Hyskoa's garden   作:マネ

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あと一週間早くこの話を投稿できたらよかったかなと思います。


No.050 そして、この世界の正体が告げられた

 キルアはキッドの右手で頭を床に押さえつけられていた。

 

 身動きができないわけじゃない。

 

 おそらく、動いたら、一瞬で殺される。

 

 精神的な拘束。

 

「練を必要とせず、ノータイムでの連続攻撃を可能にする……疑似仙人モード……さすがに厄介……まともなやり方じゃ対処し切れない」

 

 

「だから」

 

 

「僕は」

 

 

「左腕を捨てた」

 

 

 キッドの左腕が切断されていた。

 

 

 なんてヤツだ。

 

 キッドのヤツ、ここで、このタイミングで絶を使いやがった!

 

 ヨーヨーに腕が絡まって、絶にすれば、必然、50キロのヨーヨーとオレのパワーでその腕は切断される。回路は開放されて、雷炎流(電撃)は無効化される。

 

 自分の左腕を捨てて、オレの鬼気麒麟を手抜き(絶)でやり過ごした。手抜きすれば次の攻撃の一手を一手分早く打つことができる。だから、オレはキッドの攻撃を対処できず、いま無様に床に這いつくばっている。

 

 でも、ふつう、やるか?

 

 必殺技に手抜き(ノーガード)なんて。

 

 思いついたとしても。

 

 ゴン並みにイカれてやがるぜ。

 

 ヒソカ並みの知能。そして、ゴン並みの発想。

 

 ハハ……。

 

 ゴンのような戦闘センスはキルアにはないものだった。

 

 完敗だった。

 

「肢曲(闇の技)と電撃(聖なる技)をあやつるとは……アンバランスな少年だ」

 

 だけど……。

 

「キミの力はこんなものじゃないはず。僕はいま、キミの全力がみてみたいんだ。キミはハンターになれる。真のハンターに。僕のように」

 

 だけど……。

 

 あきらめるわけにはいかない。

 

 ゴンをあきらめるわけにはいかない。

 

 キルアからわずかにオーラが立ちのぼる。

 

「動いたら、殺す。べつに、ゴン(彼)を生かして、キミでも構わないのだから」

 

 

 

 ――ジットシテイロ。

 

 

 

 るっせーよ

 

 

 

 ――動クナ。

 

 

 

「キルア!」

 

 ゴンが叫ぶ。

 

「いま、助けるから!」

 

「ハァ!? なに言ってやがる?」と餓鬼。

 

 餓鬼の手のひらから、青い炎が発現した。

 

 

 

 ゴン……おまえはここでオレが逃げても友達でいてくれるか?

 

 

 

 あぁ。

 

 

 

 ゴンの答えは初めからわかっている。

 

 

 

 

「最初はグーッ!」

 

 ゴンの右手にオーラが集まる。

 

 ゴン、その程度の練じゃ、アイツには通じない。

 

「ダンシングドール!」

 

「ジャンケンッ!」

 

 ゴンのジャジャン拳は餓鬼に破られている。その技は通じない。ジャジャン拳は必殺技。弱点だらけの必殺技。

 

 リスクはバネ。弱点があればあるほど攻撃力は上がる。

 

 でも、弱点は弱点だ。攻撃力が上がっても、当たらなければ意味がない。

 

 ゴンはダンシングドールを交わす。

 

 餓鬼の攻撃パターンをゴンは見切っている。

 

 交わしながら、ゴンは餓鬼に突っ込んでいく。

 

「グーッ!!!!」

 

 ゴンの『左』ストレートが餓鬼のあごにヒットした。

 

 餓鬼のあごが吹っ飛んだ。

 

 餓鬼は顔の下半分を失った。

 

 餓鬼がゴンを蹴り飛ばす。

 

 ぶっ飛ばされたゴンは倒れたまま、床をみながら、ニィっと笑った。

 

「ゴン……おまえ……」

 

 これがゴンだ。

 

 オレはこの技を知っている。これはオレの技だから。

 

 あの瞬間、一瞬にして、ゴンの右手のオーラがぜんぶ左手に移った。

 

「不敵……」

 

 キッドの両目が見開かれた。笑みを浮かべている。

 

「具現化系能力……こうも容易く念の真理に到達するとは……おもしろいこどもだ」

 

「ずっと考えてたんだ。アントキバの月例大会の決勝(じゃんけん)でキルアに負けてから……」

 

 

 ジャジャン拳、必殺のスイッチ!

 

 

 オレがアントキバでゴンを下した必殺技スイッチだ。

 

 ゴンは戦いの中で成長する。

 

 キッドの身体から霧状の何かが拡散していく。その霧が餓鬼のあごに集まる。なくなったものは元に戻らないが回復はしているようだった。

 

 キッドの拘束が緩む。

 

 キルアはその一瞬の隙をついて、キッドから抜けだした。キルアはゴンの右側に立つ。

 

「さすがに、逃げの技能はずば抜けているね。暗殺者の鏡だ」

 

「ふん」

 

「なんで? なんで、こんなことするんだよ?」

 

 ゴンがキッドを見据えて、問いただす。

 

「何が目的なの?」

 

「僕はハンターだった。籠の中の小鳥じゃない」

 

「籠の中ってなに?」

 

「この世界のハンター(キミたち)はまだ本物のハンターじゃない。ここはガーデン。小さな庭……」

 

 ガーデン……?

 

「村や街の中にモンスターは出現しない。冒険はいつも村や街の外にあるものだろう?」

 

「どういうこと?」とゴン。

 

 キルアはその意味を知っていた。

 

 ロールプレイングゲーム(RPG)。

 

「スライム……メイジキメラ……キラーパンサー……オークキング……一角うさぎ……踊る宝石……ドラキー……ゴーレム……彷徨う鎧……ベビーサタン……炎の戦士……キラーマシン……パペットマン……ボストロール……ギガンテス……腐った死体……動く石像……爆弾岩……」

 

 そんな……まさか……。

 

「空想の産物ではない。あの世界は実在する。この世界の外に」

 

 この世界の外……!? 人が住む街の外……!?

 

「人類最大のアンタッチャブル。僕はあの世界を手に入れたい。ハンターだから!」

 

 ぼんやりとだが、キルアはキッドの言わんとしていることを理解している自分に気づきつつあった。

 

 こいつらは冒険がしたいんだ。

 

 ハンターだから。

 

「僕の技名は、かつてこの世界の外に存在したとされる古代魔法からもらっている」

 

 キッドの右手に風が渦巻いた。

 

「キミたちに、この技までみせようとは思わなかったよ。ハンター協会戦士系最強クラスのビスケット=クルーガー戦で使おうと思っていた技だ」

 

 顔の上半分しかなく、しゃべれなくなった餓鬼も練をはじめる。

 

「とこしえの闇に、吹き荒べ……バギクロス!」




もしも、ハンター×ハンターの世界がドラゴンクエストの世界だったら

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