幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ……いや割とマジで   作:とるびす

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パッチェさんにスペルカードをひたすらぶっぱして欲しかっただけ。


探究心は魔女を活かす*

 轟々と魔力の嵐が大図書館に吹き荒れる。

 周りの本棚は消し飛ぶか吹き飛び、目も当てられない大惨事。魔理沙の『ミルキーウェイ』を自動精霊結界(オートバリア)で防いだパチュリーは辺りを見回し、深い溜息を吐いた。

 

「…酷い有様ね。まだ読んだことのない本があったかもしれないのに…一体どうしてくれようかしら。火か…水か…土か…」

「私だけの責任じゃないだろこれは。四割はお前のせいだ」

「二割貴女の方が多いわね。貴女のせいよ」

「五十歩百歩だぜ」

 

 …いや、全部お前のせいだよ!…と本棚に埋もれながら小悪魔は心の中で叫んだ。しかしそれを実際に声に出すことはできない。

 大悪魔としての格を軽く凌駕する小悪魔にとっても、この二人から発せられ、ぶつかり合う凄まじい魔力の奔流の前にはツノを持たないヤギ同然である。介入はできないし許されない。

 

 パチュリーは水を掬い上げるように空気を掻く。すると魔理沙の『ミルキーウェイ』に掻き消されたはずの炎がふたたび再燃を開始する。精霊はまだ滅びてはいなかったのだ。

 

「私の図書館をこんな有様にしてくれたそのふざけた火力だけは認めてあげるわ。もっとも、私の前には無駄なことだけど」

 

 再燃し燃え盛る炎を放置し、パチュリーは新しい魔法陣を展開。次に繰り出したのは…土。

 

「土符『トリリトンシェイク』」

「ただの土塊か? 魔符『ミルキーウェイ』!」

 

 土流を放ったパチュリーに対し魔理沙は再び『ミルキーウェイ』を放つ。二つの属性魔力波は衝突、凄まじい音を立てながら互いに互いを削りあってゆく。

 結果、押し勝ったのはまたもや魔理沙であった。

『ミルキーウェイ』は『トリリトンシェイク』を砕きながらパチュリーへと迫る。しかしパチュリーは砕けた『トリリトンシェイク』の残骸を巻き上げ、傍に待機させていた『アグニシャイン』と混ぜ合わせ、相生させた。

 

「火土符『ラーヴァクロムレク』」

 

 そして降り注いだのは岩石の嵐。強固で物量に勝るそれは魔理沙の『ミルキーウェイ』をじわりじわりと打ち消し、やがて相殺した。吹き荒れる魔力の残骸に煽られ魔理沙は三角帽子を抑える。

 

「…っ。あの野郎…精霊魔法を増幅して撃ちやがった。一気に『ミルキーウェイ』まで火力を…」

「何を休んでいるのかしら?」

 

 パチュリーは岩の残骸を掻き集めると空中に浮遊させる。そして一箇所に固めると…

 

「金符『シルバードラゴン』」

 

 新たな魔法陣を展開しそこから鋼の鎖を射出した。それだけでもかなりの威力を秘めているのが分かるが、それは魔理沙へと向かうことなく『ラーヴァクロムレク』の残骸を貫いた。

 それと同時に『シルバードラゴン』と『ラーヴァクロムレク』は爆散し、あたりに金属を拡散しながら大規模な魔力嵐が発生する。

 

「金土符『ジンジャガスト』」

「ちょ、パチュリー様ぁ! け、結界が耐えきれませんって!!」

 

 残った本棚を死守すべく大規模な結界を展開させていた小悪魔だったが、徐々にそれは砕け散ってゆく。聖騎士団の一斉砲撃でも傷一つつかないほど堅牢な小悪魔の結界でもパチュリーという魔女の中でも最強格に当たる存在の前には障子も同然であった。

 一方の魔理沙も相生によって火力をどんどん増してゆくパチュリーの精霊魔法に危機感を覚えたのだろう。帽子の中からスペルカードを取り出した。

 

「魔空『アステロイドベルト』!!」

 

 スペル詠唱と同時に魔理沙を中心に魔力波が吹き荒れ、パチュリーの魔力嵐を抑え込む。正面からぶつかった二つの嵐は互いを削り合い、強力な磁場を放出させる。魔理沙は精霊魔法にとって根幹となる精霊を根絶やしにするつもりなのか。

 しかしそれを見過ごすパチュリーではない。無詠唱で灼熱魔法を魔法陣から噴出させ、吹き荒れる魔力嵐へとぶつけた。

 

「…火金符『セントエルモピラー』」

 

 そして立つのは火柱。相剋された金が炎へと姿を変え、あたりに熱波とそれに伴う放電が撒き散らされる。その強大な魔力渦は『アステロイドベルト』を容易く搔き消し大図書館を灼熱に染め上げた。魔理沙は苦虫を噛み潰したように呻き、小悪魔は悲鳴をあげながら結界をさらに固めた。

