Fate/Zepia   作:黒山羊

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+1days AM1:23 『八十面相』

 久宇舞弥捕獲作戦から数分後。「我は帰るぞ。明日はテレビとやらで朝から愉快そうなモノがあるそうなのでな」などと言って、ギルガメッシュがフォルクスウォーゲンに乗って帰ってしまい、現在は綺礼とアサシン軍団、それにズェピアが建築中のビルで作戦会議をしていた。

 

 

「散々ふざけつつもしっかりとやることはやっている辺り我々は似た者同士らしいね?」

 

 そんな事を言うズェピアの肩には久宇舞弥がぐったりと気絶した状態で担がれている。

 

 今回の移動に対するズェピアの目的は、久宇舞弥の回収と衛宮切嗣が備蓄する兵器の規模の把握、出来ればケイネス・エルメロイ・アーチボルトの礼装の確認。言峰綺礼とアサシン達の目的は敵陣視察。

 

 ギルガメッシュが本当にただただ遊興に出ただけなのはともかく、それに乗った連中は一応の成果を得ていた。

 

「さてと。綺礼君、暫くの間ポニー君を借りても構わないかね?」

「……何故だ?」

「久宇舞弥が逃げないか監視するために。女性であるポニー君ならばトイレだろうと風呂だろうと同伴可能だからね」

「…………良いだろう。ポニーテール、私から任務終了の指示があるまでバーサーカーの補佐を務めよ」

「御意のままに」

「ありがとう、綺礼君。……近場で潜伏出来る場所はあるかね?」

「新都側にあるエーデルフェルトの双子館を使えばいいだろう。手配しておく」

「恩に着るよ」

 

 そう言ってから人一人担いだまま器用に一礼するとズェピアはポニーを引き連れて素早く跳躍し、夜の街に消えた。

 

 

 その姿を見送った綺礼はクルリと身体の向きを変え、アサシン軍団へと向き直る。

「さて、報告が有る者は居るか?」

 

 綺礼のその問いに最も早く腕を伸ばしたのは髪をツンツンと逆立てた男のアサシン。綺礼が軽く頷いて報告を促すと、元気よく回答する。

 

「報告するッス!! ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは事前に爆発を察知したのか爆発前に脱出していたッス!! 次の拠点はどうやら廃墟みたいッスね!!」

「ご苦労。引き続き監視を続けろ。……次」

 次に手を上げたのはガリガリに痩せた長身のアサシン。綺礼が促してから話し始めるのは先程のアサシンと変わらない。

 

「魔術師、捕捉、場所、把握、工房、未遠川、中流、用水路。幼児、虐殺、生贄」

「成る程……速やかに対処すべき問題だな。父に相談する必要がある。良くやったぞアサシン。……次は誰だ」

 

「サー!! 私であります、サー!! ライダー陣営の拠点は未だ見つかりませんが、ライダーに似た外国人の目撃情報がある地域は比較的狭い範囲に集中しており、工房発見も時間の問題であります!! サー!!」

 

「時臣殿が最近何やら腹を抑えてプルプルして居ましたが、原因不明です」

「璃正神父が『孫の顔がみたい』とか何とか言ってました」

 

「推定するに衛宮切嗣は効率を重視する性格です。其処から考えれば彼の礼装は銃火器の類やも知れませんな」

 

「ケイネスの礼装の一つは流体金属。詳細は未だ不明」

 

「間桐雁夜、未だ発見できていません」

 

「ポニーちんがさっきズェピっちに味見とかでケーキ食べさせて貰ってた的な?」

 

「「「何それずるい」」」

 

 

 様々な意見が渦巻く中、綺礼はそれらを時に纏め、時に質問し、時に無視しつつ、情報を整理していく。

 

 自己分裂宝具『妄想幻像』。ただの分身ではなく、一体一体が個別の人格を持つ異なるアサシンの群体。

 

 同一存在ではないために、記憶の共有などはないが、その代わりに様々な視点から物事を把握する事が可能なこのアサシンを綺礼は重宝している。

 

 

 80体のアサシンと綺礼が話を終えたのはそれから三十分後。

 

 聖杯戦争に置ける最大勢力遠坂間桐同盟。その大規模戦力に目が行きがちだが、それらが円滑に動けるよう雑事を黙々とこなすアサシンは所謂縁の下の力持ちとして必要不可欠。

 

 

 そんな彼らは月光の中、再び冬木中に散開していった。

 

 


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