Hyskoa's garden   作:マネ

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 天空闘技場バトルオリンピアの章は『HUNTER×HUNTER -The LAST MISSION-』をベースに書かれています。映画は34巻収録分が書かれる以前につくられたものなので、そのままだと原作と矛盾するように感じられる点が出てくると思います。そこを独自解釈で原作につなげます。
 21人目のフロアマスター(the Last name)とは……?


The LAST MISSION - ダークサイドハンター -
No.027 ネテロ×コード・ジェド


 数十年前――

 

 

 ◆

 

 

 見渡すかぎりのむき出しの岩肌。絶壁の岩山。そんな荒野にあるルクス遺跡。遺跡は地下深くへとつづいている。永遠につづくように、ずっと……。

 

 ハンター協会からコード・ジェドとよばれる組織、シスイと12人のシスイの騎士。そして、ネテロと十二支ん。二つのハンター勢力がぶつかり合っていた。その中心で、リーダーのシスイとネテロが対峙する。

 

 ハンター協会の光と闇。

 

「なぜフレンダを殺した? ネテロ、答えろ」

「すまん。あれしか厄災を止める方法がなかった」

「言い訳か」

 

「おまえこそ、なぜカキンの国王を殺めた? いや、おおよその検討はついておる。暗黒(ダーク)レコードだな? あれは闇に葬らなければならないものだ。アレにはふれてはならん」

 

「それは貴様が決めることではない」

 

「カキン国王暗殺で、V5にカキンが参加することが数十年遅れるだろう。ハンター協会とカキンの間に溝も生まれた。これを埋めるのは容易なことではない」

 

「それでこのオレに死ねと? カキン……どうでもいいことだ。フレンダを殺したのも、その原因も、すべての元凶は貴様だ。まだ人の心が残っているなら、死で償え」

「おまえは念に調律をもたらす運命のハンターだったはずなのに……」

 

「ふん」

「来い。我が愛弟子よ」

 

 シスイは周で足元を強化し、それを踏み台にしてネテロに飛び込む。ネテロも同じく、シスイに飛び込む。シスイとネテロの腕がぶつかり合う。衝撃波でまわりの岩が吹き飛んだ。

 

 全盛期のアイザック=ネテロ。

 

 ぶつかった瞬間、シスイは周の応用技『阻』を使って、ネテロの纏を乱す。ネテロも『拒』を使って、それを相殺する。阻は闇の技。表で活躍するハンターは使わない。というよりも、戦闘で使いこなせる使い手が少ない。そもそも纏を乱すには発を使えばいいのだから、阻を覚える必要はない。発の追加効果で使うからこそ効果がある技だった。

 

 応用技の応用技。シスイとネテロの戦いはその領域で戦っていた。

 

 ネテロの超速組み手の攻撃がシスイを襲うが、それをシスイは撃ち払う。

 

 操作系能力で、自分の身体をオート操作にしてシスイはネテロにカウンターを合わせていた。キルアの疾風迅雷と同じ発想だった。念能力に伝搬速度はない。その分、疾風迅雷より初速が早い。シャルナークのオートモードと同等の初速を誇る。キルアやシャルナークとちがって、自分の肉体の限界を越えるような負荷はかけていない。シスイは念能力にかなりの負荷をかけているために、身体にも過剰な負荷をかけるのはバランスが悪い。諸刃の刃になってしまう。

 

 シスイの蹴りがネテロの頭にヒットして、ネテロをぶっ飛ばす。

 

 ネテロは数十メートル先の岩に叩きつけられる。追い打ちをかけるように、シスイはネテロに念弾を放つ。ネテロは凝で念弾を払う。その念弾が一直線にシスイに向かっていく。シスイは凝でガードする。

 

 追跡タイプの念弾返し。おそらく念の波長が近しいものを追跡するのだろう。プログラムを施した念能力。ネテロ、こんな技も持っているのか。教えてくれなかったじゃないか。

 

 二人は中距離攻撃の間合いにいた。

 

 シスイは空気を操作する。空気は圧縮することで、超高温にすることができる。

 

 シスイは炎の刃を放った。ネテロは岩を垂直に駆け上がり回避する。シスイは一手目のようにジャンプして、ネテロを急襲する。シスイとネテロは組み手を行いながら、絶壁を上がっていく。