 魔理沙がいくら魔法の火力を上げていこうともパチュリーはそれを悠々と越してゆく。元々から魔理沙に及ばずとも非常に高い火力を有するパチュリーの西洋産精霊魔法は陰陽五行と組み合わさることによってさらなる無限の火力を実現しているのだ。

 

「馬鹿みたいに頭使いやがって…! どんだけ緻密に魔法を使ってんだよ。次から次にスペルをぶっ放してちゃ魔力が持たないだろうに!」

「ええそうね。木符『グリーンストーム』」

 

 心にも思っていないように答えると、パチュリーは再び新たな魔法陣を展開する。魔理沙は思いっきり嫌そうな表情を浮かべた。

 魔法陣から緑色の突風が放たれ『セントエルモピラー』を煽った。それに伴い『セントエルモピラー』は肥大化し…

 

「木火符『フォレストブレイズエクスプロージョン』」

 

 やがて豪快な破裂音とともに爆発した。

 とてつもない爆風・衝撃が駆け抜け、大図書館を守っていた小悪魔の結界を今度こそ粉々に破壊する。勿論、小悪魔は本棚と一緒に吹き飛ばされていった。

 

 爆熱は空気を食い尽くす。

 真空状態に似た環境を一時作り出し、魔理沙の詠唱を妨害する。防御魔法を唱えることができなかった魔理沙は急いで回避行動をとったが、瞬間的爆発スピードは彼女が思うよりもずっと早かった。

 

 

 

 

 

 爆煙が晴れると煤を被り、それなりの火傷を負いながら腕から血を流している魔理沙が姿を表す。パチュリーも魔理沙が死んだとは思っていなかったようで次なる精霊魔法の詠唱に入った。

 難読、難唱なスペルさえもスラスラと言ってのけるその技術力の高さは勿論だが、それよりもこれほどまでに最上級大規模魔法を使用しているにも関わらず息一つ切らさないパチュリーの魔力と体力は異常だった。

 

「…引き篭もってる割には体力があるんだな。体験したところ魔力も相当なもんだ。もしかしてお前…増やせたのか?」

 

 魔理沙の言う増やせた…とは、魔力の限界内包量のことを言っているのだろう。それだけパチュリーの魔力量は魔女の端くれである魔理沙から見ても規格外なのだ。

 

「…魔力の器は生まれながらにして変化しない。これは魔法使いの界隈では常識も同然のこと…まあそこらへんは貴女程度の魔法使いでも知ってることでしょ? 何人もの魔法使いが己の魔力の器を増やさんとドーピング、肉体改造、悪魔契約を試し…己の身を自らの手で滅ぼしていったわ……魔力の器を増やすことができた事例は今の所発見されていないし、かくいう私も実現させたことはなかった」

「…ケホ……そりゃ、そうだろうな。素質ってのは生まれた時に全てが決まるもんだ。残りは努力で補うしかない」

「そうよ。私も自分はそれなりには素質がある方だと昔は思ってたけど…所詮それも魔女の範疇。できることは限られてしまうし、生まれながらに喘息で体が弱くってね。とてもじゃないけど長文詠唱はできなかった」

 

 魔理沙は眉を顰めた。

 喘息?病弱?これまでのパチュリーの魔法の数々を見れば、とてもじゃないが信じられない。今のパチュリーとは無縁…もはや対極に位置するような言葉である。

 

 その時、魔理沙は思い出した。

 かつて師匠が教えてくれた幻の石のことを。

 

「……! 賢者の石か!?」

「…原始人並みの教養かと思ってたけど…それなりに学は積んでいたのね。

 まあ半分正解よ。水火符『フロギスティックレイン』」

 

 飛散した炎を渦巻かせ、それに多量の水を吹きかけることによって炎を剋し水は相乗した。水は炎に変わり渦巻き始めると、熱を伴った魔力弾を大量に放出する。

 魔理沙はハッと鼻で笑うと、弾幕を見事に躱しつつたっぷりと皮肉っぽくパチュリーに言い放った。

 

「なるほど、体に賢者の石を埋め込んだってわけか? それなら全てが説明できるな。妙に体力があるのも、湯水のように魔力を使いまくってるのも、妙に精霊魔法と親和性が高いのも、賢者の石のおかげってわけだ」

「んなわけないでしょ」

 

 自信満々の魔理沙の論を一蹴したパチュリー。

 魔理沙はムッと顔を顰めた。

 

「ならなんだっていうんだ?」

「私は体の中で賢者の石と同じサイクルの魔力循環をそのまま行っているだけ。結構緻密なコントロールを必要とするけど、私にしたら紅茶を淹れるよりも簡単なことよ。この世の物質は五元素で説明できるのだから、それら全てを行使することのできる私が賢者の石なしで効力を発揮………………言いすぎたわね。私の悪い癖だわ」

