ガンプライブ! ~School Gunpla Project~ 作:Qooオレンジ
ご近所さんが田んぼの縁の草を刈り舞い上がったナニかに反応しアレルギー性鼻炎を発症し鼻水が止まらないQooオレンジでございます。
今回も絵里さんsideのお話となります。
あと少し戦闘回。
それでは 第8話A「夢の欠片」そのなな⑫ 始まります。
「視界とレーダーを封じちまえば!絵里さんなら絶対に正面突破して来ると思った!!!!!」
煙幕+ジャミングチャフの封鎖空域を私らしくで正面突破した先に待ち構えていたソラ。
しかもソラが選んだポジションは真っ正面でも真後ろでも右でも左でもなく上から。
うん。
上から来るとかこれっぽっちも考えていなかったわ。
かなり今さらだけど、今回のバトルは基本的には空中戦なんだから、上や下から来てもなーんにもおかしくはないのよね。
それなのに今回は空中戦でもずーーーっと平面で戦っていたから、立体的な攻防とか頭の中からまるっと無くなっちゃっていたわ。
どうしてかはわからないけど、ソラがほとんど高度を変えないで戦っていたからついつい私もそれに付き合っちゃったのよね。
もしかしたら高度を変えないで戦っていたコトもソラの仕掛けだったのかも?なーんて、それは流石に私の考え過ぎかしら?
それはそれであとでソラに聞けばいいとして、今の問題は絶体絶命のこの状況をどうやって切り抜けるか…ね。
十中八九、ソラはあそこから単発の“soar(ソア)”を使って一足飛びに仕掛けて来るわ。
今のこの状態…上から降ってきたザク・リヴァイブの大型ビームマシンガンを咄嗟に振り払ったこの状態で、さっきみたいに“soar”での超高速の突撃を防ぐなんてコトはきっと無理だわ。
視界に入ったただの大型ビームマシンガンなんかを咄嗟にシールドを使って振り払っちゃったのは痛かったわね。
まぁソラは咄嗟にシールドを使って振り払わせるためにあんなことをしたんだろうけど。
とにかく今までのように防ぐのが無理なら、今の私がこの状況を覆すために取るべき手段。
それは…
「ブーステッドバーン!サードブリット!!!」
3枚目の切り札を切る。
これね。
そう判断した私は本日3回目のブーステッドバーンを迷わずに発動させたわ。
ブーステッドバーンの発動と同時に、両肩のスーパーバーニアからはバトルが始まってからずっと圧縮され続けていた推進エネルギーが一気に解放され、それに伴い爆発的な加速力が産み出されて…
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
私は窮地を脱するために機体を強引に前へと押し出したわ。
その直後…
[[Accel(アクセル)!!!]]
ほんの少しだけ…たったコンマ何秒かだけ遅れて、ソラが“soar”を発動させたわ。
2人きりの青い世界で互いに爆発音を響かせて発動させたそれぞれの超加速。
ソラはピアッシングシールドのビームピアッサー(本人曰くビームバンカー)で私を貫くために。
私は絶体絶命の状況を切り抜けるために。
それぞれがそれぞれの手段で発動させた超加速。
その結果は…
「っ!間に合った!!!!!」
[[んな?!今のタイミングで外した?!何の冗談だよ!!!!!]]
煙幕とジャミングチャフの封鎖空域を突破するために行った正面突破。
その際に行われたランスチャージの加速の分だけ初速にスピードが乗っていた私のトールギス・ヴァルキュリアが、ほんの少しだけ速かったみたいね。
私のトールギス・ヴァルキュリアはソラのザク・リヴァイブの“soar”からのピアッシングシールドの一撃を見事に回避してみせたわ。
回避してみせたのは良いけど、まさに紙一重って感じね。
私のブーステッドバーンよりも“soar”の発動が少しだけ遅れたのも原因かも?
まぁナニはともあれ…
「えりーちか奇跡の大脱出の大成功ね♪」
本日3回目のブーステッドバーンを発動させての奇跡の大脱出を無事に完遂させた私は、トールギス・ヴァルキュリアの加速状態を維持させたまま、威嚇するようにザク・リヴァイブの周辺をぐるぐると旋回させてソラの出方を伺うコトにしたわ?
さっきは私らしく正面突破!とか言ってた割には相手の出方を伺うとか随分と消極的よね。
自分でもそれはわかっているわ。
わかっているけど…
[[フン!奇跡の大脱出だか何だか知らねぇーが!今のでブーステッドバーンで3回目だ!絵里さん!アンタにゃもう切れる札は残ってねぇーよなぁ!]]
ソラの言う通り、合計3回の切り札を使いきっちゃった今の私には、もう切れる札が残されていないのよね。
だからこそ私は消極的だと理解しながらも、ぐるぐると機体を旋回させながらソラの出方を伺っているのよ。
普通の加速からのランスチャージじゃたぶん…ううん、きっと、ソラには当たらない。
だってただランスチャージを仕掛けて倒せる相手なんかには先生は負けたりしないもん。
ならどうすればいい?
