Hyskoa's garden   作:マネ

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 さすがの手際でクロロの除念を終えたヒソカに天空闘技場事務局から「フロアマスター挑戦の対戦相手が決定しました。次は必ず来るように」と電話がかかってくる。ヒソカが告げられた対戦相手は意外なことにネテロ会長だった。ヒソカはウキウキでそのことを二人に話そうとするがクロロはすでにそこにいなかった。

 クロロが去った方向をイルミがおかしそうに指差していた。

 ヒソカはクロロとの鬼ごっこをはじめるが捕まえられないまま、ネテロとの対決の日を迎える。気持ちを切り替えて、ヒソカは天空闘技場にやってくるのだった。


ヒソカ×ネテロ戦
No.001 奇術×武道


『こんにちはぁ~。レポーターのビホーです。本日は天空闘技場から大注目のカード、ヒソカ対ネテロ戦をお送りいたします。ごらんください。この大観衆。まだ決戦の1時間前だというのに、会場はすでに超満員、早くも異様な熱気に包まれております。現在フロアマスターは一名欠員が出ていますからちょうど20名。ヒソカ選手がこの試合に勝利すると自動的にフロアマスターへと昇格となります』

 

『両者の出会いはヒソカ選手の初めてのハンター試験。ヒソカ選手はそのときからこうなる運命だったと感じていたそうです。ネテロ師範も当時からヒソカ選手を意識していたそうで、審査員としてヒソカ選手を高く評価していたそうです。まさにこうなることは必然だったといえるでしょう」

 

 結婚式かっ!

 

『ヒソカ選手の200階クラスでの戦歴は10勝3敗でフロアマスターへの挑戦権を得ました。3敗を喫しておりますがご存じの通り、負けはすべて欠場による不戦敗。戦えば必ず勝利。休みがちな死神ヒソカ。対してネテロ師範は言わずと知れた心源流師範にして、ハンター協会会長。最強のハンター。天空闘技場バトルオリンピア初代優勝者にして、殿堂入りフロアマスター。22人目のフロアマスター。肩書を言い出せば切りがない。天空闘技場の歴史そのもの。まさにミスター天空闘技場! 生きる伝説です。前回のバトルオリンピアでエクストラバトルとして優勝者メシアムと戦っております。ネテロ師範の実力はメシアム選手も認めるところで、その戦闘能力は未だ衰えておりません』

 

『昨日のインタビューでネテロ選手は準備万端。全霊を込めて挑むと意気込んでおりました。王者にして挑戦者。まさに武を極めし武道家。まもなく大決戦がはじまります』

 

 そんなレポートをききながら、オルガはVIP席に座った。オルガは最年少フロアマスター。カストロが死んだので、ヒソカが200階クラスで殺らなかった唯一の闘士となった。カストロと同じように、ヒソカを狙う使い手である。

 

「へぇ、ヒソカってプロハンターなんだ。どっちも負ければいいのに」

「どっちかが負ければどっちかが勝つから」

 

 アンがオルガに近づきながら言った。アンはハンターが嫌いだった。

 

 彼女は200階クラスに上がったばかりの天空闘技場の闘士。若干12歳。僕の弟子入りを希望しているが僕に弟子を取るつもりはない。弟子を取れるほどの実績も経験値もない。天空闘技場に今ウイングという心源流の師範代がいるから、心源流に入れてもらえばいいと言ったが心源流は嫌いらしい。

 

 心源流を嫌っている人は意外に多い。心源流以外の流派はフロアマスターにならないと師範代になれない。これは念を教えることが禁じられているからだ。念を教えるためにはフロアマスターになるか、ハンター協会の承認が必要になる。そして、ハンター協会の承認の条件は事実上、心源流の師範代となること以外にない。これは心源流を特別視したものだった。明言はしていないが、ネテロ師範は心源流以外の流派を認めていないのだ。

 

 ネテロ師範は強すぎる。戦闘能力だけでなく権力も絶大だ。ハンター協会は彼一人で支えているといってもいいくらいだそうだ。彼がいなくなったら、ハンター協会は解体されて、べつの団体に吸収されるんじゃないかというウワサもある。

 

 ハンターでもない僕にはどうでもいい話だが。

 

『それでは解説のウイングさん、この戦いをどうみていますか?』

 

 ウ、ウイング!?