「なんだよ…いいところだったのに」

 

 自分の研究結果をつい自慢したくなってしまうのも魔法使いとしての性であろう。それにパチュリーの強さの秘密を知ったところでそれを実践できる存在などこの世にはほとんどいない。

 パチュリーはフルフルと頭を振ると空中に浮遊していた水の塊をさらに肥大化させてゆくが、見かねた魔理沙がこれを『マスタースパーク』で爆散させ五行の流れを断ち切った。これで――――。

 

「ふりだし…とでも?」

 

 パチュリーは魔法陣を一気に五つ展開。その全てからこれまでと同等の魔力量を感じた。それぞれから炎が渦巻き、水が畝り、木が繁り、金が生成し、土が噴出する。そしてそれらは互いに相作用し合い威力を高めてゆく。魔力が唸りを上げ、地ならしを起こしていた。

 

 それに対し、魔理沙はしっかりと八卦炉を掴むと自分の血を空中にぶちまけた。するとその血は空中に留まり、魔理沙はそれを指につけ何かを描いてゆく。そして描いたのは、八芒星(オクタグラム)

 パチュリーは細くそれを分析する。

 

(…血を媒介にして魔力を直に…魔術としては相当古い部類のやつね。あいつの血には相当の魔力が詰まっている…。なるほど、器が限られるのなら違う場所に魔力を置いておけばいいってわけ。例え思いついても誰も実践しないでしょうに。先天的なものなのか後天的なものなのかによって評価は変わるけど……先天的なものならばその才能、後天的なものならば知識を探求するその精神を買いたいところね)

 

 パチュリーは数段魔理沙の評価を引き上げた。

 しかしそれでも自分に及ぶとは思っていない。あちらがどれほどまでに火力を引き出そうともこちらは無限の火力。比べるまでもない。

 

 パチュリーと魔理沙がスペルを放ったのはほぼ同時のタイミングであった。

 

「火水木金土符『賢者の石』!」

「魔砲『ファイナルマスタースパーク』ッ!!」

 

 パチュリーの精霊砲と魔理沙の魔力砲は一直線上で衝突し、そして爆ぜた。

 互いの威信を懸けた魔法使いの思いは並大抵のものではない。譲らぬ思いは双方の魔力を削り、消滅させてゆく。本来の目的は本を貸すか貸さないかだったのだが今やそれはすり替わっている。どちらがより上手く魔法を使っているのか、どちらが魔法使いとして優れているのか…これに尽きた。

 魔法使いとは知識を探求する種族である。飽くなき探求心こそが魔法使いを魔法使いの呼ぶ所以なのだから。それ故に魔法の良し悪し、上下は魔法使いにとって己の価値同然なのだ。

 

 つまり二人は己の価値、存在を賭けて競っている。元々から負けず嫌いの二人だ、どちらとも絶対に譲らぬ気持ちなのである。

 

 再構築された自身最高の結界は既に半壊。小悪魔はそこらに転がっている魔導書を片っ端から開くと、中に貯蔵されていた魔力を自分に還元し結界へと注ぎ込んでいた。

 もしここに小悪魔がいなければ余波のみで紅魔館は跡形もなく消滅していただろう。霧の湖ですら消しかねないほどだ。

 

 ふと、唐突に衝撃が止んだ。

 二人がスペルに注ぎ込んでいた各々の魔力が同時に切れたのだ。これには流石のパチュリーも目を剥いた。しかし東洋の魔法使いはそうなることが予測できていたかのように次のスペルを即、発動した。

 

「おっと、星符『ドラゴンメテオ』ッ!!」

「っ! 日符『ロイヤルフレア』!!」

 

 自分最大の攻撃を防がれたパチュリーは僅かに動揺した。しかし間髪入れず次のスペルを発動する。

 パチュリーの上方に巨大な炎の塊が出現した。精霊を呼び出すには時間が足りない。よって、恐らく彼女の純粋な魔力のみで作られた魔力塊であろう。とんでもない熱波を発し全てを焼き尽くさんとしているそれはまさに太陽である。

 しかしそれを魔理沙に投合するよりも早く、流星が『ロイヤルフレア』に降り注いだ。太陽はそれすらも呑み込まんと流星を押し留める。しかし、最終的に呑み込んだのは()星だった。龍が太陽を食い尽くしたのだ。

 

 太陽が消滅し、流星がパチュリーまでもを喰らおうと迫る。しかしパチュリーの動作はなかった。『エメラルドメガロポリス』を張ったところで無駄だというのは彼女が一番理解できていたのだ。

 一瞬のスキは魔法使いにとって致命傷である。それをよく知っているパチュリーは自分の未熟さを呪いながら流星に呑み込まれる――――

 

