッ!!」
レオリオはコブシを床に叩きつける。レオリオの背中からオーラが飛び出し、レオリオを押さえつけていたアランカル兵を吹っ飛ばす。スーツがボロボロになっている。よろよろと立ち上がる。
あと0発。
オーラは空っぽだ。
「何を笑っている?」
アランカル兵のリーダー(らしき人)が問いかけてくる。
「オレ、そんなカオしてっか?」
「おまえにオーラが残っていないことはわかっている」
「あぁ。そうだな。オレにゃ、もうオーラは残ってねぇ。スッカラカンだ」
エリート傭兵があと10人。オレのオーラはゼロ。
レオリオに銃が向けられる。ヒソカがつけてくれたバンジーガムのガードはあるが、それじゃ防ぎ切れそうにない。絶望的な状況ってヤツだな。
アランカル兵のリーダーが手を上げた。
あの手が降ろされたら、終わりかな。
レオリオは腕を横に伸ばした。
「名もなきハンターよ。ここで眠れ……」
「今なんだ。なるのは。本当の……」
「撃て!」
リーダーが手を下げた。
――ハンターになったるんじゃああああああああああッ!!
「行くぜ! ブランク・ジャンク!!」
The LAST MISSION - ダークナイト - レオリオ×獅子王戦 - へつづく
次回はヒソカ×傍生戦の後篇です。