 

 シスイは自分の身体をオートで操作するための壁面バトルの操作系プログラムを組みつつ、ネテロの超速攻撃を凌ぐ。その間、シスイはネテロの後手にまわる形となる。もちろん、一流の使い手でも、バトルしながらの念能力プログラムの構築など不可能だ。シスイだからこそといえる。それをシスイはネテロ相手にやってのけている。

 

 どうやら、ネテロにこうなるように誘導されているな。さすがに戦闘(バトル)巧者。年齢の功か。あしらい方を知っている。単純な戦術ではラチが開かないか。

 

 シスイはネテロにカウンターを合わせる。ネテロの蹴りが弾かれる。プログラムは完成していないが半分程度はできあがっていた。

 

 プログラムを起動しながら、同時に、プログラムを構築する。

 

 ネテロが岩を蹴りで斬り裂き、念を込めて、それを上からシスイに撃ち放つ。岩は念オーラの尾を引いていた。シスイはガードするがパワーに圧されて、下に突き落とされる。

 

 シスイの左腕から巨大な腕が具現化し、伸びる。その腕が岩を削り、シスイの落下を止める。具現化した腕の力でシスイは絶壁を跳ね上がる。

 

 ネテロが胸の前で両の手のひらを開いて、構えている。凝? いや、硬に近い。ネテロはシスイに巨大な念弾を放つ。

 

「霊光波!」

「だらッ!!」

 

 ネテロの霊光波をシスイは具現化していた巨大な左腕で受け止める。シスイは絶壁に足を突き刺して踏みとどまった。

 

 上からみてんじゃねぇよ。

 

「硬!」

 

 シスイは硬を絶壁に打ち込む。岩が崩れる。ネテロが落ちてくる。ネテロは空中で身動きが取れない。

 

 捕えた!

 

「堕天天衝!」

 

 天にのぼる稲妻のような一撃がネテロを襲う。変化系と放出系の融合技。ネテロは物理法則を無視するかのように、一瞬でシスイの隣りに移動する。

 

 !?

 

 ネテロの振り下ろした一撃。シスイは地面に吹っ飛ばされた。

 

 念を込めた岩でシスイは追撃される。シスイは態勢を立て直し、それを避けながら後退する。間合いは中距離から長距離へと変わる。

 

「複数系統を100%引き出す……怨か」

「百式観音か」

 

 ネテロは百式観音に自分を掴ませて、百式観音の腕のスピードで無理やり移動して、シスイの変化系と放出系の融合技を交わした。

 

 並みの身体では百式観音の加速スピードに身体が押し潰されるはずだ。そもそも百式観音は人間の肉体の強さを、生身の肉体の限界を超越するために生み出された念能力だとシスイは理解している。念獣には限界はないが人間の肉体には限界がある。人間の身体の強さの限界を突破するためには念獣の具現化は必須条件だった。

 

 武道を極めんとする強化系のネテロが具現化系の百式観音にたどり着いたのは皮肉なことだが当然の結果だった。

 

「人間の身体は……もろいな」

 

 そう言いながら、ネテロは地上に降り立った。

 

「黄の目。クセル族の目。クルタ族と同種の目」

 

 シスイの目は感情が高ぶると黄色に変わる。シスイは修業により、片目だけ変えることもできるようになった。今、左目だけが黄色になっていることだろう。

 

「シスイ、さすがに戦闘センスは桁違いじゃな」

 

 念能力は苦手な系統は修得しにくく、能力も100%引き出せない。修得しにくいということは膨大な修業でカバーできるということでもある。100%引き出せないのは才能でカバーできるということでもある。

 

 ネテロは膨大な修行により、それを可能にした。

 

 シスイは怨により、それを可能にした。

 

 ネテロが纏うオーラが揺らいだ。シスイは警戒する。

 

 間合いは100メートルほど。ずいぶんと距離はある。並みの使い手同士なら、そう思う。相手はネテロだ。

 

「百式観音、壱乃掌!」

 

 百式観音の攻撃がシスイの頭上に撃ち落とされた。

 

 

 ◆

 

 

 シスイの騎士と十二支ん。形勢はシスイの騎士が不利だった。


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