「パチュリー様っ!!」

「っ!」

 

 ――――直前に結界を放棄した小悪魔が転移魔法で救い出した。『ドラゴンメテオ』はそのまま下へとぶつかり、大図書館の床を凄まじいパワーで破壊しながら地下へと消えていった。

 

 先ほどとは打って変わって、静寂に包まれる大図書館…だったところ。

 後に残ったのは散乱する本棚や魔導書、燃える木材、床に空いたどデカイ穴、魔力を使いすぎたせいで動けない小悪魔、なんとも微妙な表情を浮かべるパチュリー、そして勝ったということで物色を開始した魔理沙だけであった。

 

「私の勝ちだ。約束通り借りてくぜ」

「約束してない」

 

 ふと、パチュリーはレミリアに言われたことを思い出した。

 

 ――パチェ、貴女のところには中々面白そうな奴が行きそうね。そいつが通った後は何も残らないから注意しなさい。

 

「…その通りじゃないの」

 

 頭が痛そうにため息を吐いたパチュリーは物色中の魔理沙に近づく。少しばかり警戒する魔理沙だったが、既にパチュリーに敵意がないことを感じとるとニッと笑顔を浮かべた。

 

「私の魔法は凄かっただろ?」

「…まあ上の下ってところかしらね。辺境の魔法使いにしてはよくやれてる方じゃない?もっとも私には及ばないけど」

「なんでだ、私が勝っただろ」

「圧倒的準備不足よ」

 

 そう言うとパチュリーは落ちている魔導書の埃を丁寧に叩き、ぶっきらぼうな表情を見せながら魔理沙に渡した。

 

「大図書館の掃除を手伝ったらそれなりの本は貸してあげるわ。せめて対価を寄越しなさい。対価を」

「えー、面倒臭いな。使い魔にやらせろよ」

「貴女のせいでこの通りよ」

「…ZZZ」

 

 小悪魔はひっくり返って気絶…いや、爆睡していた。よっぽど疲れていたのだろう。魔素で体を調整している小悪魔である、魔力の使いすぎには顕著に体が反応するものだ。

 

「やっぱ使い魔って役に立たないもんなんだな。これなら奴隷タイプの式神を使った方がまだ良さそうだ。藍に教えてもらえないかな…」

「こう見えていざという時は役に立つ子なのよ。それに東洋の使役式は感覚や自分の性質をリンクする分、厄介な点が多いわ。大成するまではリスクを覚悟することね」

「そうだな…いや待てよ。スペルカードなら…」

「…それは考えたことがなかったわね。問題点は多々あるけど、特定の場面に限定するならかなり使い勝手がいい。そこまで難しい技術でもなさそうだし」

 

 二人は先ほどまで殺し合いをしていたことを忘れ、魔法使いの議論が始まる。大抵の魔法使いはこんなものなのだ。知識を得るためなら時も、場所も、場合も、相手が誰であろうと関係ない。

 奴隷型スペルカードの原理、用途、作成方法を互いの考察によって固めてゆく。違う分野に秀でた二人が結託すれば思わぬ成果を発揮するものだ。

 そして――――

 

「ふむ、並列思考…そう言う点で考えるともっとも近いのは分身か。分身型スペルを使う奴には一人だけ心当たりがあるが…それなら式神を作った方が早いような気がするな」

「式神を作るには一からプログラ厶を作り上げなきゃならない。時間もかかるし、余計な自我を持つからスペルにするには色々と厄介よ。それに分身というのは案外難しいものではないわ。魔力をそのまま写し変えればいいだけだし……()()()その体現者がいるし」

「体現者?」

 

 ふと、魔理沙は自分が大図書館に開けた穴を見た。地下へと繋がるその穴は自分が開けたものではあるが底知れない不気味さを漂わせている。冷気とともに流れてくるのはもっと寒いナニカ。

 

「もしかしてこの下に?」

「…さあ? 詳しい位置は知らないわ。だってすっごく下にいるもの。まあ、なんのアクションも起こさないってことは大丈夫――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――パチュリーの足元が吹き飛んだ。

 

 

 

 stage4.クリア

 

 

 *◆*

 

 

 レミリアはその大きくつり上がった気の強そうな瞳を細めながら、私を威圧的に睨む。レミリアの問いに答えることができなかった私は、ただ彼女を見返すことしかできなかった。それもそのはず、私にはレミリアがなんのことを言っているのか全く理解できないのだ。

 それに見かねたのか、レミリアは再び語りだす。

 

「あの時、確かに貴様は私を殺せたはずよ。消耗していたし、何より戦意がなかった。私を見逃すことに何の利もなかった。なのに…何故だ?その日から私は貴様を測りかねていた。この際異変のついでに聞いておこうと思ったの。

 さあ答えなさい。何故私を生かした? 何故私に生き恥を晒させるような真似をした? 答えろ…………答えろ、八雲紫ッ!!」

 

 …………はいぃ?