ただのランスチャージは当たらない。
ソラみたいに奇策でも使えばいいの?
けど…ソラのような奇策を用いるだけの装備は私のトールギス・ヴァルキュリアには積まれてはいないわ。
そもそも父から遺伝した呪い染みたガンプラバトル限定の不器用さのせいで、私には奇策を使うなんてそんな器用なコトは絶対にできないし。
ただのランスチャージは当たらない。
奇策は使えない。
切り札ももう無い。
まさに八方塞がりね。
これからどうするべきか?
ソラの出方を伺いながら旋回を繰り返してソレを考えていると…
[[手札が無くなってぐるぐるぐるぐる回ってさてどうしよう?ってところか?そんな考え中な絵里さんに残念なお知らせだ!]]
不意に滞空を続けているソラが私にそんなコトを言ってきたわ。
残念なお知らせ?
ソラが語ったその内容は…
[[アイリのヤツが居ないから今までは結構操縦に苦労してけどなぁ…もうマニュアル操作にも慣れちまったぞ?]]
と、言うモノだったわ。
「へ?慣れたって…?えっ?」
マニュアル操作に慣れた?
私がソラの発言の意図を図りかねて、頭の上に大量のクエスチョンマークを浮かべていると…
[[]わかんねぇーか?慣れたってコトはなぁ!ある程度はいつも通りに操縦できるってコトだよ!]
ソラはさらにそう言ってきたわ。
いつも通りに操縦できる?
それってつまり…
[[“soar”も連発できるし今度は“Rrapid acceleration”もちゃんと使えるってコトだ!!!]]
わぁーお。
やっぱりそーゆーコトよね。
と、言うコトは…
[[“soar”の加速圏内にちょっとでも近付いてみやがれ!その瞬間に遠慮も容赦も手加減も一切無しでぶち抜いてヤる!!!]]
ですよねー。
迂闊にランスチャージを仕掛けたりしたら、“soar”で回避してからまた“soar”を使ってこちらへと軌道修正をして、ピアッシングシールドをコクピットにぶち込んで来るってワケよね。
うん。
これはこのままなら確実に詰みね。
ほんと、どーしようかしら?
いっそのこと、このまま降参しちゃう?
もう勝てません。
無理です。
手も足も出ません。
どーするコトもできません。
降参しますって。
うん。
それはそれでは悪く無いわ。
このバトルで負けてもソラの要求は私を“μ's”に入れるってコトだったし、そうなったとしても私は元々“μ's”には入れて貰うつもりだったんだし。
機体が大破しても少し前のガンプラバトルのように…プラフスキー粒子が使われていた頃のガンプラバトルのように、ガンプラ自体にダメージが入るってコトも無いんだし。
負けたって私には失うモノもデメリットもペナルティもなーんにも無いわ。
そう。
負けたとしてもなんにも無いのよ。
けど…でも…………
「勝てないからってだけですぐに諦めらゃったら、自分の力だけでとか言ってカッコつけて、私のコトを本気で誘ってくれたどこかのおバカさんに顔向けできないわよね。」
だから…!
「正真正銘!最後の切り札!切っちゃうんだから!!!」
そうよ!
まだ私は終われない!
まだ私は終わらない!
まだ私は止まれない!
まだ私は飛んでいる!
まだ私は……戦える!!!
合計3回のブーステッドバーンを使い切った私とトールギス・ヴァルキュリアに残されている最後の手段。
それは今までの3回のブーステッドバーンの使用でスーパーバーニアに限界まで溜まった推進エネルギーをわざと暴発させるコトで発動させる“4回目”のブーステッドバーン。
4回目のブーステッドバーン…これを使っちゃえばいくら頑丈に作ってあるトールギス・ヴァルキュリアのスーパーバーニアでも確実に爆発して吹き飛んじゃうわ。
スーパーバーニアが爆発して吹き飛んじゃうってコトは、射撃武装を一切搭載していない私のトールギス・ヴァルキュリアにとって唯一の攻撃手段であるランスチャージが使えなくなるってコト…。
と言うか、もしかしたらスーパーバーニアが吹き飛んだ時に機体自体も一緒に盛大に吹き飛んじゃうかもしれないわ。
こんなの諸刃の剣どころか完全に自爆技よね。
でもね?
