ネテロは突然祈りを捧げる。ヒソカの前に何かが出現する。ヒソカは衝撃で観客席との境にある壁まで吹っ飛んだ。メシアムとの戦いでみせた百式観音の不可避の一撃だった。
『ヒソカ選手、いきなり吹っ飛ばされたァアアーーーーッ!』
ヒソカは腕を十字に交差させてガードしていた。右腕と左腕による二重の堅のガード。さらに百式観音が出現する直前後ろに飛んで勢いを殺した。ゴンのジャジャン拳で放たれたボールをレイザ―がしなやかなレシーブで勢いを殺した技の応用だった。
休む暇もなく、ヒソカを百式観音の壱乃掌が襲った。ヒソカの頭上からの攻撃。百式観音の射程距離は100メートル以上とも言われている。容易に天空闘技場すべてをまかない切る範囲だ。ヒソカはまだ態勢を崩している。そこに壱乃掌が落とされた。爆撃のような音。砂煙が立ちのぼる。
「さすが、と言わざるを得ないな」とメシアム。
なんとヒソカはあの態勢から百式観音の壱乃掌を回避していた。
不可避の一撃のあと、ヒソカは自分自身とバンジーガムを観客席と試合場の間の壁をバンジーガムでくっつけて、百式観音の壱乃掌が放たれたとき、バンジーガムを縮めて、強引に回避したようだった。
「ヒソカのヤツ、ノーモーションで百式観音を交わしやがった。こりゃ厄介だぜ」とエデン。
百式観音の攻撃していないコブシにトランプが突き刺さる。初手でヒソカが吹っ飛ばされたときに、バンジーガムをつけていたようだ。ネテロの腕から血が噴き出した。
「くっくっく……百式観音には弱点がある」
まさか……!?
「弱点その1。防御力が弱い。これだけ巨大な具現化人形だ。全体にオーラを行き渡らせるのは容易なことじゃない。若い頃ならよかったかもしれないが、オーラ量が半減した今、なんの調整もしていないのはずいぶんとお粗末な話だね」
「ガキが。説教かよ」
「助言だよ◆」
これがヒソカ。圧倒的な戦闘考察力と思考の瞬発力。
一部の隙もなく、無敵に思えていた百式観音の弱点がヒソカによってつまびらかにされていく。
リスクはバネ。ヒソカは百式観音の防御力の低さを弱点と言っていたが念において弱点は逆転への足がかりにもなりうる。これは心理戦だ。少なからず、ネテロ師範に精神的なダメージは与えられたはず。
ワァッと歓声が上がった。
『一進一退の攻防ッ!! ネテロ師範の百式観音にヒソカ選手一歩も引きませんッ!!』
「予備動作なしで動かれるのはさすがに面倒かの。百式観音九十九乃掌!」
ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!
ヒソカの頭上から百式観音のコブシが襲う。だが壁に貼りつけられたバンジーガムの伸縮を利用して、ヒソカは九十九乃掌のラッシュをノーモーションで踊るように華麗に交わしていく。
百式観音はヒソカではなく、バンジーガムを攻撃した。
バンジーガムを断ち切る方法はいくつかあるがパワーじゃ断ち切れない。百式観音にとってバンジーガムは相性が悪い。バンジーガムを攻撃したことで、百式観音のいくつものコブシがバンジーガムが絡んでいく。
ヒソカは再びトランプで百式観音を攻撃する。バンジーガムがついているので、回避するためには一度百式観音を消すしかない。
百式観音にトランプが突き刺さり、ネテロの両腕が再び流血する。
さらに流血のネテロの腕にもトランプが突き刺さった。百式観音がバンジーガムを攻撃していたときに付着させたのだろう。
ヒソカはオーラ一点集中型。一点だけを攻撃する。だから弱いオーラでも堅を突き破る。
ここでヒソカではなく、バンジーガムを攻撃するなんて悪手も良いところだ。囲碁で例えるなら、当たりを手抜きするようなもの。僕でも指摘できる単純なミス。ヒソカに百式観音の弱点を指摘されたことが効いているのか?
さらに百式観音を出しているために、ネテロ自身のオーラ量が極端に減っているようだ。普段のネテロなら防御可能なはず。これも百式観音の弱点の一つ。
誰にも攻略されなかった百式観音がこうもあっさり解体されていくとは……やはり天才的な戦闘センスだ。センスだけでネテロを圧倒している。たったあれだけのオーラでここまでやれるものなのか……。
「百式観音の弱点その2。出現には時間がかからないが消すのには時間がかかる♣ 弱点その3。背後への対応ができない。くっくっく……百式観音は欠陥能力だね♠」
ヒソカはネテロの精神に揺さぶりをかけている。