 ちょ、ちょっと待って…何それ。

 この吸血鬼は一体何を言っているんだ?見逃す…え?見逃す?見逃してやったの間違いじゃないの!?この八雲紫、見逃されたことは多々あっても見逃したことは幻想郷が出来てからは一度もない。いやまずいつの話よ。

 と、取り敢えず聞いてみましょうか。

 

「…何のことかしら。身に覚えがありませんわ」

「……ほう? 面白いことを言ってくれるわね。幻想郷流のジョークってやつかしら? 生憎、私は全然笑えないのだけど」

 

 私も笑えないわよ。てかまずジョークじゃないし。もうやだ、何て言えばいいのよ!

 いや、投げ出してはダメね。考えろ、考えるのよ賢者八雲紫!満足する答えを出してあげたらこいつは納得するはずだ。最悪おだてまくってやればなんとかなると思う。けど…レミリアはどんな解答をお望みなの?見当もつかないわ…。

 

 よし。

 まずは当たり障りのないように…

 

「…貴女を生かすこと、それがこの幻想郷のためになるからよ」

「…はあ?」

 

 レミリアは素っ頓狂な声を上げた。

 え、返答間違えた!?

 お、おかしなことを言った覚えはないわよ。

 だって貴女と初めて会ったのは吸血鬼条約を結びに行った時だもの。あの締結までの話し合いに費やされた空白の時間、必死で自分でも何を言ったか覚えてないけど多分その時に何かあったのね…と、そう推測した。紫ちゃん頭いい!

 

「私を生かすことが幻想郷のため…?貴様は何を言っているんだ?あの時の私は貴様にとって間違いなく害だったはずよ。なぜ、あのような状況でそんなことを判断したの?」

 

 いや、知りません。

 ていうか貴女は今も昔も害よ。私に力があったらとっくの昔に潰してるわ。

 と、取り敢えずそれっぽいことを…!

 

「貴女という歯車は既に幻想郷という時計の中に組み込まれている。貴女無しには幻想郷は動かない、それは私が初めて貴女と出会った時に感じた直感だけども…間違いではなかった」

「私が…歯車?」

 

 あんなでっかい時計をわざわざ館につけているのだ。よっぽどの時計好きだろうと推測してこんな感じに引き合いを出してみたわ!

 私ったら天才ね!

 

「私を…紅魔館を組み込む…?八雲紫、貴様は…幻想郷は、私たちを…受け入れるの…?受け入れることができるの?」

 

 …そりゃあ…

 

「…幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ…私にとってもね」

 

 こういうことだ。

 

 現に私の意志とか関係無しにやばい連中がどんどん幻想郷に流れ込んできている。レミリアを始めとする吸血鬼の連中もその一端。

 私がこいつらを幻想郷に入れたくて入れたわけではないのだ。当たり前のことだが。

 

 しかもなんて言うか…ぶっちゃけこいつらがいなくなったからといって私の幻想郷ライフが改善されるわけではないのよねぇ。レミリアよりヤバい奴なんて幻想郷にはまだまだいるし

 ていうか強い奴らをポンポン幻想郷に引き入れたほうがいいのでは?とも最近考え始めた。ほら…周りに強い奴らがいたら妙な動きもできなくなるでしょ?俗に言うなんとやらの抑止力ってやつね。こんな考えが思い浮かぶあたり私はもう末期みたいだ。

 いや、実際は全員来ないでくれると嬉しいのだけどね?まず幻想郷を作った理由は弱い妖怪たちを救うためだからね?

 もう…誰よ、「幻想郷は全てを受け入れるのよ」とか言って見境なく有象無象を引き込みまくったバカは………私か。

 

「…可笑しいわね、貴女」

「あら、酷い言われようですわ。ユーモアがあると言ってくださいな?」

 

 変に呆れた様子でレミリアがそんなことを言うのでユーモラスに返してあげた。レミリアの物言いは人によってはキレそうな言い方だけど私は優しく寛大だから気にしない。

 

 するとレミリアが遠い目で窓を見つめ始め、暫く心地悪い沈黙が場を包んだ。人と話してる最中に月を見ながら鑑賞に耽るって……ま、まあいいけど。

 

「……ッ!!?」

「!!?」

 

 ひゅい!?

 なんかいきなりレミリアが一瞬痙攣した。背中から生えてる蝙蝠羽もレミリアの内心を表すかのようにピンと張っている。

 やがて目をカッと見開くと、信じられないものを見たような目でこちらを見返してきた。

 いや、それこっちがする目だからね?私が貴女に向けるはずの目だからね?