この4回目のブーステッドバーンは今まで使った合計3回のブーステッドバーンなんか目じゃないくらいにスゴいんだから。
スーパーバーニアが爆発して吹き飛んじゃう変わりに、今までとは比べ物にならないくらいの超加速を発揮しちゃうんだから。
伊達や酔狂で自爆染みたコトをしようってワケじゃないわ。
そんな最後の切り札の4回目のブーステッドバーンを使うべく、私は機体を今までよりも大きく旋回させてソラのザク・リヴァイブの正面へと移動させたわ。
対するソラは…
[[最後の切り札、ねぇ…。何だよ。まだナニか切れる札が残ってたのかよ。まぁいいさ。絵里さんがナニをするつもりかは知らねぇーけどなぁ…]]
滞空させ続けていた乗機のザク・リヴァイブの体勢をやや前傾姿勢へと移行させて…
[[その最後の切り札ってヤツ諸共!コイツでぶち抜いてヤるだけだってんだよ!!!!!]]
私のトールギス・ヴァルキュリアと向かい合ったわ。
こちらと向かい合う。
ソレが意味するコトは…
「なーに?珍しく真っ向勝負とかしちゃうの?」
私の最後の一撃を真っ向から受け止めるってコトでいいのかしら?
[[珍しくとか言うなっての!イヤ、まぁ確かに珍しくはあるんだけどよぉ…。でもまぁ、たまには、な。]]
「ふーん。たまには、ね。」
[[おうよ。たまには、だ。]]
ふふ♪
たまには、か。
ソラがどうして私の最後の一撃を真っ正面から受けようとしているのかはわからないけど…
「いいわ!珍しくたまにはとか言って真正面から迎え撃ったコト!後悔させてあげるんだから!!!」
[[ハッ!上等だ!ゴルゥラァァァ!ヤれるもんならヤってみやがれ!!!]]
お互いに向き合った私たち。
私が勝つにしろ、ソラが勝つにしろ、最後の瞬間はもうすぐそこまで迫っていたわ。
そんな中で私はふと、今さらかなりどーでもいいコトなんだけど、あるコトに思い至ったの。
本当に本当に些細なコトなんだけどね。
さっきのソラじゃないけどガンプライプにしては珍しく割りと真面目なバトルの最終局面になったんだから、私が気付いたそんな些細なコトなんて心の中にしまっておいても良かったんだけど…
「ねぇ、ソラ?」
私はついつい好奇心に負けちゃって、その“些細なコト”をソラに聞いてみるコトにしたの。
[[あ?この期に及んで何だよ?えりーちかぁ♪やっぱり降参しますぅ♪とか言いやがるのか?]]
「そんなコト言いません!」
あ、ちょっとウソかも。
さっき少しだけ降参しちゃえば楽かも?とか考えちゃったもんね。
と、ソレはまぁどーでもいいとして。
「ほんと、いつもいつもいつもいつも私にはイジワルよね!」
[[わりぃな。イイ女にはイジワルしたくなるってのが男の性なんでねぇ。]]
「そのイイ女って言うのも“どーでもイイ女”ってコトなんでしょ!」
[[さぁ?そこら辺は絵里さんのご想像にお任せってヤツだな。で?何だよ?]]
「あ、うん。あのね?別に大したことじゃないんだけど…ソラが勝ったら私は“μ's”に入れられちゃうのよね?」
[[おうよ。まぁ絵里さんを仲間に引き入れるとか言ったら海未さん辺りが猛反対しそうだけどよ、ソコはなんとか頑張って説得するから大丈夫。]]
「うん。ソレはまぁソレで頑張って。ソレでね?」
[[おう。]]
「私が勝ったらどうするの?」
[[……………へ?]]
「だーかーらー!私が勝ったらどうするの!」
[[私が勝ったら…つまり絵里さんが俺に勝ったら…………あっ。]]
[[“あっ”って言ったわね!今“あっ”って言ったわね!!!]]
私が勝ったらどうするか。
その問いに対して今気付いたように“あっ”って言った。
ソレってつまりは…
「私になら絶対勝てるとか思ってたんでしょ!そーでしょ!」
ってコトよね?
[[ちがっ!イヤ!違わねぇーけど違う!]]
「違わないけど違う!ってそーゆーコトじゃない!」
[[違う!絵里さんになら絶対勝てるとかそんな感じで絵里さんを侮ったとかそーゆーコトじゃねぇ!気持ちの問題だ!気持ちの!誰もハナッから負けるつもりで戦うアホは居ねぇーだろ!]]
「そりゃそーだけど…」
[[ほ、ほら!今はアレだろ!アレ!絵里さんが俺に勝ったらどうするか!あー!どーしよーかなー!絵里さんが勝ったらどーしよーかなー!]]
「むぅ。」
何かうまく誤魔化された気もしないでもないんだけど…。
まぁいいわ。
「そうね…私がソラに勝ったら…」
[[俺に勝ったら…?]]
つづく?
皆様。本日もご覧いただきましてありがとうございました。
次回、今度こそは、今度こそは決着……すると思います。
次回も手洗いうがいをしっかりとしてからがんばルビィでございます。
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“μ's”全員集結までもう少し…皆様、どうか何卒、何卒、応援のほどよろしくお願いいたします。
それでは改めまして、本日もご覧いただきまして、本当にありがとうございました。
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