 

『なぜ師範がこの戦いを受けたのか、私なりにずっと考えていました。ハンター協会の弱体化が著しい昨今、やはり考えられるのは師範の強さを再認識してもらうことによって……つまり政治的な……』

 

『おっと、ここでネテロ師範が入場ですか? え? まだですか? そぉ~ですか。で、ウイングさんはこの戦い、どんな展開を予想されていますか?』

 

『…………。ヒソカ選手の力が未知数ですから、正直展開は読めません。師範の百式観音の超速攻撃をいかに回避するか、そこがまずはポイントになるんじゃないでしょうか。これまでのヒソカ選手の戦いは観てますが、オーラの強さ、量ともにプロハンターの中堅レベルよりやや上程度ですね。もしかしたら下かもしれません。身体能力はトップクラスですが、師範に通じるレベルに達していません。ヒソカ選手と百式観音との打ち合いは想像できません。ヒソカ選手がなぜこの戦いを望んだのか、理解に苦しみます。瞬殺される可能性すらあるでしょう。百式観音は不落なる念能力ですから』

 

『つまり、ネテロ師範はヒソカ選手を踏み台にしようとしているということですか?』

『そこですね。師範は人格者であり、そういう人ではありません。この戦いをセッティングした意図が私にはわかりません』

 

 倍率はネテロの1.2倍。ヒソカの5倍。圧倒的ネテロ人気の中で、僕はヒソカに5億ジェニーを賭けていた。

 

「十中八九、勝利するのは彼だろうな」

「メシアム!」

 

 バトルオリンピアチャンプのメシアムがオルガの隣りに立っていた。まったく気づかなかった。メシアムはモニターのヒソカの倍率をみつめていた。

 

「ネテロ師範との戦いで、何の準備もしてこないとは彼らしい」

 

 メシアムは笑みを浮かべる。

 

「何にも準備してないって、それじゃあヒソカが負けるんじゃないの?」とアン。

「準備しないというのは彼の自信の表れだよ。彼は自分を最強だと思っている」

 

 ヒソカはどんなふうに百式観音に挑むのか? これは事実上の最強ハンター決定戦!

 

「来たぞ」

 

 メシアムが挑戦者入場口に視線を送る。

 

『まずはヒソカ選手の入場だ。いつもながら奇抜なファッション。胸にはトランプのマークが入っております』

 

 ヒソカァァァーーーッと叫ぶ観客たち。大人気だ。

 

『つづいて……最強という言葉は彼のために存在します。ネテロ師範の入場だあァァァァァーーーーッ!』

 

 ヒソカ以上の歓声。悲鳴にも近い。

 

『ネテロ師範が本気で戦うときにだけ身につけるという心Tシャツ姿です!! これは激闘必至です!』

 

 待ちわびた観客たちの熱気は最高潮を迎えていた。僕のテンションも上がっている。

 

「ギリで間に合ったね」

 

 ここでフロアマスターのエデンがやってきた。

 

「ヒソカと闘るなんて師範やる気じゃん。凄ぇ、おもしろいことになりそーーっ、ね、アンちゃん」

 

 アンはエデンを無視する。

 

「ふふん♪」

 

 エデンはプロハンターでフロアマスターだ。プロハンターの大半は心源流で念を修得する。エデンもその一人だ。心源流に所属はしていないが。イズナビとかいう心源流師範代の人から念を教えてもらったらしい。念を教えることは禁じられているから、必然的に心源流の師範代になってしまう。

 

『ヒソカァァァーーーーーアアアッッ、モロォォーーゥゥーーーーーウ!!!』

 

『バァァーーーサスッッ!!』

 

『アイザァァァーーーーーーークッッ、ネテロォォーーーゥゥーーーオオ!!』

 

 歓声が上がる。盛り上がりつづける会場。ネテロは伸びをしている。ヒソカはうれしそうに笑っている。

 

『いよいよです。最強の奇術と最強の武道がぶつかり合います』

 

 

 ◆

 

 

「あなたと出会ってから、ずっとこのときを待ちわびていたよ。バトルオリンピアの試合をみたよ。ずいぶん手を抜いていたね? 今日は最初から最後まで手は抜かせないよ。素敵な時間にしよう」

 

「どちらかが負けを認めるか、KOされるまでやろうかの?」

「OK♠ もう我慢できないよ。はやく闘ろう◆」

「あぁ」

 

「あらゆる武器の使用は認められる。互いに誇りと名誉をかけて……ッッ……ファイッー」

 

 そして、はじまった。

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