 やがてレミリアは眼を細めると私をねめつける。紅く光る眼光がなんとも恐ろしい。

 

「この私の運命に易々と侵入してくるなんて…貴女、一体どんな小細工を弄したのかしら? できれば答えて欲しいのだけど」

 

 もうやめて…これ以上私を虐めないで…。

 意味がわからない、意味がわからないの!貴女が私に何を伝えたいかが全くわからないのよ!

 てかこいつ敢えて意味不明なことを言って私を混乱させてない?いや、そうに違いない。私が慌てふためく姿を見て優越感に浸ってたのね!おのれレミリア・スカーレット!断じて許さない!

 ……許さないからといってどうするってわけでもないけど。

 

 まあそういうことならこっちもあんまり考えないで返せばいいわね。失礼なことだけを言わないようにすればいいだろう。

 

「ふふふ…私に運命を操る力なんてありませんわ。そのことは貴女が一番よく知っているはず。しかしひとつ言わせてもらうのであれば…これが本来の定めというものなのでしょう。貴女が幻想郷にやって来た時から…いや、貴女が生を受けてより運命は巡り始めています。もう貴女は運命から逃れられませんわ。運命を見通し、操る力を持つ貴女ならばお気づきでしょう? 廻り始めた事象を覆すことはできない。それは仙人でさえも川の流れを止めることができないことと同じ…この世に不変のものが存在しないことと同じ…

 ……既に、歯車は廻っているのだから」

「…」

 

 おお、痛い痛い。

 けどレミリアってこんな感じの…なんていうか、厨二臭いヤツが好きそうよね。これで満足してくれたかしら?

 

「…気に入らないわね。心底気に入らない」

 

 アッハイ。

 そうですねー紫ちゃんは大人のお姉さんだからお嬢ちゃんみたいなハイカラ幼女にはついていけませんねー。ごめんなさいねー。

 

「だがそのスタンスは気に入ったわ、八雲紫。ハッキリ言って予想以上よ。

 クク…物好きねぇ、貴女も、私も」

 

 レミリアは先ほどまでの存在する者全てを威圧するようなナニカを引っ込めると、クスクスと何が面白いのか含み笑いを始めた。

 …合格点…ってことでいいのかしら。

 まあそれで満足してくれたならなによりね。何が面白かったのか私にはよくわからないけど。最近の若い妖怪の感性にはついていけないわ…ホント。

 

「もう十分よ、中々有意義な時間を過ごせたわ。いきなり呼び出して悪かったわね」

 

 いや、こいつは悪いことしたとかそんなことは絶対思ってない。現に今もニヤニヤしてるし。クレイジーサイコパス吸血鬼め…!

 もう一人の吸血鬼はとっても良い子なのに…あの子の爪の垢でも煎じて飲んで欲しいものだわ。そしたらその腐った性根も少しは良くなるかもね。

 あ、そうだ。

 

「それでは私からも質問を一つ良い? 勿論、別に時間はとらせないわ」

「へえ、貴女から質問?いいわよ」

「あの地下にいた吸血鬼…あの子は貴女の姉か妹かしら?」

 

「ああ、それは我が妹、フランドール・スカー………ん…?んん!?」

 

 優雅に紅茶を嗜んでいたレミリアがカップを机の上に落とし、思いっきり眉を顰め咳き込んだ。

 そして若干慌てたような様子で私を問い詰める。

 

「あ、あの子に会ったの!? え…五体満足!?」

「…? 彼女とは少しばかり親交を持ってまして。まあ吸血鬼異変の時に少し会ってからそれっきりだけど」

 

「しかも親交を持ってるですって…?まさか手懐けたってこと!?ど、どんなトリックを使ったの!?」

 

 レミリアが私の胸ぐらを掴もうとしたので橙が怒りながら間に入る。ありがとう橙…控えめに言って殺されるかと思った。

 

「ぜ、是非フランを手懐けた方法を教えて頂戴!! こればかりは譲れないわ!」

 

 あれ…溢れんばかりのカリスマが砂上の楼閣の如く消えてゆく…。

 レミリアの蝙蝠羽がパタパタと忙しそうに動いている。興奮しているのだろうか。

 様子を見る限りでは姉妹の仲がうまくいってないのかしら?まあこんな傲慢な姉じゃ仕方ないわよね。いくらあの子が良い子でも流石に嫌気が刺すに決まってる。

 

「私は普通に少し話して、ゲームを共に嗜んでいただけよ。別に特別なことをやったなんてことはないわ」

「……」

 

 勿論私が話したことは全部本当のことだ。

 しかしそうは言っても信じられないのか、レミリアは訝しむような目で私を睨んだ。いや、そんな目で見られても…。

 せっかく結構和やかな雰囲気まで持って行けたのにまた空気がピリピリしだした。そしてそれに応じて橙もまた警戒レベルを引き上げていた。彼女の体から滲み出てる妖気が私の精神を蝕んでゆく。主人の主人が側にいるんだからもう少し気を使ってほしい。

 そろそろ私のお腹がいけないことに…!

 

 と、ちょうどその時だった。

 幻想郷を覆う大結界の性質が一瞬のうちに変化した。これが藍の言っていた大結界のアップグレードというやつだろう。ということは藍が作業を終えたということ…!

 私がスキマにいなかったら藍は妖気の残滓を辿ってでも紅魔館へやって来ることが推測できる。こんな状態のレミリアと藍の対面なんて考えたくもない!

 即帰宅せねば!

 

「…もうすぐ霊夢が来るでしょうし…そろそろ帰らせていただきます。それでは早めの異変収束を期待しているわ。第二次吸血鬼異変は双方ともに避けたいでしょう?」

「まあ…そりゃあね。けどまあ…もしもの時はよろしくするわ」

 

 もしもの時って…。

 まあいいわ。どうせ霊夢が勝つし。

 

「ふふふ…望むところですわ。新人に幻想郷のレベルをよーく教えこむことは大切です。それでは…御機嫌よう〜」

「ええ………って、ちょっと待て! 結局フランをどうやって――――」

 

 なにやらレミリアが言っていたが私は絶対に振り返らない!メイドがいない限りスキマに入ってしまえばこっちのものだ。

 展開したスキマへと橙と一緒に飛び込む。

 視界の隅では橙が最後までレミリアに向かってガンを飛ばしていた。まあ…勇気だけは買うわ。流石は我が式の式ね!

 

 さて、そろそろスキマ空間を抜ける。

 今日は色々と疲れたわ…体のあちこちが怠いし重い…そして痛い。頭痛が痛いし吐き気もする。こんな時は寝るのが一番だろう。

 どーせ起きた時には異変終わってるし。果報は寝て待つのが一番とはこのことね。

 

 スキマが開いた。

 さあいっぱい寝y…

 

「おかえりなさいませ紫様」

 

 …目の前に藍がいた。いつものように袖下に手を突っ込み、姿勢を低く維持している。しかしいつもと違うのはなんとも言い表せない不気味な雰囲気を漂わせているという点だ。

 嫌な予感しかしない。

 

 

 *◆*

 

 

 絶え間なく霊夢へと無数のナイフが飛び交う。しかし確かな加護の付与されるナイフでさえも霊夢がお祓い棒で打ち払うたびに粉々に砕け、銀の粒子を撒き散らす。ただ闇雲に霊夢へ攻撃を仕掛けても、それは焼け石に水というものなのか。

 確かに咲夜の能力は非常に強力だ。それこそ世界が、宇宙が自分の庭と錯覚するまでに。 人間が持つには手を持て余すのは確実だろう。それを己の手足以上に使いこなせる咲夜の精神力は紛れもなく化け物である。

 さて、咲夜の能力は初見ならば一撃必殺の代物である。それこそ相手に何が起こったのか悟らせることなく、この世から葬り去らせることも可能だ。

 しかし霊夢はそれを見事に見切り、現在進行形で咲夜を翻弄している。普通ならば対応するどころか自分の身に起こっている状況を把握することですら困難なレベルではあるのだが…。

 

「…へえ」

 

 霊夢はお祓い棒を一閃し周りのナイフを一掃すると感心したような…しかしどこかバカにしたような声音で呟いた。

 咲夜は訝しげな目で霊夢を睨むと一度攻撃を中止した。このまま単調に攻めても埒が明かないと判断したのだろうか。

 

「何か?」

「いや、便利そうじゃない? あんたの時間を操る能力…でいいかしら?」

「あら、よく気づいたわね……いや、当たり前か。初撃を把握してたものね」

「把握なんてしてないわよ。ただなんかくるなって思ったから直感の向くままに動いてるだけ、あんたの能力についてはヤマを張ってみただけ…大したことじゃないわ」

 

 博麗の勘とは理不尽なものだ。

 しかし咲夜の能力についてはここまで対応できていれば自ずと見えてくる。さらにはその制限さえも。

 確かに咲夜は時を止めることによって光以上の速さで動き回り、ナイフを同時に突然目の前に展開することができる。

 しかし咲夜が時を止めている間、霊夢は一度として咲夜からは干渉されていない。時間が止まっているならばその間に殺せば楽な話なのにだ(もっとも結界で体を覆っているのでそれは無意味である)。

 ここから考えるに…咲夜の時を止めるという力は驚異的なものであるが、己が干渉できる条件はそれなりに限られているようだ。そしてその条件とは…自分と能力発動時に触れているものだけなのだろう。ここまでは推測できた。

 

 時を止める。それは物体が全ての動作を静止したということである。全ての物体…原子が運動…振動を止めたということはそれから発生する熱も全てなくなる。咲夜の作り出す世界とは絶対零度、−273.15℃というとんでもない世界なのだ。

 咲夜と、咲夜の触れていたモノのみがその世界を自由に動くことができる。しかし能力の適用範囲はそれらのみであり、仮に咲夜が能力発動中に素手で物質に触ったならば−273.15℃の餌食となり凍結してしまうだろう。また霊夢へといくらナイフを振り下ろしてもそれが突き刺さることはない。

『咲夜の世界』とは実に強力ではあるが、直接的な攻撃手段を持たないのだ。

 霊夢はここまでを直感的に推測した。詳しい原理やら何故そうなるのかなどは知らないが戦闘においてそれは全くもって関係ない。

 

「随分と小細工が効くようだけど…私には関係ないわね。それにまだあの妖精の方が面倒臭かったわ。しぶといし寒いし」

 

 霊夢は巫女袖からお札を取り出すと、「ひーふーみー」と枚数を数えだした。既に勝ったつもりでいるようだ。

 その姿が咲夜の中で八雲紫を連想させ、咲夜の激情を煽ってゆく。咲夜は瀟洒な笑みを崩し、空間を弄るとどこからか一際魔の加護を感じるナイフを取り出した。

 今度はどんな小細工を見せてくれるのかと傍観していた霊夢だったが…

 

 

 

 結界はバキィという不快な音とともに切り裂かれ、同時に血飛沫が舞った。

 肩を切り裂かれた。

 

「………痛っ!?」

 

 霊夢は今日初めての痛みに顔を歪め、裂傷した部分を手で抑える。久方に感じた痛みはやけに新鮮に感じられた。

 

 そしてその目の前にはナイフを既に振り終わっている咲夜の姿がある。シルバーブレードの刃先からは霊夢のものと思われる血が滴り落ちていた。

 咲夜が霊夢の目の前に移動したのは時間を止めたということで説明できる。しかし、何故今咲夜は霊夢の意識外から攻撃を仕掛けることができたのか。それが謎であった。

 

「いつつ…その小細工には驚いたわ。まんまとやられた。時を止めてる間は私に攻撃できないとばかり…ね」

「あら、私がいつそんなことを言ったかしら? しかしよく躱せたわね。肩を切断するつもりでナイフを振ったんだけど…勘がいいにもほどがあるでしょ」

「私の自慢よ」

 

 そうは言うものの、霊夢の傷はかなり深い。普通の人間同士の戦闘であればそれが決定打になったはずだ。

 咲夜は再び瀟洒な笑みを浮かべると、多数のナイフを展開する。霊夢はそれに応じ結界を展開するが…

 

 ――バキィ!

 

「…っ」

 

 目の前にはシルバーブレードを既に振り終わっている咲夜の姿。そして結界は咲夜の一閃によって破壊された。

 時を止めている間に攻撃を仕掛けていることもさながらだが、咲夜のナイフによる攻撃力もおかしい。霊夢の強固な結界を一撃の元に葬り去るほどの殺傷能力をあのチンケなナイフが有しているようには見えない。つまりそれもまた咲夜の能力が関係しているということなのだろう。

 

 咲夜は砕けた結界の合間からナイフを投擲し、霊夢に迎撃させるというその僅かなスキを作らせた。

 それだけの時間があれば十分。

 霊夢は直感的に体を捩る。その瞬間霊夢の周りを凄まじい数のナイフが囲い、霊夢を中心に交差した。運良く…というより必然的ではあるが、霊夢に被弾はない。

 しかしその一歩手前…グレイズは多かった。紅白の巫女服はボロボロに引き裂かれ、所々より血が滲み出ている。だが咲夜のターンは終わらない。時間停止状態の霊夢の背中を縦に引き裂いた。

 これまたすんでのところで致命傷にならない態勢をとっていた霊夢はことなきを得たが、それでも重症であった。だらだらと流れ落ちる鮮血がそれを象徴している。

 

「…痛いじゃないの」

「そりゃそうでしょう。ナイフで切られたら人は死にます。貴女といえど人間でしょう?」

「当然よ」

 

 霊夢はお祓い棒を両手に持つと何やら祈祷を始める。それは咲夜に暇をとらせる間もない早さで終わり、その頃には霊夢の傷は全て塞がっていた。

 それを見た咲夜は笑みをより一層深くするとナイフを構え攻撃準備に入る。

 

「止まっている時の中じゃ攻撃できない…わけじゃないのよね。けどそれは極限られた僅かな時間。私を殺しきれない程度の時間…」

「…まあ正解よ。貴女の結界を切るのは一苦労だから仕方ないわ。けどそれがどうしたのかしら? 貴女の時間は私の物、貴女に抗う術などないのに」

「言ってなさい」

 

 霊夢は巫女袖からお札を取り出すと、腕を交差させ投擲準備に入る。ついに博麗の巫女が動き出すのだ。咲夜も笑みを抑えるとそれに相対する。彼女の真価もこれから始まる。

 戦いはまだ序章に過ぎない。

 

 


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